【2018年まとめ】今年EC業界でチェックしておくべきトレンド5選と2019年のEC業界展望

 

2018年もあと僅か。今回はeコマースコンバージョンラボ恒例となった1年の振り返り記事となる。今年は細かいソリューションはそれほど市場を賑わせることは多くなく、比較的大きな企業・サービスによる、大きな潮流がEC業界を駆け抜けた1年だったのではないだろうか。そのような環境の中でeコマースコンバージョンラボも多種多様な記事を今年もお送りしてきた。ニュース記事を除くと、今年45本目のこの記事では、2018年のEC業界のトレンドや出来事を振り返り、来る2019年の展望を考えていく。

 

 

2018年EC業界でチェックしておくべきトレンド5選

 

改めて今年の出来事を色々振り返ってみた。その中から、今年の1年のEC業界の5つのトレンドをまとめてみた。

2018年EC業界でチェックしておくべきトレンド5選

 

店頭スマホ決済

店頭でのスマホを使った決済は、中国のAlipay、WeChat Payを中心に2015年頃から展開されていた。それは主に店頭でQRコードを使ったものだった。しかし、国内ではQRコードという一見“オワコン”を認証技術として使っていることや、電子マネーの浸透なども相まって、そこまでスマホを使ったQRコード決済は浸透してこなかった。その流れが世界的にも大きく動き出したのが今年の1月、シアトルでオープンされたAmazon Goだ。これはスマホ決済という枠組みを遥かに超越した、レジ無しの店舗での決済システム。この動きから堰を切ったように、様々な国でレジ無し決済、スマホ決済の進化系の取り組みが進められた年になった。国内でも複数の取り組みが開始されてきており、来年以降さらにこの流れは大きなものになっていくのではないだろうか。

 

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スマートスピーカー

ECサイトへのAIの実装は昨年から徐々に進み、サポート窓口のチャット対応、商品のレコメンドエンジンなどに活用されてきていた。しかしまだまだ実際の生活において消費者がAIを実感する機会はそれほど多くはなかった。しかしGoogle Homeが昨年10/6に、次いで昨年11/8にAmazon Echoが限定販売を開始、さらに今年4/3から一般発売開始され、一般家庭にもAIスピーカーが徐々に広がってきた。まだまだECとの接点は少ないものの、米国では既に半数がショッピングに利用しているという調査結果も出てきている。国内でも今後の消費者の購買行動を大きく変える可能性を秘めたデバイスと言えよう。今後どのようにこのデバイスを使ってEC業界は変わっていくのか、非常に興味深い。

 

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再配達対策・即日配達

従来はヤマトや佐川のような宅配事業者に完全依存していたECの物流・宅配領域だが、昨年3月に表面化した、いわゆる宅配クライシスを機に、ECに携わる各サービス事業者が今まで以上に主体性を持って業界の改善のための取り組みを実施している。その結果、宅配業務の最も大きい問題の一つである“再配達”を減らすソリューションがリリースされた年となった。まだまだ浸透していないものも多いが、今までには無いコンセプトのサービスも多く、今後が非常に楽しみな領域だ。一方で海外では即日配達のトレンドも根強く、この難易度の高い2つのミッションをどのよなテクノロジーで今後解決していくのか、非常に興味深い。

 

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アパレルECの機能進化

アパレル業界はいつもEC業界の先駆者として今までの業界には無いサービスを積極的に生み出してきている。今年もその流れは際立っていた。特にアパレルECの長年の課題である“サイズ”問題へ、颯爽と切り込んできたのが、1月末に配布がスタートしたZOZOSUITだ。伸縮センサーを内蔵した採寸専用ボディスーツを100万人以上にほぼ無料で配布するという、これまでには例を見ない規模での取り組みを実施。諸々の問題もあり多少暗礁に乗り上げた感もあるが、その取り組みの発想自体は真似の出来るものではない。一方Amazonなどは複数商品を消費者に実際に郵送し試着してもらい決めてもらうという、こちらも物流ネットワークを構築したものだからこそできる施策を実施中。さらにコーディネートやリユースのニーズに対しても各種ソリューションの提供が行われてきた。もはや数年前とは違い、アパレルをオンラインで購入するという消費者は多数派になってきている。そのような市場環境をさらにより良いものとするべく、今後もアパレルEC業界の新サービスには注目していきたい。

 

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海外サービスの来襲

長らく日本のEC業界はどちらかというとガラパゴス的に進化してきた側面も大きかった。背景には大きく3つの理由がある。1つは他のジャンルでも見られるが、日本独自の要件が強い点だ。例えばリピート通販のきめ細やかな仕組みや、電子マネー、ポイントの浸透、さらには独自の決済環境などだ。2つ目は言語の問題だ。海外の主要サービスは以前は1バイト文字ベースで構築されている部分も多く、さらに現時点では中国などと比べて市場規模が小さく、なかなか日本語への言語対応が後手に回っているケースが多かった。そして3点目は独特の営業環境だ。海外と異なり、国内の事業者の多くは、新しい斬新なサービスに飛び付くことはほとんどせず、実績があり、紹介などで信頼のおけるサービスを好んで利用するケースが多い。そのような理由から、EC業界を支えるプレイヤーは、早くから上陸し国内市場を席巻しているAmazonを除けば、国内のプレイヤーが大部分を占めていた。しかしここ数年、そんな日本市場に本腰を入れて、大手海外サービスが活動を強めてきている。カナダを本拠地とするグローバル最大手のショッピングカートASPサービスShopify、(中国以外では)世界最大のマーケットプレイスのeBay、そしてグローバルで決済サービスを提供するPayPalなどだ。従来これらのサービスは、グローバルスタンダードを“上空”から放り投げるようなスタイルでの営業活動が目立っていたが、今年に入り地に足のついた取り組みを進めているケースが増えてきた。Shopifyは国内の複数の支援サービスと連携・提携を加速。eBayはM&Aにより国内での営業拠点を確保し、同じく複数の支援サービスと連携を推進。PayPalもここにきて国内のカートサービスとの連携を発表するなど地道に地上戦を繰り返している。これらの活動は一定の成果を今後上げていくことが推測され、今後他のグローバル企業が日本進出する際の好事例となっていくのではないだろうか。

 

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2019年のEC業界展望

 

2018年のニュースとトレンドを振り返ってきたが、来年はどんな年になるのだろうか。今年は多くの新しいキーワードが台頭した1年となったが、そんな流れの中で来年の動きを予想してみよう。

 

AIを使った新しいECの形

スマートスピーカーの登場、そしてチャット対応などECサイトがAIから受ける恩恵は非常に大きい。そして今後もその傾向は拡大し、チャット内でAIを活用し購入まで完結できるサービスなど、ECサイトという概念自体を壊すような新しいECの形がAIによって目に見えてくる可能性も高い。AIとは単に人間の代わりという位置付けから、ECサイトと言う根本的な概念を切り崩すものになり得る可能性もあるのではないだろうか。

 

ソーシャルメディアのリベンジ

一時期Facebookがコマース機能を強化した際には、ECサイトでの多くのコンバージョンが、SNS経由で発生すると考えられていた。しかしあれから数年経ってみても、直接コンバージョンに対するSNSの割合はそれほど大きなものにはなっていない。しかし、Instagramもコマース機能を徐々に充実化するなど、SNS側からコマースサイドへのアプローチは継続的に続けられている。その結果、今までには無い形でのSNSとコマースの融合が起こる可能性もあるのではないだろうか。

 

購買チャネルのボーダレス化

店頭でのスマホ決済が浸透してくると、店頭で購入しようがオンラインで購入しようが、その境目は徐々に曖昧になってくる。その結果、中小のEC事業者にとって“オムニチャネル”と言った崇高な概念を導入しなくても、手軽に仮想オムニチャネル的な取り組みを進めることができる可能性が高まってくる。特に楽天ペイ、Amazon Payと言った大手モールを展開している企業が、それらのサービスの提供をはじめれば、それらのモールへの出店事業者は恩恵を受けやすくなってくる。そのため、数年後には現状ではハードルの高かったオンライン購入者と店頭での購入者の紐付けを中小事業者でも容易に行うことが出来る環境が整っている可能性もあるのではないだろうか。

 

 

 

改めまして今年も1年間「eコマースコンバージョンラボ」にお付き合いいただき、誠にありがとうございました。皆様の多くの支えがあったことで、この1年も続けることが出来ました。心から御礼申し上げます。

来年もEC業界の動向やトレンドについての情報を発信し、業界の進むべき方向性や未来を考えていきたいと思いますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。

それでは良いお年をお迎えください!