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物流・決済・業務
2017/08/03

中国での「QRコード」の驚異的な浸透 - 世界最大のモバイルペイメント市場を牽引する企業と顧客の重要なタッチポイント

中国での「QRコード」の驚異的な浸透 - 世界最大のモバイルペイメント市場を牽引する企業と顧客の重要なタッチポイント

 

QRコードといえば、日本では5年程前にあまり目にしなくなった、いわゆる「オワコン」だ。しかし、今中国ではモバイルマーケティング市場で大活躍している。コードを読み取ってそれでサイトにアクセスして何かをする、というイメージの強い日本でのQRコード活用だが、中国では全く異なる活用方法が浸透している。今回は、中国で驚異的な浸透を見せるQRコードの活用方法を見ていきたい。

 

 

店頭でのモバイル決済

 

ここ3~4年の間に、中国のモバイル決済市場は大幅な拡大を続けている。中国で最も利用されているモバイルペイメントサービスであるAlipay(支付宝)WeChatPay(微信支付)の2016年の取引額は2.9兆ドル(約320兆円)にものぼり、4年間でなんと20倍も増加した。また、世界的に見ても中国のモバイルペイメント市場の規模は図抜けている。この拡大の背景にはQRコードの存在が大きな役割を果たしていると言ってもいいだろう。

画像出典:http://www.rakinda.com/en/newsdetail/84/119/100.html

中国では偽札の出回りや詐欺といったさまざまな問題があり、第三者機関が信用保証を行う第三者決済が、店頭においても大きな支持を得ている。特にモバイルの第三者決済においてQRコードが多く利用されているのだ。利用方法としては主に2つのケースがある。1つ目は、お店にQRコードの読み取り機がある場合である。レジなどにQRコードの読み取り機があり、支払いの際自分のモバイル端末の支払いQRコードを提示、読み取ってもらうことで支払い完了となる。2つ目は、お店に支払いのQRコードが設置してある場合である。そのケースでは自分のモバイル端末の決済アプリを立ち上げ、その店頭のQRコードを読み取り、アプリ上で金額を入力することで支払い完了となる。支払い完了画面を店員に見せることで購入終了、という手順だ。

 

<参考>

【中国】2016年AlipayとWechat payの取引額は約320兆円

【中国】2016年中国モバイルペイメントの市場規模は624.3兆円、アメリカの50倍

 

中国では、さまざまな場面でQRコードを用いたモバイル決済が利用されている。デパートやスーパー、コンビニやレストランのようなお店から、ITに無関係そうに見える露店、さらにはタクシー代や駐車場の料金といった交通費、チケット購入、ガスや水道、光熱費といった公共料金の支払いと、非常に多岐にわたっている。QRコードを利用することによって現金の受け渡しをする必要がなくなり、決済のやりとりが効率化される。店舗側ももらったお金を保管する手間がなくなり、電子的に売り上げを管理することができるなど利便性は高く、食堂や露店などでも現金での決済をお断りしている店舗も目立ってきている。

画像出典:http://www.ebrun.com/20170217/215941.shtml

<参考>

【中国】Alipayは実店舗や路面店舗を持つ法人向けにQRコード発行を開始

 

前述した中国の2大モバイル決済のAlipayは、TaobaoやTmallといったECサイトを運営するAlibabaグループが提供している。一方、WeChat Payは、中国版LINEと言われているWeChatが提供している。中国国内ではもともとAlibabaやWeChatの利用者が多いため、AlipayやWeChatPayの利用が急速に浸透。Alipayの場合だと、Alibabaのアカウントをすでに持っている人がほとんどであり、WeChatPayの場合、連絡手段としてすでにWeChatアプリをダウンロードしている人が多く、WeChatアプリに既存サービスとしてWeChatPayが入っているため、面倒な作業が少なく、気軽に始められたようだ。

中国でモバイル決済が主流となる前は、銀聯カード(Union Pay)というクレジットカードがほとんどのシェアを占めていた。しかし、モバイル決済が広まりAlipayやWeChatPayがその座を奪う。対抗するように銀聯カードもモバイル決済に踏み切ったが、QRコードではなくNFC(Near Field Communication)決済のため、AlipayやWeChatPayの手軽さにはかなわない部分があるようだ。中国に電子決済の既存インフラが存在していなかったという面も、モバイル決済がここまで広まった理由の1つと考えられる。今後中国のモバイル決済市場がどのように展開していくのか、期待が高まるところである。

 

<参考>

【中国】モバイルペイメント市場、2018年Tenpay(財付通)はAlipayを超える見込み

 

 

シェアサイクリング

 

中国ではここ1~2年、シェアサイクリングが爆発的に浸透。

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オレンジ色の車体の「Mobike(摩拝単車)」は、GPS機能とQRコードを利用し、その便利さから人気を博している。車体に通信チップがついており、スマートフォンの専用アプリからGPS機能を利用して自転車の場所を特定。自分のいる近くのところにある自転車を探して、利用することができるのだ。自転車を自分の好きなところから利用でき、好きなところで乗り捨てることができるという非常に便利なサービスである。

自転車を利用する際、QRコードが使用される。車体についているQRコードを読み取ることによって自転車の鍵が解除され、鍵を閉めることによって返却されたということになる。鍵を閉めたという情報により自動的に決済が行われるという仕組みなのだ。自分の都合に併せて自転車を簡単に利用できるという、素晴らしい仕組みだ。また、利用を開始する際、会員登録と同時にデポジットも支払うが、AlipayやWeChat Payを利用するため、デポジットの返却も簡単だ。15分以内に乗るのならアプリから自転車を予約することも可能だ。

画像出典:https://www.hksilicon.com/articles/1173722

このように便利なシェアサイクリングの制度だが、詐欺被害や不法投棄も起きている。車体に貼られているQRコードの上から別のQRコードを貼る詐欺や、運河に投棄されるなどの問題がここにきて多発。対策が待たれるところだ。

 

 

自動販売機

 

中国では治安や偽札といった面で日本に比べ自動販売機自体が少なかった。しかし、QRコードを使った電子決済を自動販売機でも活用することにより、自動販売機の数も増加。そのような背景から多くの自動販売機ではQRコードが実装されるようになっている。日本とは異なり、交通機関ICカード(Suicaなど)での購入ができないため、それの代わりにQRコードが日常的に使われていると考えるとわかりやすいだろう。

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画像出典:http://japanese.engadget.com/2016/07/31/qr/

自動販売機といっても飲み物だけではない。例えば試供品も自動販売機から手に入れることができる。日本では道端で配っている試供品だが、中国では自動販売機の中にあり、QRコードから会社のホームページに飛び、情報を入力することで手に入れることができる。会社は顧客情報を集められ、人件費も削減になるという一石二鳥の活用方法も浸透してきている。

 

 

無人コンビニ

 

中国では、6月に上海で営業が開始されたQRコードを利用した無人コンビニが話題となっている。

画像出典:http://www.iheima.com/zixun/2017/0703/163898.shtml

<参考>

【中国】上海で営業開始の24時間無人コンビニは上々の滑り出し

 

フランスのスーパーマーケット会社、Auchanが開始したBingo Boxという24時間営業の無人コンビニ。2016年8月に1号店を広東省中山市に出店し、2017年6月には上海に出店した。面積は12.48平方メートルと15.6平方メートルの2つがあり、通常のコンビニより小さいサイズとなっている。大型の自動販売機といった感じだ。

利用方法は非常に簡単である。通常、扉には鍵がかかっているため、まずWeChatを使い、扉の横についているQRコードで購入者を認証、カメラによる顔認証で本人確認を行うことで入店することができる。店内にある好きな商品を読み取り機で一括読み取りをするとQRコードが表示され、WeChat PayやAlipayを使って購入する。その際扉も解除され、買い物終了、といった流れだ。何も商品を購入しなかった場合は扉にあるQRコードを読み取ることで外に出ることができる。

商品は通常のコンビニと同じようなものを売っており、店員は掃除と品だしの仕事のみ。そのため1人の店員で10店舗の管理が可能だという。大幅な人件費削減となることは間違いない。また、無人となると万引きの被害が多そうに思われるが、商品を購入せずに外へ出ようとした場合、センサーやカメラで認識し、入店時に確認したWeChatのアカウント情報があるため、万引きで逃れることはできないという。また、QRコード決済のためレジからお金を盗むことも不可能。お店を壊して商品を盗み出したところで、コンビニで売っている商品であるためリスクを犯してまで盗むほどの価値はなく、万引き被害はないそうだ。

スウェーデンでは、移動式カフェを運営するWheelysが、Moby Martという移動式24時間営業無人コンビニを開発している。合同研究をした合肥大学で試験営業を行った。利用方法はBingo Boxと似ており、違う点は、移動式のため専用アプリケーションで近くのMoby Martを探すという点が挙げられる。Moby Martは、ホログラムのコンシェルジュが存在していたり、ドローンを装備していたり、太陽光発電によって動いたりと、まさにSFの世界ここにあり、といった外装をしており、実際に利用できるようになった場合話題となることは間違いなさそうだ。moby-mart

無人コンビニというと、Amazonの発表したAmazon Goが思い浮かぶが、中国ではQRコード利用が広まっていたため、無人コンビニを利用まで持って行く土台が完成していたと言えるだろう。無人コンビニは、今後近所にスーパーやコンビニのない住宅地を販売場所にすることで急な買い物に対応する予定だ。買い物をするために遠くまで行かなければならない買い物難民を救う手段となりそうだ。また、ネット通販に流れてしまうところを、いかに取り込むかがポイントとなるだろう。

 

<参考>

【米国】次世代型リアル店舗Amazon Goをシアトルにコンセプトストア - 会計不要の食料品販売で小売業に衝撃

 

 

中国でのQRコードの浸透と課題

 

QRコードが生活のあらゆる場面に登場している中国。ここで紹介した以外にも多くの活用事例がある。ゲームセンターの両替機もQRコードによる電子決済化されており、スマートフォンをかざすことで両替後のコインが出てくるといった例。また、街中のQRコードを読み取ることで特典クーポンがもらえたり、試食が無料になったりする、チラシや商品券として出回っていたものの電子化などの例も多い。そのため中国では、最早お財布を忘れることへの不安より、モバイル端末の電源が切れることへの不安の方が大きいという。また、QRコードの利用は、便利というだけでなく、購入履歴が自動的に電子化されるため、家計簿がデータ的に作成されることと同様になるという利点もあるようだ。

このように非常に便利なQRコードだが、問題点もある。1つ目は、詐欺やウイルスに巻き込まれやすいという点だ。シェアサイクリングでも触れたように、QRコードの上から詐欺サイトへ繋がるQRコードを貼ることでお金を巻き上げるといった被害がある。また、中国では街中にWechatが提供するものをはじめ、多くのフリーWi-Fiスポットがあり、カフェや飲食店といった場所でも日常的に利用されている。フリーWi-Fiを利用する際にもQRコードが使われており、QRコードを読み取ることで暗証番号が入力されたことと同様となる仕組みだ。このようにWi-Fi利用にも便利なQRコードだが、ウイルスに感染してしまうリスクも大きい。間違ったWi-Fiを登録してしまった場合、モバイル端末の中にある情報が流出するといった被害が出ているという。QRコードは目で見て正しいか正しくないかがわからないため、判断が難しいという欠点がある。

2つ目は、QRコード決済は電子化されているため、現金とは異なりどれくらい利用したかが実感しにくく、現金の時よりもお金を多く使ってしまうという点だ。中国ではQRコードを使った“物乞い”も増えてきており、利用しなかったケースに比べてQRコードを利用することでより多くのお金を集められるという。このような例からも読み取れるように、モバイル決済では財布の紐が緩みがちになると言われており、現金の時と同様に自分がどれくらいお金を使っているのかしっかりと認識して利用する必要がありそうだ。

 

日本では普及しなかったQRコードだが、中国では生活インフラの重要な接点として今も存在感を高めている。QRコード利用にまつわる問題点も多いが、それを越える利便性が企業側にもユーザー側にもあるということだろう。企業側は本人認証や決済を一気に済ませることができ、ユーザー側も面倒な入力は一切行うことなく認証が済む点が大きいのだろう。日本では交通系ICカードをはじめとするNFCが主流となっているが双方にメリット・デメリットが存在する。QRコードは読み取り端末が店頭側などに不要なため、自転車など電源の供給が不可能で、大量に設置が必要なものへの適用が容易だ。また、カードを持ち歩く必要もない。一方でNFCでは端末が必要であることから詐欺などは起こりにくく安全性が高いといえよう。安全性を担保したうえで、どのように利便性を高めていくことができるのか、QRコードの今後の進化はそこにかかっているのではないだろうか。