アメリカ大手ECサイトAmazonは2016年12月5日(月)、コンビニの試験店「Amazon Go」を発表した。これはモバイルeコマース、機械学習、コンピュータービジョンを用い、「会計不要の買い物」を可能にしたサービスだ。シアトルにあるこの167平方メートルのコンセプトストアは、自動走行車の概念と同じ「Just Walk Out」技術が用いられている。

客は入店時にAmazon Goアプリを起動して入り口でスキャンし、店内の棚から商品を選ぶ。手に取った商品は全てバーチャルの買い物かごに入れられ、不要になっても商品を棚に戻せば自動的にかごから削除される仕組み。

買い物を終えたら、ただ店を出るだけ。自動的にスキャンされた商品の会計はAmazonのアカウントへ請求され、レシートはスマートフォンに送られる。

 

店内で販売される惣菜は、店内の厨房でシェフが調理したり地元のレストランやパン屋から届けられたりしたもの。パンや牛乳、チーズや菓子、メジャーな商品から高級品まで、幅広い品揃え。約30分で調理できる2人分の材料が入った食材のセット「Amazon Meal Kits」も用意されている。

 

自動走行技術

Amazonによると、Amazon Goには画像解析技術のコンピュータービジョン、反復することでデータを蓄積する機械学習のディープラーニングアルゴリズム、複数のセンサーから得た情報を統合的に処理するセンサーフュージョンの技術を組み合わせており、その一部は自動走行車に用いられる技術と同じとの事。

「複数の販路を組み合わせるいわゆる“マルチチャンネル環境”には利点がある。Amazonは新しい技術を使い続々と小売店を出店するだろう」と米国情報技術調査会社Gartner社の小売消費財調査部門アジェンダマネージャーのRobert Hetu氏はコメントしている。

 

今のところはまだAmazonがどのようにこのコンセプトストアを発展させていくかは分かっていない。セブンイレブンのようにガソリンスタンドの中に設置するかもしれないし、ショッピングモールや市役所の中に設置するかもしれない。事前に商品をオンラインで予約して、来店時は選んでいた商品をピックアップするだけという事前オンライン予約注文を始めるかどうかも定かではない。

先端技術調査会社Tirias Research社の主任アナリストJim McGregor氏によると、Amazonは店内での買い物とオンライン予約注文のピックアップの両方をテスト中とのこと。2017年中には一般の利用を開始する見通しだ。

 

Amazonの業績

Amazonはこの新技術によってコンビニ業界を少なからず変革していく。Webサービス会社Dynatrace社の営業技術部長David Jones氏は、Amazonやeコマース新興企業はこれらの技術の利用を、老舗食料品店にもアプローチしているという。

「オンライン食料品配達会社の台頭や、Walmartが食料品のオンライン発注を始めたのも、このサービスの市場が確かに存在していることを示す。これが競争市場になるのは明らかだ。ハイパーマーケットチェーンのMeijer、オーガニックスーパーTrader Joe’sや大手スーパーマーケットStop and Shopなどは、業界平均が5.3秒に対し最速の3.2秒を下回るオンライン経験を提供している」とJones氏は続ける。

ITコンサルティング会社Enderle Groupの主任アナリストRob Enderleは、「セブンイレブンの便利さとWalmartの品揃えの良さを併せ持つAmazon Goの概念は、小売業にとって大きな脅威。オンプレミス(自社運用、店内販売)である小売業を、オンラインと融合したこのサービスは、小売業の『破壊』を意味する」と言及。「ヴァーチャルリアリティーとMR(複合現実感)の技術進歩により、商品の幅は食料品から車、ついには家にまでも広がっている」と加える。

 

Amazomは自動車メーカーと共同でこの技術を乗用車のオートメーション化に役立てている。共同作業は2016年初頭から音声操作システムFord Sync搭載の車で始められ、人工知能スピーカーのAmazon Echo とアプリの Winkを使ってホームディバイスと車を結びつけ、照明を消したり、ガレージの扉を開けたり、セキュリティ装置の操作をしたりといったことを可能にしている。

 

Amazonの広報担当者Lori Richter 氏は、Amazonがどの技術を自動走行車に採用したのか、また試験店のオンライン購入をテストしているのか、という噂や推測に対してはコメントを控えている。

 

 

※当記事は米国メディア「E-Commerce Times」の12/6公開の記事を翻訳・補足したものです。