B2B企業が直面する最大の課題の一つは、急速に進化するテクノロジーに対応することである。
人工知能(AI)の統合やパーソナライズされた顧客体験の提供、SKU(Stock Keeping Unit、在庫管理単位)の追加、新規市場への進出など、進歩を遂げるには、迅速な拡張性や柔軟性を備えていないテクノロジースタックへの対応が必要である。
そこで登場するのが、デジタルコマースプラットフォーム企業Sprykerである。同社のコンポーザブル・コマース(複数の最新技術やサービスを組み合わせて統合システムを構築する、新しいECシステム開発アプローチ)のテクノロジーは、企業にスピード、スケーラビリティ(拡張性)、そして適応性を提供し、時代遅れのシステムを再構築することなく、時代の変化に対応できるよう支援する。
リコーやSiemens(ドイツの電機メーカー)、Aldi(ドイツのディスカウントスーパー大手)などの企業は、Sprykerを活用してコマースの将来性を確保している。Sprykerの共同創業者兼共同CEOであるAlex Graf氏は、B2B企業のCIO(最高情報責任者)が頭を悩ませる課題への対応に精通しており、革新的なブランドにおけるコマース戦略の見直しを支援している。
「CIOは、ビジネスへの影響度に基づいて上位10項目の優先事項をランク付けし、特に売上の増加、利益率の向上、または納期短縮を促進する取り組みに焦点を当てるべきだ」と、同氏は語る。
限られた予算の中で、CIOは戦略的かつ選択的に行動し、プラットフォーム全体の刷新ではなく、すぐに価値を提供するコンポーネントを選択する必要があると、同氏は付け加える。
ERPのアップグレードは、CIOの選択肢を狭めている
Graf氏は、エンタープライズ・リソース・プランニング(ERP)のアップグレードを、最も一般的な課題の一つとして捉えている。フロントエンド業務とバックオフィスのプロセスを効率化、自動化、管理することは、最終的に小売業者が利益を向上させるのに役立つ。
同氏は、アップグレードが顧客に目に見える利益をもたらさずに、リソースの90%を消費してしまうことがよくあると明かす。そのため、eコマースプラットフォームのさらなる開発に使えるリソースはわずか10%しか残らない。
その結果、CIOには限られた選択肢しか残されない。プロジェクトの範囲を50~70%縮小するか、シンプルなSaaSプラットフォーム(クラウド上で提供される業務用ソフトウェアの基盤)を選ぶか、あるいはSprykerが提供するようなプラットフォーム型アプローチに注力するかである。
Graf氏によると、Sprykerの選択肢はデジタル変革の複雑さを解消するものであり、迅速な導入と高速な取引を可能にするプラットフォームであるという。
「デジタルはもはや副次的なプロジェクトではなく、B2B企業にとって必須の要素である。競合他社は、急速にeコマースを導入している」と、同氏は指摘する。
コンポーザブル設計がカスタマイズ可能なコマースパスを実現
Sprykerの究極的な目標は、顧客企業のコマースプラットフォームを将来にわたって使い続けられるようにすることである。同社のコンポーザブルアーキテクチャはフロントエンドとバックエンドの分離を含み、大規模な変革課題をより小規模で、管理しやすいプロジェクトに分割することを可能にする。
このプラットフォームは、従来のシステムとは大きく異なる。モジュール式の設計により、ユーザーは現在のニーズに応じてモジュールを選択し、後から追加する事も可能である。
Graf氏は、大規模なプロジェクトを小規模で、取り組みやすい課題に分割することで、顧客にとってより管理しやすいものにすることの重要性を強調する。こうした機能は、Sprykerのプラットフォームに組み込まれている。
ソフトウェアを将来にわたって使い続けられるようにする責任は、ユーザーにある。Sprykerはユーザー企業の将来のニーズを定義するものではない。同社のプラットフォームは、導入する企業が現在の立場を確立できるよう支援するものである。
「すべての企業は、自らの将来を明確にする必要がある。それはB2BショップからB2Cスタイルの環境への移行、マーケットプレイスへの参入、あるいはマーケットプレイスでの販売を目指すことかもしれない」と、同氏は説明する。
予算圧力がCIOのコマース戦略を浮き彫りに
Sprykerは、顧客がすべての小売チャネルを利用できるようにするプラットフォームを開発している。現在のような環境下では、効果がある唯一の戦略は迅速な導入だけであるため、顧客は今すぐ決断する必要はない、とGraf氏は指摘する。
「市場環境の変化や顧客・競合他社の行動変化が生じた場合、より迅速に適応する企業が生き残る。それがまさに私たちが注力している点なのだ」と、同氏。
B2B企業のCIOが直面する共通の課題は、既存のeコマースインフラの管理である。多くのCIOは予算不足に陥っている。Graf氏は、彼らのジレンマを次のように要約する。
「私はa、b、c、d、eを提供するプラットフォームが必要だが、支払える金額は20万ドルか50万ドルだけだ。既成のSaaSプラットフォームを選択した場合、コードに変更を加えることはできない」。
より良い解決策として、同氏はSprykerが提案するアプローチを挙げる。このアプローチは、良質なデータ、新しいビジネスモデル、収益源、より高速なパフォーマンス、そしてより迅速なトランザクションに重点を置いている。
SprykerがB2B向けセルフサービスツールをリリース
Sprykerは8月4日、B2B企業が販売後の業務を効率化し、サポートコストを削減し、顧客に購入プロセスの主導権を与えることを目的とした、重要な製品追加を発表した。
同社の「セルフサービスポータル」には、注文や請求書をリアルタイムで確認できる24時間365日利用可能なアカウントダッシュボード機能が搭載されている。また、サービスに関する問い合わせ、クレーム、デジタル資産の管理ツールも提供される。チェックアウト後の注文変更機能により、柔軟かつエラーのない調整が可能となる。
Gartner(IT分野を中心としたリサーチ・アドバイザリ企業)の調査によると、B2Bバイヤーの75%がセルフサービス型の購入体験を好むと回答しているという。また、McKinsey(経営戦略コンサルティングファーム)の報告書から、サプライヤーを変更した人の54%が、デジタル顧客体験の質の低さを理由に挙げていることが明らかになった。
Sprykerによると、分断されたシステム、手作業、 そして硬直化したプロセスにより、効率的なセルフサービスを導入していない企業は、高まるB2B顧客の期待に応えることが困難になっているという。
「この新しいサービスは、B2B における最大の課題の一つ、『断片化されたシステムやャネルを通じて継続的に顧客とのやり取りを管理することの複雑さ』に真正面から取り組むものである」と、Sprykerのもう一人の共同創業者兼共同CEOであるBoris Lokschin氏は語る。
「B2Bバイヤーがセルフサービスでの購買にますます慣れてきている今こそ、企業は先手を打つべき時だ」と、同氏。
Lokschin氏は、Sprykerのクライアントはより迅速で、高品質、低コストのサービスを顧客に提供したいと考えていると指摘する。この製品は、従来は手作業で行われていた手間のかかるプロセスを、効率的でセルフサービス型の体験に変えることで、こうしたニーズに応えている。
※当記事は米国メディア「E-commerce Times」の8/7公開の記事を翻訳・補足したものです。