【2024年最新版】BtoBの企業間取引をオンライン化することが出来る全22のECシステム徹底比較
普段生活をしているとなかなか馴染みが無いBtoBの領域だが、経済産業省が公表している国内電子商取引市場規模によると、2022年のBtoB ECの市場規模は、前年から12.8%増の420.2兆円。一方、一般的に馴染みのあるBtoC ECの市場規模は、前年から9.91%増の22.7兆円となっており、実はBtoB ECの方がBtoC ECと比べて18倍以上の市場規模があることが分かる。コロナ禍が収束し、新たなフェーズを迎えているEC市場だが、物販系分野の市場規模、そしてEC化率はいずれも増加傾向にあり、ECは今もなお進展を続けるホットな業界といえるだろう。本記事は、BtoBの企業間取引をオンライン化することが出来る全22のECシステムをピックアップし、それぞれの特徴やサービスの選び方について考えていくeccLabの特集企画となる。
BtoB EC化により目指すべき姿
BtoB ECは、BtoC ECの「販路拡大」という意義だけでなく「業務の効率化」という面でのメリットも大きいと考える企業が多い。従来の人的対応で行っていた電話やFAXでの受注・内容確認・基幹システム登録などのルーティン業務を、Webから取引先からの受注と言う形で24時間いつでも対応できる上、カタログや注文履歴から商品を選択して発注できるので、人的ミスも防ぐことができる。また、BtoB特有の商習慣にも対応できるシステムが増えてきているため、大抵の企業の人的対応はオンライン化が可能なところまできていると考えていいだろう。あらゆる業務領域がシステムに置き換わっているトレンドの中で、今後もBtoBの企業間取引のオンライン化は進み、受発注の自動化を起点とした取引業務全般の効率化が図られていく可能性は高いのではないだろうか。
BtoB ECに関わる用語の定義
ここではまず、BtoB ECに関わる用語の解説から行っていこう。
BtoB
そもそもBtoBとは、Business to Businessの略である。B2Bと表記されることもある。主に、消費者個人(to Consumer)ではなく企業(to Business)を相手に取引を行うことを指すキーワードだ。また、そのような商取引を中心に事業展開を行う企業をBtoB企業と呼ぶ。中小企業を中心に多くの法人を顧客に抱えるオフィス用品通販会社・アスクルや、機械部品を大量に取り扱うミスミなどがその代表的な例である。
BtoC
BtoBの対比語とされているのが、このBtoCというBusiness to Consumerを意味するキーワードだ。こちらは企業が一般の消費者向けにビジネスを行う形態を指す。国内で認知度が高いECサイトとして挙げられる、Amazonや楽天市場などは主なターゲットを消費者に設定しているという前提があるためこの形態の事業を行っていると考えることが出来る。
BtoBtoC
この2つの意味が理解できるとこのキーワードも推測できるようになってくると思うが、BtoBtoCは、「個人消費者を対象に商売を行う企業(BtoC企業)を支援するビジネス」であり、Business to Business to Consumerの略である。B2B2Cと表記されることもある。主な例として挙げられるのは、製菓メーカーとコンビニエンスストアやスーパーマーケットの関係である。製菓メーカーとエンドユーザーである消費者の間にコンビニエンスストアなどが入り、より消費者の手に製品が届きやすくなるように支援しているという形態だ。
ECシステム(カートシステム)
ECサイトでモノを購入/注文するとき、注文処理を担うソフトウェアのことを当記事ではECシステムと言っている。一般的にはカートシステム、カートサービスなどと呼ばれることも多く一定の呼称はない。機能的には、顧客、受注、商品といった情報を管理し、利用者向けのフロントエンド(サイト)と、管理者向けのバックエンド(管理画面)が提供される形態のソフトウェア(アプリケーション)のことを指す。
ASP・クラウド・パッケージ
ECシステムは、大きく分けて、ASP型/クラウド型とパッケージ型のものがあり、それぞれのメリットデメリットがある。カスタマイズがしやすいのはパッケージ型であり、独特の商慣習がある業界では、カスタマイズが必要になるケースがあるが、その分費用が高くなる場合が多い。ASP型/クラウド型は、ソフトウェア自体が、一定期間間隔でバージョンアップされ、利用している全社が追加された新機能を利用できる。小規模に開始したいという場合は、費用も安く導入しやすいというメリットがあるが、独自のカスタマイズがしにくいケースが多い。昨今では、カスタマイズのできるASP版も出てきている。
ASP型
ASP型とは、アプリケーション・サービス・プロバイダーの略。アプリケーションをサービスの形で提供するもので、クラウド型のサービスに比べて、やや低価格なものが多い。また、インフラ部分を、複数の利用者でシェアすることで費用を抑えていると考えても良い。最小限のスペック、スタンダードスペック、ハイスペックといった中から選べるケースが多く、自分たちに合ったサイズで利用できるため、費用を安く定額で利用したい企業に向いていると言える。ただし、事業が成長して拡大していくにつれて、機能や性能に不満を感じるケースがあり、ASPのハイスペックでも不足する場合は、クラウド型への切り替えをおススメする。
クラウド型
最近よく耳にするクラウド型のカートシステムとは、システム基盤であるサーバなどのインフラ部分を「所有する」のではなく、必要なスペックだけを「契約して利用する」もので、その上で稼働するアプリケーションとセットで提供されるサービスのことである。性能が足りなければ、追加スケールアップさせることができるので、成長に合わせて無駄なく利用することができる形態のサービスだ。また、アプリケーション自体のアップグレードやカスタマイズもし易いことが特徴だ。ただし違いがあると書きつつも、昨今ではクラウドとASPの区別がつきにくくなってきているのも事実だ。ASPの中でも、インフラ環境を拡張していけるものも出てきている上、カスタマイズが可能なサービスもあるからだ。
パッケージ型
パッケージ型とは、自社の必要とするスペックでインフラを用意し、その上で、基本的な機能を有したパッケージが稼働し、さらに自社の要望に合った形で機能をカスタマイズし拡張することが可能な、いわば所有型のサービスである(ASPやクラウド型は「利用型」)。そのため、自由度が高いという点が一番の特徴となる。
これまで、パッケージ型を利用し、自社ですべてのインフラ環境などを用意していたとしても、急激なアクセス負荷に耐えられない際に、スペックやサーバをすぐに拡張することがし難かったことから、環境をクラウドに移行するケースが増えてきている。そのため、パッケージ型とクラウド型のサービス形態の差はほとんどなくなりつつあると言っても良い。利用料金の課金体系の違いもあると言えるが、最終的には、3つのサービスとも、同じような形態で提供される方向になっていくのではないだろうか。
<参考>
BtoB ECシステムの強み、活用方法と注意点
強み
モノを売るのだから、BtoC向けのECシステムもBtoB向けのECシステムも大きな違いは無い、と考えがちだが、実際にはこの2つのシステムは根本的に大きな違いが存在する。そのため、BtoC向けのECシステムは基本的にはBtoB向けのビジネスには使えないと考えた方が良いだろう。
逆を言えば、BtoB向けのECシステムは、BtoBビジネスにおける特殊な商習慣を理解した基本機能が揃っているため、BtoB向けのビジネスを展開している事業者にとっては心強い。
プラットフォームの決め方
BtoB向けのECシステムにも、パッケージ型、クラウド型、ASP型と、様々なサービス形態のECシステムが存在している。
大規模事業者は、セキュリティ基準が厳しく、クラウド上のサービス利用に厳しい制限があるケースも多く、自由度が高いECサイト構築パッケージを選択する場合が多いと考えられる。しかし、そのような制約の無い事業者であれば、このクラウド型EC構築パッケージが有力な選択肢となってくる。
一方、中小規模事業者は低コストからスタートできるASPカートを検討するのが良いだろう。初期からクラウドなどでのECサイト展開もありだが、費用対効果が見合うまで5年以上の期間を要することが多く、タイミングに見合ったプラットフォームを使用する方が事業としても軌道に乗りやすい。
注意点
自社が取引のデジタル化を推進し、ECシステムを導入しても、取引先が旧来のFAXや電話での取引から脱却できない場合には、結局ECシステムは一部の取引先との取引にしか使えない状態となってしまう。そのような場合には従来の業務と、新しいECシステムを介した業務の両方を行わなければならず、負担が増えることになる。ECシステムを導入する際には、しっかりと事前に既存の取引先のどの程度がオンラインでの取引に切り替えてもらえそうか確認する必要があるだろう。
BtoBの企業間取引をオンライン化することが出来るECシステムの比較
BtoBの企業間取引のオンライン化の流れの中で、多くの独自の商習慣をシステムで取り込んだり、柔軟性で対応するサービスが増えてきている。そんな中、市場にはBtoBの企業間取引をオンライン化することが出来るECシステムが22も存在している。また、システムの提供形態もASP、パッケージ、クラウドなど様々な形態での提供が行われており、なかなかそれぞれのサービスの違いや特徴が分かりにくいのも事実だ。
そこで、ここではeccLabオリジナルの、全22サービスの価格・特徴などを網羅的に一覧化した「サービス概要の一覧比較」ファイルと、全サービスを2軸でマッピングした「サービスマッピング」ファイルの2種類を用いて、どのような特徴があるのかを説明していく。
サービス概要の一覧比較
おすすめポイント
- BtoBの企業間取引をオンライン化することが出来るECシステムを全て網羅
- 全サービスを価格、機能などの項目毎に比較
- エクセルでの提供のため、並び替えや項目の削除などカスタマイズが可能
サービスマッピング
おすすめポイント
- 2軸でマッピングしサービスの特徴把握が可能(※eccLab編集部独自の判断による)
- 全サービスを一目で把握
※サービス概要の一覧比較資料(エクセル版)とサービスマッピング資料(高解像度PDF版)のダウンロードはこちらから行えます。
比較資料をダウンロード
BtoBの企業間取引をオンライン化することが出来るECシステムを比較してみると
一概にBtoB ECサービスの導入と言っても、事業規模や導入プロセスの多寡などで向いているサービスは異なってくる。制限はあるが初期費用・月額費用ともに0円から導入できるものや、初期費用・月額費用が固定額のサービスのほか、完全従量課金制や売上高に比して費用を計算するものもあるため、事前の下調べが重要だ。また標準機能だけでなく、サービスを導入した後のバックアップ体制の厚さも重要となる。「なんだか、思っていたものと違う」という事態を防ぐためにも、事前のサービス比較はしっかりと行おう。
BtoBECサイト構築のサービス探しにお困りの方は
eccLabサービスマッチングでは、コンシェルジュが直接EC事業者様の課題や希望のサービスのヒアリングを行う「コンシェルジュマッチング」と、現状を細かくテンプレートに入力いただきシステム上で最適なサービスをご紹介する「AIマッチング」の2種類の手法で、あなたに最適なサービス探しのご支援をします。詳しくはこちらから。
BtoBの企業間取引をオンライン化することが出来る各サービスの紹介
それでは、BtoBの企業間取引をオンライン化することが出来る代表的なECシステムを見ていこう。
アラジンEC
株式会社アイル
株式会社アイルが提供しているアラジンECは、同社が提供している基幹システムのユーザーの声から生まれたBtoBに特化したEC・Web受発注システムである。5,000社以上のBtoBノウハウを持ち、企業毎に合わせた課題分析・解決案の提案、BtoB専用に開発された使いやすいシステム、業界特有の商習慣や、独自の取引方法・ニーズに合わせた柔軟なカスタマイズ、様々な基幹システムとのスムーズな連携を得意としている。また、上記の強みに加え、サポート体制も整っており、設計を担当するSEや、カスタマイズ部分の開発を担当するプログラマーなど、企業ごとに専用のチーム体制を構築している。利用している企業としては、アパレル・ファッション、食品、建築資材、医療機器等、幅広い業種に導入されており、コストを抑えつつ、業務改善に興味がある方は、ぜひ相談してみてほしい。
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Commerce21 Sell-Side Solution
株式会社コマースニジュウイチ
株式会社コマースニジュウイチのECパッケージCommerce21 Sell-Side Solutionは、国内大手大規模ECへのシステム導入社数が累計300社を超えているが、大規模のみならず、さまざまな業態の企業から利用されている。また、コマース21独自の強みとしては、「顧客体験価値の高めることにより、消費者をロイヤルカスタマー化し、LTV向上の循環を生み出すこと」で、データの蓄積・利活用・バリューチェーン構築等を通じて、クライアントの事業成長に貢献している。さらに、消費者のロイヤルカスタマー化実現に向けたサポートもあり、企業専属の技術コンサルティングが、初期要件定義から運用保守までワンストップで対応を行う。このワンストップを遂行するためにも「ウォーターフォールとアジャイル開発の適時適用」、「電子商取引実績No.1の先端クラウドawsとの取り組み」など技術面においても実現できるような環境が整っている。現在、商材の価格や機能だけで差別化することが難しくなっており、企業は最上位の顧客層「ロイヤルカスタマー」をいかに育成できるかが鍵となっている。そのような状況下で、自社での「ロイヤルカスタマー化」を望んでいる事業者は一度導入を検討してみるといいのかもしれない。
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Bカート
株式会社Dai
株式会社Daiが運営するBカートは、BtoBの受発注業務をEC化するクラウドサービスである。また、BtoB専用のため、複雑な取引条件やシステム要件にも対応していることに加え、システムのスクラッチ開発・カスタマイズではネックとなる開発コストや納期といったリスクも、SaaSのため最小に抑えられるのも特徴だ。さらに、Bカートは1,500社を超える豊富な導入実績のあるサービスで、企業の規模感や、業種問わず様々な事例やインタビューも多数公開している。費用面では、他社のカートの多くが見積価格となっている中で、初期費用が全プラン共通80,000円、月額費用が9,800円からと明記されており、予算に応じて小さなプランから始め、状況に応じてプランアップしていくことができる。いきなり導入するのに抵抗がある人は、30日間の無料トライアルを試して、納得してから始められるため、中堅・中小企業がBtoB ECをスモールスタートするには非常に向いているだろう。
楽楽B2B
株式会社ネットショップ支援室
株式会社ネットショップ支援室が運営する楽楽B2Bは、従来のアナログ業務からの脱却を支援する、BtoB向けのECカート(Web受発注自動化システム)である。FAXや注文用紙などをコピー機でスキャンするだけでPCに取り込めるのが特徴で、電話やFAXでのやり取りを減らしたくても減らせない企業において利便性の高いものとなっている。また、取引先毎に掛け率・価格の設定も可能で、「差し値(指定金額)」「掛け率」での設定に加え、「ロット単位での割り引きを加味した設定」にも対応している。さらに、素早い導入が可能で、取引先の環境に左右されず社内の手入力作業を削減でき、ERP、WMSなど既に利用されている基幹システムとの連携もできるため、DX化を低コストで実現できるソリューションだといえる。
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その他サービス
BtoBの企業間取引をオンライン化することが出来る各サービスの選び方
それでは22もあるBtoBの企業間取引をオンライン化することが出来るECシステムをどのように選んでいけばいいだろうか。選ぶ際に気を付けるべきポイントを考えていく。
コスト(初期費用/月額基本料)
クラウド型のシステムであれば、初期費用と月額費用で基本的に運用のできる機能を利用可能だ。ただし、それ以外にかかる費用があったりするケースもあるので、利用したい機能が全て含まれるのかどうかと合わせて、どのような料金体系になっているのかは必ず確認しておきたい。また、その総額が、自社の売上規模に見合った料金なのかもしっかりシミュレーションしていく必要がある。また、パッケージ型のシステムであれば、初期開発費用と月額保守費用がかかってくる上、今後、カスタマイズをしていくことでその保守費用がかかってくるので、よく検討しておきたい。
標準機能/カスタマイズ性(柔軟性)
今回ピックアップしているシステムは、基本的にはオプションや、モジュールの追加という形での機能追加ができる。そして、パッケージ型であれば、基本的にはカスタマイズできることが前提になっている。重要なのは各業界特有の商習慣に対応するために必要なカスタマイズ機能だ。システムによってはDB構造などの限界によってそもそも対応が出来ないケースなどもあるため、自分たちの考える形に柔軟に対応していけるシステムなのか、要件定義時には明確には分からないかもしれないが、サービス提供側は、経験に基づき、判断できるので、導入検討時点で、しっかりと伝え、相談していくことが大切だ。また、自社のやりたいことに近い導入事例があったかどうかなど、自社の業界に向いているのかどうかについても、しっかりと見極めた上で導入を検討する必要がある。
得意な業界
どのサービスも全ての商材での活用が可能ではあるが、やはりそれぞれ得意な業界と言うものが存在する。導入事例などを確認の上、自社の商材の実績があるのかを確認し、実際のそのサイトを確認してどのような使われ方をしているのかまで確認することをおすすめする。
必要スペック
サービスのDB(データベース)などのインフラに依存する部分となる。実際に影響のある部分としては、登録可能な商品数、商品毎の登録画像数、想定トランザクション数、会員数、同時メール配信件数などだ。また、ピーク時の同時注文件数など気になる部分は事前に確認していく必要がある。クラウド型のシステムの場合は、一般的にはそれらのスペックは変動制となるため気にすることはないが、それ以外の形態の場合は実際の運用をよく調査した上で、しっかりと確認しておきたい。
サポート体制
初めて利用するシステムの場合、困ったときにすぐに質問でき、すぐに解決できるのかどうかも、非常に大事な要素だ。ただどのサービスもサポート体制の充実をサイト上で謳っているため実際のところの判別は極めて難しい。FAQの充実度、問い合わせからのレスポンス時間、回答の的確さなど、実際にそのサービスを利用している知人などの評判を聞いてみるといいかもしれない。
※ここで紹介したサービスの選び方を丁寧に解説した資料のダウンロードはこちらから行えます。
最後の決め手は
数あるBtoB ECシステムを見てきたが、いずれのサービスも非常に高機能で、通常のECサイト運営を行う上ではどれも遜色ないものばかりだ。そのため、上述したようなサービスの選択のポイントも場合によっては大きな決め手にならないケースもあるだろう。そのような場合、サービスの運営を行っている「中の人」の誠意やその相性が、採取的な判断基準になってくるのではないだろうか。初めのうちはサービスの公式Webサイトなどオンライン上での印象に左右されがちだが、導入すると運営の「中の人」との接点というものが出てくる。その担当者との関係性も、ECサイトの売り上げを左右する重要な要素になってくるだろう。
皆さんの企業における目標や、置かれている状況を再度見つめ直し、ベストなBtoB ECシステムに出会い、売り上げをしっかりと作ることが出来る日が来るためのヒントになれば幸いである。