ECをはじめたい!ときの選択肢 - 7つのプラットフォームの特徴を理解しよう

 

ECをはじめたい!今のシステムから変えたい!と思ったとき、色々なシステムやサービスが存在することに改めて気が付くことも多いだろう。 EC業界は身近なように見えて、いざはじめようとすると思った以上に分かりにくいようだ。業種や規模のほか、事業者の置かれている環境によっても、適切なプラットフォームや施策は大きく変わってくる。楽天のようなモールか独自ドメインで運用する自社ECかという違いだけでなく、多種多様なプラットフォームが存在しており、事業者はそれぞれの特徴を理解する必要がある。今回は、7つに大別されるそれぞれのプラットフォームの特徴を見ていきたい。

 

<参考>

楽天と独自ドメインの店舗を運営する際の決定的に違う6つのポイント

 

 

ECプラットフォームとは

 

ECプラットフォームとは、ネットショップの開設・構築のベースとなるソフトウェアやシステムのこと。企業がインターネット上に商品ページを作成・公開し、消費者がそのページを通じて購入した商品の決済処理を行うなど、ネットショップで売買をするために必要なものだ。ECサイトを始める事業者は必ずプラットフォームを選定する必要があるが、種類やサービス数が非常に多い。フルスクラッチやショッピングカートASP、モールなど多くの形態が存在し、それぞれ異なる特徴を持っているので、自社の事業計画に適したサービス選定を心がけよう。

 

<参考>

ネットショップ開業・開店完全マニュアル虎の巻

 

 

フルスクラッチ

 

  • メリット:0から設計するため自由自在なカスタマイズが可能
  • デメリット:費用が非常に高額になる、構築に時間がかかる

フルスクラッチとは、0からシステムを構築する手法のこと。ほぼ何の制約もなく自由にシステムを構築できる柔軟性が大きなメリットであり、送料やポイントなどの細かな機能まで好みに応じて作ることができる。しかし全て自社開発になるので、構築のための費用と期間は膨大にかかる。また既存のシステムを基礎にしていないので、不具合が多くなる可能性がある。そのため原則として、超大規模ECサイト以外がこの方法を採ることはおすすめ出来ない。ASPやオープンソースでできないことをやりたい場合や、多くの投資をかけても効果が期待できる場合にのみとるべき選択肢となる。基本的にはこの後紹介する各プラットフォームも完成度が高く、自由度の高いものも多いため、このパターンを選択するケースは特殊といえよう。なお、フルスクラッチにかかる費用は1千万円~数千万円以上が目安である。

 

 

オープンソース

 

  • メリット:費用が安い、カスタマイズの幅が広い
  • デメリット:高度な知識が必要、セキュリティ対策必須

オープンソースとは、ソースコードを公開して、プラットフォームシステムの開発に色々な人が自由に参加できることで、プラットフォームの機能や品質を高めていく手法。オープンソースの代表格はWordPress。日本でのEC向けの代表格はEC-CUBEである。WordPressもWelCartというカートシステムを連携させることでECサイトの構築が行える。その他にはZen Cart、越境ECに強いLive Commerceなどが国内EC向けにサービスを提供している。オープンソースではサービスの利用料自体は発生しないが、部品をいくつも組み合わせてサイトを構築していくことになるため、こだわればこだわるほど開発費用がかかることとなる。逆に用意されているテンプレートや機能をそのまま使うのであれば、非常に安価に組み立てることが出来る。また、EC-CUBEをベースにオープンソースをある程度組み合わせてパッケージ化したサービスEC-Orangeなども存在し、ここまで来ると後述のEC向けCMSパッケージと大差なくなってくる。オープンソース自体は無料だが構築・運用のコストがかかるため、費用は数十万円~数百万円ほどが目安である。

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CMSパッケージ

 

  • メリット:専門知識がなくても利用可能、カスタマイズの幅が広い
  • デメリット:費用が高額になる、バージョンアップにコストがかかる

ECサイト構築のためのテキストや画像、メルマガなどの運用・設計に関わるコンテンツを体系的にシステムとしたものである。CMSはContents Management Systemの略。国内EC向けのCMSパッケージは、現在シェアも実績もNO1のecbeingコマース21が有名である。大手SIerの富士通 (SNAPEC)やNEC(NeoSarf/DM)も自社製品を持ち、SI Web ShoppingeltexDCも実績が多い。外資CMSパッケージはSAP Commerce Cloud(旧:hybris)Oracle Commerceなどがある。メリットは次に紹介するASPに比べて柔軟性が高く、基本的にはどのような要件でもカスタマイズできるが、デメリットとして他のEC構築サービスに比べると高額になる点が挙げられる。規模が大きくなればそれに合わせた対応策が必要になるので、比較的大規模なECサイト向けといえる。また、CMSパッケージにかかる費用は数百万円~数千万円程度が目安である。

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ショッピングカートASP

 

  • メリット:費用が安い、サポートが充実している
  • デメリット:カスタマイズや連携先が限られている

サービス事業者がビジネス用のアプリケーションソフトをレンタルする仕組みのことである。ショッピングカートと表現されているが、サイト全体をレンタルすることが出来るのが一般的なため、このサービスを使えばECサイトの開店は完結出来る。メリットは導入コストが安く済む点、サポートも充実しており管理が容易である点、費用を節減することができる点である。しかし、カスタマイズがきかないことが多く、自社開発よりは自由度が低くなる。カスタマイズが可能でも作業費が高額になることもある。ただ、futureshopMakeShopショップサーブカラーミーショップなどの上位ASPは驚異的な柔軟性と機能数を誇り、通常のECに求められる機能はおおむね実装しているため、運営上困ることはほぼない。その上、他の上位プラットフォームと比べて開発や運営が1/10程度のコストで済むためROIは非常に高いといえる。また、MakeShopでは大手媒体に商品を自動出品でき集客面のフォローがも可能など、各社において関連サービスも充実してきている。

また、これ以外にも無料で始められるFC2ショッピングカートワイズカートe-shopsカートSCS-Cartなども利用実績が豊富だ。また特化型としては、リピート通販に特化したたまごリピートリピスト、スマホファースト設計でレスポンシブに特化したaishipRなど、それぞれ強みを持つ多様なショッピングカートASPが存在している。ROIを考えると、超巨大ECサイト以外は、選択肢としてまずショッピングカートASPを検討していきたい。なお、ショッピングカートASPにかかる費用は数万円~数十万円程度が目安である。

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モール

 

  • メリット:費用が安い、モール自体の集客力がある
  • デメリット:デザインが限られる、競合が多く集客にコストがかかる

多数のショップが入ったウェブ上の仮想的商店街のことである。モールによるSEO効果などの圧倒的な集客力を期待できるが、それなりの費用もかけなければ集客を見込めない。また競合が増えるため、価格競争に勝つ必要がある。現在は、無料化と自由化を打ち出し店舗数を大きく伸ばしたYahoo!ショッピングと、世界的にも有数のモールであるAmazonの2強。それを楽天が追う展開となっている。気をつけたいのは、Amazonは一般的なモールとイメージが少し違い、出店者側は店舗のデザインをほぼいじれずに、コンテンツだけを提供する形となる点だ。これは、楽天やYahoo!ショッピングよりも自由度が低いというネガティブな捉え方も出来るし、コストをかけずに出店できるというポジティブな捉え方も出来るだろう。

この3強以外にもアパレルに特化したZOZOTOWNau PAY マーケット(旧:au Wowma!)ヤマダモールポンパレモールなども存在している。また、外資系のQoo10もモールといえる。中規模以上の店舗では複数のモールに出店することが一般的になりつつあり、露出を増やすためにモールの数だけ運営管理コストがどんどん増えてきている。なお、モールにかかる費用は数千円~数万円程度が目安。出店料無料のモールもあるが、手数料や集客コストがかかる点は覚えておきたい。

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<参考>

世界を席巻出来るか、中国・日本・韓国のBtoC向け巨大ECモール - 天猫tmall、楽天市場、Gmarket

本気になったYahoo!ショッピングは楽天を超えることが出来るのか

 

 

インスタントEC

 

  • メリット:無料から始められる、専門知識がなくても利用可能
  • デメリット:集客力に乏しく別途集客コストがかかる

無料でオンラインショップを開設できるサービスのことである。ショップを開くための諸経費や月額費用、手数料などが一切かからず手軽に開店できるため、テストマーケティングを望む事業者や、チャリティでECショップを開店したい人に向いている。またデザイン性に優れており、オンリーワン商品を販売する個人事業者にも向いている。一方モールのような集客は見込めないため、各々がブログや実店舗で宣伝をし、独自で販売戦略を立てる必要がある。

以前は先にサービスを開始したStores.jpが最大規模だったが、ここ数年でBASEがStores.jpの店舗数を大きく越え、現在はBASEが過半数のシェアを占めている。Stores.jpの方が手数料は安く済むものの、BASEはデザインの自由度が高く、独自ドメインを設定できるというメリットがある。インスタントECは無料で始められるが、それぞれ拡張機能や有料プランが存在するため、必要に応じてこれらを利用していくことになる。

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<参考>

【2021年最新版】国内のECサイト・ネットショップの総稼働店舗数

Stores.jpでネットショップを開店してみた - その1:無料でどこまで出来るの?

ひしめき合うハンドメイドマーケットEC - 気軽にネットで開店する時代はやってきたのか。Etsy、Creemaに見る未来

Stores.jp・BASE・ZEROSTORE 最近話題の無料出店可能な3モールを徹底比較

 

 

C2Cモール

 

  • メリット:ECサイトを持たず気軽に売買できる
  • デメリット:個人間取引のためトラブルが懸念される

ECサイトにおける消費者間取引のことである。歴史の長いヤフオク!が有名だが、最近スマホのアプリから簡単に出品できるフリマアプリが勢いを増してきた。フリマアプリは中古品やハンドメイド商品などをネット上にフリマ感覚で売ることができ、手軽さがウリだ。圧倒的知名度とユーザー数を誇るmercariやハンドメイドアイテムに特化したminne、Frilと統合した楽天のサービスラクマなど、多彩なサービスが存在する。出品・決済・購入手数料を無料にしているモールも多く、売り上げによっては消費税がかからないため、個人事業者向きである。取引上のトラブルが懸念されるものの、匿名配送が可能などプライバシーに配慮したサービスも増えており、今後も引き続きネット販売の一翼を担いそうだ。なお、C2Cモールは原則として無料で利用することができる。

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<参考>

レッドオーシャンと化したフリマアプリ市場へ参入してきた「ラクマ」は生き残ることができるのか

【徹底解剖】話題のLINE MALLで実際に開店・出品、そして購入を体験してみた

LINE MALL(ラインモール)待望の船出 - グランドオープン時の展開とEC業界に与える影響

フリマアプリで気軽にモノを売る - フリル、メルカリ、STULIOは群雄割拠のC2Cコマースの勝者に成り得るのか

 

 

各プラットフォームがどのような事業に向いているか

 

一般的な企業の場合、まずはショッピングカートASPかモールを検討するのがよいだろう。特徴はそれぞれ異なるが、どちらも少ない初期費用で始めることができ、リスクも比較的低いためだ。フルスクラッチはほとんどの事業や業種をカバーできるが、費用が高額になるので大手企業や超大規模ECサイトのみに限られる。オープンソースはライセンスフリーだが専門知識が必要となるため、人材の豊富な企業がフルスクラッチほどコストをかけずECサイトを構築したい場合に向いている。ただしセキュリティ面には不安が残るので、機密性が問われる商材を扱う事業には不向きかもしれない。CMSパッケージは専門知識がなくても扱えるが比較的高額なため、それなりの予算を出せる大規模ECサイト向けといえるだろう。インスタントECは無料で手軽に始められることもあり、小規模事業者やそのテストマーケティング、または個人事業主に向いている。C2CモールはECサイトを持たない個人事業主に向いているが、別にECサイトを持つ事業者が並行して活用しているケースもあるようだ。

 

 

プラットフォームだけで選びきれない現実

 

ショップの置かれている状況や商材、予算や売上や好みによっても、どのプラットフォームを採用すべきかは異なってくる。またどのプラットフォームを採用しようとも、利益を上げようと思えばかける費用も高くなるため、一概にどのプラットフォームが優れているとはいえない。

 

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例えばモールに出店することはできても、モール内での集客には、それなりの費用をかける必要があるだろう。このため、それぞれのプラットフォームで大差がなくなることもある。ただ、売上があまり高くない段階では、ある程度型が決められたもので出店すべきであり、フルスクラッチで出店するのはかなり危険である。また、ショッピングカートASPの完成度が高いため、パッケージやフルスクッチで作らなくても遜色ないものが桁一つ少ない費用で完成する時代となっているのも事実だ。

さらに一方で、ネットショップの運営はプラットフォームだけでは完結出来ない。物流、CRM、決済、アクセス解析や分析など幅広い関連業務が存在しており、それら業務の効率性や利用しているサービスとの親和性も重要になってくる。

多くのプラットフォームが存在することはいいことではあるが、その反面、出店者・消費者ともに使い分けの難易度は上がってきている。それぞれのショップに合ったプラットフォームを採用すべく、参考にしてほしい。