ECをはじめたい!ときの選択肢 - 9つのプラットフォームの特徴を理解しよう

 

ECをはじめたい!今のシステムから変えたい!と思ったとき、色々なシステムやサービスが存在することに改めて気が付くことも多いだろう。 EC業界は身近なように見えて、いざはじめようとすると思った以上に分かりにくい。業種や規模のほか、事業者の置かれている環境によっても、適切なプラットフォームや施策は大きく変わってくる。楽天のようなモールか独自ドメインで運用する自社ECかという違いだけでなく、多種多様なプラットフォームが存在しており、事業者はそれぞれの特徴を理解する必要がある。今回は、9つに大別されるそれぞれのプラットフォームの特徴を見ていきたい。

 

<参考>

楽天と独自ドメインの店舗を運営する際の決定的に違う6つのポイント

 

 

ECプラットフォームとは

 

ECプラットフォームとは、ネットショップの開設・構築のベースとなるソフトウェアやシステムのこと。企業がインターネット上に商品ページを作成・公開し、消費者がそのページを通じて購入した商品の決済処理を行うなど、ネットショップで売買をするために必要なものだ。ECサイトを始める事業者は必ずプラットフォームを選定する必要があるが、種類やサービス数が非常に多い。フルスクラッチやパッケージ、ASPカート、ECモールなど多くの形態が存在し、それぞれ異なる特徴を持っているので、自社の事業計画に適したサービス選定を心がけよう。

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<参考>

EC業界カオスマップ2023 - ECサイト構築サービス編

ネットショップ開業・開店完全マニュアル虎の巻

 

 

それでは、9つのECプラットフォームについてそれぞれ説明していく。

 

フルスクラッチ

 

  • メリット:0から設計するため自由自在なカスタマイズが可能
  • デメリット:費用が非常に高額になる、構築に時間がかかる

フルスクラッチとは、(後述する各種の)既存のプラットフォームを利用することなく0からシステムを構築する手法のこと。ほぼ何の制約もなく自由にシステムを構築できる柔軟性が大きなメリットだ。特殊な販売形式や、実店舗との連携、バックヤードとの連携をはじめ、送料やポイントなどの細かな機能まで好みに応じて作ることができる。しかし全て自社開発になるので、構築のための費用と期間は膨大にかかる。また既存のシステムを基礎にしていないので、不具合が多くなる可能性がある。そのため原則として、超大規模ECサイト以外がこの方法を採ることはおすすめ出来ない。ECパッケージやクラウド型のサービスでできないことをやりたい場合や、多くの投資をかけても効果が期待できる場合にのみとるべき選択肢となる。基本的にはこの後紹介する各プラットフォームも完成度が高く、自由度の高いものも多いため、このパターンを選択するケースは特殊といえよう。なお、フルスクラッチにかかる費用は数千万円~数億円が目安である。

 

 

ラウドEC(高価版)

 

  • メリット:最新のシステムが利用できる、カスタマイズ性や外部連携に優れる、すでに導入されているシステムとの連携ができる場合がある
  • デメリット:ソースコードの開示はしていない、コストが非常に高い

最近トレンドのクラウドECプラットフォームはその出自によって、高価版と廉価版に大別できる。主に、ERPやSFAを提供している企業が展開しているECサイトの構築・運営をクラウド上で行うプラットフォームがこのクラウドECの高価版だ。

クラウドECプラットフォームはアップデートや追加機能の管理の必要がなく、常に最新のシステムを利用できる。また、この高価版については、すでに導入しているERPやSFAがクラウドECを提供している場合は、情報を一元管理でき、システム連携をしっかり出来るのもメリットである。また、デザインや機能のカスタマイズ性が非常に高いことや外部連携にもほぼ制限がないことが特徴である。一方、カスタマイズ性が高いという点で共通点を持つECパッケージとの違いは、サーバーにインストールする必要があるECパッケージと、クラウド上でシステムを構築することで最新性を担保するクラウド型と言う違いがある。しかし、アップデートの際に共通の機能を更新していくため、カスタマイズしすぎると最新性が失われてしまうというデメリットもある。さらに、ソースコードを開示しておらずブラックボックス化されている。そのため、自社で管理することができず、クラウドECで運用中により独自性を出すために自社で管理したい場合は、新しくパッケージやフルスクラッチで作り直す必要がある。また、費用は数億~数十億円と高コストであるため大規模の企業であることが前提である。

 

代表的なプラットフォーム

Salesforce Commerce Cloud

セールスフォース・ジャパン社が提供するクラウドECである。スターバックス、アディダスなどグローバル展開を行っている企業を中心に世界2,000社以上で導入されている。B2B向け、B2C向け両方のサイト構築ができ、オムニチャネルにも対応している。また、Apple Payによるワンタッチ決済やAIによるレコメンデーション機能など最先端技術を用いた機能を提供している。

 

SAP Commerce Cloud

SAPジャパンが提供するクラウドECである。多言語・他通貨対応でグローバルに活用できる大企業向けのサービスだ。主にB2B、B2C、B2B2Cに向けて構築されており、非常に複雑なカタログや商品情報などの管理が可能である。マルチデバイス、オムニチャネル、ヘッドレスコマースに対応し、製品情報管理ソリューションも提供しているため、高度なサービスを求める事業者は一度検討してみるといいだろう。

 

<参考>

【2023年最新版】最新性とセキュリティに優れる全19のクラウド型EC構築パッケージとその選び方

 

 

クラウドEC(廉価版)

 

  • メリット:最新のシステムが利用できる、カスタマイズや外部連携が可能、比較的安価にクラウドECを始められる
  • デメリット:ソースコードの開示はしていない、カスタマイズに制限がある

上述したクラウドEC(高価版)と基本的なシステム構成は同じである、この廉価版。上述のクラウドEC(高価版)より低価格・短期導入を実現できるのが特徴である。クラウドEC(高価版)と同様に、アップデートや追加機能の管理の必要がなく、常に最新のシステムを利用できる。そのため、手軽にカスタマイズ可能で最新機能が使用できるクラウドECを導入したい企業にはお薦めである。

高価版と比較して廉価になっている理由は、カスタマイズ範囲とシステムの重厚感の違いだ。ASPカートよりカスタマイズ範囲が広いが、クラウドEC(高価版)よりカスタマイズの自由度が低く、できることが限られるためカスタマイズをしたいという企業は他のプラットフォームを検討すべきである。また、費用は数百万~数千万円であるため中規模以上の企業であることが前提である。

 

代表的なプラットフォーム

ebisumart

15年以上クラウドECに関するサービスを提供している。導入実績は700社以上であり業界内では国内トップシェアを誇っている。クラウドECの中では初期費用が300万円~と比較的安いことが特徴である。また、B2B向け、B2C向け両方のサイト構築ができる。さらに、オムニチャネルにも対応しているため店舗やスマートフォンアプリなど複数の販売チャネルの顧客データを一元化することができる。サポート体制が充実しており、構築・導入後も安心してECサイト構築・運用ができる。

 

 

オープンソース

 

  • メリット:費用を安く始めることも可能、カスタマイズの幅が広い
  • デメリット:高度な知識が必要、セキュリティ対策必須

オープンソースは、無償でネット上に公開されているプログラムを組み立てて、ECサイト等を構築することが出来るプログラム群。ソースコードを公開していて、プラットフォームシステムの開発に色々な人が自由に参加できることで、プラットフォームの機能や品質を高めている。また、ソースコードを改変することができるためカスタマイズの幅が広いこともメリットだ。

論理上は無償でECサイトを構築することはできるが、基本的にはサイトのオリジナリティを出すためにはデザインや機能性をカスタマイズする必要がある。そのため、JavaやPHPなどの高度な専門知識を持つエンジニアによる構築が必要となる。また、一般に公開されているプログラムを利用するため、セキュリティ対策が重要になってくる。

このように、オープンソース自体は無料であるが、構築・運用のコストがかかるため、どのようなサイトを構築するかにもよるが、初期費用は数百万円から場合によっては数千万円程度必要になってくるだろう。特に、自社でECサイトを構築・運用する場合はコストを抑えることができるが他者に外注する場合は相応のコストがかかることに注意が必要である。また、サイトの規模によって高額になってしまうため見極めが必要である。

また、このような特徴から、オープンソースをベースにパッケージ化し、ECパッケージとして製品化されているサービスも複数存在しており、オープンソースは様々な活用のされ方をしていると言える。

 

代表的なプラットフォーム

EC -CUBE

2006年に日本発のECオープンソースとしてリリースされ、充実した基本機能に加え、追加でダウンロードができるプラグインが800種類以上用意されている。35,000店舗以上で稼働しており、国内シェアNo.1を誇っている。商品紹介などのフロント機能や商品管理などの基本的なサービスを無料で利用できる。国内の利用者が多く、開発や店舗運営に関わる人に向けたコミュニティが充実しているので、日本語で他のユーザーにすぐ質問できる体勢が整っている。そのため、初心者でも利用しやすい。

 

Magento

世界トップクラスのシェアを誇るアメリカ発のオープンソースで、2016年から公式に日本語対応された。クラウドベースの有料版「Adobe Commerce」も存在し、必要に応じて移行することが可能だ。基本的な注文管理や顧客管理機能の他に多言語や他通貨、国ごとの税管理に標準対応しており、複数のドメインサイトを一括運用できるため、海外向けのECサイトの構築がスムーズに行うことができる。

 

WelCart

無料でサイトやブログが作成できるソフトである「WordPress」の公式ECサイト構築プラグインである。2009年にリリースされ、国内ECプラグインシェアNo.1を誇っている。「WordPress」にインストールするだけで、ECサイトを構築できる。商品管理や会員管理、クレジット決済などの基本的な機能はほぼ揃っている。「WordPress」の由来であるSEOの強さが最大の特徴である。

 

<参考>

【2023年最新版】自由度の高い全9種のオープンソースECパッケージとその選び方

 

 

 

ECパッケージ

 

  • メリット:専門知識がなくても利用可能、カスタマイズの幅が広い
  • デメリット:費用が高額になる、バージョンアップにコストがかかる

ECパッケージ(かつてはCMS(Contents Management System)パッケージとも呼ばれた)は、ECサイト構築のためのテキストや画像、メルマガなどの運用・設計に関わる機能群を体系的にシステム化したものである。標準機能が充実しており、これらの機能を基に必要に応じてカスタマイズすることでオリジナルのECサイトを構築していくものだ。

ASPカートに比べて柔軟性が高く、基本的にはどのような要件でもカスタマイズできる。また、カスタマイズやサポートをベンダーに任せることが基本となるため、社内に専門知識を持つ人材がいない場合でもECサイトを構築することができる。さらに、技術力のあるベンダー構築するためセキュリティ対策に強く安心して使用できるケースが多い。しかし、プログラムをベンダーと契約して購入するため、初期費用が必要になる。さらに、クラウド型ではないので定期的なバージョンアップが必要になり、その際にもコストがかかってしまう。

規模が大きくなればそれに合わせた対応策が必要になるので、比較的大規模なECサイト向けといえる。ECパッケージにかかる費用は数百万円~数千万円程度が目安である。

 

代表的なプラットフォーム

ecbeing

ECパッケージの国内シェアのNo.1を誇っているサービス。1,500サイトを超える採用実績があり、あらゆる業界でのノウハウを持っているのが強みである。ECサイト運営に必要な環境からシステム構築、運用支援までワンストップで提供している、システムを最大限に活かせるように、開発体制500名以上、マーケティング運用体制200名以上のプロフェッショナルが支援している。パッケージの中では安価であり、費用はカスタマイズ範囲にもよるが300~800万である。

 

Commmerce21

国内でかなり早い段階からサービスを提供しているECパッケージサービス。大量のデータを取り扱える技術力を持っており、大手事業者の導入事例も多く、歴史もあるため経験値も豊富で、大規模ECサイトの構築に非常に適している。

 

 

 

ASPカート(有料版)

 

  • メリット:費用が安い、サポートが充実している
  • デメリット:カスタマイズや連携先が限られている

ASPカート(ショッピングカート)は、EC事業者がアプリケーションソフトをレンタルし、クラウド上で簡易的にECサイトを構築する仕組みのことである。サイト全体をレンタルすることが出来るのが一般的なため、このサービスを使えばほぼカスタマイズしなくてもECサイトの開店は完結出来る。

初期費用や月額費用が無料で数クリックでお店を開設できるお手軽なサービス(インスタントEC)とよりサービスが充実している、この有料版が存在する。有料版でも導入コストはかなり安く済む点も特徴である。クラウド上のサービスであるため最新の機能が常に自動でアップデートされる。そのため、アップデートや機能追加の手間がなく管理が容易である。しかし、クラウドECと異なりフォーマットやテンプレートを活用して構築するため、デザインや機能のカスタマイズ性が低くなってしまう。デザインの独自性が出しにくく、CRMなどの外部システムとの連携が限られていることが多い。

ASPカートはSaaS型と表現されることもあるが、基本的には表現の違いだけであり同様と考えて問題はない。超巨大ECサイト以外は、選択肢としてまずASPカートを検討していきたい。なお、ASPカートにかかる費用は数万円~数十万円程度が目安である。

 

代表的なプラットフォーム

futureshop

1店舗あたりの流通額が群を抜いて高く、利用中店舗の7店舗に1店舗は年商1億円を突破している。年に数回のバージョンアップが行われており、常に最新の機能が実装されている。そのため、トレンドに左右されやすいアパレルやコスメブランドに強みを持っている。また、サイトデザインの自由度が高く、ブランディングにこだわったショップ作りが可能である。さらに、電話やメールのサポートはもちろんのこと、自社ECをいかにして盛り上げるかを学べる勉強会・セミナーを頻繁に開催している。

 

MakeShop

国内サービスとしては10年連続で流通総額No.1の実績を誇っている。MakeShopの最大の特徴は、売れるための環境がすべて整っている点だ。他のASPカートに比べて機能数が多く、業界No.1の機能数を誇っている。機能は日本の商習慣に合ったものであり、ミスマッチが起こらないこともメリットのひとつだ。業界唯一のデザイン質問掲示板やECアドバイザーを始めとしたサポートから、アドバイスを受け売上を改善することが可能だ。環境やサービスが充実しているため、ネットショップ初心者にも向いているASPカートである。

 

Shopify

世界中で利用されているカナダ発の世界最大のASPカートである。デフォルトの設定で様々な言語や通貨に対応しており、海外向けの展開も実現可能である。アプリが充実しており、カスタマイズ性が高く、初期費用がかからず月額課金制であるため比較的低コストで構築が行える。さらに、ネットショップと並行してSNSやECモールと連携販売が可能であり、売上アップにつながるマーケティング機能が充実していている点もメリットの一つである。

 

aishipR

スマートフォンを重要視し、スマホを中心に設計・レスポンシブに特化したサービスであることが最大の特徴だ。レスポンシブデザインにすることで、デバイスが変化してもHTMLが1つで済むためデザインや更新を行う必要がなくなる。また、ワンページカートを実装しており、モバイル端末での購入完了までのシンプルさを徹底的に追求している。また、ASPカートでは通常対応していない有償の個別カスタマイズにも対応している。さらに、BtoC向けのASPカートの中では唯一AWSを採用している。世界最高峰の信頼性とクラウドならではのオートスケーリングなどを実現している。

 

<参考>

【2023年最新版】ネットショップを構築できるショッピングカートASP全27の比較と選び方

【2023年最新版】定期購入を行うことが出来る全22のカートASPサービスとその選び方

 

 

ASPカート(インスタントEC)

 

  • メリット:無料で始められる、専門知識がなくても利用可能
  • デメリット:集客力に乏しく別途集客コストがかかる

ASPカートの中でも無料でオンラインショップを開設できるサービスをインスタントECと呼ぶ。ショップを開くための諸経費や月額費用、手数料などが一切かからず手軽に開店できるため、テストマーケティングを望む事業者や、チャリティでECショップを開店したい人等にも向いている。ただし、無料と言っても、販売額に応じた手数料や決済手数料が発生する。

無料とは言え、豊富なデザインテンプレートが用意されており、こだわりの強いオンリーワン商品を販売する個人事業者にも向いている。一方モールのような集客は見込めないため、各々がブログや実店舗で宣伝をし、独自で販売戦略を立てる必要がある。

インスタントECは無料で始められるが、それぞれ拡張機能や有料プランが存在するため、必要に応じてこれらを利用していくことになる。

 

代表的なプラットフォーム

BASE

2022年12月現在、190万以上のショップが作成されているインスタントECサービス。PC初心者でも本格的なショップデザインが可能である。また、独自ドメインを設定できるというメリットがある。決済手数料は業界最安水準の2.9%〜である。

 

STORES

2019年時点で80万以上のショップに利用されているサービス。こちらもBASEと同じく、初心者でも簡単な操作で自分のショップが作れる。豊富なデザインテンプレートやカスタマイズ機能を無料で提供している。また、実店舗向けのサービスもここ数年で力を入れており、実店舗とオンラインショップを効率的に連携したい場合に活用しやすいサービスだ。

 

<参考>

【2023年最新版】国内のECサイト・ネットショップの総稼働店舗数

Stores.jpでネットショップを開店してみた - その1:無料でどこまで出来るの?

ひしめき合うハンドメイドマーケットEC - 気軽にネットで開店する時代はやってきたのか。Etsy、Creemaに見る未来

Stores.jp・BASE・ZEROSTORE 最近話題の無料出店可能な3モールを徹底比較

 

 

ECモール

 

  • メリット:費用が安い、モール自体の集客力がある
  • デメリット:デザインが限られる、競合が多く価格競争になる

ECモールは1つの大きなサイトの中に、複数の企業やショップが出店・商品の出品をするウェブ上の仮想的商店街のことである。すでに完成されたECシステムを利用するためサイト構築の必要がなく、出店申請するだけで手軽に販売が行える。また、モール自体の知名度が高く、モールによるSEO効果などもあり圧倒的な集客力を期待できる。そのため、出店して間もないショップや中小企業でも集客が可能になる。しかし、ECモール内で他のショップと比較されるため、価格競争になりやすくなる。さらに、他者商品と差別化させるためにデザインに制限がある中で、ブランドの特色を出す工夫が求められる。

ある特定のモールしか使用しないユーザーがいることや、各モールで大型セールを開催し、その期間の売上が期待出来ることもあり、中規模以上の店舗では複数のモールに出店することが一般的になりつつある。そのため、各モール内で露出を増やすためにモールの数だけ広告コストがどんどん増えてきている現状もある。なお、モールにかかる費用は数千円~数万円程度が目安。出店料無料のモールもあるが、手数料や集客コストがかかる点は覚えておきたい。

 

代表的なプラットフォーム

楽天市場

利用者数5,000万人を超える日本最大級のECモールで、集客力が高い。また、店舗のデザインや機能のカスタマイズの自由度が高く、店舗のブランディングがしやすいのが特徴でだ。そのため、他社と差別化しやすい。他にはない特徴として、食品部門の売上が高いことが挙げられる。また、楽天市場自体の信頼度が高く、出品側も安心して利用できる。しかし、出店料や運用費用が他のサイトと比較すると高いため見極めが必要だ。

 

Amazon

出店から販売、配送など一連の業務を効率的に行うことができる。「FBA」というAmazonの物流拠点に商品を発送するだけで、ピッキング・梱包・発送からカスタマーサービスまで代行してくれることが特徴だ。そのため、配送にかかる時間を大幅に短縮できる。他のECモールとは違い、出店者側は店舗のデザインをほぼ変更できず、コンテンツだけを提供する形になる。自由度が低い反面、コストをかけずに出店できる。

 

Yahoo!ショッピング

商品初期費用・月額固定費は無料であり低コストで出店できることができる。そのため、商品数と出店店舗数は最も多い。Yahoo!のトップページからYahoo!ショッピングへの誘導があるためサイトの集客力が高いことが特徴的である。また「PayPay」との連携も強まっているため、PayPayユーザーの集客が見込める。

 

 

<参考>

【まとめ】主要3ショッピングモールのSEOの現状と対策 - 楽天・Amazon・Yahoo!ショッピング内での上位表示はどのように実現できるのか

 

 

C2Cモール

 

  • メリット:費用が安い、同じ嗜好性を持った消費者が集まりやすい
  • デメリット:個人間取引のためトラブルが懸念される

C2Cモール(Consumer to Consumer)はオンライン上で個人間で取引を行うためのモール。この10年程度で、スマホのアプリから簡単に出品できるフリマアプリが勢いを増してきて消費者に浸透してきている。フリマアプリは中古品やハンドメイド商品などをネット上にフリマ感覚で売ることができ、手軽さがウリだ。

出品・決済・購入手数料を無料にしているモールも多く、売り上げによっては消費税がかからないため、個人事業者向きである。ただ、事業者も使用するケースも多く、法人の場合は消費税がかかるモールもある。取引上のトラブルが懸念されるものの、匿名配送が可能などプライバシーに配慮したサービスも増えており、今後も引き続きネット販売の一翼を担いそうだ。

 

 

代表的なプラットフォーム

ヤフオク

日本最大級かつ最古参のネットオークションサービスである。オークションのイメージが強いが、価格を設定して販売するフリマ出品にも対応している。販売手数料は10%であるがYahoo!プレミアム会員になることで8.8%まで手数料が下がるなど、会員に登録せずに使用すると機能が制限される部分もある。ユーザー層は30~50代とミドル世代が多く、コレクター商品や限定商品に強い。そのため、取引される金額も高額になる場合がある。

 

mercari

ユーザー数100万人以上と現状では日本で最も使用している人数が多い、日本最大の総合フリマアプリである。販売手数料が10%とやや高いが、利用者が多いため売れやすいのが特徴である。ユーザー層は10~20代と若い世代が多く、衣類やハンドメイド、雑貨などに強いことが特徴である。ただし、値下げ交渉がされることも多く、希望価格の半額を要求されることもある。

 

minne

国内最大のハンドメイドマーケットであり、出品されている商品はハンドメイド品オンリーであることが特徴である。また、「minne学習帖」といったハンドメイド販売のノウハウが学べるコンテンツが充実している。さらに、海外への販売も代行サービスにより自分で特別な対応をすることなくおこなえる。販売手数料は10.56%と少し高額である。

 

<参考>

レッドオーシャンと化したフリマアプリ市場へ参入してきた「ラクマ」は生き残ることができるのか

フリマアプリで気軽にモノを売る - フリル、メルカリ、STULIOは群雄割拠のC2Cコマースの勝者に成り得るのか

 

 

各プラットフォームはどのような事業に向いているか

 

まずは、月商規模で数千万円に乗るか乗らないかで、大規模・中小規模と大きく2つに分けて整理していく。

 

大規模事業者

月商で数千万円以上の売上を出すことが出来る事業者をここでは大規模事業者とする。

※このレーダーチャートもダウンロード資料に含まれます。

この事業者は選択肢として上記の5つのプラットフォームが考えられるだろう。

大規模事業者は、まずは、社内のセキュリティ基準や、クラウド上へのシステムの展開の可否などを確認する必要があるだろう。セキュリティ基準が厳しく、クラウド上へのシステム展開が不可の場合は、ほぼECパッケージ一択となる。ただし、オープンソースでもセキュリティを担保できるものがあれば、選択肢として挙がってくるだろう。クラウド上へのシステム展開が可能であれば、選択肢は非常に多くなり、多種多様なクラウドサービスやECパッケージ、オープンソースから幅広く機能面・費用面を重視してサービスの選択が可能になるだろう。

最近では、ASPカート(有料版)やECモールでも月商数千万円以上を継続的にたたき出す事業者も多いため、プラットフォームとしてはこの2つも活用は可能である。ECモールは上記の自社ECサイトとは別に出店の検討を行う大規模事業者も多く、複数店舗展開の選択肢としては活用すべきだろう。また、特にサイトでのこだわりがそこまで強くない事業者であれば、システム的にもASPカート(有料版)もクラウドECと遜色がない機能を有しているものも多く、安価で短期間でサイト公開・運用が可能なため、選択肢として検討しない手はないだろう。

 

中小規模事業者

月商規模で数千万円以下の売上に留まる事業者をここでは中小規模事業者とする。

※このレーダーチャートもダウンロード資料に含まれます。

しっかりと売上を作っていきたい事業者の場合は、ASPカート(有料版)とECモールを検討するのがよいだろう。特徴はそれぞれ異なるが、どちらも少ない初期費用で始めることができ、リスクも比較的低いためだ。また、数百万円程度の売上を継続的に見込めるのであれば、両方でサイト構築・出店を進めることも問題無いだろう。

今は売上がそれほどないが、近い将来に数千万円を、と言う事業者も多いが、そのようなケースでもまずは、ASPカート(有料版)で安価に事業を開始することをおススメする。初期からクラウド(廉価版)などでのECサイト展開もありだが、費用対効果が見合うまで5年以上の期間を要することが多く、その時、その時のタイミングに見合ったプラットフォームを使用する方が事業としても軌道に乗りやすい。

売上は百万円に届かないケースでは、ASPカート(有料版)、ECモール、ASPカート(インスタントEC)から状況に応じて選択していくことになる。ブランド認知や集客力などを天秤にかけて選んでいって欲しい。

それ以下の売上の場合や、全くの未知の状況の場合は、ASPカート(インスタントEC)やC2Cモールからまずは展開を開始していきたい。

 

 

プラットフォームだけで選びきれない現実

 

ショップの置かれている状況や商材、予算や売上や好みによっても、どのプラットフォームを採用すべきかは異なってくる。またどのプラットフォームを採用しようとも、利益を上げようと思えばかける費用も高くなるため、一概にどのプラットフォームが優れているとはいえない。

例えばモールに出店することはできても、モール内での集客には、それなりの費用をかける必要があるだろう。このため、それぞれのプラットフォームで大差がなくなることもある。ただ、売上があまり高くない段階では、ある程度型が決められたもので出店すべきであり、初期費用が高いプラットフォームで出店するのはかなり危険である。また、ASPカート(有料版)は思った以上に完成度が高いため、ECパッケージやクラウドECで作らなくても遜色ないものが桁一つか二つ少ない費用で完成する時代となっているのも事実だ。

さらに一方で、ネットショップの運営はプラットフォームだけでは完結出来ない。物流、CRM、決済、アクセス解析や分析など幅広い関連業務が存在しており、それら業務の効率性や利用しているサービスとの親和性も重要になってくる。

多くのプラットフォームが存在することはいいことではあるが、その反面、出店者・消費者ともに使い分けの難易度は上がってきている。それぞれのショップに合ったプラットフォームを採用すべく、参考にしてほしい。