レッドオーシャンと化したフリマアプリ市場へ参入してきた「ラクマ」は生き残ることができるのか

 

11月25日に楽天の新サービスであるフリマアプリ「ラクマ」がリリースされた(iOS版は26日)。フリマアプリといえば、メルカリフリルLINE MALLなど、すでに様々なアプリが多くの人に利用され、今やフリマアプリ市場はレッドオーシャンと化している。そんなかにEC業界でYahoo!Amazonに並ぶ楽天が参入するということで注目が集まっている。今回は、市場を大きく揺るがす可能性のある「ラクマ」のサービスについてや、それによる市場の展望についてみていく。

 

<参考>

フリマアプリで気軽にモノを売る - フリル、メルカリ、STULIOは群雄割拠のC2Cコマースの勝者に成り得るのか

LINE MALL(ラインモール)待望の船出 - グランドオープン時の展開とEC業界に与える影響

【徹底解剖】話題のLINE MALLで実際に開店・出品、そして購入を体験してみた

 

 

 

楽天の「ラクマ」はどんなサービスなのだろうか?

 

さっそくラクマを使ってみた。トップページに入ると、出品されている商品がずらり。横にスライドするとすべて、レディース、キッズ・ベビー、メンズ、ホビー・エンタメ…とジャンル別に商品を見ることができる。左側からはメニューがスライド出来る。

 

 

 

商品ページにいくと、商品写真が大きく表示され、いいなと思った商品には「いいね!」をつけることができ、「いいね!リスト」で見ることができる。画面右下には出品ボタンがあり、すぐに写真を撮って出品ができるようになっている。

 

 

 

 

メルカリと酷似しているデザイン性

ここまで使ってみて、ふと気になって確認してみたのだが、ラクマのUIはメルカリと驚くべきほど酷似しているようだ。トップページの商品の並び方と出品アイコンの位置、メニュー画面の項目やアイコン、商品ページの表示項目、デザインテイストまでほぼ同じだ。以下は、トップページ、メニュー画面、商品ページ上部、商品ページ下部をラクマ→メルカリと並べてみたものた。

 

 

ラクマがメルカリにここまで似ているのは、インターフェースを検討しつくして行き着いた場所がたまたま同じだったのか、それとも先発でユーザー数の多いメルカリを意図的に似せることでサービスの乗換えのハードルを下げようとしているのか、真意は定かではないが、メルカリからすると心中穏やかではないだろう。

 

 

決済方法

決済方法は、クレジットカード、コンビニ払い、ATM支払い(ペイジー)、売れた商品の売上金、楽天スーパーポイントの5つがあり、これらを組み合わせて最大15通りの組み合わせで支払うことができる。

お金のやり取りには、多くのフリマアプリも採用しているのだが、購入者が代金をラクマに支払い、支払われたことを確認してから、商品が発送され、商品が購入者に届いたことがわかってラクマから出品者に振り込まれるという、楽天の仲介のもと行われるエスクロー方式を採用している。

 

ユーザーサポート

「ラクマ」でウリにしているポイントの一つに、ユーザーサポートがある。楽天オークションで経験を積んできたスタッフによって、不適切な商品や発言がないかなどアプリ内のパトロールを行い、ユーザーサポートを充実させるという。また、取引に関する出品者と購入者のやり取りは、基本的には利用者同士だが、ラクマへの問い合わせの内容によっては積極的に関与してくれるという。

 

手数料無料

ほとんどのフリマアプリでは、販売手数料が商品代金の10%かかるものが多いのだが、(LINE MALLと)ラクマは手数料無料である。これは出品者にとって非常に嬉しいポイントだろう。フリマアプリでは手数料で利益を出す企業が多いのだが、ラクマの収益モデルは検討中とのことだ。

ラクマは客層のターゲットを絞ってはいないが、メインユーザーはスマホを多く使う若年層女性になるのではないかと思われる。30代以上のユーザーが多い楽天オークションと差別化し、新たなユーザー確保を狙っているのではないだろうか。

 

 

楽天としての優位性

 

フリマアプリ市場に参入していくうえで、楽天であるということはどのような優位性をもっているのか考えていく。

まず、楽天の会員による流入が大いに期待できるため、ユーザー数の確保がすでにできていると考えられる。LINEモールがリリースされたときにも言われたことだが、楽天会員をどうやってラクマに流入させるのかがポイントといえるだろう。メルカリやフリルはテレビCMに多額の投資を行い、ユーザー数を伸ばしているが、すでに9000万人以上の楽天会員を抱えている楽天はこれらの会員にどうラクマを利用させていくのかが鍵となっていくのではないだろうか。

また、その他の人気フリマアプリと比べ、会社が大手であるということによる安心感で、今までフリマアプリに抵抗のあったユーザーもフリマアプリを利用しやすいのではないかと考えられる。楽天市場での買い物や楽天カードを利用した買い物などによって貯まる「楽天スーパーポイント」をラクマでの買い物に利用することができる。ラクマで買い物をしてもポイントは付与されないが、代金にポイントを利用することができるのである。これによって楽天スーパーポイントの運用の活性化を狙っているのではないだろうか。

 

 

フリマアプリ市場の現状

 

フリマアプリ市場はレッドオーシャンと化していると前述したが、現状はどうなっているのだろうか。メルカリ、LINE MALL、フリルがダウンロード数のトップ3である。フリマアプリには、商品のジャンルを特化しているものが数多く見られる。その方が、欲しいものが買いやすく、出品した方がすぐ売れるからである。商品のジャンルを指定していないアプリは「メルカリ」「LINE MALL」そして「ラクマ」くらいだろう。これらはユーザー数が多くないと成立しないので、ここに進出するラクマはやはり会員数の確保に自信があるのだろう。

 

 

また、多くのフリマアプリが市場には存在するが、その市場からの撤退を選ぶ企業が数多く見られるのも現実だ。サイバーエージェントマムズフリマはラクマと入れ替わるように11月にサービス終了となる。

 

 

数多くあるフリマアプリでこれから生き残っていくサービスとは?

 

メルカリとフリルの月間流通総額は2014年9月の時点では最低15億円程度、年間換算すると180億円といわれている。C2C市場はこれからさらに成長することが見込まれている注目すべき市場だ。しかし、認知度はまだまだ高いとは言えないだろう。

 

手軽さ

生き残っていくために最大のウリとなるのは現時点では「手軽さ」だろう。購入の手軽さ、出品の手軽さ、取引自体の手軽さなどなど、ヤフオクで面倒だと感じた部分をいかに簡素化出来るかがポイントだ。メルカリ、フリルは3分、LINE MALLは2分、ラクマは1分で出品できると宣伝している。ラクマもかなり手軽さを意識しているところだろう。

 

「すぐに売れる」という仕組み

ここはなかなか忘れられがちではあるが、すぐに売れる仕組みを作ることで次も売りたいと思わせ、出品をリピートさせることは重要となる。複数のアプリに出品を体験したユーザーが一番売れやすいところに次からも出品したいと思うのは自然だろう。

そのために、たとえば消費者の趣味嗜好にあった商品が自動で表示されるような仕組みなどの実装も考えられる。前回購入した商品に似た商品や、似たような商品を購入した人がどのような商品を購入しているのかなどがわかる仕組みがあると、ニーズにあった商品が表示され、購入を促しやすくなる。また、人気の検索ワードやニーズにあった検索ワードが表示される仕組みなども考えられる。これらのようにビッグデータを利用すると「すぐに売れる仕組み」というのをいち早く導入していく必要がありそうだ。

 

安く購入できる

フリマアプリはまだまだ発展途上の部分もあり、また一点ものなどの出品も多く、商品自体はそれほど安くない場合もある。実際にヤフオクよりもフリマアプリは現時点では少し割高の印象を受けた。そのため、いかに安く購入できる仕組みを提供するかということも求められる。アプリ内で出品者とコミュニケーションすることができ、値引き交渉や商品について質問ができたり、ポイントを利用できたりするなどの工夫が必要だろう。

 

 

 

このように、安価な商品がたくさん並ぶことで購入者・利用者を増やしていくことでフリマアプリは勝機を見出していく必要がありそうだ。これからフリマアプリ市場に、変化を与える可能性を十分に秘めている「ラクマ」。同じオールジャンルのフリマアプリとして競合するメルカリやLINE MALLは今後どうなっていくのか。これからもフリマアプリ市場の動向からは目を離せない。