ひしめき合うハンドメイドマーケットEC
個人で気軽にモノを売れるようになった今、1点モノの手作りアクセサリーや洋服などを販売するハンドメイドマーケットECが注目を集めています。
米国をはじめ、日本においても数多くのサイトが立ち上がってきており、その数は目立つものだけでも20を超えるほど。
今回はその中から、ニューヨーク・ブルックリンに拠点を置く人気サイト“Etsy(エッツィ)”と、日本のハンドメイドマーケットECの先駆け的存在である“Creema(クリーマ)”の2つを紹介します。
Etsy(エッツィ)
Etsyは、近年急速に成長を遂げたアメリカの巨大ハンドメイドマーケットECです。
2005年にローンチしたこのサイトは圧倒的なセンスの良さでユーザーを獲得し続け、2012年にはなんと会員数が2,200万人を突破しました。
利用者の国数は200ヶ国以上にも及び、アメリカ国外からの利用者が全体の3分の1を占めています。
そのため、カナダやイギリスの英語圏はもちろん、イスラエルやトルコといった中東諸国からの作品も並ぶ国際色豊かなハンドメイドECサイトになっています。
扱うのは、世界中の作家によるハンドメイド作品、クラフト資材、そしてビンテージ商品の3カテゴリー。
利用者は膨大なアイテムの中から好みの色ごとに作品を検索したり(Colorsカテゴリ)、クリエイターの居住地から検索するなど(Shop Localカテゴリ)、さまざまな方法でお気に入りを見つけていきます。
出品者の会員費等は無料で、1アイテムにつき5枚までの作品画像がわずか20セントで公開可能。
画像は4ヶ月間サイトに掲載され、売買が成立した際に商品代金の3.5%が手数料として徴収される仕組みになっています。
Etsyが優れているのは、作品のクオリティの高さだけではありません。
サイト上では、作品の制作方法を紹介するワークショップ、オンラインラボを開催。
消費者は動画で商品の制作過程を知ったり、成功者のインタビューを見ることができます。
現在Etsyには日本語専用サイトはありませんが、日本からアクセスすれば日本円表示が適用され、小物であればわずか数百円の送料で世界中のハンドメイド作品を手に入れることができます。
Creema(クリーマ)
Etsyの流れを受け、日本国内でも2010年頃からハンドメイドマーケットEC市場にさまざまな企業が参入しました。
手芸総合メーカー、クロバーの関連子会社が運営するtetote(テトテ)や、博報堂の系列会社が運営するiichi(イイチ)、大手サーバー会社Paperboy&co.が運営するminne(ミンネ)など、その数は今や20以上にも及びます。
中でも、多くのクリエイターたちに支持されているのが、赤丸ホールディングスが立ち上げたCreema(クリーマ)です。
Creemaは2010年のオープン以来、3年間で9,200名ものクリエイターが出店。
作品流通総額はその10倍以上と言われています。
出店の際の費用はかからず、売買が成立した場合のみ8.4~12.6%の成約手数料が徴収されるという仕組み。
購入者は会員登録を行えばお気に入りのクリエイターを登録したり、掲示板を通じてクリエイターとコミュニケーションを取ることも可能です。
Creemaでは、ECサイト上の売買だけでなく、メディアへの作品貸出やコンペの開催など、クリエイターのバックアップ活動も積極的に行っています。
また、伊勢丹などの商業施設で期間限定のショップをオープンさせるなど、リアル店舗からの集客も試みています。
今年の7月20、21日には、東京ビッグサイトにてHandMade In Japan Fes’ 2013を開催。
2万6000人が来場しました。さらに今秋には、デザインの祭典、TOKYO DESIGNERS WEEKへの出店も決まっています。
Creemaには、これ以外にも販売意欲、購買意欲の双方を刺激するサービスが満載です。
例えば、商品ごとに公開されているPV数を見れば人気商品がひと目で分かったり、ユーザーがテーマごとにお気に入りの作品を集めて披露するキュレーションサービスを使えば、消費者側からサイトを盛り上げることも可能。
痒い所に手が届くさまざまなサービスが人気の秘密です。
個人が気軽にネットで開店する時代はやってきたのか
従来、個人でモノをネットで売りたいときに最も活用されてきたのは、ヤフオクでした。
ヤフオクはハンドメイド品などの取り扱いもありますが、どちらかというと中古商材のマーケット的な色合いが強いサイト。
クリエイターからすると、テンプレートや仕組みのCoolさが足りず、作った商品の雰囲気が損なわれると感じる部分が多く、あまり積極的に出品しようという気にはなれませんでした。
そのニーズの拡大に目を付けたのがこのハンドメイドマーケットECといえます。
ハンドメイドマーケットEC以外にも開店が非常に簡単なBASEやStores.jpなどの無料系ECサービスなど、最近ではクリエイターが出店したいと思える類似サービスも非常に多くなってきています。
ヤフオクとは違い、これらのサービスはいずれもCoolな店構えを容易に構築出来るのが特徴。
販路を拡大したいと考えるクリエイターは、多くの場合これらの複数のサービス上にショップを持っていてもおかしくありません。
また、より積極的に販売を行いたい場合にはPinterestなどのコマース機能を持つキュレーションサイトで販売を行うことも可能といえます。
従来よりも圧倒的にサービスの選択肢が広がった今、気軽にネットで開店出来るようになった反面、どのサービスも良し悪しがあり、上手な使い分けを求められているといえそうです。
レッドオーシャンと化した市場で生き残るのは
ハンドメイドマーケットECに限っても、ここ数年で立ち上がったサイトは前述のように20以上。
それぞれのサイトを見ても、あまり大きな違いは今のところなく、ハンドメイドECというニーズに対してサービスの数が多い感は否めません。
ソーシャル要素、キュレーション要素、手軽さ、Coolさなどに活路を見出そうにも、既にPinterestやStores.jpなどのサービスがあり、業界的にはレッドオーシャンといえそうです。
差別化が難しいハンドメイドマーケットECですが、今後この状況を変える何らかの機能や視点が出てきてもおかしくないでしょう。
多くの人が気軽にクリエイターとして活躍できる今、ハンドメイドマーケット市場の今後が楽しみです。