サブスクリプションコマースとは?
2、3年前から米国を中心に注目を集めている、“サブスクリプションコマース“と呼ばれるECサービス。
サブスクリプションコマースとは、毎月一定額の料金を支払うことで、ネットショップのオススメ商品が届く定期購入型の販売モデルのこと。
サブスクリプションコマースは、定期購入、リピート通販、頒布会とも呼ばれ、考え方自体は以前からあったもの。
どうして今また脚光を浴びているのでしょうか。
進化しているサブスクリプションコマース
ECサイトには膨大な数の商品が溢れ返っているため、良品を見つけるのに苦労する消費者も少なくありません。
そこで、その“選ぶ苦しみ”から開放してくれるのがサブスクリプションコマースです。
2011年頃にアメリカで火が付き、翌年には国内でもさまざまなサービスがスタート。
コスメから食品まで、その道の目利きたちが厳選した上質で付加価値の高い商品を、定期購入という形で手に入れることが可能となりました。
これまでにも、通販業界では千趣会やフェリシモなどのカタログ通販会社が同様のサービスを提供してきましたが、facebookやTwitterなどのSNSの台頭、そしてライフスタイルにこだわりを持った人が増えたことにより、その仕組みは多様化してきています。
例えば、ひと昔前であれば商品の売買だけでショップと消費者のつながりが保たれていましたが、現在はSNSを介して参加型イベントが企画されるなど、商品を絡めた画期的な交流が行われています。
また、信頼できるスペシャリストたちが顧客の趣向をしっかりと把握した上で商品を選ぶため、より満足度の高い商品を手にすることができると評判も上々です。
国内のサブスクリプションコマース
ではここで、国内で話題のサブスクリプションコマースをいくつか紹介しましょう。
まず始めに紹介するのは、サンプルコスメや化粧品を月額1,575円で試せるGLOSSYBOX。
取り扱っているのはAVEDA、CLARINS、DECLEOR、Jurlique、SHIGETA、WELEDAなど女性が喜ぶ一流ブランドばかりで、自分の肌質や好きな香り、興味のあるカテゴリを事前に登録しておくことによって、自分に合った商品を毎月4〜5アイテムずつ届けてもらうことができます。
アルコール類のサブスクリプションコマースも人気が高く、日本酒ではSakeLife.jp、ワインではワイナレッジが2012年からサービスを開始しました。
SakeLife.jpは月額3,150円(四合瓶)と5,250円(一升瓶)のどちらかのコースを選択すると、商品のほかに自分に合った酒器が隔月で送られてくるというちょっと嬉しいサービスも。
さらに、オススメの呑み方を提案してくれるメルマガも毎週送られてきます。
従来の定期購入サイトと一戦を画すのが、ライフスタイルアイテムの定期購入型通販サイト、ハッチです。
ハッチは何かひとつに特化した商品を取り扱うのではなく、さまざまなジャンルのプロ(キュレーター)が複数いて、そこからオススメ商品を提案されるという仕組み。
取り扱い商品はユニークで、雑貨や書籍、CD、さらにはスタイリストによるスタイリングなんていうものまでラインナップされています。
価格は選ぶ商品によって異なり、月額3千円台から3万円台までと幅広い設定。
今後もエッジの効いたキュレーターたちによって、魅力的な商品が次々と提案されることでしょう。
変わり種としては、半年に一度非常食を届けてくれるyamoryもチェックしたいところ。
配達日が半年おきに設定され、“切らさない”“忘れない”“無駄にしない”という非常食にとって重要なポイントを押さえています。
価格は年間4,200円からで、必要人数に合わせた非常食セットの購入が可能です。
上記以外にも、自分自身が出品者になれる定期購入サイト、BoxToYouも注目を集めています。
出店のための初期費用や月額費用は一切かからず、出品者は売上に対して10%の手数料を支払うだけ。
サブスクリプションコマースは購入者を増やしつづけることで継続的な収益が見込めるため、とりあえずこちらのサイトで始めてみるというのもひとつの手かもしれません。
しかも、BoxToYouに出品された商品はYahoo!ショッピングにも二次掲載されるので、人気ショップになればなるほどファンが広がる仕組みになっています。
サブスクリプションコマース事業者向けサービス
また一方で、サブスクリプションコマースを行いたい、という事業者向けに特化したサービスも。
その代表格、カートASPサービスのたまごカートでは、急速に利用ショップ数を伸ばしてきています。
通常のECサイト運営と異なる、定期購入に特化したステップメール機能や、分析機能なども充実。
わずか49,800円(月額)から本格的なサブスクリプションコマースサイトの運営が行えると好評です。
サブスクリプションコマースはどこまで定着するのか
物の売り方が多様化した今、プレゼントを受け取る感覚と同じように、ワクワク感を期待してサブスクリプションコマースを利用する人も多いのではないでしょうか。
消費者の「eコマース疲れ」に目を付け、消費者が欲しい商品やニーズに合う商品を探し続けるのではなく、ショップ側がレコメンドするという視点の切り替えも新鮮に感じます。
この販売方法の歴史は古く、牛乳や新聞、雑誌なども同じ形態での販売が行われてきました。
サブスクリプションコマースは明治時代から行われていたといえます。
この場合の商材は、必ず毎日使う消耗品か、信頼性の高い会社が発行するものか、興味を持っている読み物。
それが、eコマースという形態を活用することで商材の広がりを見せ、キュレーターの登場により信頼を得る方法に新たな可能性が出てきました。
一方で、頻度と消費のスピードのバランスが取れなくなってきて、内容にも飽きてくると、封も開けずに山積みになることもしばしば。
雑誌などで経験のある人も多いのではないでしょうか。
大量購入・消費が根付いている米国と比較すると、日本では無駄な消費を抑えたい、というニーズは高くなります。
不要かもしれないもの、余るかもしれないものが、どんどん届くことが気になり、なかなか活用が進まない、という側面もありそう。
そして、日に日に新しいものが世の中に登場するため、同じ商品やブランドに対する愛着が従来よりも長続きしない傾向もサブスクリプションコマース定着への障害といえます。
そう考えるとサブスクリプションコマースの定着の鍵は、商材と適切な頻度設定。
牛乳やコスメなどの定期的に使用することを消費者がライフスタイルの中で確立しやすい商材が基本。
それ以外の商材については、相当の商品バリエーションや、提案力で飽きさせないことが求められます。
また、商材の特性に応じた頻度を設定するだけでなく、消費者側のニーズに応じて頻度や量、更には商材も柔軟に変更することも求められるでしょう。
このようなちょっとした抵抗感を、事業者側が敏感に感じ取り、どのように乗り越えていくか、今後の進化にも注目です。