デジマ全盛時代にECサイトで活用すべきマーケティング効果分析・ダッシュボード系サービス全29とその選び方

 

デジタルマーケティング全盛の今、オンライン上で取得できるデータは非常に多い。特にECサイトを運用して成果を出していくためには、多くのデータをあらゆるところから取得して分析・活用していく必要がある。そこで今回は、ECサイトで活用できるマーケティング効果分析・ダッシュボード系のサービス全29をピックアップしたうえでそれぞれの特徴を整理し、サービスの選び方について考えていく。

※この記事は2022/12/8に公開し、2023/1/23に最新状態に更新した。

 

 

 

マーケティング効果分析に関わる用語の定義

 

マーケティング効果を確認しデータを分析しようとすると、非常に難解な用語が登場してくることも多いだろう。ここでは、はじめに知っておきたいマーケティング効果分析に関わる用語を解説していく。

 

トランザクションデータ

非常にシンプルに考えた場合、データはマスターデータとトランザクションデータの2種類に大別できる。マスターデータは、属性情報などの基本的な情報データのこと。一方でトランザクションデータは、業務に伴って発生した出来事の詳細を記録したデータであり、どんどん蓄積されていく。transaction(トランザクション)は「(商)取引」や「処理」などを意味しており、ECサイトにおいては顧客との間で発生した商品の受発注や支払い、納品などを記録したデータがこれにあたる。

 

データマイニング

Data mining(データマイニング)とは、多くのデータの中から統計学や人工知能などの手法を活用した分析を行い、結果を得ること。DMと呼ばれることもある。自社のビッグデータをマーケティングで活用するためには必要不可欠で、データマイニングにより得た情報は収益拡大やコスト削減などに役立てることができる。

 

DMP、プライベートDMP

DMPはData management platform(データマネジメントプラットフォーム)の略称で、インターネット上に蓄積された様々なビッグデータを管理するためのプラットフォームである。DMPにおける対象データは、自社サイトのオーディエンスデータやソーシャルデータ、購買データなどで、DMPを活用することでユーザーごとに適したマーケティング施策の実現が可能となる。

DMPはさらに、オープンDMP(パブリックDMP)とプライベートDMPの2つに分けられる。プライベートDMPは、企業独自で保有している顧客データのほか、各メディアやWebサイトにおける行動・購買履歴などの外部データを管理するためのプラットフォームで、主に自社の広告配信やマーケティングで活用される。一方オープンDMPは、第三者機関であるデータ提供企業が保有するデータを蓄積・管理するためのプラットフォームである。Webサイトの行動履歴やユーザーの年齢・性別といった属性情報など自社では把握できない様々な情報を取得可能で、客観性のあるマーケティングを実施したい場合や自社データがない場合に有効である。

 

ABテスト

ABテストはWebマーケティングにおける手法のひとつで、1つの施策を複数のパターンで比較し、その効果を判断するために行われる。例えば、Aパターン・Bパターン2種類のバナー広告を用意し、どちらがより効果的かを検証するといった方法で、主にWebサイトや広告などの施策改善や最適化で活用される。検証内容によっては2パターンだけでなく、3パターン、4パターンなどで検証する場合もある。

 

BI

BIはBusiness Intelligence(ビジネス・インテリジェンス)の略称で、企業が蓄積しているデータを収集・蓄積・分析し、経営上の意思決定に活用する技術の総称である。これらを支援するソフトウェアやシステムはBIツールと呼ばれる。また、データマイニングもBIのひとつだ。

 

 

ECサイト運営で活用できる3種類のデータ

 

ECサイト運営事業者として、マーケティングの効果分析のために入手できるデータにはどのような種類があるのだろうか。ここでは3つの種類に分けて説明していく。

 

自社トランザクションデータ

自社のECプラットフォームに蓄積している商品の受発注関連のデータや、ECプラットフォームやサイト解析ツールなどから入手できるユーザーの行動履歴データ。

 

広告系データ

出稿している広告ネットワークやサイト解析ツールなどから入手できる広告関連の成果データ。実施した広告の表示回数や、クリック数、コンバージョン率などのデータなどが含まれる。

 

外部行動履歴

DMPなどから入手できる行動履歴データ。自社サイト以外でのネット上のユーザーの嗜好性、閲覧履歴や購買履歴などが含まれる。

 

これらのデータはそれぞれのプラットフォームやサービスから入手できるケースが多いが、ひとつひとつのデータは断片的であり、連続性に欠けやすい。しかしそれぞれのデータを関連させて表示・分析するには、かなりの手間がかかってしまうのが実情だ。ECサイト運営においては、これらのデータをしっかり読み解き的確な施策で売上を確保することが重要になるため、マーケティングの効果分析を行うサービスが必要になってくるのだ。

 

 

マーケティング分析の可能性を不透明にする個人情報保護の動き

 

デジタルマーケティング分析は、様々なデータを用いて顧客の需要や傾向を知り、経営戦略に活かすことができる。そしてそれは、ECサイト運営においても欠かすことのできないものだ。しかし最近は個人情報保護の観点から、オンラインデータについてもプライバシー保護の動きが広がっている。

GDPR(EU一般データ保護規則)やカリフォルニア消費者プライバシー法(CCPA)など、個人情報保護を目的とした規則が海外で導入されたこともあり、世界的に個人情報の取り扱いを見直す動きが強くなっている。国内において、改正個人情報保護法が施行されたことも記憶に新しい。

2018年5月25日に施行されたGDPR(EUデータ保護規則)は、企業による個人情報の収集・保存・管理や使用の方法に関し、消費者の利益を保護するために導入された最も広範囲にわたる法律の一つだ。この規則では、違反が判明した企業には重大な罰金が課せられることになっており、罰金の最高額は2,000万ユーロ相当額、または前会計年度の全世界における総売上高の4%のいずれか高い方となる。2019年に米グーグルがこれに違反したとして5,000万ユーロ(約60億円)、2021年には米アマゾンが7億4,600万ユーロ(約970億円)、今年の11月にはNTTデータスペインが6万4,000ユーロ(約940万円)の制裁金を科されている。日本は国内での個人情報収集に限りGDPRの対象外ではあるものの、EU地域で個人情報を収集する場合はGDPRの対象となるため、注意が必要だ。

2020年1月1日に施行されたカリフォルニア消費者プライバシー法(CCPA)は、GDPRと類似した規制である。こちらも施行に伴い各企業のコンプライアンス表記が更新されたものの、実際には多くのパブリッシャーは消費者の個人データ販売のオプトアウト(拒否)についてできる限り消費者に注意を向けさせないようにしているなど、マーケティングへの悪影響を最小限にしつつ、規制への対応が手探りの状態が続いている。

日本においても、企業による個人情報流出や不正アクセスなどが度々問題となっている。デジタルマーケティングやECサイト運営で取り扱う情報が多岐にわたることもあり、2022年4月には日本でも改正個人情報保護法が施行された。それによってCookieも規制の対象となり、Google Chromeでも2023年からサードパーティCookieが廃止されるなど、大きな動きが起きている。オンラインでのマーケティング活動を行っていく上で、企業はこれらの規制をしっかりと理解し、マーケティングデータの収集・分析の方針を検討していく必要がある。

 

<参考>

GDPR(EU一般データ保護規則)施行から2年、その影響を識者の見解から読み解く

GDPR施行から1年。プライバシー問題はAIを利用したマーケティングにどのように影響しているか

CCPA施行、米国パブリッシャーの多くは最小限の遵守のみ

 

 

マーケティング効果分析・ダッシュボード系サービスのカテゴリ

 

オンラインマーケティングのデータをダッシュボード的に表示し効果分析を行うサービスは、市場に多く出回っている。それらの機能も多岐にわたるため、具体的にどのようなことができるのか、専門的な知識がなければ把握も難しい。そこでeccLabでは、サービスを3つのカテゴリに大きく分けて紐解いていく。

 

広告系

広告系は、主にオンライン上での広告に関するデータの分析を目的としたサービスが分類される。広告の成果の分析や、チューニング、ダッシュボード機能などを有しているものが多い。

 

ダッシュボード系

ダッシュボード系は、デジタルマーケティングに関わるありとあらゆるデータを、ダッシュボード的に表示することが可能なサービスが分類される。何かに特化したり分析を深く行うことよりも、データをあらゆる角度からグラフィカルに表示することに重点を置いたサービスが多い。

 

データ分析系

データ分析系は、主な目的がデータを詳細に分析することにあるサービス。ダッシュボード的にデータの表示が可能なサービスも多いが、ABテストやAIによる解析、ヒートマップなど、多彩なテクノロジーを使ってマーケティングデータを分析することに主軸が置かれている。

 

デジタルマーケティングの効果分析・ダッシュボード系サービスは、EC業界向けだけでなく、多彩な業界や目的ごとに多種多様なものが提供されている。また、上記の3つのカテゴリに分類することが難しいサービスも存在している。

 

 

マーケティング効果分析・ダッシュボード系サービスの比較

 

市場には、ECサイト運用に活用可能なマーケティング効果分析・ダッシュボード系サービスが29種類存在している。

そこで、ここではeccLabオリジナルの、全29サービスの価格・特徴などを網羅的に一覧化した「サービス概要の一覧比較」ファイルと、全サービスをカテゴリ毎にマッピングした「サービスマッピング」ファイルの2種類を用いて、どのような特徴があるのかを説明していく。

 

サービス概要の一覧比較

おすすめポイント

  • マーケティング効果分析・改善提案・ダッシュボード系サービスを全て網羅
  • 全サービスを価格、機能などの項目毎に比較
  • エクセルでの提供のため、並び替えや項目の削除などカスタマイズが可能

サービス概要の一覧比較

 

サービスマッピング

おすすめポイント

  • 2軸でマッピングしサービスの特徴把握が可能(※eccLab編集部独自の判断による)
  • 全サービスを一目で把握

サービスマッピング

※サービス概要の一覧比較資料(エクセル版)とサービスマッピング資料(高解像度PDF版)のダウンロードはこちらから行えます。
比較資料をダウンロード

 

 

 

代表的なマーケティング効果分析・ダッシュボード系サービスの紹介

 

それでは、代表的なマーケティング効果分析・ダッシュボード系サービスを個別に見ていこう。

 

アドエビス

株式会社イルグルム

アドエビス

株式会社イルグルムが運営するアドエビスは、デジタルマーケティング施策に必要な機能をワンパッケージで提供するサービスだ。全ての媒体の流入チャネルを統合管理できるほか、媒体ごとではなくユーザー軸での評価が可能であるなど、Web施策全体を通して適切な効果測定を行うための機能が豊富。通常であればレポートも媒体ごとになるため施策全体の評価は難しいが、取得したいデータの変数を設定しデータを紐づけることで、ECサイトをLTVで容易に評価できるようになる。

さらに、集客からサイト内におけるユーザーの行動まで一気通貫で把握できるだけでなく、計測したデータをGoogleやYahoo!などの外部サービスと連携して蓄積データをもとにユーザーリストを選定し、リターゲティング広告の配信や拡張配信を行うことも可能だ。昨今、プライバシー保護の観点からユーザー行動データの収集法にも変化が起きているが、アドエビスはプライバシーに配慮しつつ高精度な計測を可能にしている。また、定期的にアップデートが行われており、機能の強化や新機能の追加が随時行われている。
アドエビスの資料をダウンロード

 

Looker Studio(旧:Googleデータポータル)

Google

Looker Studio(旧:Googleデータポータル)

Googleが運営するLooker Studioは、Googleスプレッドシート、Googleアナリティクス、Google広告、BigQueryなどのデータを1か所に集約できる無料のサービスだ。専門知識がなくてもこれらのデータを説得力のある形に変換することができ、グラフィカルなレポートやダッシュボードを作成可能である。

先に述べたサービスのほか、600以上のパートナーコネクタ(2022年11月現在)、キャンペーンマネージャー360、MySQL、 YouTubeアナリティクスなど、800を超えるデータソースと接続できる。SQLを書かなくてもデータ表を見ながらワンクリックで分析できる手軽さだけでなく、算術演算や論理演算、必要に応じてさらに高度な関数を扱う機能も備えている。さらに、データポータル内の全レポートとダッシュボードをチーム内で共有し、共同編集することも可能だ。基本的にはデータ分析やレポート作成に慣れていない初心者向けのサービスだが、ベテランでも使いやすいよう、直感的な操作が可能なUI設計となっている。

 

Googleアナリティクス

Google

Googleアナリティクス

Googleが運営するGoogleアナリティクスは、Webサイトを訪問したユーザーの行動を分析するサービスで、ユーザー像を把握するための多彩なツールを無料で利用できる。分析データに関する疑問をサービス内で直接質問できるほか、機械学習を通じてコンバージョンを促進したり、データを整理して可視化する機能も備えられている。また、様々な観点から測定したユーザーレポート、広告・集客・行動レポート、コンバージョンレポートなど、Googleアナリティクスお馴染みのレポート機能も豊富だ。サービス間連携により、Googleアナリティクスの管理画面からGoogle広告やLooker Studio、Googleオプティマイズなどのデータにアクセスすることもできる。

より詳細な分析をするためのアナリティクス360という有料サービスもあり、こちらは主に大企業向けのサービスとなっている。検索広告360、ディスプレイ&ビデオ360などのサービス間連携も含めさらに多くのサービスと連携できるほか、高度な解析や統合レポートの作成が可能など、アナリティクスの上位版といえる内容だ。価格はクローズドのため問い合わせが必要だが、Googleアナリティクスにはヒット数1,000万の上限が存在するので、大企業は必然的にアナリティクス360を選択することになるだろう。

 

SimilarWeb

SimilarWeb Japan株式会社

SimilarWeb

SimilarWeb Japan株式会社が運営するSimilarWebは、Webサイトにおける様々なトラフィックデータを表示し、市場や競合他社などの調査・分析をするサービスだ。無料版のほか、個人向けと法人向けを選べる有料版があり、法人向けプランの価格はクローズドとなっている。無料版では、約1か月分の過去データとデスクトップやモバイルを合計した全トラフィックデータを参照でき、同じく無料で利用可能なブラウザ向けの拡張機能も用意されている。

法人向けプランは指標ごとに無制限の結果を表示できるほか、各データの保有期間も長く、グローバルおよび国レベルのベンチマークが可能で、キーワード分析や業界分析といった機能も備えられている。マーケティング分野では競合分析や競合のキーワード調査、マーケティング戦略の機能が主に利用されているが、市場をベンチマーク比較する機能やリードリストを作成するリードジェネレーターなど、リサーチやセールス分野で活用できる機能も豊富である。

 

その他サービス

広告系

アドクロックアフィリコード・システムウェブアンテナROBOMA

ダッシュボード系

Actionista!YellowfinOracle Business IntelligenceGoodData
Qlik SenseTableauDomo for BIHubSpot
PentahoBOARDMicrosoft Power BIマーケティング・ダッシュボード・パック
Motion BoardLaKeel BI

データ分析系

AIアナリストCRM AnalyticsDr.SumTreasure Data CDP
VWO Experience Optimization PlatformMAGELLANみやすい解析
おすすめサービスの資料一括ダウンロード

 

 

選ぶ際のポイント

 

ECサイト運用で活用できるマーケティングデータ分析系のサービスは非常に数が多く、その違いの見極めが難しくなってきている。コストパフォーマンス重視で選ばれることも多いが、特徴的な機能や連携可能なデータソース、導入までの日数、サポート体制などがそれぞれ異なるため、目的に応じた適切なサービスを選択する必要がある。ここでは、ECサイト運用に役立つマーケティングサービスを選ぶ際に気を付けるべきポイントを見ていこう。

 

1.導入の目的を明確にする

まず、サービスを利用する目的や用途を明確にする必要がある。例えば、現行の広告効果測定をもとにCVRを改善したい、すでに自社で収集しているデータを可視化してレポートを作成したい、自社サイトの分析を多角的に行い社内の改善業務を効率化したいなどだ。運営しているECサイトの現状を踏まえ、これらのサービスに求めることを明確にしよう。

 

2.分析対象のデータと機能を検討する

導入の目的を明確にしたら、分析対象とするデータの範囲と、サービスでどのようなことを実現したいのかを明確にしていく。ECサイト運用のためのデータ分析で対象となるデータは多岐にわたり、それをどのように連携させて表示・分析するかについても、多くのバリエーションが存在する。依頼内容によっては個別見積りのケースも多いので、ヒアリングの際にスムーズに進められるよう、これらの優先順位や重要度などを事前にはっきりさせておく必要がある。

 

3.使い勝手や操作性を確認する

一見では類似したサービスであっても、デモ画面などを操作することで、検討時には気づかなかったサービスの特性や違いを把握することができる。無料トライアルや無料プランを用意しているサービスもあるので、必ず事前にチェックしておくことをお勧めする。また、導入前に必要に応じてヒアリングを実施し、機能や使い方などを提案してもらうのも重要だ。

 

4.導入・運用にかかる費用を確認する

最も気になるのが、導入・運用にかかる手間や費用だろう。サービスごとに価格帯は様々で、定額制、従量課金制など形態も異なる。初期費用や無料トライアルの有無、セットアップや構築面でのサポート、データ分析やレポート報告が改善提案まで含むかどうかなど、具体的な運用を想定したうえで費用を確認しておく必要がある。サービスによって導入前・導入後のサポートにも差異があるため、担当者のスキルや自社の現状についても把握しておく必要があるだろう。

 

 

マーケティング効果分析・ダッシュボード系サービスをしっかり活用するために

 

消費者との接点の多くがデジタル化し、企業においても多くの業務がデジタル化されてきている中で、多くのデータを閲覧・分析しながらデジタルマーケティングを推進する必要性は増してきている。そのためここで紹介したサービスは、多くの外部サービスとの連携、そして機能の柔軟性を謳うものが多くなっている。しかし、これらのサービスを使用する際に、どのような目的で、どのようなデータを確認し、どのようなアクションを行うのかを明確にしないまま進めてしまうと、早晩データの波に埋もれてしまうことになりかねない。これらの利便性の高いサービスの活用を進め、効果を高めるためにも、まずはしっかりとデジタルマーケティングの目的、KPI(どのデータが重要なのか等)、についての社内方針を決めておく必要があるのではないだろうか。

 

 

※ここで紹介したサービスの選び方を丁寧に解説した資料のダウンロードはこちらから行えます。