大手企業向けシステム開発事業を行うザ・プラント株式会社は、企業のEC担当者が2023年に解決していきたいEコマース運営の課題と、2023年に注目したい次世代テクノロジーについて「Eコマース最新動向 for 2023」の調査結果を発表した。

 

 

調査の目的

 

大手企業向けシステム開発事業を行うザ・プラント株式会社は、経済社会にイノベーションをもたらすにあたり、今後のEコマースにおける施策展開に活用するための定点観測を実施している。日本のEC事情における最新動向を考察することで、その成長に寄与する要因を分析する。

 

 

調査の対象

 

調査は、「第13回 Japan IT Week 秋」(2022年10月26日~28日開催)において、ザ・プラント株式会社のブースに訪問をした日本国内に事業所を置く企業(上場企業・未上場企業含む)合計315社のEC事業担当者・統括者に実施した。

 

 

2023年に解決していきたいEコマース運営の課題

 

「EC運営において現在課題を抱えており、2023年に解決していきたい項目(一つ)を教えてください」という質問に対し、2023年に解決していきたいEC運営の課題の第1位は「デジタルマーケティング」が35.0%で、第2位が「UI/UX」の29.5%だった。続いて3位に「オムニチャネル」15.0%、4位に「ビッグデータ」10.5%、そして5位に「パーソナライゼーション」7.5%、6位に「システムインテグレーション」2.5%となった。特に1位と2位の「デジタルマーケティング」と「UI/UX」が約3割と、課題に感じている会社が多かった。

 

「UI/UX」とは、UIはユーザーインターフェースの略で、サイト画面上で見るデザインレイアウト・色合い・文字フォントなどすべての情報をUIのことを指す。一方、UXはユーザーエクスペリエンスの略で、利用者が商品やサービスを利用した際に得られる体験や経験(使いやすさ、使いにくさ、心地よさなど)を意味している。経路が複雑で分かりにくいUI/UXは、シニア層にとっては扱いが難しく、直感や感性で操作をすることができないECは、若い世代にとっては致命的な問題となっている。

 

昨今のEコマースは、想定される顧客層の多様なニーズや流れの早いトレンドを掴み、デジタルを活用したマーケティングをいかに推進していくかで売上げが大きく変わっていくことから、2023年のEコマースにおいては、デジタルマーケティングの積極的な活用とその戦略的なプランニングが求められると考えられる。また、上記調査の要因から、2023年に重要になっていくであろうEコマースの課題は、デジタルマーケティングとUI/UXの項目が大きく占めていくであろうと推測できる。

 

 

2023年に注目したい次世代テクノロジー

 

「御社のEC事業において、2023年に注目したい次世代テクノロジーを一つ教えてください。(国内で事業を運営している法人315社に実施)」と尋ねたところ、第1位は「メタバース」の37.5%、第2位が「AI/ロボット」25.1%であった。3位に「ブロックチェーン」13.3%、4位にAR/VR/XRが10.8%、そして5位に「環境テクノロジー」8.9%、6位に「バイオテック」4.4%と続いた。

 

メタバースについては「詳細は分からないけど聞いたことがあるから」、「メディアからの情報で何となく知っている」という、メタバースに対するイメージが明確でない回答者が一定数いるものの、一番注目してされていることが分かった。

 

また、2位のAI/ロボットに関しては、Eコマースにおいて、マーケティングのオートメーション化によるトラフィック誘導が必須項目になっている傾向が見受けられる。マーケティングオートメーションは、売上の向上と業務の省力化を目的として、Eコマースに求められるマーケティング活動を自動化、効率化を図るための運営やテクノロジーで、Marketing Automationの省略語としてMAとも呼ばれている。

 

マーケティングのオートメーション化は、顧客や見込み顧客一人ひとりの興味や関心に最適化されたコミュニケーションが構築されることで、利用者との良好的な関係構築を築くことができるといえる。

 

 

EコマースのアナリストによるEC事業の市場分析

 

今回の最新調査結果を受け、ザ・プラント株式会社のデータアナリストであるウォレス・チャンは2023年に向けたECに関する市場分析について、『コロナ禍による規制が緩和され消費活動が実店舗に戻る一方、コロナ禍で活発になったオンラインは定着しつつある。例えば、経済産業省電子商取引とICT総研調査によると、オンラインにおける食品・小売はコロナ禍が始まって以来、全体として約15%の伸びを示しているほか、フードデリバリーサービスは、2019年には4,172億円であった市場規模が、2023年には6,821億円まで成長 すると予測されている。また同時に、銀行などといったこれまで実店舗にしか存在しないと思われていた分野に、Eコマースが進出していることが見受けられる。このように、EC事業は2023年以降も成長を続けていく可能性が高いことがうかがえ、この成長の機会をとらえて優れたEC事業を実現していくためには、多様化する利用者の好みや期待に応えるために、「スムーズなオムニチャネル体験」、「ニーズに合わせたUI/UX」、「パーソナライゼーション」など多様な要素を駆使しながら、円滑な顧客体験を提供していくことが求められていくだろう』と回答した。

 

さらに、ウォレス・チャンは『「メタバース」は2023年に向けて多くの関心を集めているが、実はそのコンセプト自体は、2003年のセカンドライフや2006年のロブロックスといった、メタバースの原型となる世界まで遡ることができ、決して新しいものではない。実際のところメタバースは、普及の遅れ、実用的使用例の欠如、主なプレイヤーである巨大IT企業における昨今の著しい解雇状況を鑑みても、現在の形態が大きな牽引力を持つことは難しいと考えられる。そのことからも、2023年のより現実的かつ賢明なアプローチは、お客さまのニーズをより直接的に解決することができる「既存テクノロジーへの投資」だと考えられる。

 

一方、AIは、意志ベースのカスタマイゼーション、位置ベースマーケティング、そしてチャットボットなど、多くの実用的な実績を残している。AI技術を駆使することで、企業はより精緻に顧客ターゲットを設定し、より質の高いリードを獲得し、よりパーソナライズ化されたデジタルマーケティング体験を提供することができる。さらに運用面においても、ビッグデータを活用した在庫管理、需要予測、最適化などに役立つ他、AIは感情分析をすることも可能なため、顧客レビューの複雑なニュアンスをも理解し、問題や課題の原因、そして成功体験の要因まで特定していくことができる。』と述べた。