メタバースは、収益とカスタマーセールスを改善する無限の可能性を秘めている。
「メタバース」。それは、2021年の流行語である。
企業幹部の71%は、メタバースがビジネスに適していると考えており、そのためか、ビジネスの大御所達は、すでにメタバースに足を踏み入れている。
しかし、中小企業にとってメタバースは何を意味するのだろうか?
文字通りの意味で、メタバースとは、現実のフィジカルな世界に代わるデジタルの世界である。これは、デジタルとフィジカルの世界が融合し、人々に新しい没入型の3D体験を提供するレルム(ユーザー名やパスワード、セキュリティ設定などの適用範囲)である。
その華やかさや魅力とは裏腹に、メタバースは依然として多くの懐疑論に包まれており、人々はそれを「流行」と呼んでいる。しかし、何年も前には、インターネットも「流行」と見なされていたものだ。
私たちが今置かれている状況を考えてみよう。
メタバースは、私たちが未来に期待する革命となる可能性がある。また、この革命はすでに始まっているのかもしれない。したがって、企業にとっては、メタバースの将来性を学び、利点を確認し、腕まくりをして飛び込む良い時期だと考えられる。
メタバースは中小企業にどのように影響するか?
小売業とeコマースは、メタバースがまだ初期段階にあるにもかかわらず、メタバースから最大の利益を得る立場にある業界の一つだ。
メタバースが現在のビジネスシーンにどのように革命をもたらすのか、少なくとも、進化させると期待されているのかを見ていこう。
刷新されたショッピング体験
メタバースは、デジタルとフィジカルの境界線を曖昧にし、オンラインとオフラインのショッピング体験を融合させ、より没入型のeコマースエコシステムを生み出すことが期待されている。
ビッグテック(世界的に影響力のある巨大IT企業の総称)がビジョンを実現できれば、顧客はAR/VRヘッドセットを装着してバーチャルモールに入り、仮想店舗を閲覧してデジタル販売員と会話をし、快適な自宅にいながらアウトドアショッピングを楽しむことができるようになるだろう。
そして、この「未来」の一部は、小売業におけるARの導入によってすでに現実のものとなっている。オンライン家具小売業者のWayfairとIKEAは、顧客が購入前に家具を試すことができるように、AR体験の提供を開始した。
つまり、中小企業にとってメタバースの初期の波は、ARに参入し、オンラインショッピングで購入前に商品を「試す」といった現在の顧客の期待に応える機会をもたらしているのだ。
新たな顧客エンゲージメントのアプローチ
メタバースは、現在のデジタルマーケティングのアプローチを次のレベルに引き上げ、ブランドが自社のオーディエンスと関わり、コミュニケーションをとるための新たな機会を提供する可能性を秘めている。
メタバースのアプローチにより、コミュニティ形成は、企業がバーチャルツアーや3Dウェビナーなど、ライブで没入感のあるはるかに魅力的なイベントを開催できるようになり、エキサイティングな展開となる可能性がある。これは、オーディエンスが出会い、非常にインタラクティブな方法で関わる一種のローカルな集まりとなりえるかもしれない。
このようなパーソナライゼーション機能により、企業はオーディエンスを惹きつけ、エンゲージメントを維持するための新しい方法を試すことができ、より実質的で有益なパートナーシップを構築できるだろう。
新しい形の広告
バーチャルゲームなど、さまざまな分野のエンターテインメントコンテンツでは、企業が広告を掲載して人々に見てもらう機会が生まれる。バーチャル看板も、フィジカルな看板と同様に露出を促進する可能性がある。
メタバースの没入型コンテンツの提供により、企業は3Dインタラクティブ広告を通じてオーディエンスの注意を引く新しい方法を試し、より絶大なインパクトを残すことができるだろう。
多数のオーディエンスへの露出の増加
eコマースが気軽なものとなっても、人々は依然として実店舗に直接来店することを好む。メタバースには地理的な制約がないため、顧客に対面での店舗体験を提供できる。つまり、中小企業にとって、メタバース店舗では不動産投資を抑えることができるのだ。
パーソナライゼーションを通じて、顧客は素晴らしい店舗で素晴らしい体験をすることができる。アバターが販売員となることで、個別の体験を提供し、より多くの人々にリーチし影響を与えられるだろう。
販売員とは別に、メタバースでは、各個人の道徳的、社会的、文化的信念に従って仮想店舗をパーソナライズし、webパーソナライゼーションを新しいレベルに引き上げることもできるかもしれない。
先行者利益
メタバースは、次なるインターネットとなる可能性がある。それは今世紀の転換期と考えられる。また、その転換期はあなたが思っているよりも近くまできているかもしれない。
つまり、メタバースを「起こり得る未来」として受け入れ、進歩的なアプローチを採用することで、先行者利益を享受できるだろう。
このような企業はより早くコツを身に付け、ニュアンスを理解し、競合他社がそこに行きつく前に解決策を見出せるかもしれないのだ。そして、誰よりも早く、デジタルオーディエンスの前で権威を確立できる可能性がある。さらに重要なことは、彼らは技術の進歩や法律の策定について発言権を得られるかもしれないということだ。
最終的な見解
私たちが知っているメタバースは、あらゆる規模のビジネスに前例のないチャンスをもたらす。新しいレベルのパーソナライゼーションから新しいビジネスモデルの導入まで、ブランドは、この未来的なエコシステムから多くを得ることができるだろう。
ただし、メタバースは野心的な目標と大規模な約束の産物であり、その実現は、まだ見ぬ非常に驚異的な技術力にかかっている。そのため、メタバースは地平線を照らし続けてはいるが、その隆盛はテクノロジーの進歩次第ということになる。
未来にメタバースがどのように形作られるかは別として、私たちは、拡張現実と仮想現実によって動かされる時代の入り口に立っている。関連性を維持したいと考える企業はそれに応じて準備する必要があるだろう。
※当記事は米国メディア「Entrepreneur」10/20公開の記事を翻訳・補足したものです。