小売業者にとってこれまで以上に勝負がかかっている今年のホリデーシーズン。リッチなビジュアル体験を提供することで、競合他社に先んじることができるだろう。
今年は、「ホリデーシーズンにおいては、我が家に勝る所なし」という言葉が、これまで以上に真実味を帯びている。新型コロナウィルスによるパンデミック(世界的な大流行)の影響で、消費者は実店舗の混雑を避け、代わりにオンラインショッピングを利用してホリデーショッピングを済ませようとしているのだ。買い物客は、快適な自宅から安全に商品を閲覧し、購入し、愛する人たちにプレゼントを届けることができるのである。
実際、Deloitte(英国に本社を置く多国籍ビジネスプロフェッショナルグループ)は、今シーズンのホリデーeコマースの売上高が25%から35%急増し、売上高は1,820億ドルから1,960億ドルになると予測している。eコマース事業を行なっているブランドには、増加するオンライン消費者と関わり、パイの一部を手に入れる大きなチャンスがあるのだ。非常に競争の激しい環境で市場シェアを獲得するためには、適切なデジタルツールに投資し、魅力的なオンラインカスタマーエクスペリエンスを作り出さなければならない。
ブランドがeコマースサイトを強化し、今年のホリデーシーズンおよびそれ以降にも顧客を獲得するための明確な方法をいくつか紹介しよう。
商品ビューの強化
このホリデーシーズンにおいては、小売業者は、店舗を避ける消費者向けにオンラインで正確で詳細な商品説明を提供することが、これまで以上に重要になる。買い物客は商品を触ったり、感じたり、味わったり、匂いを嗅いだりすることができないため、ウェブサイトに表示されている内容から、注文したものを受け取ったときに何が期待できるのかを直接感じてもらうようにすることが不可欠だ。これを行うために、ブランドは2つの主要な商品ビューツールを活用することができる。
商品ビューを回転 実店舗では、買い物客は商品を手に取り、あらゆる角度から商品を見ることができる。小売店は、指やマウスで商品を回転させることができる、スムーズにスピンする全方位の商品ビューを追加することで、この体験を再現することができる。これは、スタティックなスピンセット画像やインタラクティブな全方位の動画で行うことができる(使い方はこちら)。これらを使えば画面上の各商品をバーチャルにひっくり返すことができるので、買い物客は、確信して商品を購入することができ、返品率を下げて顧客満足度を向上させることができる。
ズーム機能 実店舗体験を再現するもう一つの方法は、顧客が商品のあらゆる部分をクローズアップできるようなきめ細やかなズーム機能を提供することだ。例えば、高級ハンドバッグを購入する顧客は、留め金、チャック、素材などを拡大することができるといった具合だ。そのためには、フルサイズの高解像度の商品画像が重要となる。あらゆる細部の鮮明な画像を提供し、詳細なズーム可能となることによって、ウェブサイトの効果が高まり、顧客に「カートに入れる」ことを促すことができるのだ。
ショッパブルビデオとマイクロビデオがやってくる
繰り返し言っていることだが、動画は強力で説得力のあるプラットフォームであり、消費者とのコミュニケーションに最も効果的な方法の一つである。動画は、画像では実現できない方法でメッセージを端的に捉え、静止画を超えて音や動きなどの特性を取り入れた、心を虜にするストーリーとなる。今年のホリデーシーズンには、ブランドは、ショッパブルビデオやマイクロビデオを使って、ビデオをさらに一歩発展させることができるだろう。
ショッパブルビデオ ショッパブルビデオは、拡張可能な商品バーにビデオと一緒に商品をリストアップし、訪問者が商品と触れ合い詳細を確認できるようにするものだ。このツールでは、訪問者を購入可能な関連ページへのリンクに誘導したり、対象商品を正確に強調するクリック可能なホットスポットを追加したりすることで、より魅力的なユーザーエクスペリエンスをもたらしている。動画の再生が停止したときだけリンクが表示されるのではなく、動画再生中を通してリンクが表示されるため、インタラクティブ性によって商品に命を吹き込み、クリック率を高め、ブランド認知度を向上させることができる。
マイクロビデオ 消費者の集中力持続時間は短く、ブランドは消費者の注意を得るために雑音を跳ねのけなければならない。そのため、5~20秒の短い動画であるマイクロビデオコンテンツが視聴者を引き付け、視聴者の心を揺さぶる上で重要な役割を果たしている。レスポンシブな動画にするためには、動画は元の比率を維持しつつ、画面の幅全体に拡大される必要がある。正しく行えば、この短いフォーマットは、わずか数秒でエンゲージメントとコンバージョンを高める、魅惑的で強力なチャンスを生み出すことができるのだ。
マイクロブラウザの季節
実際のeコマースウェブサイトにとらわれずに考えると、「ダークソーシャル」、すなわち、人々がプライベートチャネルでリンクを共有したときに生成されるウェブトラフィックの力を解き放つ機会もある。たとえば、人々は贈答の精神から、家族や友人にウィッシュリストを送り、クリスマスプレゼントとしてツリーの下に自分のほしい物が置かれることを期待する。消費者は、Facebook Messenger、SlackやWhatsAppなどのマイクロブラウザと呼ばれるプライベートな通信アプリを使って、これらの商品のリンクを愛する人たちに送信している可能性がある。
eコマースサイトの設計にあたっては、ブランドは、リンクがサムネイルプレビューに展開されたときに最適な画像や動画が確実に表示されるようにしなければならない。 Cloudinary(米国のSaaSテクノロジー企業)の「2020 State of Visual Media」レポートによると、リンクプレビューによって、大きなエンゲージメントの機会が提供されるが、多くのブランドは自社のサイトデザインが生成されたプレビューにどのような影響を与えているかを見落としがちであるという。ブランドがこの重要な見通しに注意を払わなければ、売上とリードにコンバージョンされる貴重なピアツーピア(コンピューター同士がデータを交信するシステム。P2P)のリコメンデーションを失うリスクがある。
ビジュアルなオンライン体験をもたらすブランドへの朗報
今年は、ブランドにとっては異例の年であり、次に何が起こるかを予測することは困難だ。だが、一つ確かに分かっていることは、ここで紹介したヒントを利用して、魅力的で没入感のあるeコマース体験を作り出すブランドは、このホリデーシーズンに確実に顧客を獲得することができるということであろう。
※当記事は米国メディア「Marketing Land」の10/27公開の記事を翻訳・補足したものです。