「日々の小さなことが幸せをもたらす」と言うが、コンテンツにおいては、モバイルブラウザの最適化のようなささいなことが、大きな成果をもたらす。

 

“small”(小さなもの)が持つ力を語るのによく使われるフレーズがいくつかある。思いつくものとして、”Good things come in small package”(山椒は小粒でもぴりりと辛い)や”small but mighty”(小さな強者)などがある。しかし、画面の大きさにおいて、特に携帯端末画面サイズの「小さな」コンテンツは、ブランドのストーリーテリングと消費者のエンゲージメントにとって非常に重要な意味を持つ。

 

マーケターや、彼らと仕事を担当するクリエイターは、注目を集めるコピーの作成、ソーシャルメディアのユーザーがスクロールの途中で指を止めるような動画コンテンツの開発、そして、ウェブサイトを長い時間楽しんでいたいと思う魅力的な場所にするようなビジュアルデザインの作成に力を注いでいる。そして、コンテンツの最適化という考え方は、マーケターにとって、本質的に「身についている」ものである。SEO(検索エンジン最適化)フレンドリーなコピーの書き方、キャンペーンを最適化するためのリンクビルディング、「ウェブとモバイル」向けに異なるバージョンやサイズのコンテンツを作成するなど、これらはすべて、マーケターがコンテンツ制作と配信の段階で考え抜いていることである。

しかし、マーケターがデジタルコンテンツを全体的に最適化するために注意を払わなければならない、比較的重要なダイナミクスがいくつかある。一つ目は、10~20秒のビデオクリップへのエンゲージメントの「マイクロ」な瞬間を活用する機会。二つ目は、2つのパートからなるトレンドであり、つまり、モバイルブラウザコンテンツの価値と、その結果たる「ダークソーシャル」空間、すなわち、キャンペーン計画で忘れられがちな、ソースに関するリファラ(紹介元)情報が含まれていないソーシャルシェアである。

 

マイクロビデオクリップは、時間と関心がないユーザーを惹きつける

米国の市場調査会社ForresterのJames McQuivey博士が10年以上前に主張しているが、1分間の動画は180万語に相当するという。博士がこの特定の数字に到達するために使用した計算方法に同意するかは別として、オーディエンスを教育するにあたって短い動画がどれだけ効率的であるかに議論の余地はない。動画を最も重要な、あるいは感動的な10~20秒のコンテンツに短縮することで、マーケターは、すぐに、視聴者の注目を集め、メールアドレスの獲得、ソーシャルメディアでのフォロー、シェアや売上であろうと、所望の行動を取らせることができる。

 

 

これらのマイクロビデオは、凝縮された時間枠の中で人々を喜ばせ、楽しませるユニークな力を持っているがゆえに、非常に効果的である。このことは、おそらく、試合のハイライト動画において、最も顕著である。スポーツファンは、大事な瞬間を、何度も追体験し、見逃したアクションをオンデマンドでキャッチアップしたくてビデオコンテンツを利用するのだ。

 

スポーツファンが、デジタルでよく利用するBleacher Report(スポーツとスポーツ文化に焦点を当てたウェブサイト)は、試合中でもマイクロビデオでハイライトを配信している。クリップを迅速に生成して公開するために、Bleacher Reportはビデオを自動的にストリーミング可能な形式にトランスコードし、品質と解像度を調整し、高速で信頼性の高いコンテンツ配信ネットワークを通じて配信するために必要な技術を取得した。

 

こうした瞬間のマイクロビデオの作成の合理化に重点を置くことにより、Bleacher Reportでは動画の視聴回数がすぐに(そして見事に)350%増加し、毎月の総動画再生回数は25%増加した。

 

消費者が切望する瞬間を捉えたマイクロビデオ配信方法

マイクロビデオはコンバージョンにつながるものだが、利用可能なすべての販売チャネルとエンゲージメントチャネルで実行することもまた難しい。プラットフォームによっては、ヘッダーや付随する説明文を書く必要がある。動画コンテンツは、縦横比に合わせて調整する必要があり、適切なアスペクト比を維持しつつ画面の横幅に応じて拡大しなければならない。

 

 

別の方法としては、静的なサイズ変更があるが、ページレイアウトが崩れたり、画像がゆがんだり、ビデオクリップの両側に黒いバーが表れたりして、優れたコンテンツの「すごい」と言わせる要素を制限しかねない。忘れてはならないのは、適切なビジュアルエクスペリエンス提供するために数秒しかないということだ。それを逃せば、人は前のページにスクロールしたり、ウェブページを離れてしまうかもしれないのだ。

 

マイクロビデオでは、小さな調整が大きなインパクトを与える。マイクロビデオ体験を、可能性を秘めたマーケティングの「財産」にするには、次の2つの方法がある。

 

・トリミング – レスポンシブ動画では、デスクトップコンピュータ、タブレットやスマートフォンの画面サイズに応じてコンテンツが調整されるため、最も重要な要素が表示され続けていることを確認すること。コンテンツを認識するAIと機械学習技術を活用して、すべての動画について異なるアスペクト比で複数のバリエーションを作成する作業を動的に行うことで、マーケティングチームは手間のかかる編集作業をしなくて済む。

 

・字幕 – ほとんどのYouTube動画は音声ありで再生されるが、Facebookで視聴されている動画コンテンツの85%は音声なしで視聴されている。この理由から(またウェブアクセシビリティとADA(米国の障害者差別に関する法律)コンプライアンスの一般的なベストプラクティスとして)、マイクロビデオのコンテンツに合わせて字幕を作成すること。

 

「小さくても強力な」モバイルブラウザのための最適化

動画だけでなく、コンテンツをより広いアングルで観ることができるようになった今、モバイルブラウザを介して共有されるピア・リファラルの傾向が高まっていることを理解することが重要だ。この言葉になじみがない場合は、テキストメッセージで共有されるURLや、Facebook Messenger、Slack、WhatsAppなどのプラットフォーム上でやり取りされるリンクを考えてみてほしい。米国のSaaSテクノロジー企業Cloudinaryの”State of Visual Media 2020 Report”によると、米国の62%の人がiMessage(Appleが開発したインスタントメッセージサービス)経由でリンクを共有しており、マーケターが把握していないことが多いモバイルブラウザのプレビューを作成しているという。たとえば、iMessageは、最適なモバイルブラウザビューを提供するためにデータを表示するよう設計されているが、すべてのモバイルブラウザが同じ動作をするわけではない。

 

これらのモバイルブラウザ上のリンクが、有効なコンテキストを生成せず、画像であろうと動画であろうと、URLから自動生成される関連するサムネイルプレビューが欠けていることに気づいたことがあるだろう。これらのモバイルブラウザのプレビューは、サイズは小さいものの、ユーザーのエンゲージメントに関しては非常に効果がある。しかし、残念なことに、多くの企業やブランドは、自社のウェブサイトやコンテンツのデザインが、生成されるプレビューにどのような影響を与えるかを考慮していない。マーケターは、フロントエンドの開発者と早い段階で連携することにより、魅力的な画像、動画やテキスト情報を適切にモバイルブラウザに読み込ませることができるはずだ。

 

 

モバイルブラウザのプレビューを最適化することで、ピア・ツー・ピアのレコメンデーションが望ましい結果をもたらす可能性が高まる。モバイルブラウザのアクティビティを事前に計画していないと、魅力的なマーケティング活動のインパクトにマイナスの制限がかかる。このため、マーケティングチームと開発チームは、ビジュアルエクスペリエンスがすべてのチャットアプリとメッセージングアプリにおいて一貫していることを確認すべく協力する必要がある。

 

モバイルブラウザの問題を修正し、マクロROIを取得するための早見表

CloudinaryのState of Visual Mediaレポートによると、モバイルブラウザ内で共有されているリンクの3分の1以上(36%)では、キャンペーンIDが変更されているという。キャンペーンのユーザーがリンクをコピー・アンド・ペーストした場合、その元のキャンペーンが紹介元としてクレジットされる。全体像を理解していないと、大きな機会を逃すことになる。つまり、キャンペーンの有意義なインサイトを隠す「ダークソーシャル」空間ということだ。

 

間接的なモバイルブラウザのトラフィックとソーシャルメディアとの関係を理解することで、コンバージョンが実際にどこから生じているのか、また、ROI改善のために支出を増減すべきかを関連づけることができる。視界に入っていないのか、あるいは少なくとも間違った属性から、モバイルブラウザからウェブサイトへの直接のトラフィックフローのパーセンテージとレポート分析を見て、リード(見込み客)はFacebook経由だと考えるようになる人がいる。実際には、そのサイト訪問はピア・リファラルの結果であり、それを正確に知ることは、マーケティングチームがより良い計画を立てるのに役立つ。

 

リンクの「展開」は、モバイルブラウザリファラルのもう一つの技術的な側面である。展開されたリンクは、プライベートメッセージの中にあるウェブページのプレビューであり、前述のように、ブランドの第一印象を形成する。友人や家族とリンクを共有した人によって、すでにリードは限定されており、マーケターは、プレビューが不十分であったり、誤解を招いたりするような内容、または魅力的ではないという理由で、その機会を逃すようなことがあってはならない。

 

マーケターは開発者とコミュニケーションを取りながら、コンテンツが作成され、適切に展開されるように最適化されていることを確認する必要がある。ベストプラクティスとしては、以下のようなものがある。

 

・特定の(そして感動的な)展開用の画像や動画を選択 – デフォルトの写真や動画が自動的にページから引き出されることを期待するのではなく、受信者にクリックして表示させるために最適のものを意図的に決定するのだ。理想としては、ウェブページのヒーロー画像ではなく、クリックの背後にある「なぜだろう」を最もよく表す画像やビデオであるべきだ。誰かがハンドバッグや新しい電子機器を見るためのリンクを送ってきた場合は、商品が小さすぎて本当にみることができないような会社のロゴやライフスタイルの写真ではなく、商品が目立つようにすること。

 

・ショートムービー「ナノストーリー」やアニメーションGIFの利用 – 今のところ、展開されたプレビューで動画を表示しないモバイルブラウザがいくつかあるため、事前に計画を立てておけば、他のモーショングラフィックスやビジュアルを使用することで同じような見栄えや雰囲気を作り出すことができる。

 

・エンゲージメント向上に向けたビジュアル調整 –  メディアファイル自体に、ユニークな名前が付けられている場合、開発者は、マーケターに、展開された画像や動画が取得された頻度を示す分析を提供することができる。ハンドバッグを持っている様子をクローズアップしたショットで誘導している場合、関心のある買い物客のクリック率はどれ位だろうか?季節感のあるものや違った観点のものと入れ替えることでエンゲージメントは向上するだろうか?データが伝えるストーリーに注意を払えば、モバイルブラウザのコンテンツによって、より多くの人をサイトに導くことができるだろう。

 

 

我々の多くは、人生の中で「小さなことでくよくよするな」(”Don’t sweat the small stuff”)と言われてきた。しかし、マーケティングでは、小さなことに気を配ることが、実際に効果をもたらす。画面に費やす時間が増え、視聴者の獲得競争が激化しているデジタル化の進む世界では、マイクロビデオやモバイルブラウザの「小さな」細部に注意を払うことは、見過ごすことのできないチャンスなのだ。

 

※当記事は米国メディア「Marketing Land」の9/24公開の記事を翻訳・補足したものです。