AIマーケティングとは何か、なぜ重要なのか

 

パーソナルな方法を用いて大きな規模で顧客のエンゲージメントを得るには、AIや機械学習が必要不可欠だ。チャットボットやバーチャルアシスタントは、すでにクライアントとのやり取りに活用されており、AIが生成するコンテンツは実用化が迫っている。データの分析や解釈を人間の能力を上回るスピードと量で処理することができるAI。アルゴリズムの改良も続いており、ほぼリアルタイムでの最適化が進んでいる。AIの改良に伴い、使用事例は増える一方だ。

 

マーケティングにおける人工知能(AI)は、機械学習を活用して自動的な意思決定を行う。AIを活用することで、ブランドは予測モデリングや高度なセグメンテーション、パーソナライゼーションを通じて、マーケティングキャンペーンのROIを強化することができる。

 

この記事では、マーケティングにおけるAI技術の価値について深く掘り下げる。内容は以下の通り。

・AIマーケティングが重要な理由

・B2Bマーケティングにおける人工知能のメリット

・人工知能の構成要素

・マーケティングにおける人工知能の例

・AIマーケティングについてよくある質問

・AIマーケティングの課題

・人工知能はマーケティングの世界をどう変えているか

・AIマーケティングの詳細

 

AIマーケティングが重要な理由

AIはデジタルマーケティングを変え、マーケティングキャンペーンを効率化しながら、ヒューマンエラーのリスクを減らしてきた。真に消費者とつながるために、特に、思いやりや共感、伝えたい思いについては、まだ人間味を必要としている。しかし、予測分析やデジタル広告のようなマーケティングにおける特定の側面に関しては、AIはかなりのことを実行できる。例えば、顧客のニーズを理解し、そのニーズに製品やサービスを合わせることを目的とする場合、AIは活躍する。

 

米国のコンサルティング企業、McKinseyが2020年に行った調査では、マーケティングやセールス部門のAIの導入率は全部門の中で3番目に高いという結果が出ている。さらに、この調査では、「少数ではあるがさまざまな業界で、組織の金利税引前利益(EBIT)の20%以上はAIによるものだという回答がある」との報告もあった。

 

その後、マーケティングへのAIの利用は増え続けている。利用率の増加する中、こうした技術の導入を検討していないなら、そのブランドは取り残されるリスクがある。競合他社は、結果を出し、売上を伸ばし、顧客を引き留め、新商品の販売をより効果的にするためにAI戦略を取り入れているのだ。

 

B2Bマーケティングにおける人工知能のメリット

ビジネス営業向けに特別に設計された人工知能マーケティングツールは数多くあり、B2Bベンダーはパーソナライゼーションや機械学習などの力を活用することができる。AIを活用したワークフローから自動化されたネクスト・ベスト・アクション機能まで、AIはB2B特有の課題を企業が解決するのに役立っている。

 

ここで、B2Bマーケティングにおける人工知能のメリットをいくつか紹介しよう。

 

キャンペーンROI

AI技術のおかげで、B2Bマーケターはデータやキャンペーンのパフォーマンスをより正確に予測できる。そして、そのキャンペーンを最適化し、ROIを最大化するための提案を行う。マーケターは、AIを効果的に活用することで、マーケティングキャンペーンを変革し、最も価値のあるインサイトを抽出してリアルタイムに行動することができる。例えば、最も効果的な広告配置を分析し、エンゲージメントを高めることができるだろう。

 

より良い情報に基づいた意思決定

データ統合の自動化は、手作業に代わって、より迅速なリアルタイムの意思決定を可能にする。目標は実用的な顧客インサイトを速やかに得ることだ。例えば、予測分析の助けを借りれば、購買決定を予測するのに役立つ購買パターンにアクセスすることができる。B2Cモデルと比べB2Bモデルの方がこうした購買パターンを見抜くのが複雑な場合が多いが、AIの力を借りれば大逆転もあり得るだろう。

 

マーケティングメトリクス

キャンペーンの効果を追跡する機能は、マーケティングROIに大きく影響する。人工知能は、無数の顧客タッチポイントの成果をモニタリングすることで、キャンペーンの最適化を支援する。

 

より良いデータマネジメント

AIマーケティングツールは、不適切なデータ解釈のリスクを大幅に低減し、最適なデータ統合をサポートし、データサイロ(他部門などがアクセスできないデータ)を解消することもできる。AIマーケティングツールは、AI技術を活用し、収集したデータに基づいて意思決定を自動化するソフトウェアなのだ。

 

人工知能の構成要素

人工知能は、マーケティングプログラムを拡張できるさまざまな機能や能力を含む。ここではその主な構成要素を紹介しよう。

 

機械学習

機械学習は、範囲が非常に限られているタスクの自動化ではなく、大量のデータを使用し複雑な予測や決定をするよう教え込まれたアルゴリズムに依存している。機械学習モデルは、文章の解読や画像の認識、オーディエンスセグメンテーションの実行、そして、さまざまな施策に顧客がどう応えるかを予測することまでもが可能だ。さらに重要なことは、その名の通り、管理をせずともそれ自体が自身で修正し、改善することができる点である(ただし、人間の管理が必要とされる場合も多い)。

 

AIを利用したプラットフォーム

今日、多くのマーケティングプラットフォームはAIを「織り込み済み」であり、大量のデータを分析し、インサイトを得るためにAIを使用している。マーケティングスイート(デジタルマーケティングに用いられる各種の機能が網羅的に提供される一連の製品群)の多くは、それらが提供するソリューションのクロスプラットフォームサポートを提供するAIの構成要素を備えている。例として、米国に本社を置き、顧客管理ソリューションを提供するSalesforceが提供するEinsteinや、Adobeの提供するSenseiなどがある。

 

特定の作業を行うプラットフォームも利用可能だ。例えばAIを利用したコンテンツ作成プラットフォームだ。一部のソリューションは、eメールやTwitterのような特定のソーシャルメディアプラットフォーム用のコンテンツを作成する。また、SEOのためにコンテンツを最適化するソリューションもある。

 

ビッグデータと分析

データを収集することと、それを効果的に分析することは別物だ。AIは、人間の及ばない規模でデータを分析し、解釈するという課題に対する1つのソリューションを提供する。B2BマーケティングでAIを使用することで、膨大な量のデータを効果的に分析し、そのデータを連結させ、パターンを認識し、予測を推進することができるのである。AIは、データを得られるほど学習や改良が進むが、感情知能はまだ不足している。このため、データ管理やデータカタログの整備などに、人による管理が必要であることと同様に、データ管理や分析においても、人が重要な役割を果たし続けている。

 

マーケティングにおける人工知能の例

業種を問わず、多くの企業が独自のAIマーケティング戦略を実行している。ここではいくつかの一般的な例を紹介する。

 

AIチャットボット

米国に本社を置き、ヘルスケア向けのソフトウェアソリューションを提供するSTCHealthは、ワクチン関連の質問への回答と免疫記録へのアクセスのサポートにバーチャルチャットボットを活用している。自動化された、AI搭載の会話型マーケティングプラットフォームのBotco.ai(本社:米国)は、一見不可能と思われたことを可能にした。この自動化プラットフォームのおかげで、同社は200万回のチャットボット操作で約52,000人の時間を節約することができた。

 

視覚的知能

米国に本社を置く電動アシストスポーツ自転車メーカーのSerial 1は、機械学習とAIを活用した米国のビジュアルインテリジェンスプラットフォームのVizit利用して、消費者に最も響く画像を判断した。その結果、Serial 1はデジタルアセットを最適化し、ウェブサイトのコンバージョンを98%上昇させた。この使用事例はAIマーケティングがより良い意思決定につながることを示す典型的な例だ。

 

中小企業向けのAIプラットフォーム

米国に本社を置き、メールマーケティングプラットフォームを提供するMailchimpSmart Platformと呼ばれるツールを使って、中小企業にAIを導入している。最新のツールのいくつかは、中小企業にコンテンツ制作の自動化や動的レコメンデーションへのアクセス、カスタマージャーニービルダーの活用を可能にしている。

 

AIマーケティングについてよくある質問

AI技術は何十年も前から存在しているが、多くのブランドはいまだにマーケティングプロセスにどのように適用すればよいのか悩んでいる。ここではよくある質問を紹介する。

 

AIと自動化の違いは?

AIは、人間の思考過程を模倣して問題を解決するよう設計されたソフトウェアだ。一方、自動化はプログラムされたルールに従って、人間がほとんど、または、まったく介入することなく大規模な作業を達成する技術を指す。

 

ブランドは、マーケティングの過程を改善するためにこれら両方のツールを使う。AIは、その機械学習能力でマーケターが需要創出を最適化し、顧客行動の分析によるパーソナライゼーションを向上させる助けになる。自動化はタスクを繰り返す大量の作業に役立つように設計されている。

 

マーケターにAIは必要か?

デジタルの世界では、マーケターは異なるデバイスやチャネルを利用するオーディエンスを理解するために、より良い方法を必要としている。一方ブランドは、AIを使わなくても顧客と関わることができるが、テクノロジーが進化するにつれて、これらの取り組みを拡大することはますます難しくなるだろう。ブランドが見込み客や顧客と個々に、だが大規模に関わりたいならば、AIは不可欠だ。

 

AIマーケティングの課題とは?

前述のように、マーケティングチームのメンバー全員がAIを熟知していなくても、そのメリットを享受することができる。しかし、この体験をしているメンバーが少なくとも1人はいなければ、システムに組み込むことは難しいだろう。

 

ブランドは、AI技術に必要なデータやリソースを処理するツールを持っていないかもしれない。そのため、多くのマーケターがこれらの需要をより効果的に管理するために、マーケティング作業管理プラットフォームやその他の有用なテクノロジーに目を向けている。

 

人工知能はマーケティングの世界をどう変えているか

企業は、マーケティングキャンペーンや戦略、ツールに人工知能を導入することで、多くのことを成し遂げられるだろう。

 

目標がウェブサイト上の消費者行動を調べることでも、カスタマイズされた広告キャンペーンの開発でも、AIは極めて重要な役割を果たすことができる。ソーシャルメディアからSEOまで、これらのテクノロジーから大きな恩恵を受けるだろう。

 

AIがマーケティングの状況を変え続ける方法には、次のようなものがある。

 

デジタルの世界は、特にオンラインを利用する人が増え続けているため、今まで以上にデータに左右される。

  • チャットボットによる顧客サービス

顧客は、要望にすぐ対応してほしいと考えている。そして、チャットボットにAIを活用することで人手を減らしつつ、顧客の要望を効果的に扱える企業もある。

  • 広告キャンペーン

今やキャンペーンは、より正確に最適化し、ターゲット化することができるようになった。

AIの進化が続けば、日々のマーケティング業務に混乱が生じる。しかし、AI技術によって今後数年間は、高度なマーケティング戦略を可能にし続けることが期待できる。

 

AIマーケティングの詳細

機械学習やAIの導入成功例についてもっと知りたい場合は、以下の記事も参考にしてほしい。

 

AIは近い将来、多くの組織でパーソナライズされたコンテンツを実現するようになるだろうという、米国に本社を置くAIクリエイティブプラットフォームのPersadoによるレポート。

不確かな時代でも、AIを活用した予測分析によって、マーケターが次に来るチャンスを把握することができる。

通話を追跡する機能は、通話分析技術の中核となる使用例だ。しかし、機械学習や人工知能(AI)の進歩で、より高度なアプリが可能になりつつある。

AIを活用した共同作業管理によって、マーケティングチームは競合相手や在宅勤務の課題に対応できる。

 

※当記事は米国メディア「MarTech」の4/22公開の記事を翻訳・補足したものです。