ブランドは人を必要とし、人はブランドを必要とする。ブランドと人がつながるために、サードパーティCookieは必要か?

 

サードパーティCookieが廃止されても、すべてが変わってしまうわけではない。それでも、デジタルマーケターは、不透明な未来への対応に追われている。ブランドは、ファーストパーティのデータソリューションの構築と運営に力を入れることにより、いわゆる「サードパーティCookieのない世界」への準備が整うだけではなく、自社が保有する顧客情報を賢く活用することも可能となる。ブランドが、自社データを活用して、顧客や見込み客についてよりよく知ることにより、多大な効果が生まれるだろう。

 

堅実な計画がなければ、サードパーティCookieが消滅するにつれて、匿名のサイト訪問者の確認やメッセージのリターゲティング、キャンペーン効果測定などの機能は低下していくだろう。

 

しかしこれは、実際にはCookieではなく、ID(アイデンティティ)の問題だ。

 

データ主導のパーソナライズされたマーケティングを成功させるには、正確にID情報を取得し、人々と有意義な関係を築くことが重要だ。ここでいう「人々」には自社マーケティングデータベースに登録済の、すでに認識している顧客や見込み客だけではなく、まだ知らないが、より深く理解したいと考えているオーディエンスも含まれる。

 

異なるデバイス間で、誰が同一の個人なのか、また、誰が別の個人であるのか認識し、特定の個人にどのように反応し、交流したいかを理解し、すべてのチャネルにおけるその個人のバリエーションをすべて紐付け、ブランドのIDグラフを作成する。

 

長期的に有用なグラフを作成するためには、常に個人情報を評価し、追加もしくは却下する必要がある。そして、ブランドと個人間のすべてのタッチポイントに統合されていて、容易にアクセスできなければならない。

 

ブランドに「自社構築」戦略を勧めているのではない。すべてのパートナーシップを取り止めるものではない。強固でリアルなソリューションを生み出すことが重要である。それには次のような方法が考えられる。

 

 

1.現状を評価する

有意義なつながりを構築するために、現状を評価し、目標を検討する。そして、目標を実現するには、人々の何を理解すればいいかを逆算して考えるべきである。現在、その情報はどこから取得しているのか。サードパーティCookieがなくなると、何を失うのか。自社のアウトリーチと顧客の興味が交わる地点において、誰が自社ブランドに関わっているかを知る必要がある。もし、サードパーティCookieを頼りにしているなら、深刻な問題である。例えば、小売業者は、行動ターゲティングとフリークエンシーキャップ(広告表示回数の制限)ができなくなった場合、消費者の購買経路において、適切なタイミングで、適切な人に適切なメッセージを作成し、送信することが難しくなる。

 

 

2.ファーストパーティの未来を受け入れる

ファーストパーティIDは、新しいマーケティングエコシステムの新たな主流である。IDやデータ、テクノロジーを、プライバシーファースト・アプローチによって組み合わせることで、ブランドが顧客中心のビジネスを構築する基盤が生まれる。人とブランドやパブリッシャーとの関係の基盤になるのはファーストパーティエンゲージメントなのだ。

 

 

3.IDを自社で所有する

業界の規制により、ブランドが自社所有データを「コントロール」し、データプロセッサー(IDプロバイダーかアドテックパートナーのような会社)に対し、必要な場合にのみ自社データへのアクセスを許可する傾向が強まっている。そして、ファイヤーウォール外での共有やアクセスに関しては、厳格なプライバシーおよびセキュリティポリシーが適用される。

 

 

4.(完全な顧客像を把握するまで)妥協しない

ブランドは、プライベートIDグラフが必要だ。これは、個人が顧客になる通常の過程で収集された個人を特定可能な既知情報を保存するための技術インフラである。eメールアドレスや住所などだ。このような既知情報には価値があり、ブランドのデジタルマーケティングに大きな利益をもたらすこともある。さらに、今日の世界でブランドは、世帯、個人、デバイス、統合地理、企業、組織を含むグラフ内の決定論的データに倫理的に接続するために、仮名加工データを保存し、サポートしなければならない。

 

 

5.価値を証明する

ファーストパーティのタグは、数週間で運用が可能になり、概念実証を提供し始める。ファーストパーティのユニバーサルタグは、オウンドメディア(企業自らが管理・運営し、情報を発信するメディア)やペイドメディア(企業が費用を払って広告を掲載する従来型のメディア)に設定する。タグはマッチングを拡張し、露出、クリック、サイトアクティビティなどのデータを拡張性のあるプライベートIDグラフにリアルタイムで戻す。タグとデータストアやAPIを組み合わせたリアルタイム機能により、10ミリ秒未満で意思決定が可能となり、プラットフォームに、カスタマイズされ、関連性の高い、魅力的なメッセージを配信するために必要な情報(と貴重な時間)を提供する。

 

 

6.透明性を確保する

ブランドや「管理者」は、既知の顧客だけではなく、ウェブサイトの訪問者や、ペイドメディアの利用者のプライバシーと権利を保護する重責を負っている。処理担当者は、信頼できるパートナーとして、また、ブランドの直接的な拡張機能として行動するべきである。そのためには、透明性、プライバシー、安全性をそれぞれのステップで最高水準に保つために、高精度で拡張性がるリアルタイムの消費者認識、有効化、測定を構築し、維持するための人材、プロセスやテクノロジーを提供する必要がある。これらはすべて、ブランドが所有するプライベートな環境において行うことが必要だ。

 

 

今すぐ取り組むこと

今こそ、自社プライベートIDを管理する取り組みを始めるときだ。既存のソリューションを、自社を取り巻く環境や、独自の業務上のニーズに適応させるためのテストを行い、学ぶべきである。それは実行可能であるし、長い間多くの欠陥があると認識されてきたサードパーティのCookieを使った場合よりも、良い結果が得られる可能性があるというのは良いニュースだ。数週間のうちに、ファーストパーティのデータの価値を証明し、移行を開始することができる。

 

 

※当記事は米国メディア「Marketing Land」の5/10公開の記事を翻訳・補足したものです。