人は何千年もの間、物語を語り継いできた。良い物語の要素はどの時代でもほとんど変わらない。物語は、人を楽しませたりつないだりするだけでなく、自身の信念や趣向、願望などの情報も伝えるものである。

 

ブランドは、まったく同じ方法で物語を使用する。優秀なマーケティング担当者は、ブランドが自社の商品やサービス、それを提供する方法、その目的や理由をデモンストレーションする際には、物語を活用することがいかに重要であるかを理解している。優れた物語の構成要素は今までと変わらないが、新しい広告技術が登場したことで、デジタル時代の物語を伝えるプロセスはかなり進化している。

マーケティング担当者にとって、優れたストーリーテリングや広告に関する指針と基本原則と基づいた新しい技術を活用することは必須である。現在では、一般的でシンプルな物語ではなく、複雑な枠組みを構築し、適切な場所に、適切なタイミングで、適切なデバイス上に、適切な順番でメッセージを送信し、ターゲットとするユーザーの注目を集めることができる。物語は、もはや型にはまったものではなく、ユニークなバリエーションがどんどん増えている。以下は、デジタル時代におけるブランドストーリーテリングの新しい要素の概要である。

 

物語はリアルタイムであるべき

焚火を囲んで物語を語るとき、オーディエンスのリアクションに応じて、新しい情報に内容を変化させることができる人が、上手な語り手である。現在のデジタルブランドの物語も同様でなければならない。新しく出現した自動化ツールがこれを可能にしている。自動化によって、瞬時にデータの分析し実行することが可能となり、さまざまなデータソースを利用した適切な広告を即時に表示することができるのだ。

創造性とストーリーテリングをサポートするリアルタイム広告の最も重要な活用方法の1つは、ユーザーが以前にオンラインで閲覧した商品に関連する広告を配信するダイナミック広告である。これによりパーソナライゼーションだけでなく、効率を高め、最適化を向上させることができる。要するに、ダイナミック広告では、自動化によって同じ商品やサービスに関する広告でも複数の異なるバリエーションで配信できるため、配信先であるユーザーに最も適切なメッセージを含むバージョンを表示することができる。例えば旅行会社は、ユーザーの航空便の選択に関する実データを取得し、そのユーザーの旅行についての嗜好、閲覧したアクティビティや旅行先などに応じて、関連するパッケージツアーや価格情報をユーザーに提供することができる。

 

物語にデータレポートを活用すべきである

データレポートとアトリビューション(間接効果)は、広告の創造性スペクトラムにおいて、ストーリーテリングの対極にあると見なされることが多い。しかし実際には、レポートはブランドストーリーテリング過程の重要な要素となっている。

ユーザーの広告に対するインタラクションについての正確なデータレポートは、インテリジェントリターゲティングに活用でき、複雑で適応性のあるキャンペーンの実施に役立つ。広告サーバーに記録されたユーザーインタラクションを使用して、リアルタイムセグメントを構築することができるからだ。これを実行することで、関連した広告クリエイティブを活用し、物語を構築することができる。基本的なストーリーフレームワークの構築には、分析やデータ、創造性の関連性が重要である。

 

物語はリーチのために構築しなければならない

広告技術によりますます多くのチャネルへのアクセスが可能になったので、広告主は視野を広げて、さらに多くのユーザーに語りかけることができるようになった。新しいチャネルやメディアにより、さらに興味深く感情的なストーリーテリングが可能になり、広告主はこれらのさまざまなプラットフォームを最大限活用するために、メッセージングを適応させる責任がある。現代のブランドストーリーテリングは、複数のデバイスを使用して日常のインターネットブラウジングを行うユーザーをフォローできるように構築しなければならない。モバイル、タブレット、ノートパソコンやデスクトップパソコンから、同じユーザーにリーチすることは、常に課題となっている。特に、どのようなときにどのデバイスを使用しているかというユーザーの嗜好を理解することは難しい。例えばオンライン購入を行う際に、携帯電話のアプリ利用を好むユーザーもいれば、ノートパソコンを好むユーザーもいるからだ。

効果的なリターゲティング、ウェブサイトの特定の訪問者に特定の広告が表示される回数を制限するフリークエンシーキャップ、ユーザーの広告に対するインタラクション測定のためには、これらの好みを理解しなければならないだろう。クロスデバイスは、現代のストーリーテリングの柱であり、異なるデバイス間でシーケンシャルメッセージング(決められた順番通りに送られるメッセージ)を成功させるためにも必要だ。

 

関連性とリアクションを無視しない

関連性とリアクションは、常に優れたストーリーテリングの基礎であり、消費者の期待が高まるにつれてデジタル時代ではよりいっそう重要なものである。関連性の点でデータは、広告とユーザーを近づける可能性のあるルネサンスをもたらす。実際、デジタル広告改革の背景にある重要な推進要因は、パーソナライゼーションの賜物だ。広告主はもはや無駄に宣伝を行わないが、代わりに、少なからずオファーに関心を持っていると想定されるユーザーに物語を伝えることができる。

その一方で、優れた物語はリアクションを引き出すものでなければならず、マーケティング担当者は、彼らが提供する物語が適切なリアクションを引き出すようにデザインされているかどうか確認する必要がある。マーケティング担当者は、データを使用して、適切なオーディエンスを見つけ、広告が多くのユーザーに届いているか確認できるのだ。その一方で、広告は、オーディエンスに行動を起こさせるような感情的なつながりを形成するものである必要がある。

 

テクノロジーは、ブランドが物語を展開する際、ユーザーと広告主間の継続的な相互関係を築くのに役立つだろうし、役立たせるべきである。テクノロジーは現代のブランドストーリーテラーにとって代わるものでも、妨げるものでもない。正しく活用すれば、テクノロジーは物語によりいっそう力を持たせることができるのだ。

 

※当記事は米国メディア「Marketing Land」の12/6公開の記事を翻訳・補足したものです。