ブランドと顧客との関係を変革し続けるデジタル・マーケティング。これにより全ての産業がより良くなったと言っても過言ではない。
これは確かに大げさに聞こえるかもしれないが、考えてみて欲しい。マーケティング担当者は以前よりもデータ志向の洞察力を持つようになった。そして、主要なデモグラフィックデータにより当てはまるよう、これらの洞察を活用している。
※この記事は、顧客に合ったデジタル・マーケティングを提案するアメリカの会社Mapp Digitalの最高マーケティング責任者であるMatthew Langie氏によるMobile Marketing Watchへの特別投稿を翻訳したものである。
コンバージョンを増やすための顧客とのコミュニケーション方法とデータ志向の戦略には、多くの新しい手段がある一方、業界が解決すべき厄介な課題はまだ残されている。これから業界全体に及ぶ主要課題3点とその解決方法について述べよう。
あまりにも複雑で費用が高く、多大な時間が必要であること
アメリカのマーケティング調査会社Ascend2の「マーケティングテクノロジーの動向調査(2017年1月)」によると、企業と消費者間の取引に関わるマーケティング・インフルエンサーの半数近くにとって、不十分なテクノロジー統合がマーケティング・テクノロジーの成功を妨げる大きな障壁となっている。加えて、50%の企業が「テクノロジー統合は成功への重大な障壁である」と指摘し、たった37%の企業だけがマーケティングシステムを幅広く統合し、4%の企業はマーケティング技術を全く統合していないとその調査で述べた。
デジタル・マーケティングの複雑さを解決することは、多くの人が思うほど難しいことではなく、費用をかける必要はない。また、成功・成果・主要成果指数(KPI)を達成するために、大勢のデジタルエキスパートも必要ない。統合が容易でオープンな今日のデジタル・マーケティングのプラットフォームを利用することで、新しいテクノロジーとこれまで受け継いだものや社内システムを統一するという課題は非常に簡単なものになる。例え、社内のITチームやデジタル・マーケティングのパートナー、または代理店でなくても、それは可能なことだ。
サイロ化された縦割りのテクノロジー
顧客体験はテクノロジーやデータ、分析、企画によって形成されている。情報テクノロジーは普及しているだけでなく、市場の差別化や事業成長、収益を得るための主要な原動力だ。消費者がブランドとテクノロジー体験の区別がつかない世界に猛スピードで向うにつれ、改革されたマーケティングチームとITチームは、共同で顧客体験を自ら作り上げる責任がある。
大手コンサルティング会社のAccentureは、最近のレポートでこれについて触れている。最高マーケティング責任者と最高情報責任者は、これまでにないほど緊密に連携して仕事をしなければならない。新しいデータ管理のプラットフォームが利用できるようになり、サイロ化されていた縦割りのデータを一括管理することが可能になった。そうすることで、多様なチャネルやシステムを通じて、顧客を“360度”理解できるようになるのだ。これらの新しい簡素化されたツールにより、最高情報責任者と最高マーケティング責任者は、自社のメッセージを組織化できるという新たな能力を持ち、最終的に顧客体験を高めることも可能になるという。
顧客特定の難しさ
もう1つの重大な課題は、チャネル間の顧客の特定だ。成功へと繋がった顧客の経路を特定する必要はあるが、それを実際に行うのは難しいかもしれない。顧客のデータベースに収集された情報は、往々にして各顧客の多様なプロフィールや、欠落または間違った情報が混在する“不純物の混ざった”データだ。例えば顧客がオンラインで買い物をすると、能動的(支払フォーム経由)、受動的(クッキー経由)の両方の方法で、多くの個人データが提供される。一企業はそれらの情報により、顧客を迅速に特定することが可能だ。しかし、実店舗ではしばしば、匿名で暗号化されたクレジットカード番号だけが収集される。これは、正確な顧客プロフィールを構築するのに決して十分な情報ではない。
また、一部のブランドはデータにアクセスできるが、企業は潜在的なプライバシー問題によって顧客を動揺させるリスクを望んでいない。この傾向は、EU(欧州連合)が導入予定の、個人情報・個人データの扱いに関する新しい規則「GDPR(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)」が施行されることにより、一層顕著になるだろう。
デジタルに精通した今日の顧客は、全てのチャネルで一貫した体験を期待している。彼らは各個人として待遇され、ブランドが彼らをちゃんと知っていて、企業が彼らのニーズを理解していると思いたいのだ。
デジタルマーケティングで成功するためには、企業は、最初のブラウジング(ウェブ閲覧)から目的地へと正確に着地するまで、究極のデジタル体験を提供する必要がある。その他大勢から抜きん出るために、関連性のある技術とテクニックを結び合わせること、パーソナライズ化されたメッセージを送ること、そして、顧客がブランドに親近感を抱けるようにインパクトを与える時期に来ているのだ。
※当記事は米国メディア「Mobile Marketing Watch」の12/27公開の記事を翻訳・補足したものです。