クリック数や視聴時間が少ないからといって、必ずしもコンテンツが悪いわけではない。多くの場合、それはあなたの戦略がYouTubeの仕組みと合っていないことを示している。


YouTubeに動画を投稿する際に、ブログと同じアプローチを使う人は少なくない。一見すると、それは理にかなっている。YouTubeとGoogle検索は、まるで親戚のような関係に見える。

  • どちらも同じ企業が所有している
  • どちらもアルゴリズムを採用している
  • どちらも関連性に基づいてコンテンツを表示している

多くのB2Bコンテンツチームは、ブログのSEOで効果的な方法(キーワード調査、メタデータ、タイトルなど)を動画にも適用している。しかし、YouTubeは全く異なるルールに従っている。Googleがトピックの深みと権威性を重視するのに対し、YouTubeは「行動」を重視している。

  • 何がクリックされるか
  • 何が視聴されるか
  • 何が人々のエンゲージメントを維持するか

つまり、一般的なSEO対策だけでは、コンテンツを見つけてもらうのに十分ではなく、ましてやチャンネル登録者数を増やしたり、ファネル内でユーザーを誘導したりすることもできない。

動画が注目を集めないのは、多くの場合、コンテンツの質が悪いからではない。その背後にある戦略が、適切なプラットフォーム向けに構築されていないことが原因なのである。

 

YouTubeのアルゴリズムはキーワードではなく、行動を重視して最適化する

YouTubeのアルゴリズムは、ユーザーがコンテンツを楽しんでいるかどうかを示すシグナルを優先する。また、YouTubeで視聴されるコンテンツの70%はおすすめ動画によって決定されているため、このアルゴリズムの仕組みを理解することは、成功する戦略を構築する上で不可欠である。

Googleはトピックの専門性、バックリンク、構造化されたコンテンツを評価するが、YouTubeの発見システムは視聴者の行動、たとえば次のような要素によって左右される。

  • クリック率
  • 視聴時間
  • 保持率
  • セッション時間

YouTubeが動画をランキングする際に使用する単一の指標はないが、以下の指標はすべておすすめ機能に影響を与える

  • クリックスルー率(CTR):動画がおすすめされたとき、視聴者は実際に視聴するだろうか、それとも無視するだろうか?
  • 視聴者維持率:視聴者は動画を最後まで、あるいは大部分を視聴し続けるだろうか、それともすぐに次の動画に移ってしまうだろうか?YouTubeは平均視聴時間と平均視聴率をランキングの指標として用いている。
  • 視聴者からのフィードバック:「いいね」、コメント、シェアはすべて、視聴者の関心やエンゲージメントを示す指標であり、注目に値する。

このアルゴリズムは、視聴者が視聴しているコンテンツを気に入っているかどうかを判断しようとしている。これにより、YouTubeは視聴者が好みそうなコンテンツをより多くおすすめできるようになる。

YouTubeの成長と発見担当プロダクト責任者であるTodd Beaupré氏は、次のように述べている。

「私たちは、視聴者が何をしているかだけでなく、費やしている時間についてどう感じているかを理解しようとしている」。

つまり、YouTubeの目標は、キーワードにマッチした動画を表示することだけではなく、視聴者が楽しんで、関心を持ち、また訪れてくれる可能性の高いコンテンツをおすすめすることなのである。

ポイント:ユーザーが検索する内容だけでなく、YouTubeが提案する内容も最適化する必要がある。

 

サムネイルは検索を促す重要な要素である

ブログのSEOでは、効果的なタイトルとキーワードの組み合わせが重要だが、YouTubeではサムネイルを最適化する必要がある。

YouTubeのクリエイターヘルプセンターによると、上位のパフォーマンスを示す動画の最大90%がカスタムサムネイルを使用している。サムネイルとタイトルは、キーワードよりもはるかに視聴者の視聴決定に影響を与える。サムネイルは、視聴者が閲覧中に最初に、そして時には唯一目にする視覚的な手がかりだ。その一瞬の差が、クリックされるかスキップされるかの分かれ目となることがある。

明確な視覚的コントラスト、単一の焦点、そして好奇心を刺激する要素を備えたサムネイルは、一般的なブランドスライドやテキスト過多のグラフィックよりも優れたパフォーマンスを発揮する。

考慮すべきポイント:

  • 感情が明確に表れた人間の顔
  • 清潔感のある構成とコントラスト
  • 動画の価値を暗示する視覚的ヒント

多くのB2Bブランドは、ウェビナーのスクリーンショットや静止画のスライドをデフォルトで使用している。代わりに、サムネイルをコンテンツの広告のように扱ってみてほしい。それはクリックを獲得する最初の(そして時には唯一の)チャンスである。

 

視聴者維持率>イントロ

YouTubeのアルゴリズムは、動画のキーワードやタグ、完璧なタイトルよりも、視聴者が動画にどれだけ長く留まるかに重点を置いている。もし動画の最初の15~30秒でほとんどの視聴者を失う場合、その動画は後で価値のある内容であっても、さらに推奨される可能性は低くなる。

B2B動画は、長いイントロ、ブランドアニメーション、またはアジェンダスライドから始まることがよくある。ライブウェビナーではそれらが適切かもしれないが、会議の合間にYouTubeを閲覧する視聴者には効果的ではない。

以下の簡単な調整を行うことができる。

  • 魅力的な導入部(問題、質問、または価値提案)で始める
  • 不要なイントロや「数分で始めます」といったセクションを削除する
  • 動画を15~30秒ごとに視聴者を再び惹きつけるように構成する(例:視覚的またはトーンの変化、例示、スピーカーの変更)

 

説明文やタグ、メタデータは補助的な役割を果たす

明確な動画の説明文を書き、関連するキーワードを含めることは依然として重要だが、YouTubeは繰り返し、メタデータがランキング性能に与える影響は最小限であると述べている。

「タグは動画の発見にほとんど影響を与えない。主に、コンテンツにスペルミスが多い場合に役立つ」。

- YouTube ヘルプセンター:タグについて

説明文は、以下の点で重要である。

  • 視聴者に詳細な背景情報を提供する
  • 関連検索に表示される
  • タイムスタンプやチャプター情報を通じて、動画のアクセシビリティとエンゲージメントを高める

しかし、説明文だけでは動画を見つけてもらうことはできない。視聴者が動画を視聴し続け、次の動画も見たいと思えるかどうかが、説明文の長さよりも重要である。

 

動画にCTAを過剰に詰め込まない

動画の最初の30秒にデモのCTA(行動喚起)を挿入したくなるかもしれないが、トップオブファネルのコンテンツでは、それが信頼関係を損なう可能性がある。YouTubeはクリエイターに対し、何かを要求する前にまず関係性を築くようアドバイスしている。

効果的な方法:

  • 動画内で「もっとヒントが欲しい方はチャンネル登録を」や「説明欄のリンクをチェック」といった、やわらかいトーンのCTAを活用する
  • 視聴者に何かを要求する前に、視聴者にとっての価値を高める
  • ピン留めコメントや終了画面を活用して、次のステップを案内する

動画のトピックに関するテンプレートやレポートなど、関連コンテンツへのリンクを貼るのも良いだろう。視聴者が最初に興味を持った内容と関連し、さらに深く掘り下げたくなるようなコンテンツを提供しよう。

視聴者が複数の動画を視聴した後、有料キャンペーンで再ターゲティングすることもできる。オーガニックなYouTubeコンテンツの目的は、通常コンバージョンではなく、「信頼性」の確立である。少なくとも最初の段階では。


成功しているブランドの取り組みを見てみよう

最も効果的なB2Bチャネルの中には、YouTubeを企業アーカイブではなく、メディアブランドとして扱っているところもある。

  • Paddle(課金・決済プラットフォームを提供する英国企業)はオーディエンスのニーズを最優先に考え、課金プラットフォームのプロモーションだけでなく、価格設定、製品市場適合性、市場開拓戦略など、SaaS起業家が重視するトピックに焦点を当てている。
  • Ahrefs(SEOツールの開発・提供を行うシンガポール企業)は、技術的なSEO指導を行いながらも、実践的で個性を重視した教育コンテンツを提供することで、忠実なオーディエンスを構築してきた。
  • Todoist(米国のDoistが提供するクラウドベースのタスク管理アプリ)のYouTubeチャンネルは、製品教育と実践的な生産性戦略を融合させ、ナレッジワーカーがToDoリストだけでなく、日々の業務をより充実させられるよう支援している。

これらのブランドは、クリエイター主導のコンテンツや、カメラに定期的に登場する社内専門家に投資している。また、YouTube向けの動画を設計しており、単なるウェビナーや有料コンテンツの延長線上のものとしてではなく、独自のコンテンツとして制作している。

 

YouTubeのための新しい戦略

YouTubeコンテンツが注目を集めていない場合、その原因はコンテンツ自体ではなく、評価と公開に使用しているフレームワークにあるかもしれない。キーワード重視の戦略から行動重視の戦略へと転換することで、B2Bマーケターは最適化だけでなく、エンゲージメントにも重点を置いた、効果の高いチャネルを活用できるようになる。

まずは、次の点に取り組もう。

  • サムネイルを分かりやすく、好奇心を掻き立てるデザインに再設計する
  • 最初の10秒を再編集し、価値提供を最優先する
  • 強引なCTAを、信頼構築を促すシグナルに置き換える
  • 視聴者維持率の分析を行い、動画のペースを改善する
  • YouTubeを単なるアップロード先ではなく、独自のチャネルとして扱う

YouTubeはB2Bにとっての発見エンジンになり得る。ただし、そのためにはYouTubeの「言語」を習得する必要がある。


※当記事は米国メディア「Martech」の7/24公開の記事を翻訳・補足したものです。