新しい個人情報保護規制やAIの進歩にマーケティング戦略を適応させ、時代を先取りしよう。


変化こそが、マーケティングにおいて唯一変わらないものである。ほぼ毎日のように新しいトレンド、テクノロジー、手法が登場するなか、迅速に適応することはますます重要になっている。特に、マーケティングの世界ではここ数年、プライバシーとテクノロジーという2つの関連分野が急速な進化を遂げている。

 

進化する状況:個人情報保護規制とテクノロジーの進歩

世界中のマーケティング業界で、プライバシーへの懸念が高まっている。欧州の規制は、ユーザーデータの収集をさらに厳しく制限する先例を作り続けている。米国では、各州が欧州に倣い、データの収集と用途に関して同様の制限を実行。2018年のカリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)の施行以来、15の州が独自の個人情報保護規制を制定しており、さらに多くの州がこれに続くと予想されている。

テクノロジーと生成AIの急速な台頭は、コンテンツ生成から測定まで、マーケティングライフサイクルのありとあらゆるすべての側面に革新的な変化をもたらし、従来のマーケティング活動を根底から覆した。そして、データは常にマーケティングキャンペーンの成功に不可欠である。しかし、増加するタッチポイントの多くで顧客とのコミュニケーションが行われ、サードパーティのCookieも最終的には廃止されるため、データ収集もさらに断片的になってきている。 現在の法的および技術的制約は、ターゲット化やキャンペーンの有効化の重要な要素であるデータ収集に徐々に影響を及ぼしている。そのため、マーケターは競争優位性を維持するために、強力なチェンジマネジメント(経営戦略の改革や組織変革の実現を効率的に成功に導くマネジメント手法)戦略に従う必要がある。最近のツールは自動化とアルゴリズムに大きく依存しているため、これは特に重要である。だからこそ、適応のための投資と労力は、マーケターが適切なオーディエンスをターゲットにし、ROI(投資利益率)を促進できるようにするためのデータ収集プロセスに焦点を当てるべきなのだ。

 

プライバシーの変化を乗り切る方法

ここでは、進化するプライバシーの状況によって起こる変化に対応し、加速するための3つの戦略を紹介していく。

  • 第1に、組織にとって適切なマーケティング戦略を定義し、一連のソリューションを設定する
  • 第2に、成功するフレームワークを明確に築き、それを実現するために優秀なチャンピオン(顧客側のサービス導入推進担当者)を早い段階で登用する
  • 第3に、ビジネスの目標を達成するためにデータを活用する

 

1.組織にとって適切なマーケティング戦略を定義する

個人情報保護規制への適応を目的とした技術的な変更を実施する前に、現状のマーケティングツールやマーテック(マーケティングテクノロジー)の組み合わせを詳しく見ておくことが重要である。

一歩下がって現在の設定とビジネス目標を見直し、現状のソリューションと重要な指標が、業界のプライバシーの変化によってどのような影響を受けるかを評価すること。既に導入されている個人情報保護規制と今後導入される規制の潜在的影響を明確に理解したら、アクティベーションと実測の差異を埋めるのに役立つ、適切なプライバシーソリューションを確認し、絞り込むことができる。

プライバシーの進化に伴い、新しいソリューションが続々と市場に投入されているため、組織に適したソリューションを特定するためには、自社のビジネス目標とともに、この現状と将来の状態を比較した評価に頼る必要がある。貴社独自のビジネス目標やマーケティング活動を考慮すると、同じ業界であっても、ソリューションは他社とは異なるものになる可能性が高いだろう。

まず、すでにあるツールやデータを最大限に活用することから始め、その後、プライバシー基準に適応するための新しいツールやテクノロジーへの投資を検討すると良い。組織全体に展開する適切な新しいソリューションを絞り込むためには、メディアアクティベーションの正確な報告のための適応力のある測定フレームワークを確保することが重要である。

また、自社が所有するファーストパーティデータを活用するツールにも投資したい。カスタマーデータプラットフォーム(自社が持つ顧客データを、収集、統合するための顧客データ基盤:CDP)のようなツールは、さまざまなタッチポイントからのデータを一元化し、このデータをオーディエンス戦略に反映させ、アクティベーションチャネル全体で顧客とのやりとりを効果的にパーソナライズすることで、差異を埋めるのに役立つ。

 

2.変更を展開する前に、チャンピオン(顧客側のサービス導入推進担当者)と成功の尺度を確立する

あなたやチームを正しい方向へ導く、成功への道しるべを作成することが重要である。状況を理解し、ソリューションを特定したら、ビジネスや組織、部門や役職を超えて編成するチーム、細かなユースケースなど、すべてのレベルでの成功を測定するための明確なKPI(重要業績評価指標)を定義することができる。これらのKPIを確立することで、いつ方針を変更するべきか、いつ社内の追加支援を確保すべきかを認識しやすくなる。

明確なKPIを設定することに加え、プロセスやツールの変更を行う際には、組織内で強力なデータガバナンスと所有権を確立し、ビジネスチームと技術チームの垣根を越えてエンドユーザーからの賛同を得ることが重要である。

有用な戦術のひとつは、「実行委員会」や、ヘビーユーザー、変更の支持者、チャンピオンのグループを参入させることによって、早い段階から部門横断的な利害関係者との討論を実施し、このグループとの定期的なミーティングを予定に組み込んで、彼らに情報を提供し、意見を収集し、それぞれのチームに対するトップダウンのサポートを促進することである。

変更が展開される前に、技術チームとビジネスチームの両方が教育を受け、納得していることを確認すること。展開が進むにつれて、何が機能して何が機能していないのか、常に把握しなければならない。また、組織内にそのような人材やチームがまだ存在しない場合は、代理店やコンサルタント会社などのサードパーティを起用して、ビジネスと技術両方の視点をまとめる部門横断的な役割を担わせても良い。

 

3.目標を達成するためにデータの力を活用する

個人情報保護規制と進化する顧客の嗜好のバランスを取る必要性によって、データ収集はますます難しくなっている。しかし、新しいキャンペーンを効果的に実施するためには、顧客データとすべてのファーストパーティデータの理解が極めて重要である。これを行うには、利用可能な最高のツールを活用する必要があり、CDPはその一例である。CDPは、組織が顧客に関して生成し、収集したさまざまなタイプのデータを活用し、顧客ベースの統合された360度ビューを作成するのに役立つ。

CDPの利点のひとつは、複数のデータソースをひとつのプラットフォームに統合し、顧客に関する強固な単一ビューを実現できることである。これは、データがますます断片化されサイロ化される中で、不可欠なものである。そして、多くのCDPが提供する高度なセグメンテーションとターゲティング機能を使用して、アクティベーションチャネル全体の最適化をテストし、コアKPIに対する成功を測定し、それに応じて繰り返しながら進めることができる。

CDPはアクティベーションのために臨機応変に対応できるツールではあるが、最重要のソリューションではない。適応力のある測定フレームワークを提供するソリューションを見つけることも同様に重要である。たとえば、Googleの拡張コンバージョンは、ファーストパーティデータを活用してコンバージョンと広告インタラクションの一致率を高め、より良いアトリビューション(コンバージョンへの貢献度)とキャンペーンのパフォーマンスのより正確な測定へとつなげている。

どのソリューションを選ぶにせよ、キャンペーンを確実に拡大できるよう、まずはテストに集中してほしい。テストと学習を繰り返すアプローチをとり、結果を最適化しながら進めていくことは、新しい変更やソリューションをスケールアウト(サーバの台数を増やし処理を分散することでシステム全体の処理能力を上げること)するために、組織内の他のチーム、ブランド、利害関係者の賛同を得るのにも役立つ。

 

長期的な成功を推進する

戦略を調整する前に、自社のアプローチとマーケティングキャンペーンの効果を理解することで、刻々と変化する今日のマーケティング状況において組織を成功に導くことができる。

すべてのブランドとその顧客は唯一無二であるため、ファーストパーティデータは、ビジネスへの影響とROIを促進する方法でマーケティング戦略を調整する上で今後も重要であり続けるだろう。

業界の変化がマーケティングを崩壊させ続けるなか、効果的な変化のための戦略は、新しいツールやテクノロジーの導入にとどまらない。上記で説明した原則を用いることで、短期的にも長期的にも、適応性、整合性、ビジネスへの影響を考慮して組織を配置することができるのだ。


※当記事は米国メディア「MarTech」の7/12公開の記事を翻訳・補足したものです。