BtoB ECシステムに移行しカタログ販売のオンライン化を実現したサントリーマーケティング&コマース

 

eコマース化の流れは、古い商習慣が残るBtoBの領域でも顕著に起きている。BtoBの領域では長い間、商品カタログを得意先に配布し、そこから電話やFAXで注文を受け付ける形態も見られた。しかし今、そのカタログ販売の形態をオンライン上のBtoB ECシステムに移行する企業が相次いでいる。酒販店・飲食店向けにグラスや業務用備品を企画・販売しているサントリーマーケティング&コマース株式会社も、BtoB ECシステムへと舵を切った企業の1つだ。今回は、サントリーマーケティング&コマースの谷内氏、後藤氏、坂内氏、蟹江氏の4名の担当者に、カタログからBtoB ECシステムへの切り替えと成果について話を聞いた。

 

※この記事は、BtoB向けECサイト構築システム「アラジンEC」を展開するアイル社の協力の元インタビューを行い作成したものです。アラジンECに関するサービス資料は以下からダウンロード下さい。

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サントリーマーケティング&コマースが展開するカタログ「PROTOOLS」

 

サントリーマーケティング&コマースでは、年に一度発行する紙カタログ「PROTOOLS(プロツール)」をベースに、全国の酒販店と飲食店に向けて業務用備品を販売するというビジネスを約40年にわたって行ってきた。扱う商品は、飲食店で使うグラスや食器などの備品、酒販店が運搬の際に使う台車や店舗で使うレジ、商品をラッピングする包装紙など約4,000アイテムで、ありとあらゆる備品がカタログ上に並ぶ。これらの商品は飲食店が直接購入するのではなく、アルコール飲料を飲食店に卸している酒販店が購入し、飲料と共に飲食店に販売するという形態が取られてきた。受注は電話やFAX、Webで受け付けているが、Webと言ってもあくまで受発注のためのツールで、ECサイトとしての機能は持っていなかった。商品展開はカタログがベースのため、たとえWebからの注文でも取引先はカタログで欲しい商品の番号を調べて入力する必要があったのだ。

▲市場開発本部 企画開発グループ 通販企画チーム 課長 谷内一樹氏

 

 

カタログ「PROTOOLS」が抱えていた課題

 

PROTOOLSは、先に述べたとおりカタログを見て注文するというスタイルだったため、注文までに時間と手間がかかるというのが一番の課題だった。特にFAXで注文を受ける場合は、フォーマットのない白紙の紙に注文内容を書いてくる顧客も多く、記載内容が不十分だったり文字の解読に時間がかかったりと、個別の対応が必要だった。また、年刊のカタログで商品展開しているということもあり、季節商品を扱えなかったり、注力商品の販促をタイムリーにできないなど問題は多かった。そして何より、当初構築したWeb受発注システムは取引先限定のクローズドサイトだったため、新規開拓につなげることはほぼ不可能だったという。他にも、クレジットカードやモバイルにも非対応で納品日が指定できないなど、利便性にも課題があった。そこで10年前に作った受発注のためのシステムを見直し、今の時代に合ったオープンなBtoB ECを構築すべく、システムの入れ替えを決意した。

 

▲市場開発本部 企画開発グループ 通販企画チーム 課長代理 後藤佳奈氏

 

 

BtoB ECシステムへの切り替え

 

入れ替えにあたり、もともとあった受発注のシステムを改修するか、新たにBtoB ECを構築するか、2つの方法を検討したという。しかし、これまで使用していた受発注のシステムを刷新しようとすると、非常にコストがかかるということが分かった。さらに当時の委託先は通信販売に特化したシステム会社ではなかったため、今の時流に乗ってさらに将来新しい機能を追加するということが非常に難しいということも知り、その選択肢は断念した。BtoBのECサイトをパッケージで提供している企業は通販での売り方に長けていて、何カ月かに一度バージョンアップするという機能面も非常に魅力的に映ったそうだ。そこで、BtoB ECのパッケージを持つ企業を数社比較し、最終的に株式会社アイルが提供する「アラジンEC」を採用することに決めた。アラジンECのどのような点に惹かれたのだろうか。

「比較させていただいた商品はどれもパッケージでしたので、どうしても開発・改修できる範囲が決まっていました。それがネックになったのです。私たちは商品を販売する上でお客様との間に古くからのルールのようなものが存在していて、ある程度個別にご要望をお伺いするというやり方でこれまで商いをしてきました。それぞれに手作業を入れたり、特別なやりとりを経て商品を販売していたのです。そのやり方ですと、決まったパッケージでははまり切らない部分がいくつも出てきてしまいます。その点アラジンECはそこに柔軟に応えていただけて、なおかつ価格的にも適正な価格だったので選ばせていただきました」

アラジンECはBtoB専用のECシステムとして機能がパッケージ化されている上、カスタマイズもできるというバランスが良かった。また、BtoB ECの導入実績が多く、意見を交わしながら自分たちに合ったBtoB ECを構築できると思ったそうだ。そこで同社はアラジンECへのシステム入れ替えを決め、2016年1月にシステム移行が完了。業務用品の総合通販サイト「PROTOOLS WEB」を公開した。しかし移行までには数々の苦労があったという。

「一番の苦労は、サントリーグループの基幹システム、新たに導入するアラジンECの連携です。旧システムではできることは限られていましたが、サントリーグループの基幹システムとは連携していたので、まずはそれと同レベルのものを作る必要がありました。それに加え、旧システムではできなかった販促の部分を盛り込まなくてはいけなかったので、限られた予算でどうやりくりするかというのは難しかったですね」

導入にあたり、サントリーマーケティング&コマースでは「お客様ごとのご要望にお応えする」という事業の視点を切り替えたそうだ。個別に対応することによって顧客との関係性は築けるが、何千社と対応しているとどうしても回らなくなってしまう。そこで、お客様のご要望を叶えられないところもあるということを伝えようと決めた。担当者は「この判断が誤っていたら、今回のBtoB ECの導入は成功しなかった」と話す。

 

▲市場開発本部 企画開発グループ 通販企画チーム 坂内宏輔氏

 

これらを踏まえた上でアラジンEC側へ伝えた主な要望は、販促を重視すること、注文から納品までの時間を短縮すること、アクセス量に対応できる処理速度アップの3つだった。そこで販促に関しては自由にランディングページを作れるようにし、処理速度に関してもボトルネックになっている部分のソースの改善をすることで、サイトが落ちるということも防げるようにしてもらった。もちろんやってみて分かったことも多く、導入前、移管中、導入後の3段階を通して見ると、圧倒的に導入後の苦労が多かったそうだ。

「お客様は初めて使うシステムですが、それと同時に伝える営業や私たちも初めて使うシステムなので、1回のご説明ではきちんと使い方をお伝えできないということが非常に難しくて苦労しました。また、新システムを使う中で、お客様によって「昔はこの機能があったのに……」と残念がる声も上がり、それが十数社程度かと思っていたら蓋を開けたら実は数百社だったなど、実態を把握しきれていない部分もありました。そこで埋もれてしまっていた機能をリリースし、二次改修を行いました」

 

 

 

BtoB ECシステムを導入した成果と変化

 

こうして本格的に始動したPROTOOLS WEBは、導入当初は多少の混乱はあったものの、業務効率は格段に変化し、売上面でも変化が見られたという。

「目に見えて効果が現れたタイミングは、年末の繁忙期を迎えた時でした。普段は途切れることなくかかって来るお電話でのお問い合わせが格段に減ったのです。具体的な数字が見えたのは、運用して2年経った頃からでした。運用後1年ぐらいはお客様も様子を見ていたようですが、そのあたりから兆しが見えてきて、全体の売り上げとしてはそれほど変わっていないにも関わらず、Web注文の売上は前年比で187%、Web受注件数は178%になりました」

数字だけを見ても、導入のメリットは一目瞭然だろう。電話の問い合わせ件数は年間8,000件(約27%)減り、繁忙期の12月に限っては1,600件も減少した。当時の問い合わせは主に商品についての質問と見積もり依頼が多かったが、素材や容量といった商品の詳細をWebに掲載することで、電話をしなくても商品の情報を得られるようになった。見積もりに関しては、仕入用と卸販売用の2パターンをコールセンター経由で作成していたが、現在は取引先自身が発注画面でどちらの見積書も出力できるようになっている。その際、顧客ごとに異なる卸値もボタン1つで確認できるようになったので、問い合わせして調べるという手間が減り、互いに楽になった。好きな時間に24時間いつでも見積もりを作成できるようになったという点でも利便性が増したと言えるだろう。

コールセンターの問い合わせ件数が減ったと同時に、コールセンターから顧客へかける電話の数も減少した。発注の際には届け先や希望日時など、さまざまな入力項目があり、入力が不十分であるとコールセンターから顧客へ確認の電話をしなければならない。その点、PROTOOLS WEBでは正しく入力しないと注文が完了しないため、ミスを防げる上に必然的にアナログな業務が減った。結果的に受注コストは約8割減ったそうだ。

メリットはこうした業務効率化の面だけでない。これまで年1回の発刊では実現できなかった季節商品の提案や、試験的に商品を掲載するということも可能になった。実際、新しい商品をまずWebで紹介し、反響があった商品をカタログに掲載するという方法も取っているそうだ。また、商品の使い方を動画で見せたり、商品が生まれた背景やお客様の声を紹介するほか、特集記事を組んで特定の商品をアピールするなど、商品の魅力をより伝えやすくなったことも大きい。直接営業に行けない地方の酒販店に対しては、特に効果を発揮しているという。

 

▲市場開発本部 商品開発グループ 商品開発チーム 蟹江真未氏

 

アピールという面では、メルマガの配信をスタートさせたこともプラスに働いた。新製品を出した際、紙のカタログではすぐに売れることはなかったが、メルマガに掲載するとその週のうちに売れていく。顧客の反応がすぐに見え、分かりやすい手応えがある。キャンペーンやセール施策も行いやすくなり、在庫処分にもひと役買っている。

顧客の反応という面では、売り上げがリアルタイムで確認できるようになったという点も大きいだろう。年刊カタログしかなかった時は、どの紙面がどれだけの売り上げになったか、特集がどれだけの効果があったかというのは一年越しで効果測定をした上で、翌年一年分の決断をしなければならなかった。それがWebになったことで、日単位でその効果を図り、反応が悪ければ商品名称やキャッチコピー、写真を変えるなどしてPDCAを早く回せるようになった。

そして何より、これらの商品を全方面の飲食関係者に見てもらえるようになったというのが最大の成果だ。以前の受発注のシステムでは、顧客が使いたいと言って初めてIDとパスワードを伝えてサイト内に入ってもらうという形を取っていた。それが今では、Webで検索すればすぐにPROTOOLS WEBがヒットする。新規顧客を少しずつ増やすことができているのはPROTOOLS WEBのおかげではないだろうか。

 

 

アラジンECを導入して2年。今後はいかに新規顧客を取れるかがポイントだと同社は話す。もともとPROTOOLSに掲載していた商品は酒販店をサポートできるように開発したものだが、今は誰もがWeb検索でPROTOOLS WEBにたどり着くことができる。まだ取引していない新たな酒販店や、酒類・飲料を店頭や通信販売で扱う小売業などに対しても、今後さらにPROTOOLS WEBをアピールしていく予定だ。

既存の顧客に対しても、Webの良さを伝えて利用率をさらに上げていきたいと話す。Webの利用率は上がったものの、まだまだ電話やFAXで注文する既存顧客も多い。そこで、詳細な商品情報や注文履歴の閲覧、見積り作成といったPROTOOLS WEBのメリットをさらに伝えていく。また、Web限定商品を増やすなどしてWebのメリットを増やすことも考えているという。現在Webではカタログの商品数4,000プラス120〜240商品ぐらいをWeb限定商品として展開しているが、今後は季節商品に力を入れて商品を増やしていく。最後に「スマホやパソコンに慣れていない人でも使いやすいシステムを構築し、アイルさんと一緒に良いものにしていければ」と担当者は結んだ。

 

 

 

 

アラジンECとは

 

アラジンECとは、アイル社が27年間5,000社以上のBtoBのノウハウをベースに構築した、BtoB専用ECパッケージ(Web受発注)システムだ。

 

企業ごとの商習慣に合わせてカスタマイズ対応が可能なBtoB専用ECパッケージシステム「アラジンEC」は、注文・問い合わせ業務の負荷削減だけではなく、売上アップ・他社差別化のための営業販促ツール、本部と店舗間の出荷指示ツールとしても利用することが可能。非常に特殊な商習慣が根強く残るBtoBの取り引きの細かなニーズへのきめ細やかな対応が可能なシステムだ。

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