BtoB向けのECサイト構築に向けて理解しておくべき基本的なポイント

 

ECというと一般消費者向けのイメージの方が強いが、実はBtoB ECの市場規模はBtoC ECの市場規模の20倍もあることはご存知だろうか。日本国内だけでなく世界的に見てもこの傾向は顕著で、BtoB、すなわち企業間取引の多くがオンラインに置き換えられてきており、それに伴いECサイトを構築するケースが増えてきているのだ。今回はそんなBtoB向けのECサイトを構築するにあたって理解しておきたい基本的なBtoB向けECシステムの特徴と、機能、さらには導入に向けた考え方について考えていきたい。

 

※この記事は、BtoB向けECサイト構築システム「アラジンEC」を展開するアイル社から情報提供を得て作成したものです。ここで紹介する理想的な機能一覧を含む、アラジンECに関するサービス資料は以下からダウンロード下さい。

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BtoB向けECサイトが注目される理由

 

業種や企業によって差はあるが、中小企業などでは未だに電話やFAXを用いた受注が行われているところも多い。しかし、人の手による作業ではミスを減らすことは難しく工数もかかることから、BtoB ECを導入する企業は年々増加している。人的ミスを減らして大幅な業務効率化を図れることが、BtoB ECの大きなメリットだからだ。だが、BtoB ECは企業間取引特有の視点で構築する必要があるため、BtoCよりも導入のハードルが高いとされている。BtoBのEC化はメリットも多く効果的だが、必要性の高さに反して普及しきれていないというのが実情だ。

 

 

BtoB向けのECサイトはBtoC向けECサイトと何が違うのか

 

BtoB向けのECサイトと言っても、どこがどのようにBtoC向けのECサイトと異なるのか、しっかりと理解している人はそれほど多くないだろう。BtoC向けのCMSやカートシステムをカスタマイズすれば何とかなるのでは?とも考えがちだが、カスタマイズがなかなか難しいポイントも非常に多い。ここでは代表的な違いを10点挙げていく。

 

購入前の見積り

BtoBにおいては、購入前に得意先にて購入する商品を一覧化し、見積書を作成し、社内にて確認・承認する必要があるケースが多い。そのため、そのまま購入に進む、というだけでなく、カートに投入した後、見積書の作成機能が必須となる。サービスによっては、見積書を作成したカート内の商品を数日間保持するものや、見積書IDの入力で同じ商品を簡単に再来訪時に購入できるようになっている。

 

決まった購入パターンでのリピート注文

BtoCでも最近では定期通販など、決まった消耗品を継続的に購入するサービスが浸透してきているが、BtoBでは商品の利用目的上その傾向が極めて強くなる。購入する商品自体が、メーカーが自社製品を作るための原材料だったりするため、同一の商品を継続的に購入するケースが多くなる。そのため、以前買ったこの商品とこの商品とこの商品を今回も購入、といった形での購入パターンを繰り返す形でのリピート注文が簡単に行える仕組みの実装が求められる。

 

得意先別による商品・価格などのコントロール

BtoBの場合、商品の販売先の中には過去から大量の注文を継続的に行ってくれている重要顧客が含まれているなど、BtoCの場合よりも、得意先との関係性は密になっている。そのため、この得意先にはこの商品はこの価格で売る、この得意先にはこの商品は販売しない、など得意先別の商品や価格のコントロールがリアルの営業現場では日常的に行われている。オンライン化するにあたり、その商習慣への対応は必須となる。そのため、BtoB向けシステムでは、得意先別に販売する商品を設定したり、価格を変えることが出来るなどの対応をすることが求められる。

 

支払い方法で掛売対応が必要

BtoC向けでも最近サービスが増えてきている、後払い決済。厳密に言うと、クレジットカードも掛売の一種と言えるが、BtoB向けでは、掛売・掛買がいまだに多くの取引で行われている。そのためオンライン取引においても支払方法で掛売への対応を行うことが出来ることが求められている。

 

会員ID構造が法人IDに担当者IDが紐づく

購入先が企業であるBtoBシステムでは、得意先A社に、担当者aさん、bさん、cさんがいるなど、複数のユーザーが同じ企業としてのアカウントを利用するケースが多い。そのため、顧客IDが単純な構造とならず、法人IDに担当者IDが紐付く階層構造の設定が求められる。

 

承認機能の必要性

前項にも関連するが、購入先企業の担当者が独断で購入に踏み切ることが出来ないのもBtoB向けの特徴だ。そのため、システム上で、上長が承認を行ってから、購入を確定する仕組みが求められるケースがある。

 

複数の違う商品をカートに一括投入

同一の商品を購入することが多く、また一目でその商品がどのような商品かを理解している購入側の企業が多いため、BtoBシステムでは、商品一覧画面などから、各商品の注文数量を入力して一括でカート投入したいというニーズが非常に高い。そのため、複数の異なる商品をカートに一括投入出来る仕組みが求められる。

 

荷姿対応

商品を配送する際の荷姿(にすがた)の設定が必要なケースもBtoBビジネスにおいては多い。その商品をバラで配送するのか、ケースで配送するのかなどをオンライン販売時にも選択できることが求められる。

 

最低注文数量or最低注文金額の制御

BtoB向けの商品は大量購入を前提に価格が抑えられているケースが多い。そのため、表示されている価格での購入について、最低注文数量や最低注文金額と言った制限を付けることが多くなっている。例えば、20個以上から注文可能、50,000円以上から注文可能などだ。

 

小数点対応

BtoB向けの商品は、前項とも関連するが、一般家庭向けではなく業務用に大量購入を前提に価格が安くなっている場合や、ケースや箱での販売になっているため、部品や包装資材などは、その単価が小数点となっている場合もある。そのため、商品価格が整数ではなく、小数となるように対応できる必要がある。

 

 

その他にも、販売管理システムと、各種マスタ・在庫・受注データの連携対応を行うケースが多いなど何かと機能ヘビーになりがちだ。これらの機能はBtoC向けのECシステムでは一般的には標準装備はされておらず、カスタマイズをしようにも根本的なデータの持ち方が違うから無理、などと言われてしまうケースが非常に多いものだ。そのためBtoB向けに特化したECシステムではこれらの機能は標準で実装されているケースが多くなっている。

 

 

BtoB EC導入にありがちな課題

 

このように、BtoB ECはBtoC ECと大きく異なるので、BtoCと同じような感覚で取り組むとつまずきやすい。システムの導入で失敗しないためにも、次に挙げるポイントを押さえておこう。

 

費用がかさみやすい

BtoBはBtoCと異なり、業種や企業ごとに独自の商習慣が残っている場合が多い。導入の際は取引先のフローにも配慮する必要があるため、多彩な機能を持ったシステムが不可欠になってくる。パッケージを利用する場合はBtoB向けのものを、カスタマイズの柔軟さやサポート体制を重視して選ぶようにしたい。

 

取引先のEC利用率が上がらない

自社視点のみでBtoB ECを構築すると、取引先にとって使いづらいものになり、ECを導入しても利用率が上がらないという状況に陥ってしまう。BtoBにおいてはBtoCよりもこの点が顕著になるため、分かりやすく使いやすいECサイトを構築することが特に重要である。業務フローに合わせてカスタマイズできるシステムが理想的だろう。

 

属人的な体制からの切り替えが難しい

主に得意先とのやり取りなどにおいて自社のフローが属人化しているケースが多く、EC化する際のネックとなりやすい。こういった場合は、あらかじめフローを把握した上で、設定をカスタマイズできるよう構築するのが有効である。例えば、得意先から「いつもの商品を同じ数量で」という注文があった場合でも、EC上で注文履歴を参照できるよう設定すれば、属人的な体制を改善しつつ業務効率化を図ることができる。

 

 

BtoB向けのECサイトにはどのような機能が必要か

 

それでは次に、どんな機能が一般的にBtoB向けのECシステムには必要なのだろうか。少し網羅的に必要機能を見ていくことにしよう。実際にはカスタマイズなしにこのような機能を全て実装したシステムは存在しないが、まず、購入側・導入側それぞれについて、考え得る最大限の機能実装したBtoB向けのECサイトの機能一覧を考えてみる。

BtoB向けのECサイトに必要な機能一覧

※上記一覧ファイル(エクセル版)はこちらにてダウンロード可能です。

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購入側機能

購入する商品の数が多く、様々な部品などを一括で購入する必要があり、商品購入前に見積もりを取り、その商品をリピートで購入する場合も多く、複数の担当者で購入を完了する、というのがBtoB向けのECシステムの購入側に求めらているものだ。そのため、購入側の機能では特に「商品検索」機能の充実や、「カート」機能の充実と「見積書作成」などの機能がしっかり提供される必要がある。その他にも、担当者別にお気に入り商品設定や注文履歴表示が出来るなど、複数の担当者で運用することが多いため、企業として一律の表示ではなく、担当者ごとに設定や表示を変更できることが使いやすいシステムとして購入側の機能に求められるケースがある。

 

管理側機能

一方、管理側機能では、得意先別の商品管理やグループ管理など、様々なバリエーションが求められる。得意先別だけでなく得意先をランク別にグループ分けして管理することも一般的で、そのための機能も必要だ。ポイント付与率、お知らせ、リードタイム、決済、最小ロットなども得意先別の設定が必要となるケースもあるため、様々な設定が得意先・得意先グループという切り口で設定できる必要がある。また販売管理システムに設定されている単価計算・送料計算・消費税設定・在庫設定など、社内管理システムで実装されている設定に合わせて、BtoB向けECシステム側でも同様の設定が必要となるため、それに対応できるシステムが重要になってくることも特徴だ。

 

 

BtoB向けのECサイト構築・導入に向けて

 

ここで記載した機能は、一見そこまで細かいものが必要ではないと感じるケースも多いかもしれない。しかし実際にBtoB向けのECシステムを導入する際に営業側とコミュニケーションを取り、要件を整理していくと、思った以上に現場ではバリエーションの富んだ取引をしていて、それをシステム化することの大変さを痛感するケースが多いだろう。

では実際にどのようにBtoB向けのECサイト導入を進めていけばいいのだろうか。一般的な検討のステップを見ていこう。

 

機能一覧の中から必要機能の優先順位付け

導入にあたってどのような機能が必要かの検討が必要だ。営業サイドに現状の取引形態やパターンを確認し、どのような得意先があるのかの把握から始め、上記の機能一覧に要・不要のマーキングを行う。更に、それがあればいいものなのか、なくてはならないものなのか、など優先順位付けを行っていく。営業部門に聞くと基本的には全て必要だと言う回答になるため、慎重に判断していきたい。

 

システムベンダーからのヒアリングと星取表作成

必要機能一覧と優先順位について社内である程度検討を行った上で、候補となるBtoB向けのECサイトのパッケージやカートシステムのベンダーからヒアリングを行っていく。基本的には星取表的に、各システムが標準で出来ることとカスタマイズで出来ること、カスタマイズでも非常に困難な対応になりそうなこと、などを把握していき、システムを絞り込んでいく。また、基幹システムとの連携も必要になってくるため、連携実績の豊富さや、対応の柔軟性も見極めた方がいいだろう。

 

カスタマイズを含めた見積もり作成

その上で、絞り込んだベンダーに詳細の見積りの作成を依頼していく。一般的にはRFP(要求仕様が記載された提案依頼書)を作成して依頼することが望ましい。

 

導入範囲決めとベンダー・パッケージ決定

ここまで来たら、見積りを取得し、安いベンダーに依頼すればいい、と単純に考えがちだが、実際にはそう簡単に話が進まないことが一般的だ。この部分をこのように解決したら、このくらいの価格で対応が出来る、などかなり複雑な条件同士での比較が必要になってくる。その上で、どの部分を運用で対応して費用を削る、などの対応方針を決めた上で、構築・導入をしてもらうベンダーとパッケージ・カートシステムを決定していくことになる。

 

 

BtoB向けのECサイト導入を成功に導くために

 

このような検討ステップを自社だけで完遂することは非常に難易度が高いのも事実だ。そのため、システム要件を自社のみでまとめ切る自信が無い場合には、導入にあたって業務システムにも詳しいベンダー・パッケージ企業からのサポートをしてもらうことも重要だ。BtoBのような特殊な商習慣を持つ業界向けのシステム構築には、その業界のことをしっかりと把握した企業とプロジェクトを組んで進めていくことが成功には欠かせない要素となるだろう。

 

 

※この記事は、BtoB向けECサイト構築システム「アラジンEC」を展開するアイル社から情報提供を得て作成したものです。ここで紹介する理想的な機能一覧を含む、アラジンECに関するサービス資料は以下からダウンロード下さい。

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