2025年にサービス終了・終了予告されたEC関連10サービスまとめ - うねり続けるEC業界の光と陰

 

そろそろ今年も終わりの足音が聞こえてきたが、2025年もEC業界は多くの新しい技術とサービスが市場を賑わせた。しかしその一方で、業界の荒波に揉まれ、ひっそりと終了していったサービスも少なくない。その中で、今回は2025年に終了したサービスおよび終了が予告されたサービスを10個ピックアップして紹介していく。

 

<参考>

2024年にサービス終了・終了予告されたEC関連10サービスまとめ - うねり続けるEC業界の光と陰

2023年にサービス終了・終了予告されたEC関連10サービスまとめ - うねり続けるEC業界の光と陰

2022年にサービス終了・終了予告されたEC関連10サービスまとめ - うねり続けるEC業界の光と陰

2021年にサービス終了・終了予告されたEC関連10サービスまとめ - うねり続けるEC業界の光と陰

2020年にサービス終了・終了予告されたEC関連10サービスまとめ - うねり続けるEC業界の光と陰

2019年にサービス終了・終了予告されたEC関連10サービスまとめ - うねり続けるEC業界の光と陰

2018年にサービス終了・終了予告されたEC関連10サービスまとめ - うねり続けるEC業界の光と陰

2017年にサービス終了・終了予告されたEC関連10サービスまとめ - うねり続けるEC業界の光と陰

2016年にサービス終了・終了予告されたEC関連10サービスまとめ - うねり続けるEC業界の光と陰

2015年にサービス終了・終了予告されたEC関連10サービスまとめ - うねり続けるEC業界の光と陰

 

 

Meta Spark 2025/1/14終了

 

株式会社Metaは、2025年1月14日にMeta Sparkを終了した。

2018年にローンチし、2019年より一般向けに提供されたMeta Sparkは、InstagramやFacebookで利用可能なARエフェクトを手軽に作成・公開できるプラットフォーム。非常に直感的で使いやすいインターフェースを提供していたため、ユーザーはプログラミングの知識がなくても、ARカメラを利用して視覚的に魅力的なARコンテンツを作成することができた。さらに、ARを活用したマーケティング戦略の一環として使用していた企業やブランドも多く、突然の終了は驚きの発表であった。ブランドやARクリエイターコミュニティを含むサードパーティが作成した拡張現実(AR)エフェクトは使用できなくなり、10万人以上のARクリエイターが参加していたコミュニティの活動が終了した。

Metaは、ARの他にXRの分野で新たなプラットフォームやツールの開発を進めており、既存のサービスの最適化が必要となったことが原因であると推測されている。Meta Sparkを超える新たなツールが発表されるのか、Metaの今後に注目していきたい。

 

 

NETSEAオークション 2025/3/31終了

 

株式会社SynaBizは、国内最大級のBtoB仕入れモールNETSEAオークションを2025年3月31日に終了した

「NETSEAオークション」は、仕入れ・卸・問屋の小売店が問屋(卸会社)から商品を仕入れることができる、会員登録無料のサイト。「ネットで仕入れ」の略称で、サプライヤーとバイヤーを結びつけるBtoBマーケットプレイスであり、メーカー、問屋、卸会社などのサプライヤーが取扱商品についての情報や卸売の価格を掲載し、卸先を見つけたい問屋と仕入れをしたい小売店を手伝う役割を担っていた。また、各部門において最も活躍したサプライヤー企業/個人事業主を表彰する「NETSEAアワード」を開催することで、バイヤーの新たな仕入れ先開拓や取引体験の向上も支援していた。BtoB卸売市場におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)化を中心に行っていたが、品質の維持が難しいことを理由にサービスを終了する運びとなったようだ。

 

 

LINE Pay 2025/4/30終了

 

LINE Pay株式会社は、スマホ決済アプリの「LINE Pay」を2025年4月30日に終了した

電子決済サービスを展開するLINE Pay株式会社は、国内最大級のコミュニケーションアプリであるLINEから手軽に利用することができるモバイル送金・決済サービスのLINE Payを提供していた。また、「LINE」の友だちとの送金・送付や割り勘、企業から個人に24時間365日いつでもLINE Pay残高を送ることができる「LINE Payかんたん送金サービス」など、お金にまつわる機能も充実していた。近年では、海外展開にも力を入れており、LINEが普及している台湾やタイではLINE Payの利用が可能となっていた。今回のLINE Payサービス終了において、日本では利用できなくなるが、台湾やタイでは引き続き提供を続けていくとのこと。

 

 

Digital River 2025/5終了

 

株式会社Digital Riverは、2025年5月に連邦破産法第7章の適用を申請した

Digital Riverは、1994年に設立した、ミネソタ州ミネトンカに本社を置く、電子商取引、決済、マーケティングサービス。Webマーケティングに関するコンサルティングや運営代行に対応し、ピーク時には、300億ドルを超えるオンライン取引を処理し、Adobe、Lenovo、VMwareといった大手顧客にサービスを提供。ところが、2025年1月初旬に、リボルビング・クレジット・ファシリティからの資金調達手段を失い、人員削減や本社の閉鎖が始まった。資金繰りの逼迫による経営難に陥り、2025年1月28日付でケルン地方裁判所にドイツ子会社のDigital River GmbHとDigital River Holding GmbHの破産を申請し、サービスを停止した。さらに、ミネソタ州事務所の全従業員を2025年3月28日付けで解雇し、2025年5月に連邦破産法第7章の適用を申請した

 

 

Ringo Pass 2025/5/19終了

 

JR東日本日立製作所が進めていた交通系決済アプリRingo Passは、2025年5月19日に終了した

2020年1月16日よりJR東日本と日立製作所はRingo Passの実証実験を開始し、会員登録すると対象すべての交通サービスについて、決済までシームレスに利用可能にし、近くのシェアサイクル拠点やタクシーを検索・利用することも可能にした。業務で公共交通機関を利用する際の経費精算にRingo Passのデータを活用できるなど多くの機能を実装してきた。Ringo Passはその他、お台場レインボーバスやHELLO CYCLING、docomo bike shareなどとも連携し、スムーズな交通パス体験を提供してきた。「実証実験」という形で進めていたため、実証実験終了につきサービスを終了させた形である。Ringo Passを使用していた路線の決済機能は現在、クレジットカードやデビットカードによるタッチ決済に置き換わっている。

 

 

Yahoo!クイックマート 2025/8/31終了

 

LINEヤフー株式会社は、「Yahoo! クイックマート」を、2025年8月31日に終了した

「Yahoo! クイックマート」は、2024年8月に開始した、コンビニエンスストアやスーパー、ドラッグストアなどで販売されている生鮮食品や日用品、医薬品を注文から最短30分で配送するサービス。LINEヤフーと出前館がサービス名を「Yahoo!マート by ASKUL」から「ヤフークイックマート」に変更するとともに従来のダークストア型からモール型に変更したことから始まり、2025年4月時点で全国45都道府県での配達に対応していた。配達希望場所の対象エリア内にあるコンビニなどの店舗で販売されている商品を注文すると「出前館」の配達員が配達する。過去の注文履歴はYahoo!ショッピング内の注文履歴ページにて、サービス終了後も当面の間確認可能とのこと。LINEヤフーが5月に専用アプリの提供を開始するなど、サービスは順調に拡大しているとみられてい中で突然のサービス終了となった。

既存店舗の在庫を運ぶモデルは、新規参入の障壁が低いため、「スピード」「価格」「品揃え」などの点で、競合他社に勝てなかったことが原因だろう。Uber Eatsや楽天西友に対し利用シーンの確立とブランド認知の強さで劣っていたと考えられている

 

 

EC Booster 2025/9/30終了

 

株式会社フィードフォースが運営するEC Boosterは、2025年9月30日をもってサービスが終了した

EC Boosterは、2018年に提供開始した最短翌日から掲載できるWeb広告の自動運用サービスで、makeshop、futureshop、カラーミーショップ、らくうるカート、aishipなど4,000社以上の導入実績を持っていた。Googleショッピング広告、P-MAX、Microsoft広告など、WEB広告の配信に向けた広告アカウントの開設、商品データ作成、計測タグ設置などの初期設定や日々の運用を自動で行い、広告成果と売り上げを最大化するシステムを提供していた。「市場環境の変化を鑑み、継続してお客様にご満足いただけるサービスを提供することが難しいと判断し」サービス終了に至ったとのこと。Google Merchant Center の仕様上、アカウントを親アカウントから切り離すことができないため、EC Boosterで開設したGoogle Merchant Centerならびに、Google広告アカウントを提携企業に譲渡することはできないとのこと。

 

 

BUYON 2025/12/31終了予定

 

株式会社BUYONは2025年12月31日をもって「仕入れサービスBUYON」を終了することを発表した。

株式会社BUYONは、アジア最大級のアパレル問屋街である韓国の東大門市場の卸問屋から、日本にいながらアパレルや雑貨を仕入れることができる2018年創業のBtoBの越境ECプラットフォームサービス。2021年8月には「南大門市場」にもサービスを拡大し、ファッションのみならず、雑貨・小物など多様な商品を取り扱い、ターゲットは女性が中心。「近年の世界的なインフレと急激な円安に伴い、地代、設備費、運搬コスト等の高騰の影響を大きく受け、今後安定的なサービス提供を継続することが困難となり」サービス終了に至ったとのこと。今後のスケジュールとしては、2025/12/29に最終チャージ受付終了、12/30にサービス提供終了、最終チャージ反映、最終出荷完了、2026/1/4に2025年12月契約会員ログイン不可、1/5に未出荷保管品の廃棄処分開始となっている。

 

 

PassMarket 2026/6/30終了予定

 

LINEヤフー株式会社は、デジタルチケットサービス「PassMarket」を2026年6月30日をもって終了することを発表した

「PassMarket」は、Yahoo! JAPANが2013年4月に開始したパソコン、スマートフォン、タブレットでイベントのチケットを販売、購入できるサービス。Yahoo! JAPANは、2022年3月にはチケット販売サービス「Yahoo!チケット」のサービスを終了し、チケット販売サービスをPassMarketに絞って運用していた。イベントの主催者側は、受付状況把握、チケット販売状況把握、QRコード読み取り受付などを利用することができた。終了の理由は公開されておらず、現時点でPassMarketの後継サービスなどは発表されていない。

 

 

Amazon Pinpoint 2026/10/30終了予定

 

Amazon Web Services, Inc.は、「Amazon Pinpoint」の利用を2026年10月30日に終了予定と発表した

Amazon Pinpointは、Amazon Web Servicesが提供するマーケティングコミュニケーションサービスで、キャンペーン管理、カスタマージャーニー、高度な分析機能、マルチチャネル対応などの機能を提供。AWSの他サービスとのシームレスな統合や、スケーラブルなインフラによる高い信頼性がAmazon Pinpointのメリットである。これまで多くの企業が通知・メール配信・顧客分析の基盤として活用してきたが、AWSはサービス終了の理由を「慎重な検討の結果」としており、具体的な理由は公開されていない。しかし、AWS全体でサービスの整理が進んでいることや他サービスとの機能重複が増えたことが影響していると考えられている。2025年5月20日に新規顧客向けの提供が停止され、既存顧客は約1年半の移行期間が与えられ、2026年10月30日を過ぎると、Amazon Pinpointコンソール、Amazon Pinpointリソースにアクセスできなくなる。

 

 

うねり続けるEC業界の光と陰

 

今年も数多くのサービスが終了したが、今年は主に3つの理由がサービス終了の背景にありそうだ。1つ目は最新のトレンドに対応したサービスをいち早く出していったものの、市場ニーズがそこまでなかったというもの。Meta SparkやRingo Passなど、少し早すぎたのか、切り口を少し変える必要があったのか、いずれにせよ市場を掴み切れなかったのかもしれない。

2つ目は市場環境変化への適応が出来なかったケースだ。仕入れ系のサービスは為替レートの急激な変化に対応出来ず、DigitalRiverは業界ルールの変更に対応出来なかった形となっている。

3つ目は類似機能が増えてきて、競争が熾烈になってきたケースだ。EC Boosterや、Pass Market、Yahoo!クイックマートなどがそれに該当するだろう。

こうしてみると、サービスは早すぎてもダメなケースもあり、対応が遅すぎてももちろんダメであり、デジタルサービスの難易度が非常に高いことが読み取れる。

トレンドの移り変わりは今後も変わらずに早いだろう。そのような中で、今後もどのようなサービスが生まれ、終了していくのか引き続き注目していきたい。