2021年にサービス終了・終了予告されたEC関連10サービスまとめ - うねり続けるEC業界の光と陰

 

そろそろ今年も終わりの足音が聞こえてきたが、この2021年もEC業界は多くの新しい技術とサービスが市場を賑わせた。しかしその一方で、業界の荒波に揉まれ、コロナ禍に押し潰されてひっそりと終了していったサービスも少なくはない。その中で今回は2021年に終了したサービス、及び終了が予告されたサービスを10個ピックアップして紹介していく。

 

<参考>

2020年にサービス終了・終了予告されたEC関連10サービスまとめ - うねり続けるEC業界の光と陰

2019年にサービス終了・終了予告されたEC関連10サービスまとめ - うねり続けるEC業界の光と陰

2018年にサービス終了・終了予告されたEC関連10サービスまとめ - うねり続けるEC業界の光と陰

2017年にサービス終了・終了予告されたEC関連10サービスまとめ - うねり続けるEC業界の光と陰

2016年にサービス終了・終了予告されたEC関連10サービスまとめ - うねり続けるEC業界の光と陰

2015年にサービス終了・終了予告されたEC関連10サービスまとめ - うねり続けるEC業界の光と陰

 

 

チケットストリート 2021/3/31終了

 

チケットストリート株式会社は、公演チケット売買仲介サービスの「チケットストリート」を2021年5月31日に終了した。

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チケットストリートは、不要になったチケットの売買を仲介するオンラインサービス。2011年に提供開始され、10年間にわたって利用されていたが、新型コロナウイルスの影響で市場が縮小したことからサービスを終了した。近年は転売を問題視する流れが強まっており、2019年6月にはチケット不正転売禁止法が施行されるなど、チケット売買仲介サービスへの風当たりが強くなっていたという背景もある。同社は今後の事業展開に関するコメントを差し控えており、現段階では後継サービスなどの動きもみられない。チケットなどの売買仲介サービスは本人確認や不正対策の有無が高く評価されるようになっており、今後はさらに転売対策に重きを置いたサービスの需要が高まっていくものと思われる。

 

 

Rakuten EXPRESS 2021/5/31終了

 

楽天グループ株式会社は、自社配送サービスの「Rakuten EXPRESS」を2021年5月31日に終了した。

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Rakuten EXPRESSは、楽天市場の一部商品や楽天ブックス、楽天ファッションなど、楽天グループのECサイトで配送を行うサービス。2016年11月に提供開始され、人口カバー率は約60~70%に達していたが、配送事業に付随する市場環境の変化から2021年5月にサービスを終了した。40社ほどの運送業者に業務委託していたが、委託先への案内が5月に入ってから行われるなど問題もあり、中には損害賠償を請求した企業もあったようだ。サービス終了前の3月には楽天と日本郵政グループの資本業務提携が発表されており、楽天エクスプレスの終了は新たな物流戦略に専念するためとのコメントもあるが、委託先の損失や雇用問題も絡んでくるため、いささか急すぎる決定であったことは否めない。

 

<参考>

楽天と日本郵政の資本業務提携はEC業界をどのように変えていくのか

 

 

Amazonパントリー 2021/8/24終了

 

アマゾンジャパン合同会社は、食品や日用品などを必要な分だけ購入できるサービス「Amazonパントリー」を2021年8月31日で終了した。

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2015年に提供開始されたAmazonパントリーは、トイレットペーパーや洗剤などの重くかさばる日用品を、おまとめボックスと呼ばれる専用の段ボール箱で受け取れるのが特徴。当初はプライム会員向けのサービスだったが、のちに非会員でも利用可能になった。アメリカでも同サービスが提供されていたが、コロナ禍で激増した需要に対応できなくなったため、1月にサービスを終了していた。しかし環境の異なる日本においては、プライム会員であっても1箱あたり390円の手数料がかかる、通常注文とはまとめることができない、お急ぎ便が使えないなどの理由から、サービスが浸透しきれなかったものと思われる。ネットスーパー感覚で利用でき最短2時間で届く「Amazonフレッシュ」など他サービスも充実してきており、Amazonパントリーの持つ特徴をうまく活かしきれなかったことも原因のひとつだろう。

 

 

ヤマト便 2021/10/3終了

 

ヤマトホールディングス株式会社は、大型荷物向けの配送サービス「ヤマト便」を10月3日に終了した。

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ヤマト便は、宅急便の規格を超えるサイズの荷物を配送するサービス。これまで宅急便の規格を超える荷物の配送に利用されていたが、ヤマト便で扱っていたサイズを宅急便に新設することで、ヤマト便は廃止されることとなった。ヤマト便は宅急便と異なり、複数の荷物であっても1枚で配達可能、配達時間の指定ができないなどのメリット・デメリットがあったが、大型の荷物も宅急便として送れるようになったことで日時指定が可能になったほか、クロネコメンバーズの割引制度や送り状発行サービスにも対応できるようになった。そのため、総合的に見れば利便性は向上したといえる。

 

 

メルカリボックス 2021/10/28終了

 

株式会社メルカリは、メルカリユーザー向けのQ&Aサービス「メルカリボックス」を2021年10月28日に終了した。

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メルカリボックスは、ユーザー間で課題解決ができる公式の場として、2017年6月より開始されたサービス。質問に対する回答も早く、4年4か月にわたり提供されてきたが、メルカリグループ全体で経営資源を集中するためにサービスを終了する運びとなった。質問者・回答者ともに多く活気があったものの、回答者も一人のユーザーに過ぎないことから情報の信憑性が問題視されており、具体的な解決に繋がらないケースも少なくなかったようだ。今後は公式マニュアルのメルカリガイドを参照するよう促しており、それでも解決できない場合は事務局へ問い合わせる流れとなる。

 

 

au WALLET Market 2021/10/31終了

 

KDDI株式会社は、auユーザー向けのECサイト「au WALLET Market」を2021年10月31日に終了した。

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au WALLET Marketは、auユーザーが手持ちのスマートフォンから利用できるほか、auショップに備え付けのタブレットから利用可能なECサイトだ。2015年8月より提供されていたが、サービス内容はau公式の総合ショッピングサイト「au PAY マーケット(旧:au Wowma!)」内にある「au PAY マーケット ダイレクトストア」に引き継がれ、au WALLET Marketは終了となる。au PAY マーケットはスマホのキャリアに縛られず、ドコモやソフトバンクなどであっても利用できるため、後継サービスに引き継ぐことでより多くのユーザーを取り込む意図があるものと思われる。

 

 

MUFG Wallet 2021/12/20終了

 

株式会社三菱UFJ銀行が提供するスマートフォン向けアプリ「MUFG Wallet」は、2021年12月20日にサービスを終了した。

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MUFG Walletは、三菱UFJ銀行のVISAデビット・JCBデビットを所持しているユーザー向けのスマホ決済サービス。2019年10月に提供が開始され、Pontaカードと連携できポイントが貯まるメリットもあったが、2年2か月ほどでサービスを終了することとなった。終了の理由は明らかにされていないが、MUFG WalletはAndroidのみでiOSには対応しておらず、キャリアを問わず利用できるPayPayやAmazon Payなどの類似サービスも複数存在するため、ユーザーが限られてしまったことが考えられる。代替サービスとして、Google PayとPontaカードの公式アプリが案内されている。

 

 

Yahoo!チケット 2022/3/31終了予定

 

ヤフー株式会社は、オンラインチケット販売サービス「Yahoo!チケット」を2022年3月31日で終了すると発表した。

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Yahoo!チケットは、フェスや舞台、スポーツなどの各種チケットを販売するサービス。ヤフーは高速バス予約やレンタカー予約などYahoo!トラベル内の一部サービスも8~9月に終了させており、コロナ禍がもたらした影響の大きさを感じさせる。同社はオンラインチケットサービスの「PassMarket」も展開しているため、今後は電子チケットの販売に力を入れていくものと思われる。

 

 

スグレス with KDDI 2022/3/31終了予定

 

KDDI株式会社は、法人・ビジネス向けのチャットボットサービス「スグレス with KDDI」を2022年3月31日で終了すると発表した。

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スグレス with KDDIは、2018年8月より提供開始された、社内問い合わせ業務にチャットボットが自動応答するサービス。簡単なFAQを作成するだけで導入可能で、AIによる自動学習で回答精度が向上し、社内ヘルプデスクの効率化を図ることができる。スグレス with KDDIとしてのサービスは終了するものの、今後は開発元の株式会社ALBERTで同様のサービス「スグレス」が引き続き提供される。

 

 

Neowing電子書籍ストア 2022/3/31終了予定

 

株式会社ネオ・ウィングは、電子書籍サービス「Neowing電子書籍ストア」を2022年3月31日で終了すると発表した。

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Neowing電子書籍ストアはコミックや小説、雑誌などを主に扱うサービスで、2012年に提供が開始された。終了の理由は明らかにされていないが、Kindleの商品数が600万冊以上、BookLive!の商品数が100万冊以上であるのに対し、Neowing電子書籍ストアは6万冊と少ないため、利用者数が伸び悩んだものと推測される。購入済みのコンテンツは「BOOK☆WALKER」と「MAGASTORE」で今後も閲覧可能だが、一部引き継ぐことのできないコンテンツも存在する。電子書籍サービスは商品数がサービスの継続性にも関連してくるため、商品数の少なさは致命的だったといえる。

 

2021年にサービス終了・終了予告されたその他のサービス

イオン銀行の家計簿アプリ「カケイブ」が2021年8月31日に、ラフォーレ原宿に店舗を持つアパレルブランド「LEBECCA boutique」が2021年9月30日に、建設業・住宅産業向けの商品を扱う「ダイテックECサイト」が2021年10月31日に、LINE株式会社による家計簿アプリ「LINE家計簿」が2021年11月8日に、外資系ブランドの「エディー・バウアー オンラインストア」が2021年11月8日にサービスを終了した。

 

 

うねり続けるEC業界の光と陰

 

今年も数多くのサービスが終了したが、去年から引き続き新型コロナウイルスの影響が色濃く残る結果となった。中でもエンタメ・旅行業界への打撃が大きく、国内最大手のヤフーがYahoo!チケットやYahoo!トラベル内の一部サービスを次々と終了させたことが印象に残る。Go Toトラベルも停止と再開を繰り返しており、イベントやスポーツなどの公演チケットは転売問題もあるため、この苦境は今後もしばらく続きそうだ。

また、Rakuten EXPRESSやヤマト便など物流・配送がらみのサービス終了もみられた。ヤマト便に関してはサービス統合による事実上の改善と捉えることができるが、コロナ禍の影響からサービスの見直しを迫られる企業は少なくない。スマホ決済アプリや電子書籍ストアなどは利用者の多いホットな業界だが、サービス終了のアナウンスもそれに比例しており、競争が激化していることが伺える。

武漢市で最初のコロナ感染者が報告されてから2年が経過し、ニューノーマルも少しずつ消費者の生活に浸透しつつあるが、それによる需要の増加に対応しきれないケースや、逆に供給が増えすぎて過当競争が起きているケースもみられた。また、サービスは終了したものの利便性を高めた後継サービスへの誘導が行われているところもあり、昨年同様に社会の変化の過渡期を感じさせる結果となっている。今度どのような革新的なサービスが生まれ、そして終了していくのか、引き続き注目していきたい。