2019年にサービス終了・終了予告されたEC関連10サービスまとめ - うねり続けるEC業界の光と陰
そろそろ今年も終わりの足音が聞こえてきたが、この2019年もEC業界は多くの新しい技術とサービスが市場を賑わせた。しかしその一方で、業界の荒波に揉まれてひっそりと終了していったサービスも少なくはない。その中で今回は2019年に終了したサービス、及び終了が予告されたサービスを10個ピックアップして紹介していく。
<参考>
2018年にサービス終了・終了予告されたEC関連10サービスまとめ - うねり続けるEC業界の光と陰
2017年にサービス終了・終了予告されたEC関連10サービスまとめ - うねり続けるEC業界の光と陰
2016年にサービス終了・終了予告されたEC関連10サービスまとめ - うねり続けるEC業界の光と陰
2015年にサービス終了・終了予告されたEC関連10サービスまとめ - うねり続けるEC業界の光と陰
ZOZOARIGATOメンバーシップ 2019/5/30終了
株式会社ZOZOは、有料会員制の割引サービス「ZOZOARIGATOメンバーシップ」を2019年5月30日に終了した。
ZOZOARIGATOは割引と寄付が一体となった新しいコンセプトのサービスで、ファッションを楽しみながら社会貢献もできる新しい仕組みとしてリリースされた。年額3,000円または月額500円の会費を支払うことで常に10%オフで購入でき、割引された金額は購入ショップへの還元や指定団体への寄付といった形で使用できるが、サービス開始から僅か半年で終了が決定した。消費者にとっては魅力的なサービスだったが、自社の商品が常に値下げ価格で販売されるというのは、出店しているブランドからすれば納得の行くものではない。このことがブランドイメージを大切にする出店ショップに疑問視され、縮小や退店を選択するブランドが続出した。施策としては失敗に終わったが、2019年4月25日時点での寄付金は総額29,199,955円に上っている。ECサイトにおける消費者とブランドの認識の差が浮き彫りになったケースと言えるだろう。
<参考>
ZOZOと前澤氏の功罪を振り返り、これからのアパレルEC業界を考える
DLmarket 2019/6/28終了
株式会社オールアバウトは、子会社であるディー・エル・マーケット株式会社の運営する「DLmarket」のサービスを2019年6月28日に終了した。
DLmarketはデジタルコンテンツに特化したダウンロード販売専門のCtoCマーケットプレイスで、電子書籍や写真・イラスト素材などを扱っていた。外部からの不正アクセスによりクレジットカード情報の一部が流出した可能性があるとして2018年11月からサービスを停止していたが、2019年3月にDLmarketのサービス終了とデジタルコンテンツ販売マーケットプレイス事業からの撤退が決定された。サービス開始が2006年と古いこともあり、セキュリティ強化のためにはシステムの抜本的な作り直しが必要になることから、サービスの再開を断念したという。過去5年間において不正アクセスは減少傾向にあるが、それによる7payのスピード廃止も記憶に新しい。セキュリティ・ホール攻撃への対策は徹底的に行うようにしたい。
<参考>
平成30年の不正アクセス全体の中で、ショッピング・オークションの不正目的は12%
メルカリチャンネル 2019/7/8終了
株式会社メルカリは、メルカリアプリ内のライブフリマ機能「メルカリチャンネル」を2019年7月8日に終了した。
2017年7月に開始したメルカリチャンネルは、動画のライブ配信を通して商品を販売・購入できるサービスで、ライブコマースと呼ばれるものだ。視聴者が送信した質問コメントに対して出品者がリアルタイムに回答するなど、従来のECサイトにはない可能性を秘めた販売形態だが、手探りの部分も多く国内での大きな成功例は未だ見られない状況である。メルカリチャンネルにおいては、動画よりも買い物が目当ての消費者にとっては少々扱いづらい点を残した状態でのサービス終了となった。日本国内のライブコマースは一時停滞にあるが、メルカリチャンネルもその突破口とはならなかったようだ。
<参考>
メルカリ、アプリ内にライブ配信サービス「メルカリチャンネル」を開始
日本にも本格的に上陸してきたライブコマース(生放送動画コマース)の魅力と可能性
7pay 2019/9/30終了
株式会社セブン&アイ・ホールディングス傘下の株式会社セブン・ペイが運営するバーコード決済サービス「7pay」は、2019年9月30日に全てのサービスを廃止した。
7payは、セブン-イレブンの公式スマホアプリ「セブン-イレブン アプリ」で利用できたバーコード決済サービス。2019年7月1日にサービスを開始したが、翌日の7月2日に消費者の問い合わせから第三者による不正アクセスや不正チャージが発覚し、7月4日までに各種チャージや新規会員登録といったほとんどの機能を停止していた。セキュリティ対策プロジェクトの調査によるとリスト型アカウントハッキングの可能性が高いとされているが、2019年8月1日時点で情報流出の明確な痕跡は確認されていない。7月31日時点の被害状況は808人、金額にして38,615,473円に上っており、被害者に対しては運営会社のセブン・ペイを中心に今後もグループでの対応を進めていくという。
IYフレッシュサービス 2019/11/30終了
アスクル株式会社の運営する個人向けショッピングサイトLOHACOは、「IYフレッシュサービス」の提供を2019年11月30日に終了した。
IYフレッシュサービスは、アスクルと株式会社セブン&アイ・ホールディングスの業務提携から始まった生鮮食品EC事業だ。両社の相互送客の他、従来のネットスーパーが抱える配送の受け取り機会ロス問題に1時間単位の配送時間指定で対応するなど、消費者の利便性を向上させるための取り組みが行われていた。当初の計画では2020年秋頃にサービス提供エリアを首都圏まで拡大する見込みだったが、結果的には新宿区と文京区のみのテスト展開に留まった。
<参考>
アスクル、セブン&アイと業務提携、生鮮食品ECを11月末開始予定
ZOZOTOWNブランド古着買取サービス 2020/1/31終了予定
株式会社ZOZOは、ZOZOTOWNの「ブランド古着買取サービス」を2020年1月31日に終了すると発表した。
ZOZOTOWNブランド古着買取サービスは、古着を専用の買取キットに詰めて送ることで自宅にいながら簡単に売却を実現するサービスである。無料で利用でき、ZOZOTOWNの会員であれば査定額が5%アップするなどの特徴があった。ニュースリリースによると、その背景には洋服の下取りを行う同社の別サービス「買い替え割」の機能拡充という目的があるようだ。従来の買い替え割は商品の購入時にしか利用できず、時間と共に価値の低下するアパレルとは噛み合わない点があったが、機能拡充により任意のタイミングでポイントと交換できるようになるなど、総合的に見れば消費者を囲い込みつつ利便性を向上させたと捉えることもできる。
もしもドロップシッピング 2020/4終了予定
株式会社もしもは、無料のドロップシッピングサービス「もしもドロップシッピング」を2020年4月末に終了する。
2006年にサービスを開始したもしもドロップシッピングは、40万点以上の商品の中から売りたい商品を選び、無料のサイト作成ツールを使ってネットショップを開設できるサービス。商品が購入されるとショップオーナーを介さずにメーカーが購入者へ商品を直送するシステムで、在庫のリスクや梱包・配送の手間なくネットショップを運営できるのが特長だ。なお、同社の別サービスである「TopSeller」「もしもアフィリエイト」「もしもマーケティング」については、引き続き事業を拡大していくという。無料サービスでありながら購入者とのやり取りをもしもドロップシッピング側で対応するシステムが、採算の合わない負担であったことが考えられる。
CARTSTAR 2020/4/30終了予定
NHN SAVAWAY株式会社が2016年より提供している「CARTSTAR」は、2020年4月30日をもってサービスを終了すると発表した。
CARTSTARは、リアル店舗のような手厚い接客と効率運営の両立を目指したショッピングカートだ。購入回数や性別といった顧客の属性に合わせてデザインをカスタマイズできることや集客に強いことが特長で、2019年3月時点で約400店舗が導入していた。なお、新規の申し込みは2019年7月30日に受付を終了している。市場の変化に伴って経営資源を集中させることがサービス終了の理由で、今後は同社による複数ネットショップ一元管理サービス「TEMPOSTAR」を中心にグローバルなEC支援事業サービスを強化していくという。
<参考>
【2019年最新版】国内のECサイト・ネットショップの総稼働店舗数
【徹底解剖】ネットショップ開店に利用されている全21のショッピングカートASPとその選び方
e店舗マネージャー 2020/4/30終了予定
エムウィンソフト株式会社のEビジネス部門が提供している「e店舗マネージャー」は、2020年4月30日にサービスを終了すると発表した。
e店舗マネージャーは2006年にサービスを開始した老舗で、全てを1つの画面で管理できることや商品連動による一括管理を特長としている。ニュースリリースによると、EC業界の多様化と市場の急速な変化に伴いサービス継続が困難になったことがサービス終了に至った理由だ。受注管理・在庫管理・商品登録・顧客管理の領域を広くカバーする総合型カートASPのひとつだったが、エムウィンソフト自体が福祉・介護業界向けのサービスを主力とする企業であり、現在の体制では対応しきれなくなったことが推測される。
その他の終了・終了予告されたEC業界関連サービス
最後に、その他のEC業界関連、及びEC業界とは直接関係がないものでも近しい業界で終了を発表した主なサービスも見ていく。
ソフトバンク3Gサービス 2024/1終了予定
NTTドコモ、auに次いで、ソフトバンク株式会社が3Gサービスの提供を2024年1月に終了することを発表した。これによりフィーチャーフォン(ガラケー)だけでなく、一部のiPhoneや音声通話において3G回線が使用されているスマホも利用できなくなる。2019年9月30日に終了した無線呼出しサービス「ポケットベル(ポケベル)」に続き、2020年半ばにはフィーチャーフォンもその長い歴史に幕を下ろすことが予告された。
うねり続けるEC業界の光と陰
今年も数多くのサービスが終了となった。CARTSTARの終了で、ショッピングカートの移行を余儀なくされている企業も多いのではないだろうか。EC業界の急成長についていけずサービス継続が難しくなったものもあれば、今後成長が見込まれる分野に注力する目的での決定も見られた。また、多くのトレンドを作り出してきたZOZOやメルカリは施策のサイクルが非常に早いため、短期間でのサービス終了といった決断の早さも特徴的である。
今回目を引いたのは、不正アクセス絡みのトラブルによるサービス終了である。特に7payはセブン-イレブンの普及率もあり期待も高かったが、それが裏目に出る結果となった。インターネットで商品を売っていくためには、相応のセキュリティ対策やリテラシーも必要になってくるのだ。
それ以外では3G回線の終了予告が印象に残るが、2020年より提供が見込まれる第5世代移動通信システム「5G」は、EC業界にも少なからず影響を与えるだろう。ARやVRを始めとする革新的なテクノロジーがどのようにEC業界を進化させていくのか、来年も引き続き注目していきたい。