2017年にサービス終了・終了予告されたEC関連10サービスまとめ - うねり続けるEC業界の光と陰
そろそろ今年も終わりの足音が聞こえてきたが、この2017年もEC業界は多くの新しい技術とサービスが市場を賑わせた。しかしその一方で、業界の荒波に揉まれてひっそりと終了していったサービスも少なくはない。その中で今回は2017年に終了したサービス、及び終了が予告されたサービスを10個ピックアップして紹介していく。
<参考>
2016年にサービス終了・終了予告されたEC関連10サービスまとめ - うねり続けるEC業界の光と陰
2015年にサービス終了・終了予告されたEC関連10サービスまとめ - うねり続けるEC業界の光と陰
Vine 2017/1/17終了
米Twitter社が提供していた6秒動画を配信するサービス「Vine」が2017年1月17日にサービス終了した。
Vineは、撮影した6秒の動画がループして配信されるという、無料の動画共有サービスである。米Twitter社が提供していたサービスで、「フォロワー」や「いいね」機能があり、TwitterやFacebookと似た仕組みでユーザー間で動画が拡散される形式。2013年に提供を開始し、2015年には月間アクティブユーザー数が1億人にのぼるなど、人気を博していた。日本では女子中高生を中心に人気を誇り、「大関れいか」のような人気ユーザーも生まれていた。
若者に人気を博していたVineが、なぜサービス終了まで追い込まれてしまったのだろうか。それは、動画投稿の場が非常に増えたということが言えるだろう。SNSで言うならば、「自然にコンテンツが消える」ことが最大の特徴である「Snapchat」や、日本で2017年の流行語にもなった「Instagram」の、最大15秒までの動画を投稿できるストーリー機能のように、気軽に動画を投稿でき、若者に人気のサービスが増えてきた。また、Twitterにおいても動画を投稿することができるようになり、同社で似たようなサービスを扱う必要性が無くなったためとも言える。
Vineの提供が終了し、動画投稿はできなくなったが、今まで配信されてきた動画は、アーカイブで現在も見ることができるようだ。
日本館 2017/2/28終了
NTTドコモが運営していた中国向けECサイト「日本館」が2017年2月28日に終了した。
日本館は、チャイナモバイルサイト内に日本商品を中心に取り扱うECサイトとして2016年9月に開設され、美容、美肌、健康サプリメント、幼児用品など全140種類の販売を行っていた。しかし、なかなか取り扱い商品数が伸びず、中国市場でも一定の認知を得られなかったようだ。今年に入り、越境ECに躊躇する企業が増えるトレンドを象徴する撤退となった。
<参考>
【中国】中国石油・中国移動など他業種のビッグプレーヤーも越境ECに続々進出
NTTドコモが中国向け越境ECから撤退、「日本館」を2月末に終了
スクロールショップ、シニア向けアパレルECサイト「ブリアージュ」 2017/2/28終了
株式会社スクロールは2017年2月28日、シニア向けECサイトである「スクロールショップ」と「ブリアージュサイト」を閉鎖した。
「スクロールショップ」「ブリアージュサイト」とは、株式会社スクロールが運営するECサイトで、40・50代の女性をターゲットにしていた。生協会員向けに商品を販売しているスクロールは、生協会員を中心に着実に顧客を獲得し、「40・50代のプチプラファッション」という需要を得て人気を博していた。
スクロールは今回2つのサイトを閉鎖し、アパレルEC事業から撤退することとなった。スクロールは、2014年9月にミセスファッションを販売するサイトである「Rapty」のECサイトやカタログ通販を終了し、Rapty商品をスクロールショップで販売していた。そのため、スクロールの扱うアパレル商品は、「スクロールショップ」と「ブリアージュサイト」の2つのみとなっていた。しかしアパレル商品は、他の事業に比べて売上高は高いが、利益を得ることが難しく撤退を余儀なくされたようだ。
今後は、ECサイト運営に対しては化粧品や健康食品といった商材に力を入れるという。シニア向けアパレル商品は、カタログ通販や生協会員向けのみの扱いとなっている。
<参考>
WebPay 2017/4/30終了
ウェブペイ株式会社は2017年4月30日、クレジット決済代行サービスであるWebPayの提供を終了した。
WebPayは、ウェブペイ株式会社の運営する、ウェブサイトやモバイルアプリでのクレジットによるオンライン決済の代行サービスであった。ウェブペイ株式会社は、2015年2月にLINE株式会社により完全子会社となった。それからわずか約2年でのサービス終了となった。
LINEは元々サービスの見切りが非常に早いが、今回の撤退は、世界130ヶ国以上の通過での取引が可能だというアメリカのStripe社が2016年10月に日本での提供を開始したというのが非常に大きな原因と考えられる。WebPayは当初Stripeと互換性があるということで注目を集めていたため、Stripeの日本提供開始という事実は影響を与えたのだろう。
<参考>
進化を続けるオンライン決済サービス - ここ数ヶ月の動向まとめと今後のトレンド
ポンパレ 2017/5/15終了
リクルートグループであるリクルートライフスタイルは2017年5月15日、クーポン・チケット販売サイトであるポンパレの提供を終了した。
ポンパレは、リクルートライフスタイルが運営する、共同購入チケットサイト。期間限定であり、みんなで購入することによって安くなるという仕組みだ。その安さや、ポイントの貯まりやすさなどから、リピーターが多く存在した。
しかし、共同購入チケットビジネスはここ数年、時代の流れから取り残されていた。アメリカに拠点を置く大手GROUPONも、「ショッピングクーポン」の販売が終了となるなど、共同購入チケットは、チケット販売会社にとっては利益となることが多いが、チケットを提供する企業にとってはリピーターを増やすことが難しかったり、利益があまり出なかったりと、そこまで利点がないことが明らかになってきていた。そのためポンパレも撤退を余儀なくされたのだろう。「ポンパレ」自体が無くなったという訳では無く、ポンパレモールは現在も運営中だ。
<参考>
実はいまだに市場拡大が続くグルーポン系サイト - クーポン共同購入サービス、グルーポン・ポンパレ・ルクサの奮闘
Cart 2017/5/22終了
カート株式会社は2017年5月22日、ショッピングカートサービスであるCartの提供を終了した。
Cartは、カート株式会社の運営する、キュレーションメディア型のショッピングカートサービス。170名を超える芸能人やメディアの投稿するコンテンツを見ながらショッピングを楽しむことができる。ブログのような感覚で商品を掲載することができたり、芸能陣にメッセージを送って商品を紹介してもらうことも可能。2016年6月にはクレジットカード手数料が無料になり、ネット販売にかかる費用が全て無料という点で、非常に評価を集めた。
しかし、決済手数料無料ということは運営会社(カート株式会社)側が決済手数料を負担するということを意味し、それを継続するためにはかなりの資本力が必要となってくる。他にもSPIKEやPAY.JPなど時を同じくして類似の資本力を持ったサービスが展開されたことも影響しただろう。キュレーションメディア型のカートという概念は他には無いものではあったため、事業者・消費者に受け入れられるまで時間が必要だったのかもしれない。
<参考>
決済手数料無料という革命はEC業界で成功するのか - 各社が思い描く未来予想図はEC事業者をどこまで虜に出来るのか
ZOZOフリマ 2017/6/30終了
株式会社スタートトゥデイは2017年6月30日、フリマアプリであるZOZOフリマの提供を終了した。
ZOZOフリマは、株式会社スタートトゥデイの運営するファッションに特化したフリマアプリだった。2015年12月にサービスを開始し、わずか1年半でのサービス終了となってしまった。同社の運営するZOZOTOWNやWEARでの商品情報や画像を使用して出品することが可能なため、商品の詳細をわざわざ入力する手間がない点が非常に便利であった。また、ZOZOTOWNで利用可能なZOZOポイントへの交換が可能な点であったり、フリマ商品がZOZOTOWNへ掲載される点が、利用者の多いZOZOTOWNと共に利用するユーザーを増やしていた。
しかし、ZOZOフリマは想定より売上高を伸ばすことができなかったため撤退を判断したようだ。メルカリが席巻するフリマアプリ業界はメルカリだけでなくフリル、ラクマのように様々なサービスが今でも存在。その中でファッションという中で集客を狙ったが、思ったより効果は現れなかったようだ。
<参考>
スタートトゥデイのフリマアプリ「ZOZOフリマ」が6月で終了へ
激動するフリマアプリ市場のこれまでとこれから - メルカリは世界を獲れるのか
楽天ブックスのスピード配送 2017/7/18終了
楽天株式会社は2017年7月18日に、オンライン書店楽天ブックスのスピード配送を終了した。
楽天ブックスは、楽天株式会社が運営する、本やCD、DVD、ゲームといった商品400万点の商品を注文できる、オンライン書店。楽天は「あす楽 当日便」「あす楽 翌日便」というスピード配送のサービスを行っていた。「あす楽 当日便」とは、9時59分までに商品を注文すると、当日中に配送してくれるサービスであり、手数料は498円。「あす楽 翌日便」とは、23時59分までに商品を注文すると、翌日中に商品を配送してくれるサービスであり、手数料は350円。本やCD、DVDなど50万点以上を対象としていた。
スピード配送は3月に顕在化したいわゆる「宅配クライシス」の影響で、配送業者からの見直しの要請を受けたことで終了となった。現在楽天ブックスのスピード配送は、11時59分までに商品を注文すると、手数料無料で翌日中に商品が届く「あす楽」というサービスのみ行っている。
<参考>
ZOZOプレミアム・ZOZOプラチナム 2017/7/31終了
株式会社スタートトゥデイは2017年7月31日にZOZOプレミアム・ZOZOプラチナムのサービスを終了した。
ZOZOプレミアム・ZOZOプラチナムは、株式会社スタートトゥデイの運営するZOZOTOWNの有料会員システムであった。ZOZOプレミアムは、月額350円で配送料が無料、返品料金も無料となるサービス。ZOZOプラチナムは、月額500円でZOZOプレミアムのサービスに加えて、即日配送も無料になるというサービスだ。返品料金が無料というサービスは、試着することのできないファッションECサービスにおいて、非常に喜ばれるサービスであった。
ZOZOプレミアム・ZOZOプラチナムの終了も、配送業者との交渉の結果と言われている。配送料が無料、返品も無料、さらに即日配送までもが無料となるなど、配送業者の負担が大きいこのサービスは、配送業者の負担を減らすトレンドの中で停止となった。
<参考>
ZOZOも当日配達系サービス「ZOZOプレミアム」「ZOZOプラチナム」を7月末で終了
楽天B2B 2018/3/29終了
楽天株式会社は2018年3月29日に楽天B2Bの提供を終了することを、2017年12月7日に発表した。
楽天B2Bは、楽天株式会社が運営する、楽天市場出店店舗向けの卸・仕入れサイトである。楽天市場での顧客からの需要を受け、卸商品を販売するサプライヤーと、商品を購入するバイヤーのプラットフォームとなるサイトであった。サプライヤーがバイヤーの顧客に直接商品を発送する「楽ちょく」といったサービスや、楽天市場で利用できる商材のデータや画像のダウンロードが可能であったりと、楽天市場への販売の助けとなるサービスが多く、非常に便利なサービスであった。
楽天B2Bは、今後株式会社SynaBizへ事業の一部を継承する。株式会社SynaBizとは、卸サイトである「NETSEA」を運営する会社であり、オークション相場の比較サイトである「aucfan.com」を運営する株式会社オークファンの完全子会社である。NETSEAの利用者に楽天市場への出店者も多く、顧客のNETSEAへの移行を両社で進めていくという。
今後の楽天B2Bは、2018年3月29日にサービスが終了し、2018年6月29日17時までマイページのログインや利用が可能だという。
うねり続けるEC業界の光と陰
今年も数多くのサービスが終了となった。競合企業との競争に勝てなかったものや、人気のあるサービスだったものだが配送業者の問題により停止せざるを得なかったもの、さらにトレンド自体が減退していったものなど、非常に様々である。2016年同様、楽天、LINE、C2C関連の事業の撤退があり、事業整理や淘汰が絶え間なく行われていることが印象付けられた。
競合企業との競争は今年も特にC2C事業において明暗を分ける結果となっている。フリマアプリ市場では、メルカリの一強という状態が依然として変わらず、2016年のLINE MALLの終了に続いて今年はZOZOフリマも終了という運びとなった。メルカリとは異なる、ファッションに特化という特徴を持っていたものの、メルカリの寡占状態を止めることはできなかった。
また、今年の特徴でもある配送業者側との交渉の結果のサービス停止も目立った。楽天ブックスのスピード配送の終了や、ZOZOプレミアム・ZOZOプラチナムサービスの終了からわかるように、配送の負担が大きすぎるという点は、楽天やスタートトゥデイといった大手企業も頭を悩ませる問題である。抜本的な解決までまだ道半ばのこの問題は、来年以降もEC業界の問題として、今後もサービスを停止させるほど根強く事業者を困らせることだろう。
さらに、あまり耳にしなくなった共同購入や、一気に盛り上がって一時停滞している越境ECなど、トレンド自体が減退したことによる撤退も、ここでピックアップしたサービス以外でも各所で行われた。
こうしてみて見ると、サービスの終了をどのタイミングで決めるかということは非常に大切である。昨今のEC業界は非常に見切りの早さが目立っているようにも見える。Cartや、ZOZOフリマなど1年程度での撤退をベンチャーも大手も判断しているケースが増えてきた。事業を冷静に見て、どのタイミングで見切りをつけるかということは今後もEC業界でサービスを提供している事業者には求められていくことだろう。EC業界の栄枯盛衰はまだまだ続きそうだ。