激動するフリマアプリ市場のこれまでとこれから - メルカリは世界を獲れるのか

 

ここ数年で急激な成長を見せ、EC業界に大きな影響を与えているのがメルカリなどを代表とするフリマアプリだ。個人間で気軽に売買ができるフリマアプリは、メルカリの他にも、FrilLINE MALLショッピーズなど様々なものがある。今回は、フリマアプリ市場の過去を振り返り、これからを考えていく。

 

 

フリマアプリとC2Cサービス

 

フリマアプリとは個人間でモノを売買するスマホアプリのこと。フリーマーケットを行うアプリというニュアンスとなる。また個人間売買(Consumer to Consumer)を行うサービスをC2Cサービスと呼ぶため、フリマアプリもC2Cサービスとなり、今やそのC2Cサービスの代表格となっている。

オンラインでのC2Cビジネスの市場規模は2015年度には3.4兆円と(前年度比21%増)なるとも言われて(ZUU online調べ)いる。BtoCのEC市場規模予想13.8兆円(野村総研)と比較してもその1/4程度までC2Cが迫ってきている計算となり、市場規模の点でもかなり浸透してきていることが確認できる。

ジャストシステムの調査によると、20代女性のフリマアプリ利用率は、2015年3月時点で22.0%。2014年4月の6.8%から実に3倍以上となっている。さらに2015年10月の各アプリ別の利用率はメルカリが88.6%、Frilが30%、LINE MALLが18.9%、ラクマが17.9%の順となっており、各サービスを複数使いこなしている実態も浮かんできている。

それではそのような爆発的な伸びを見せているフリマアプリ市場について、その過去から今を3つのフェーズに切って振り返っていこう。

激動するフリマアプリ市場のこれまでとこれから - メルカリは世界を獲れるのか

<参考>

フリマアプリで気軽にモノを売る - フリル、メルカリ、STULIOは群雄割拠のC2Cコマースの勝者に成り得るのか

 

 

市場勃興期(2012年~2013年上半期)

 

最初にサービスをリリースしたのはFril。2012年7月に女性ファッションに特化したフリマアプリとして登場。次いでハンドメイド作品に特化したminneが2012年10月にスタート。そして、ガラケー時代からフリマサービスを展開していたショッピーズが2012年12月にスマホアプリをリリースした。

この市場勃興期にリリースされた3サービスはいずれも10代・20代の女性向けや、ハンドメイドと言ったターゲットを絞ったサービス展開を行っていた。特にFrilは初年度から黒字を達成するなど、C2Cサービスの中では非常に良いスタートを切って一気に注目を浴びた。

またハンドメイドマーケットECというジャンルが混在していた時代でもあった。ハンドメイドマーケットECは2005年にサービスを開始した米国Etsyが大きな潮流となっており、2012年当時は日本版Etsyという触れ込みで複数のサービスが乱立していた。どちらかというとその中でminneは後発組としてリリースされたという位置付けとなっていた。またトレンドも“フリマアプリ”というキーワードよりも“ハンドメイドマーケットEC”というキーワードの方が強く、2013年7月のフリマアプリの歴史を作るあのサービスのリリースまでは、C2Cサービスを変えようとしていたハンドメイドマーケットECによってどのようにEC市場全体を変えることが出来るのかが注目されていた。

 

<参考>

ひしめき合うハンドメイドマーケットEC - 気軽にネットで開店する時代はやってきたのか。Etsy、Creemaに見る未来

進化するハンドメイドマーケットEC市場 - Etsy、Creemaを脅かし市場を牽引するサービスは現れるのか

 

 

サービス乱立期(2013年下半期~2014年)

 

2013年7月に元ウノウ代表の山田進太郎氏がメルカリを立ち上げた。スマホが爆発的な勢いで生活に浸透をしてきており、ECの売上も年々凄まじい勢いでスマホへシフト。そんな中、スマホを使って3分で出品できる手軽さを武器にメルカリをリリースし、爆発的な勢いで利用者数を伸ばしていった。またここまでリリースされたアプリとは異なり、出品する商品のジャンルは問わずに幅広い商品と取り扱うというコンセプトも良かったようだ。

この流れを受けて、2013年10月のSTULIO、12月のLINE MALLとフリマアプリのリリースが続く。特にLINE MALLはLINEのEC事業の先駆けとして始まった肝煎りのサービス。コミュニケーションツールとしての圧倒的なLINEの利用率を考慮すると、一気にFrilメルカリなどの先行サービスを追い越すのでは、とも考えられていた。その期待に違わず、リリース後約半年となる2014年7月には156万人が利用。どこまでその数字を伸ばすか注目された。

2014年2月にkiteco、そして11月に楽天ラクマをスタート。LINEに続いて、EC業界の大手企業がフリマアプリ業界に参入してきたのだ。一部では画面インターフェースがメルカリに瓜二つとも言われたが、メルカリで10%かかる手数料が、ラクマではかからない点が大きな魅力。本業のEC事業では、Yahoo!ショッピングの無料攻勢にさらされていたが、こちらでは無料を武器にユーザー数を拡大していく。

乱立したサービスから抜け出すために、主力各社が資金調達やTVCMを開始したのもこのころだ。2014年5月からメルカリが大々的なTVCMを開始。それに先立つ3月に調達した資金を投入したものだった。この施策により、今まではアーリーアダプターの壁を越えられなかったサービスも認知を一般層に拡大することで、ユーザー数はさらに拡大していき2014年11月には600万ダウンロードを達成し、他社に大きく溝をあけていく。2014年8月にはショッピーズ、10月にはFril、12月にはLINE MALL、翌2015年2月にはminneと相次いでTVCMを実施。独立系のFrilメルカリと同じくTVCMを打つ前に資金調達を行っている。

またメルカリは2014年10月にもさらに大規模な資金調達を行い、同年に開始した米国展開にも他社に先駆けて取り組み、事業拡大の矛先は海外へ。一方でFrilは2014年8月にBtoCサービスとしてFril公式ショップをオープンし、事業を別方向へ拡大していく。

 

<参考>

レッドオーシャンと化したフリマアプリ市場へ参入してきた「ラクマ」は生き残ることができるのか

LINEのEC関連事業への参入が本格化!EC市場でも覇者となれるのか

LINE MALL(ラインモール)待望の船出 - グランドオープン時の展開とEC業界に与える影響

【徹底解剖】話題のLINE MALLで実際に開店・出品、そして購入を体験してみた

 

 

市場淘汰期(2015年~今)

 

LINE、楽天という大手も参入し、各社がTVCMでの認知拡大を図って競争が激化してきたフリマアプリ市場はレッドオーシャンと化した。まず最初に撤退を発表したのはkiteco。リリースから1年の2015年2月26日に撤退。さらに今年に入りSTULIOが2016年1月8日、LINE MALLも5月31日に完全撤退することを発表するなど、厳しい競争環境にあることが浮き彫りになった。

そんな中、2015年12月にフリマアプリ業界最後の大物と言えるZOZOフリマが登場。ZOZOTOWNWEARを運営するスタートトゥデイが遅ればせながらフリマアプリに参入してきた。もちろん既存のZOZOTOWNとWEARと連携していく形となるが、LINEがあれだけのユーザーを抱えながらも撤退したようにそれだけで勝ちきれるものでもないのも事実だ。しかし一方でアパレルECの豊富な実績を有することからユーザーのツボはどこよりも把握しているはず。現在は販売手数料の無料化、毎日のセール開催など矢継ぎ早に施策を打っている状態だ。また、ラクマが2016年3月からTVCMを開始し、台湾へ展開を開始するなど、再び攻勢を強めているようだ。

このように消耗戦になり、徐々に勝ち組が明確になりつつあるフリマアプリ業界だが、この3月にはメルカリが84億円にも及ぶ巨額の資金調達を実施。この3月時点でのダウンロード数は国内2,500万、米国700万と合わせて3,200万。2番手と目されるFrilが450万のため、7倍程度の差がついている状況だ。

また一方でminneは、ハンドメイドマーケットECの領域で突っ走り、国内NO1を確保。ヤマト運輸と連携し簡易梱包専用パッケージの導入や、パルコ内に実店舗「ミエルツアー」を期間限定で開催するなど、再び動きが活発化してきている。

 

<参考>

2015年にサービス終了・終了予告されたEC関連10サービスまとめ - うねり続けるEC業界の光と陰

広がりを見せるフリマアプリ市場 - 「テーマ型フリマ」で独自のポジションを築く MOTTAINAI、golfpot、KURURi

 

 

メルカリは世界を獲れるのか

 

このように国内のフリマアプリ市場はメルカリの寡占状態となっている。しかしこの3月のメルカリの巨額の資金調達が意味するものは、国内市場を制圧するためではなく明らかに海外での成功を目指したもの。国内では単月黒字化を達成しているものの、米国ではまだ赤字だ。日本のスタートアップが幾度となく失敗してきた海外展開。メルカリはここにきて、過去に多くの屍を積み重ねてきたIT系の投資家達の夢を背負っているといっても過言ではない状況となっている。

一方でC2C市場を牽引するフリマアプリがどれほどの市場の可能性を秘めているのか懐疑的な意見があるのも事実だ。国内ではヤフオク!が圧倒的なシェアを誇るも、BtoCのECサービスに比べたら市場規模はまだまだ小さい。しかしながら中国のタオバオ、米国のeBayなど、海外ではC2C系のサービスの流通総額が非常に大きい(eccLab記事)ケースも目立つ。

ここ数年での生活シーンへのスマホの浸透だけでなく、現代の若者のモノに対するエコ意識の高まりなど、フリマアプリの活性化に繋がる土壌は揃ってきている。海外展開が成功するか否かは、各国のカルチャーや商習慣と向き合い、ユーザーにとって最も利便性の高いサービスを作っていけるかが鍵になるのではないだろうか。今後の市場のさらなる活性化に期待したい。

 

<参考>

再配達に関わる手間とコストをどこまで減らせるか - EC・フリマ事業者とコンビニと宅配事業者の三位一体の取り組み

ECモール・カート・アプリの2015年流通総額まとめ - 国内12・海外7の各主力プレイヤーの値から見る市場トレンド