再配達に関わる手間とコストをどこまで減らせるか - EC・フリマ事業者とコンビニと宅配事業者の三位一体の取り組み
オンラインでモノを購入することが生活へ浸透し一般化したことで、商品の物流への要望は年々高まっている。即日配送だけでなく、Amazonが注文から1時間以内に配送するPrime Nowを日本でも開始したことで話題となったように、少しでも早く荷物を受け取りたいというニーズが高まっているのだ。
一方で、宅配物の再配達が問題になっている。ECの普及により宅配物が増加し、宅配事業者が受取人不在による非効率な再配達によって圧迫されている。国土交通省の「宅配の再配達の削減に向けた受取方法の多様化の促進等に関する検討会」報告書によると、全体の2割の荷物が再配達となっており、再配達によって営業用トラックの年間排出量の1%に相当する年約42万トンのCO2が発生していることや再配達にかかる時間は年間約1.8億時間で、年約9万人分の労働力に相当することから、大きな社会的損失が発生していることが判明した。
また消費者からしても一回で受け取ることが出来ない場合には、宅配事業者に連絡して再配達手配を行うため、それなりの手間が発生する。もちろん宅配ロッカーが完備されているマンションなどではそれほど問題はないが、一戸建てや代引きの場合は必ず対面での受取が必要となってくるため、再配達リスクは存在する。
今回は、これらの問題に代表される再配達問題を解決するべく、オンラインで購入したモノを効率的に届けるための、コンビニでの荷物受取りサービスや、EC事業者やフリマアプリ事業者の取り組みについてみていきたい。
<参考>
ECの即日配達サービスの限界への挑戦 - 頼んだものがすぐ届くのが当たり前の未来はやってくるのか
ECで買ったモノの受け取り方の多様化 - 受け取り専用ポスト、駅、ターミナル
EC事業者のコンビニ受取りサービス
自宅以外の配達物の受取り場所の選択肢として、宅配事業者の営業所のほかにコンビニで受け取れるサービスを行う宅配事業者やEC事業者が増加している。自宅近くに立地するコンビニでの受取りは、24時間営業のため帰宅時間が遅いなど配達時間に受取れない消費者などに便利な存在となっている。また、コンビニにおいても、来店者数の増加やついで買いが期待できるというメリットになる。宅配事業者は再配達の削減に繋がる。このように、コンビニ受取りサービスは、コンビニ、宅配事業者、ユーザーの3者にメリットがあると考えられる。では、コンビニごとの取り組みをみていこう。
ファミリーマート
ファミリーマートでは、ヤマト運輸と日本郵便(11月24日から)の荷物が店頭で受け取れる。取り扱いECサイトは自社サービスのfamima.comのほか、Amazonと楽天ブックスで、これらのサイトの商品を受け取りとその支払いを店頭で行うことができる。
Amazonの商品の店頭受取は、ローソンやミニストップでも可能であるが、ファミリーマートは店頭受取サービスに加えて、即日配送サービスの「当日お急ぎ便サービス」を開始した。このサービスにより、当日お急ぎ便の対象商品を注文後その日のうちに関東・関西・東北・九州地方(離島など一部を除く)を中心としたファミリーマート約7,100店舗にて商品を受け取ることが可能となった)。同時に、ファミリーマート約11,200店舗での「店頭受取」において、注文確定後から3日後までに商品を配送するサービス「お急ぎ便」も拡充された(沖縄県を除く)。当日お急ぎ便は514円、お急ぎ便は360円が1回あたりの追加料金としてかかるが、Amazonプライム会員であれば追加料金なしで何度でも利用することができる。
また、伊藤忠商事と共同で「はこBOON」という送り状の手書きが不要で、24時間コンビニエンスストアで荷物を発送・受領できる配送サービスを行っている。ヤフオク!ユーザーを中心に、約170万人に利用されてきた。それに加え、「はこBOON mini」という店頭受取ができるサービスがスタートした。
これはコンビニの既存の物流網に存在する空きスペースを活用して店舗間の配送サービスを日本で初めて実現したものだ。全国のファミリーマートのレジで無料の専用袋(35cm×45cm)を受取り、重さ10kg以内のものであれば食べ物や割れ物などの禁制品を除き配送することができる。コミックであれば、26冊も入れることができるという。まずはヤフオク!の取り扱いから開始し、来春以降その他のユーザーでも利用できるように拡大していく。配送料金は500円~で、関東中心エリア同士のやり取りであれば、3~6日で配送される。
ローソン
ローソンでは、日本郵便と佐川急便の荷物が店頭受取できる。取り扱いECサイトは、Amazon、楽天市場、HMV、JINS、dinos、docomo、ORBISなど。Amazonとは他ECサイトに先駆けて2008年から店頭受取を開始しており、楽天との連携は今年9月からスタートした。
ローソンは佐川急便と提携をし、「マチの暮らしサポート」を一部店舗で実験的に始めた。佐川急便の宅配便荷物をローソンの店頭で受け取れるだけでなく、周囲500メートル圏内なら自宅まで届けてくれるというもの。また、電話やネットで注文すればローソンの店頭で販売している飲料や弁当、惣菜、カウンターフードのおでんまで、約2,800品目の中から必要なものを届けてくれる。購入金額が税込み700円以上なら配送料は無料になる。今後、ネットスーパー事業のローソンフレッシュで注文した商品も店頭受取や店頭商品と一緒に届けることができるサービスを開始したり、実施店舗を拡大したりするようだ。
セブンイレブン
コンビニ最大手のセブンイレブンは、ファミリーマートやローソンとは異なる戦略を行っている。店頭受取はヤマト運輸のみで、取り扱いECサイトはセブン&アイグループのECサイトのomni7のみとなっている。omni7では西武やそごう、アカチャンホンポ、LoftなどのECサイトの商品を取り扱っているが、商品ラインナップなどの問題を抱えており、店頭受取に関しても出遅れている印象だ。
<参考>
ECサイト運営を支える配送事業者 - 佐川急便・ヤマト運輸・日本郵便の価格とサービスレベルの狭間での奮闘
フリマアプリとヤマト運輸の連携
C2Cサービスの市場規模が拡大するなか、商品配送の簡略化やタイミングの良い受取り、安心安全の取引が以前よりも求められるようになった。これらのニーズに応えるべく、ヤマト運輸が様々なフリマアプリ等と連携をしている。
メルカリ、fril、minneをはじめとしたフリマアプリは、ヤマト運輸が今年4月から開始した「ネコポス」や「宅急便コンパクト」と連携を開始した。
ネコポスとは、小さな荷物を家のポスト等に投函するサービスで、配達時に家で待っている必要がない。そのため、少しでも早く荷物を届けることが可能となる。宅急便コンパクトは、配送方法は一般的な宅急便と同じだが、専用BOXまたは専用薄型BOXを利用して小さな荷物を送ることができる。
配送方法もよりスムーズに行えるように工夫がされている。出品したアイテムが購入されると、出品者のもとに購入者の氏名や住所などの情報を含むQRコードが送信される。出品者は商品とQRコードが送られてきたスマホを持ってヤマト運輸直営店へ行き、店頭端末のネコピットでQRコードを読み取る。すると、自動で送り状が印刷され、手書きであて名書きをすることなく配送できる。今後はコンビニなどでも商品の発送ができるように窓口を拡大するという。現在メルカリでは、「匿名配送システム」を一部対象者のみに試験運用している。QRコードを利用することで出品者と購入者がお互いの個人情報を知られることなく商品の売買が行えるのだ。メルカリ以外のフリマアプリも今後このサービスの開始を検討しているようだ。
また、各フリマアプリはそれに加えて、配送料を一部負担して配送料を全国一律にしたり、荷物の配送状況の確認サービス、配送時のトラブルにより商品紛失・破損等が発生した際には、商品代金を全額補償するサービスなど独自のサポートサービスを行っている。
ハンドメイドマーケットのminneは、オリジナルパッケージを開発した。ネコポスと宅急便コンパクトの両方のサイズが用意されている。宅急便コンパクト専用BOXは、ヤマト包装技術研究所が開発したクイックフィットエコノを採用し、早く、簡単に、きれいな梱包ができるように工夫されている。
<参考>
レッドオーシャンと化したフリマアプリ市場へ参入してきた「ラクマ」は生き残ることができるのか
フリマアプリで気軽にモノを売る - フリル、メルカリ、STULIOは群雄割拠のC2Cコマースの勝者に成り得るのか
EC・フリマ事業者とコンビニと宅配事業者の三位一体の取り組み
今や、ECと配送は切っても切れない関係となっている。食材や日用品をECで購入するのが当たり前になり、ECが特別なものではなくなった現在、ECの成長やその存在とともに、消費者にモノを届ける仕組みを抜本的に見直す必要が出てきているのかもしれない。
コンビニでは、以前はfamiポートやLoppieなどの店頭端末を利用してから荷物の受け渡しを行っていたが、店頭端末を利用せずにスマホでバーコードを見せるだけで受け取れるようにすることによって、受取時間の短縮を実現した。
EC事業者は、出店者がモールとの手続きを行わなければコンビニ受取りができないという状況の改善や手続きの促進が必要だと思われる。Amazonは、全体の売上の4割とも言われるAmazonマーケットプレイスの商品がコンビニ受取りに対応していないため、こちらも改善されるとより再配達の削減や消費者の利便性向上に繋がるだろう。
宅配事業者は、C2Cの利用が増加した背景に合わせ、コンビニからの配送をより簡易化するなどの取り組みが必要とされている。
この再配達問題は宅配事業者だけの問題ではなく、業界全体の問題として、コンビニ、宅配事業者、EC事業者の3者が強固に連携しつつ解決に向けた取り組みをしていく必要があるだろう。今後の取り組みに期待したい。