進化を続けるECの物流アウトソーシング

 

月間の売上高が3,000万円を超えるような比較的大規模なECサイトにおいては、月間の出荷件数も数千件を超え、既に物流のアウトソーシングを導入しているケースが多くなってきている。しかし、売上高300万程度の小規模サイトや1,000万程度の中規模サイトにおいても物流業務を内部で行ってしまっているケースが依然として多い。しかし昨今、そのような中小規模向けに特化した物流のアウトソーシングサービスが勃興してきている。今回はその中小規模向けのECの物流アウトソーシングサービスについてみていく。

 

<参考>

ECサイトの梱包発送業務をアウトソースする際の分かりやすい4つの判断基準 - やるべき業務に集中するための指針

 

 

新進気鋭の中小向け物流アウトソージングサービス「オープンロジ」

 

この10月21日、業界最低水準の価格とうたうオープンロジは商品の入庫から保管、梱包、配送までを一括でアウトソーシングできる物流サービスを正式にリリースした。「最短2分で利用できる」という驚きの表現が使われているように、「物流をもっと簡単・シンプルに」をコンセプトに掲げた新サービスで、その料金体系と手軽さから業界の注目を集めている。

 

 

オープンロジの主な特徴は二つある。一つ目は、明確で安価な料金体系だ。既存の物流アウトソーシングは月額料金や保管料が一坪単位での料金体系を設定しているものも多いのが現状であった。だが、固定費用がゼロで、かつ荷物単位の従量課金制を採用しており、さらに、その価格も業界最低水準とうたっているオープンロジは、少量の荷物でもサービスを利用し易くなっている。この点に関しては物量があまり多くなく、月によって売上に波のある中小の事業者にとってコスト面でのメリットは大きいだろう。

二つ目の特徴としては、サービスが手軽でかつ分かり易い点だ。最短2分で始められるとあるように申し込みまでのプロセスを可能な限り簡略化している。また、サービスのページも大変シンプルで分かりやすいため、ITリテラシーの低い事業者や複雑なECの物流に悩まされている事業者には歓迎されるだろう。

またサービス開始後も、入庫から保管、梱包・配送までの物流サービスをインターネットで一括管理することができ、管理画面から簡単に物流業務の指示を行える。さらには、 同梱明細書や時間帯指定、配送元の変更や代引き対応なども管理画面から行えるので全ての管理が楽に行えるのだ。

さらには、海外への配送など2014年内に順次機能は拡張されていくようなので、グローバルな展開を目指したいEC事業者にとっても興味深い。中小規模のECサイト担当者のリアルなECの現場には、手軽で分かり易く、かつ安いサービスというのは魅力的であることは間違いないだろう。

 

 

物流アウトソースからトータルのサポートへ「はぴロジ」

 

物流アウトソーシングサービスの中で存在感を発揮している「はぴロジ」。株式会社ブレインウェーブが提供するEC総合支援サービスだ。

 

 

はぴロジは、物流アウトソーシングだけでなく、出荷管理システムやネットショップの立ち上げサービスに至るまで提供している点だ。そのため、オープンロジや他の会社同様の物流を丸ごとアウトソーシングできるサービスを提供している上に、幅広いニーズに応える対応力が強みとなっている。さらにオプションの幅も広く、中小規模のECサイト事業者ならではの悩みに特化された、商品の写真撮影代行やプレゼント包装のオプションなどイレギュラーな注文にも対応している。また、食品等の保管が難しい商品も冷蔵・冷凍対応しているので扱うことができる。

また、「ASIMS」という出荷管理システムの提供も行っている。モール毎やショップ毎に異なる受注データを最適化し、かつ、倉庫とも連携することで自動出荷を可能とするサービスで、EC事業者と物流倉庫のコミュニケーションの円滑化を可能にしている。

このようにサービスの幅の広さによる対応力でEC事業者の細かなニーズに応えることが可能となっている。

 

 

独自の物流ネットワークを持つ日本郵便の「ワンストップ通販ソリューション」

 

ここ数年でEC向けサービスに参入している日本郵便

 

 

日本郵便はゆうパケットやEC−CUBEとのID連携など近年EC事業に力を入れ始めており、物流アウトソーシングサービスの「ワンストップ通販ソリューション」を、中小企業をターゲットとしてEC事業者向けに展開している。一番の強みは日本全国に張り巡らされた独自の物流ネットワークだ。物流倉庫だけではなく、お客様の手元に商品が届くまで安心して任せられるサービスといえる。このソリューションは、通販の顧客対応からバックヤード業務まで一括して請け負う仕組みがあるのはもちろんだが、ターゲット・アプローチ支援や通販マーケティング支援、コールセンター支援など幅広い内容を取り揃えているのが魅力的だ。

また、ワンストップ通販ソリューションは上記すべての一括導入は必須ではないので、倉庫のみの利用や、受注管理システムのみの利用するというような一部利用ができる。これはコストを抑えて必要な部分だけ利用したい中小企業にとってとても魅力的なポイントとなっている。

 

<参考>

日本郵便はECの配送サービスの主役になれるのか - ゆうパケット、EC-CUBEとのID連携、通販ワンストップサービス

ECサイト運営を支える配送事業者 - 佐川急便・ヤマト運輸・日本郵便の価格とサービスレベルの狭間での奮闘

 

 

物流アウトソーシングサービスの今後 - EC事業者は本来業務に注力せよ

 

こうして見てみると、複雑で不明瞭であったECの物流に、シンプルさという武器で勝負を仕掛けてきたオープンロジは価値あるサービスではないだろうか。サービスの紹介ページの分かり易さや、コスト、申し込み完了まで最短2分であることは他にはない点である。はぴロジは、物流アウトソーシングだけでなくEC物流に特化しているオプションを兼ね備えたワンランク上のサービスを提供している。日本郵便は、その独自の物流ネットワークを最大限に生かしトータルサービスで中小事業者に配慮をした内容になっている。

ECサイト事業者のニーズを考えると、小規模のEC事業者や物流アウトソーシング自体が初心者な事業者、すぐに物流アウトソーシングを始めたい人に向けてはオープンロジが適切ではないだろうか。また、食品など保管が難しい商品を取り扱っているEC事業者や倉庫での写真撮影請け負いなど細かなニーズも対応してほしい業者は「はぴロジ」、部分的にサービスを利用したい事業者、スピードアップかつ信頼性や確実性を求めたい事業者は「日本郵便」が適切だろう。

このように物流アウトソーシングもここで紹介した三社でも三様に強みが違うので、物流に求めるサービスの優先順位から、ショップの特色・体制ごとに合わせた会社のサービスを選びたい。近い将来、どのように小さなECサイトにおいても物流のアウトソーシングがデファクトとなり、本来ショップのオーナーが注力すべき「どうやって売上を伸ばすか」に注力できるような時代となるのか。そのために今後もこれらのサービスが発展し進化を続けていって欲しい。