ECサイトの梱包発送業務をアウトソースする際の分かりやすい4つの判断基準

 

ECサイトにおいて梱包配送業務はご注文いただいたものをお客様へお渡しする為の作業で、言わばECのモノの流れの根幹とも言える業務だ。この業務、実は思った以上に負荷が大きいものであり、ある程度の規模になったらアウトソースを検討するべき業務の筆頭である。しかし実際にはなかなかアウトソースをすることが出来ずに抱えてしまい、ECサイトの重要業務であるマーケティングやCRMなどの戦略的業務に手が回らないというショップが非常に多い。今回はECサイトの梱包発送業務をアウトソースする際の判断基準の考え方と目安について考えていく。

 

ECサイトの梱包発送業務をアウトソースする際の分かりやすい4つの判断基準

 

<参考>

ECサイト運営業務を5つに大別して整理してみた - 事業者が注力すべき業務と、効率化・アウトソースすべき業務

 

 

そももそECサイトの梱包発送業務とは

 

ECサイトの梱包発送業務は一般的には、以下のような業務を行っている。

  • 商品ピッキング
  • 納品書発行
  • 送り状発行
  • 梱包作業
  • 発送
  • 発送完了メールの送信

いずれの作業も、お客様からご注文いただいた商品がお渡しされるまでに行わなくてはならない重要な作業だと言える。重要な作業だからこそ、効率的にかつ正確に行う必要があるため、できるだけしっかり時間をかけて行いところではあるが、出荷件数と作業する人数と時間を精査すると、自社で全てを行わなくても良いことが見えてくる。またこれらの業務は実際にはショップの置かれている状況等によって手順や方法が異なってくることも、判断基準を鈍らせる原因だといえるだろう。

それでは、具体的にどのような判断基準でアウトソースするべきかをみていきたい。

 

 

出荷件数

 

まず梱包発送業務のアウトソースを検討する場合は、ショップの規模(=売上高)を単純に判断基準としにくい。売上高=購買単価×出荷件数となり、単純に規模では計れない点があるからだ。そのため、まず最初の判断基準として出荷件数を挙げる。目安として、一人・一日当たりの作業件数が50件以上あると、作業量としてはかなり厳しくなってくる。ECサイトの運営は他にもやるべきことがたくさんあり、他のやるべき作業にかけることが出来る残りの時間を考えるととてもきつくなってくる。

また、これらの業務は配送業者が集荷に来る時間までにしっかりと終わらせることが望ましい。しかし現実的には、商品発注業務や問い合わせ対応などを兼任しているケースが多く、日によって注文件数にも波があるため、梱包発送業務だけを行える時間が圧迫されギリギリになるケースが多々ある。

例えば、100件を10人のスタッフでやるのであれば1人10件の梱包作業をすれば良い計算となるが、2人でやるとしたら1人50件(=上述した出荷件数の一日上限の目安)を受け持たなければならない。1件あたりの作業が5分かかるとしたら、250分≒4時間の作業となる計算だ。2名のスタッフの1日の業務の半分以上を、梱包発送業務に費やすのは明らかにもったいない。ましては、都市部で安くない人件費で行うと考えるとなおさらであり、4時間 × 2人 × 20日 × 時給(900円) = 14.4万円 という計算をしてみると、どれだけ梱包発送作業に費用がかかっているかがわかる。

作業時間を5分以内にすることで効率化を図ることもできるだろう。しかし効率化と粗雑化は紙一重の部分も多く、商品と納品書と送り状を入れ間違えてるようなミスが発生する可能性も高くなってくる。その場合、個人情報流出と指摘されるケースもありその後の対応時間を考えると、その対応コストも発生し、本来やるべき業務が圧迫されてしまう、ということになりかねない。そのため作業時間を効率化するのであれば、システム化なども視野に入れないといけなくなり、かなり大掛かりな業務システムの改善が必要となってくる。

 

 

商材の種類

 

実際には出荷件数だけで決めきれない部分もある。取扱っている商品によってもその手間は変わってくる。大型の商品、重い商品、割れ物、小さな商品、サイズがバラバラの商品を同梱するケースなど手間がかかる商材は意外と多い。どの場合も搬送時の事故を減らす為に緩衝材を詰めなければいけないため、一手間余計にかかることになる。

そのため、一件あたりの所要時間は5分を大幅に超えてくることとなり、50件という目安も下方修正を余儀なくされることとなる。アウトソース先の専門企業では、サイズがバラバラでも効率的にする為のアイディアも経験も豊富であるため、このような梱包に一手間が必要な商材の場合は、より早めにアウトソースに切り替える検討を行うべきだろう。

 

 

在庫スペース

 

3つ目の判断基準は、在庫スペースだ。事業を始めたばかりの頃はたいしたスペースも使わなかったため、ついつい事務所内に在庫を置いてしまいがちである。ある程度事業が軌道に乗ってくるとそれなりの在庫量となり、都市部のオフィスに商品を在庫するのはとてももったいない。感覚的には5坪を超えるとアウトソースを行った方が良いと言える。在庫スペースで5坪を使っていると、梱包の作業スペースを含めると10坪程度は使っていることとなる。例えば都内での事務所の単価は坪15,000円程度だが、地方の物流センターでは坪5,000円程度でまかなえる。単価だけを単純にみてもかなりの費用ロスが発生することになり、この場合は在庫スペースだけで5万円/月、作業スペースも含めると12.5万円の差となる。ただし、この費用はアウトソースをしたからといっても事務所を狭いところに移転するなどしないと浮かないことになるが、空いたスペースで、打ち合わせスペースを作ったり、今まで課題だったことに使う、新しく人を入れるスペースにする等、環境整備を行い効率化を図ることに使っていきたい。

また、スペースの問題は費用だけに留まらない。デスク周りでわさわさと作業されると、デスクワークにも梱包作業でも、ミスが出やすくなる。モノを保管し作業するスペースとデスクをしっかりと分断できていればいいが、そうではないケースが多々ある。現状でどのくらいの面積を使用しているか、今一度計算してみてみたい。

 

 

資材・配送コスト

 

最後の判断基準はひとつの荷物にかかる梱包資材等のコストと配送のコストだ。非常に単純に目安を出すならば、梱包資材コストと配送コストが合計で800円を超えているようだと非常にまずい状態だ。実際には各ショップの粗利から適正な資材と配送コストの合計ははじき出されるし、安ければ安いほど良いわけでもない。必要な品質を担保したうえで、適正なコストをバランスする必要がある。

アウトソース先の倉庫はそういった業務を専門にやっているため、梱包資材も大量に仕入れているため単価が大きく違う。また、他の業者の荷物も扱っているため、荷物のトータル数は多くなり一つの事業者よりも、配送業者に対しての交渉力はあり、配送料も安い可能性が高くなるのだ。資材コストと配送コストについても今一度現状の値を整理したいところだ。段ボールや袋、テープ、緩衝材など、月額にすると意外に使っていることに気付かされるだろう。

 

 

業務を効率化するツールの利用

 

既に多くのショップにて活用されているが、ヤマト運輸や佐川急便が提供している「送り状発行システム」の利用は必須だろう(ヤマト運輸「B2」佐川急便「e飛伝」)。これを利用すると、送り状を手書きで書く必要がないことはもちろん、荷物ひとつずつの配送伝票番号をCSVデータで取得することができるので、そのデータを使って、発送完了・発送のご連絡メールに差し込み、お客様一人一人へ配送伝票番号をお伝えする作業が効率化できる。

複数のモールに出店している事業者であれば、バックヤードの業務支援を行うツール(代表例:ネクストエンジン)の導入は必須だろう。各受注データを取り込み、その後の処理を一括で進めることができ、在庫管理や出荷完了メールを送信する為の便利な機能も装備されている。

また、出荷完了メールの送信も出荷件数が増えてきたら、一括して行いたいもの。利用中のECシステムやカートシステムに装備されている場合はその機能を使うこともできるが、そういった機能が無い場合は、同報メール送信ソフトのようなものでも、非常に効率化することができるだろう。

 

 

アウトソーシングして、ショップとして本来やるべき業務に集中する

 

注文を受けて配送業者へ荷物を預け、お客様の元へと発送する業務はECサイトのモノの流れの根幹ではあるが、モノを売ることによって利益を得る商売をする上では

「より良い商品を生産する または セレクトして仕入れる」

「どれだけ良い商品かをお客様にしっかりとお伝えする」

「たくさんの人にサイトを見てもらう」

という業務こそが、本来やるべきことであり、注力したいところ。

梱包発送業務をアウトソースする場合の業務フローは、毎朝その日に出荷すべき(できる)注文データをチェックし、アウトソース先の指定するデータフォーマットに整形し、出荷指示データとして渡すだけの作業になる。もちろん注文内容のチェック作業やイレギュラーな対応が必要な注文もあるが、大凡の注文は普通に処理できるため、一括で出荷指示を出してしまえば基本的にはあとの作業はアウトソース先にお任せすることができる。

ある程度のフローを確立しやすい梱包配送業務は、事前の打ち合わせでできる限り効率化した上でアウトソースしていき、本来やらなければいけない業務に時間を多くかけることが結果としてECサイトの成功に結びつくはずだ。今一度、業務全体を見直してみるきっかけにして頂ければ幸いである。