ECモール・カート・アプリの2015年流通総額まとめ - 国内12・海外7の各主力プレイヤーの値から見る市場トレンド

 

早いもので、2016年は既に1/4が経過しようとしている。春の訪れも間近になったこのタイミングは、毎年各主力プレイヤーが前年の流通総額や売上高を公開している。今年も大手のECモール・カート・アプリや、パッケージなどの2015年の流通総額の数値データが出揃ってきた。今回は国内外の各主力プレイヤーの値を中心に紹介していき、それぞれの市場のトレンドを見ていく。

 

流通総額まとめ記事は、2019年が最新版となります↓

【2019年EC流通総額ランキング】国内16・海外20のECモール・カート・アプリの流通総額から見る市場トレンド
早いもので、2020年に入り、既に1/3が経過している。毎年2月~5月にかけて、世界中のEC業界の各主力プレイヤーが前年の流通総額や売上高を公開している。今年も5月22日に公開された中国大手アリババグループの発表で、世界の大手ECモール・カート・アプリなどの2019年...

 

 

国内のECモール・カート・アプリの流通総額

 

まずは、国内の主力モール・カートサービス及びパッケージ、フリマアプリなどの2015年(1月~12月)の流通総額を見ていく。公表されているサービスも多いが、残念ながら公表されていないサービスもある。ここでは公表データだけでなく、eコマースコンバージョンラボ編集部による推測値も掲載していく。

 

 

楽天市場 流通総額:2兆6,748億円(トラベル等含む)

楽天投資家向け発表によると、国内EC事業の流通総額は前年比10.2%増2兆6,748億円となった。この値は楽天市場だけでなく、トラベルなどの宿泊流通、GORA、ビジネス、ダウンロード、チケット、サロン、ケンコーコム、ラクマ、楽びんなどの値を含んだものとなっている。

また決算資料によると、2015年10月~12月期の楽天市場のモバイル経由の流通総額比率は54.2%と前の3ヶ月と比較し2.9ポイント上昇。スマートフォンアプリ経由の流通総額は前年比105.1%増となった。さらに、2015年末時点での楽天市場出店数は44,201店舗(前年比3.8%増)と過去最高を記録している。

また、2015年の海外消費者向け流通総額は41%増。中国が58%増、米国が55%増、香港が54%増となっているが、今年に入り東南アジアからの撤退を表明したばかりとなっており、先行きは不透明だ。

 

Amazon 流通総額:1兆6,000億円(推測)

Amazon.comが米証券取引委員会に提出した年次報告書の69ページによると、2015年の日本国内における売上高は82億6,400万ドル。2015年の平均為替レートを122.05円(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調べ)とした場合、日本円にして1兆86億円となった。前年2014年の同データは約8,454億円(79億1200万ドルで為替レートを106.85円とした場合)だったため、前年比19.3%の成長を遂げた計算になる。Amazonの売上高については、Amazonが売主となるものと、第三者が売主になるものの手数料10%程度が合計された値となっており、その割合は不明だ。しかし過去の経緯などから推測するに、全流通総額は、1兆6,000億円程度となっているのではないだろうか。

 

ヤフオク 流通総額:8,546億円

Yahoo!JAPAN決算説明会資料によると、2015年のヤフオクを中心としたYahoo! オークション関連事業の国内流通総額は8,546億円となった。2014年は8,024億円だったため、前年比6.5%増と なった。

 

Yahoo!ショッピング 流通総額:4,575億円(アスクル除く)

同じくYahoo!JAPAN決算説明会資料によると、2015年のYahoo! ショッピング関連事業の国内流通総額は5,239億円となった。2014年は3,653億円だったため、前年比43.4%増となった。この値はYahoo!ショッピングだけでなく、アスクルなどの値を含むもので、2015年のみ計上されているアスクルの流通総額が664億円となっているので、Yahoo!ショッピング単体で見ると、4,575億円前年比25.2%増となる。

Yahoo!のショッピング事業、オークション事業全体で見ると2015年の流通総額は1兆3,787億円となり、2014年は1兆1,674万円だったため、前年比18.1%増となる。2015年10月~12月期については、33.9%がショッピング関連、54.4%がオークション関連、11.7%がアスクル関連と、依然としてヤフオクが事業を牽引しているようだ。

また、2015年10月~12月期のYahoo!ショッピングとヤフオクなどのオークション関連のスマートフォン経由比率は43.6%と前の3ヶ月と比較し4.1ポイント上昇しているが楽天市場よりも10ポイント以上低い値となっている。さらに、2015年末時点でのYahoo!ショッピング出店数は37万店舗(前年比54%増)、商品点数は1.8億(前年比29%増)といずれも過去最高を記録している。

 

EC-CUBE 流通総額:1,500億円(2014年)

オープンソースECパッケージEC-CUBEを運営する株式会社ロックオンリリースによると、2014年と思われる年間流通総額は1,500億円、導入店舗数は22,000店舗となっている。

 

ZOZOTOWN 流通総額:1,489億円

ZOZOTOWNを運営するスタートトゥデイ決算報告資料によると、2015年のZOZOTOWNの流通総額は1,489億となり、前年比18.5%増となった。

 

MakeShop 流通総額:1,291億円(2014年推測)

国内の大手カートサービスは基本的には単年での流通総額の公表がないため、公式サイト掲載の実績数値からの推測が唯一の手がかりとなっている。MakeShop公式サイト発表によると2014年の流通総額は1,291億円となっている。2015年の値の更新は今のところないようだ。

 

DeNAショッピング  流通総額:1,112億円(トラベル等含む)

DeNA決算報告資料によると、DeNAショッピングDeNAトラベルなどを含む、2015年のDeNAのショッピング・トラベル事業の流通総額は1,112億円となった。2014年は1,023億円だったため、前年比8.7%増となった。ショッピング事業のみは641億円、トラベル事業のみでは471億円となっている。

 

メルカリ 流通総額:900億円(推測)

フリマアプリのメルカリは月間流通総額が100億円に達したとリリースした。2015年2月頃に月間60億円程度の流通総額と見られていたことから、2015年の流通総額は900億円程度と推測する。

 

ショップサーブ 流通総額:668億円(2014年推測)

ショップサーブについては公式サイトには累計値の掲載しかないため、過去の累計値からの逆算で算出していく。2014年掲載の流通総額の累計値は6,421億円、現在掲載の累計値は7,089億円となっているため、2014年の流通総額は668億円となる。2015年の値の更新は今のところないようだ。

 

BASE 流通総額:90億円(推測)

インスタントECを提供するBASEは、2015年2月頃の時点でBASEの流通総額が数十億円後半と公表しており、100億円の大台も視野に入っているとのこと。このことから、2015年の流通総額は90億円程度と推測する。

 

minne 流通総額:44.6億円

ハンドメイドサイトminnne(ミンネ)を運営するGMOペパボ株式会社の決算資料によると、2015年のminnneの流通総額は44.6億円となり、前年比4.2倍となった。またスマホアプリ経由での流通額は11.2倍となるなど急速に浸透している。

 

 

 

海外のECモール・カートの流通総額

 

続いては、海外の主力モール・カートサービスなどの2015年(1月~12月)の流通総額を見ていく。

 

タオバオ 流通総額:35兆1,117億円

アリババグループの決算発表によると、中国大手の個人間取引(C2C)サービスタオバオの2015年の流通総額は1兆8,090億人民元となり、前年比19.7%増となった。2015年の平均為替レートを19.52円(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調べ)とした場合日本円に換算すると、35兆3,117億円となる。

 

Tmall 流通総額:22兆2,723億円

同じくアリババグループの決算発表によると、中国大手ショッピングモールTmallの2015年の流通総額は1兆1,410億人民元となり、前年比49.5%増となった。日本円に換算すると、22兆2,723億円となる。

 

Amazonグローバル 流通総額:15兆1,500億円(推測)

Amazon.comが米証券取引委員会に提出した年次報告書によると、2015年のグローバルにおける売上高は1,070億600万ドルで前年比20.2%増となった。この値はAWSなどのEC事業以外も含む。EC事業のみで見ると、792億6,800万ドルで前年比13.1%増となっている。2015年の平均為替レートを122.05円(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調べ)とした場合(以降この値を全て使用)、日本円にして9兆6,747億円となる。この値も第三者が売主になるものが手数料10%程度しか計上されていないため、グローバルでの流通総額は日本と同じ比率で考えるならば15兆1,500億円程度と推測される。

また、2015年の売上高を地域別に見ると、アメリカが705億3,700万ドル、ドイツが118億1,600万ドル、イギリスが90億3,300万ドル、日本が82億6,400万ドル、その他の地域が73億5,600万ドルとなっており、日本は世界で4番目の売上高を誇る。グローバルに展開しているイメージの強いAmazonではあるが、依然として本国米国の売上高が66%を占める状況となっている。

 

eBay 流通総額:10兆81億円

米国eBay Inc. が発表した投資家向けリリースによると、eBayの2015年の流通総額は820億ドルとなり、日本円にすると10兆81億円となった。2014年の流通総額が830億ドルとなっているため、前年比1.3%減となっているようだ。この値はeBay.comのマーケットプレイスだけでなく、チケット二次流通のStubHubの値も含んだものとなっているが、第4四半期の値を見ると、95%近くがマーケットプレイスの流通総額となっている。

 

JD.com 流通総額:9兆319億円

中国大手ショッピングモール京東商城(JD.com)京東全球購(JD Worldwide)などを運営するJD.comの決算発表によると、2015年の流通総額は4,627億人民元となり、前年比78%増となった。日本円に換算すると、9兆319億円となる。

 

Shopify 流通総額:9,398億円

北米大手ショッピングカートサービスShopifyが発表した2015 Year in Reviewによると、Shopifyの2015年の年間流通総額は77億ドルとなり、日本円にすると9,398億円となった。昨年の流通総額が36億ドルなので、前年比114%増となる。2015年末時点での利用店舗数は24万3,468店舗となり、2014年末時点(14万4,670店舗)と比較し68%増となっている。店舗数の増加数よりも流通総額が上回る結果となった。モバイル経由は46%となっている。カナダに本社があるShopifyだが、店舗数別に見ると米国70%、イギリス8%、カナダ7%、オーストラリア5%と上記は軒並み英語圏の国が並んでおり、英語圏のショッピングカートのデファクトとなってきているようだ。

 

Etsy 流通総額:2,915億円

米国ハンドメイドマーケットプレイスEtsy決算発表によると、Etsyの2015年の年間流通総額は23億8,839万ドルとなり、日本円にすると2,915億円となった。昨年の流通総額が19億3,000万ドルなので、前年比23.6%増となる。

 

 

国内12・海外7の各主力プレイヤーの値から見る市場トレンド

 

国内12サービス、海外7サービスの流通総額を紹介してきたが、ここで全てのサービスを流通総額順に並べてみる。

ECモール・カートの2015年流通総額まとめ - 国内12・海外7の各主力プレイヤーの値から見る市場トレンド

 

特に目をひくのがアリババグループを筆頭とする中国ECの活発化だ。他の追随を許さないほどの圧倒的な市場規模や成長率は、中国の底堅い消費パワーを象徴している。2015年11月11日の独身の日にはアリババが1日の取引額で912億人民元(日本円で約1兆7,000億円)を記録し、昨年を60%上回る値となった。この値は、Amazonの日本での年間流通総額(推定値)を上回るという驚異的なものだ。

サービス形態別に見てみよう。まずは、マーケットプレイス(C2C)型とモール型を流通総額順に見ていく。

 

マーケットプレイス型は、中国のタオバオ、米国のeBayがそれぞれ二桁兆円規模となっているが、国内最大手のヤフオクは1兆円に届いておらず、この2サービスとは大きく溝が空いている。逆に考えると中国、米国と比較しても日本のマーケットプレイスの流通総額はまだまだ伸びる可能性もあるともいえよう。

一方で、モール型は2008年にはじまったばかりのTmallがこちらもAmazonを大きく上回っている。中国NO2のJD.comもあと少しで10兆円という状況だけに、中国のパワーは恐れ入る。一方国内の各モールも流通総額を伸ばして来ている状況で、楽天、Amazon Japan、Yahoo!ショッピングが1~2.5兆でしのぎを削っている。

次にカートサービスとECパッケージサービスを見てみる。

 

カートサービスでは、Shopifyが英語圏を中心に導入を広めているため、こちらも国内のサービスは太刀打ちできる状況ではない。中国では独自ドメインでの開店が非常に難しいためカートやパッケージといったサービスは全く浸透しておらず、モールとマーケットプレイスに流通が集中している。国内では多くのカートサービスが乱立しているが、推定で国内NO1のMakeShopとNO2のショップサーブよりも他のサービスは大きく流通総額が低くなっているだろう。

 

eMarketer社のレポートによると、2015年のグローバルでのBtoCのEC流通総額予測は204兆円。そのうちアジアパシフィック地域は107兆円、北米地域は44.8兆円、欧州地域は42.9兆円となっている。これはC2Cやトラベル、チケットなどの取引を含まないものとなる。こうしてみても、今や全世界の52.5%のオンライン流通はアジアパシフィックにて行われており、北米・欧州までの地域で全世界の93.5%のオンライン流通が行われていることになる。

今回紹介した流通総額は、サービスによってはトラベルやチケットなどの幅広い事業も含む値である場合もあり、全てを公平に比較できる状態となっていないのは事実だ。しかし市場の大きなトレンドを理解する上では非常に重要なインプットとなるだろう。参考にして頂きたい。