Amazon Pay(旧Amazonログイン&ペイメント)は何が凄いのか - 他の大手ID決済サービスと徹底比較してみた

 

2015年5月にAmazonが「Amazonログイン&ペイメント」を日本でサービス提供を開始した。Amazonログイン&ペイメントは他のECサイト上でもAmazonのアカウントでログインし決済できるサービスであるが、類似の仕組みは既に大手モールを中心に様々な企業が提供している。現在ではAmazon Pay(アマゾンペイ)に名称が変わりサービスの提供を続けているが、今回は、Amazon Payとその他の類似のID決済を徹底比較し、各メディアが大々的に取り上げた真相に迫っていく。

 

<参考>

新たな決済サービスLINE Pay・SPIKEと世界標準のPaypalは日本のEC決済の常識を覆すのか

 

 

Amazon Pay(アマゾンペイ、旧Amazonログイン&ペイメント)

 

Amazon Payは、外部ECサイトでの買い物の際にAmazon.co.jpのアカウント情報を利用して、決済が行えるサービス。

 

 

国内では2015年5月11日にサービス開始されたこのサービスは北米アマゾンが2013年からアメリカで提供を開始し、2014年にはイギリス・ドイツ・インドでも提供されて日本は5か国目となる。海外では既に数千社がサービスを導入しており、導入効果として、10~34%注文成約率(コンバージョンレート)が改善されたケースもある。

「Amazonマーケットプレイス保証」というアマゾンが実施中の出品者と顧客間でトラブルなどが生じた場合に購入代金を最高30万円まで保証する制度を「Amazonログイン&ペイメント」の導入サイトにも適用される。しっかりとした保証は顧客の買い物への不安感の払拭に効果的だ。

現在の導入企業は「劇団四季」のチケット販売サービスと「出前館」の出前サービス。アマゾンジャパンは導入企業から一定の手数料を徴収するビジネスモデルで進めていくそうだが、決済手数料は非公開で導入にはアマゾンジャパンの審査が必要だ。

Amazon Payが注目されている理由は決済だけでなくAmazonのアカウント情報を利用することで個別のサイトの会員登録を行わずに購買が完了するからである。従来のID決済では個別のECサイトで会員登録を行った上で、決済機能だけを利用するため、ユーザーの登録の負荷はそれほど変わらないためID決済を使用する必要性がそこまで高くないケースが多かった。また、Amazonからはユーザーが許可をすればECサイトに会員登録され、事業者側はメールアドレスなどを含む情報を知ることができるのだ。これにより、事業者はメルマガを送るなどのリピーター獲得への施策を打つことができる。また、他のID決済と違い、Amazonサイトに移動することなく各ECサイト内でログイン&決済が完了することもユーザーフレンドリーだ。

ECサイト構築支援プラットフォームのFuture Shop2を提供する株式会社フューチャーショップが、真っ先にAmazonログイン&ペイメントを実装するなど急速にASPカートにも導入が進んでいる。現時点ではMakeShopやカラーミーショップなど多くのASPカートでの利用が可能だ。国内でも最大規模の会員数を誇るAmazonが開始したID決済サービスは、従来の他社が行っているID決済サービスからすると大きな脅威となるだろう。

 

 

楽天ID決済

 

楽天ID決済は、楽天IDを取得していれば利用でき、無印良品TOHOシネマズをはじめとした1,300以上のECサイトが導入している決済サービス。

 

 

TOEICや漢検などの検定試験の支払にも利用することができる。9,977万人(2015年3月)と莫大な会員数を誇る楽天のサービスであるため、利用率は他社の類似サービスと比べ高いようだ。サービス導入の効果としてクレジットカード決済と比較して「年間注文回数25%増」「注文単価30%増」という結果が出ている。

楽天ポイントが使えて貯まるため、ポイントを集めているユーザーは積極的に利用すると考えられるし、事業者側も新たな販促ツールを増やすことができる。楽天ID決済を導入するには、初期と月額は無料だが、手数料としてサービス手数料5%、データ処理手数料1件5円がかかる。

 

 

Yahoo!ウォレット

 

Yahoo!ウォレットは、Yahoo!JAPAN IDでヤフー内のサービスや連携サイトでの支払いができる決済サービス。

 

 

LCCのPeachCOOKPADなど数多くの提携先がある。Yahoo!ウォレットのユーザー数は2,900万人(2015年3月)で購買意欲の高いとされるYahoo!プレミアム会員は1,030万人だ。また、リアル店舗でのユーザー数ナンバーワンのTポイントが利用額に応じて進呈される。

導入費用は、初期費用は無料で月額使用料は3,240円、決済手数料は3.6%と業界最安価級だ。また、Yahoo!から提携サイトへの誘因も行われるのでさらなる売上アップが見込めるだろう。

 

 

リクルートかんたん支払い

 

リクルートかんたん支払いは、リクルートIDを使って決済でき、リクルートポイントを使ったり貯めたりできる決済サービス。

 

 

music.jpamebaなどで利用できるが、楽天やヤフーと比較すると提携先は少ない。指定のECサイトで購入をするとポイントアップしたりクーポンがもらえたりするキャンペーンが行われることもある。リクルートポイントは、ホットペッパーじゃらんポンパレなど様々なリクルートのサービスの利用で貯まるポイントであるため、ユーザーの流入に期待できるだろう。また、Pontaポイントとの連携も開始されたことでその動きの加速が見込める。

導入に関しては、初期費用・月額固定費は無料で手数料は公開されていないが、業界最低水準としている。

 

 

ID決済を利用する事業者側・ユーザー側のメリットとは?

 

各サービスにはEC事業者と利用するユーザーサイドにどのようなメリットがあるのだろうか。

 

 

1.決済までの手間が省略できる

 

ユーザーにとって一番の魅力はモールなどの既にアカウントを持っているECサイトではなく、初めて訪れたような個別のECサイトで購入する際に、いちいちアカウントを作成して配送先などを入力する手間がかからないという点だろう。AmazonのIDさえ持っていれば、そのECサイトにて新たに会員登録する必要はなく、既に登録してある住所やクレジット番号を利用して、決済ページまですぐに行くことができる(会員登録が必要で決済情報入力時にIDを利用する場合もある)。Amazon以外のID決済の場合は会員登録は必要となるが、決済情報の入力は省くことができる。従来のECサイトではカートに入れたまま決済をしない「成約離脱率」が66%にもなるという調査があり、特に独自ドメインサイトと呼ばれるモール以外のECサイトにおいては致命傷となっていたケースが多かった。また特にスマートホンでの入力は面倒だと感じる人が多いため、スマホECの利用が増加している現在とても効果的なサービスと言えるだろう。顧客にとっては個人情報の入力の手間が省けることや新たにIDやパスワードを覚える必要がないということ、EC事業者にとってはそれによって顧客を購入へ導く可能性が高まるというメリットがある。

 

 

2.安心安全なセキュリティ対策がある

 

EC事業者にクレジット情報が伝わらないため安心なサービスであることもポイントだ。各モールでそれぞれ強固なセキュリティ機能を施しており、クレジット情報を入力するという顧客の不安感を取り除くことができる。EC事業者にとっても、漏えいのリスクのある情報を守るためのセキュリティコストを削減することができるなどのメリットがある。

 

 

3.各ショッピングモールのポイントが貯まる

 

個別のECサイト上で、楽天ポイントやリクルートポイントなどモールに応じたポイントを貯めたり使ったりすることができることも魅力だ。様々なものに交換ができる汎用性の高いポイントであるため、それを理由に購入に繋がりやすいというメリットがある。ユーザーが複数のサービスから1つを選ぶ場合、どのモールのポイントを集めているかが最終的な決め手になりやすいだろう。事業者側はポイントの付与分の負担などの手数料がかかる場合もあるため、場合によっては諸手を挙げて喜ばしいとは言い切れないケースもあるが、それによって購入に繋がるという新たな販促ツールを得ることができるという点がメリットとなる。

 

 

4.大手モールからのユーザーの送客がある

 

ID決済サービスによっては、モール側から個別のECサイトへユーザーの送客が一部で行われている。それほど大きなメリットとならないケースもあるが、莫大な会員数をもつモールの会員は、ECにそれほど抵抗がなく購買意欲の高いユーザーが多いと考えられるため、売上アップが見込めるだろう。また、各サービスのサイトから提携先のリンクが貼られているので、顧客は簡単に使いたいサービスが使えるECサイトへ訪れることもできる。

 

 

Amazon Payは何が凄いのか

 

今回紹介したサービスのアカウントを多くの方が複数保有しているのではないだろうか。多種多様な決済手段が登場しているが、大手モールのID決済はそういった理由からも利用するハードルが低く、気軽に利用できると考えられる。

 

Amazonログイン&ペイメントは何が凄いのか - 他の大手ID決済サービスと徹底比較してみた

 

Amazon Payは「Amazonペイメント」部分について言えば、従来から存在する大手モールのID決済サービスと比較すると実はそれほど大きな違いはないとも言える。しかし「Amazonログイン」部分が非常に画期的な部分だ。各ECサイトから画面遷移する必要もなく、各ECサイトで新規会員登録を行わずとも購買が完了する。事業者側からしてもメールアドレスを含む会員情報を入手可能とあって、ユーザー視点・事業者視点で極めてニーズを把握しきったサービスだといえる。さらにAmazonという国内でも最大規模のアカウント保有数を誇るIDを使えるので購買へのハードルが最も下がりやすい点も強みだ。

Amazonという黒船がやってきたID決済サービス市場は、今後Amazon以外の各社が「ログイン」機能の提供を進めて行くだろう。しかし国内大手モールの色合いの薄いAmazonという企業とその膨大な会員数を誇るAmazon Payが業界を席巻していく可能性もありそうだ。

 

<参考>

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