実はいまだに市場拡大が続くグルーポン系サイト

 

2010年に一気にサービスが勃興していったいわゆるグルーポン系サイト。クーポン共同購入、フラッシュマーケティングとも言われているECの一形態です。第三者機関(クーポンジェーピークーポンサイトjp)の調査によれば、日本のクーポン共同購入サイトの市場規模はいまだに拡大を続けています。月間ベースで見ると2011年6月の38億円がピークとなりますが、年間売上高は2011年の337億円から2013年の396億円と3年連続で増加。当初から2強のグルーポンとポンパレは依然としてその存在感は大きく、特にポンパレは2012年にシェアNO1を奪い取るなど業界の主役に躍り出ています。ここ数年のEC業界の荒波をグルーポン系サイトはどのように生き残ってきたのか。その奮闘を見ていきます。

 クーポン共同購入サイト売上推移

 

 

GROUPON(グルーポン)

 

日本にフラッシュマーケティングブームのきっかけを作ったのは、アメリカ生まれの共同購入型クーポンの元祖的存在であるグルーポンです。

 

 

2010年6月に日本でのサービスを開始したグルーポンはすぐに国内最大級の人気サイトとなりますが、同年末におせち問題が勃発。販売数に対して予想を上回る数の注文が殺到したことにより正月までにすべての商品が届かず、さらに食材の偽装が行われるという事態にまで発展しました。最終的にはおせち提供会社に対して消費者庁から措置命令を受けることとなり、すっかり信用を失ってしまったグルーポンですが、問題発覚後は審査の基準数を30項目から200項目に増やしたり、店舗のサポートを専任で行うパートナーマネジメント部、審査部を設けるなど、積極的に状況の改善を図ってきました。

そして昨年11月、同社は“夢のおせち プレゼントキャンペーン”を行うと発表。日本料理、フランス料理、中国料理、スペイン料理、デザート料理の段を1段ずつ用意した豪華五段重を抽選で計5名にプレゼントし、“もう一度おせちから始めよう”と新たな決意表明をしたのです。さらに今後の事業方針について、品揃えの多様化、カスタマーエクスペリエンスの改善、購入者の4割以上を占めるモバイルの強化、他にない特別な体験型のクーポン商品“WOW! ディール”を4つの柱として、ビジネスを強化すると発表。2年前と比べて取り扱い商品数はおよそ2.5倍に増加していると説明した上で、今後は新たにレジャーのカテゴリーを充実させ、スキーやマリンアクティビティ、ゴルフなどの品揃えを強化すると発表しました。

また、日本ならではの物産品や酒類などの新カテゴリー、日本以外の国のインターナショナルトラベルのクーポン商品についても充実させる予定だと述べています。さらにiPhone/Android/iPad対応アプリを順次提供開始し、最新版ではインターフェイスのデザインを一新。各プラットフォームを最適化することで、クーポン商品の写真を大きく表示できるように改善しました。さらにiPad版では新たに世界12地域が追加され、全42カ国でアプリが利用できるようになったのです。このように、グルーポンは今後モバイルと世界を視野に展開が進むことになりそうです。

 

 

ポンパレ

 

一方、グルーポンと人気を二分してきたのがリクルートが運営するポンパレです。

 

 

グルーポンと同時期にサービスを開始したポンパレは、ホットペッパーやじゃらん、ケイコとマナブなどリクルート内のサイトと協力できる環境を活かし、グルメやホテル、美容、レッスン系などに強いのが特徴。“1エリア1商材”に絞って掲載することであらかじめ提供する情報量を減らし、提供する価格でもインパクトを打ち出してきました。思わず購入したくなる思い切った価格で提供することが利用者の増加につながり、2012年3月には競合のグルーポンを抑えてシェアトップに躍り出ます。その背景には、豊富なラインナップだけでなく、ソーシャルメディアの活用について独自の研究を行い、新たな工夫や機能を取り入れてきたことが挙げられるでしょう。

例えば、ユーザーの興味・嗜好に合わせて1対1のコミュニケーションを重視したり、話題性のあるディールを利用してバズを最大限に広めるほか、ソーシャルの特性を生かした“チケットシェア機能”を導入。チケットシェア機能とは、ポンパレの閲覧者・購入者がお薦めする商品をソーシャル上でシェアすることで、紹介者からの情報を経由してその割引チケットが購入されれば、結果として紹介者がインセンティブ(ポンパレスタンプ付与=3つ貯まるとポンパレギフト券と交換)を取得する仕組みです。こちらは海外サイトでの類似事例も研究しながら、日本人のコミュニケーション趣向に合うよう工夫が凝らされており、紹介する側・される側ともに、自然な形での情報発信や受信を促し、アクションを起こしやすいような作りになっています。

またポンパレは、飲食やエステに限らず、一般的にはまだあまり知られていない新業種の普及にも一役買ってきました。例えば家事代行サービスなどの商材は、ポンパレに掲載されることで消費者にサービス内容を認知させ、ニーズの顕在化に繋がるところから販売が増えているものです。他にもTSUTAYAやZOZOTOWNといった会員制Webサイトのポイント販売も行っており、ポンパレと掲載企業との新たなwin-winの形が出来上がっています。

 

 

LUXA(ルクサ)

 

グルーポンやポンパレ以外にもさまざまな共同購入型クーポンサービスが誕生しましたが、現在でもシェアを拡大し続けているのが2010年8月にサービスを開始したプレミアム・アウトレット型の共同購入型クーポンサイトルクサです。

 

 

大半のサイトが値引き合戦を繰り広げる中、ルクサは立ち上げ当初から割引クーポンサイトとしてではなく、掘り出し物が見つかったり、少しお得に贅沢体験や買い物ができるECサイトと位置付けてサービスを行ってきました。商材は家電やコスメ、ファッションや食料品まで幅広く扱い、飲食店については雑誌などで取り上げられる有名店に限定して展開。他にも歌舞伎のチケットや一流シェフによるまかないツアーなど、ユニークな体験ができる商材も扱っています。

通常のECサイトとの違いは、楽天やアマゾンのように客の買いたいものを提供する目的型ECではなく、ルクサのバイヤーが客の嗜好に合わせて選んだ商品をサイトでウィンドーショッピングしてもらう提案型ECであるということ。Webを通じて味わったことのない商品やサービス体験を提供する、いわばセレクトショップの要素をネットで展開しているサービスです。

その一方で、ブランド・マネジメントにも注力。安売りというイメージを極力避けるように心がけ、結果的に御殿場や軽井沢にあるような「プレミアム・アウトレット」のイメージを定着させることに成功したのです。EC市場全体が大量消費からキュレーションの時代へと移行する中、さらにキュレーションの側面を強く打ち出すことでルクサは今後も成長していくでしょう。

 

 

クーポン共同購入サイトの奮闘

 

そもそもクーポン共同購入サービスのコンセプトは、安く得をしたい消費者と、商品やサービスを一回でいいから試して欲しい事業者のニーズを繋ぐ画期的なものです。そのため当初は安さと真新しさを目当てに多くの消費者が集まり、一気にサービスが勃興し、一時は190を超えるサービスが国内に立ち上がりました。

しかし、一方でおせち問題を機にそのバブルははじけ、今では全盛期の1/3程度のサービス数に淘汰されてきています。以前のように安ければ何でも良いという消費者は少なくなり、提供されている商品・サービスの中で「正当な安さ」と感じるものしか購入されにくくなってきています。商品やサービスを提供する企業側にとっても「正当な安さ」を訴求できる商品・サービスを継続的に提供することは難しいこともあり、企業のマーケティング活動の中でなくてはならないツールになり切れていないのも実情。

そんな中でもしっかりと信頼を回復するための努力を行ったり、商材の絞込みやプレミアム感の付加など、独自の取り組みを続け、消費者のニーズに応えようとしているサービスが残ってきました。

フラッシュマーケティングは企業のマーケティングに一大革新を起こすことが出来るのか。短期間で栄枯盛衰の歴史を持つクーポン共同購入サービスにはまだその可能性が残されているのではないでしょうか。