2018年にサービス終了・終了予告されたEC関連10サービスまとめ - うねり続けるEC業界の光と陰

 

そろそろ今年も終わりの足音が聞こえてきたが、この2018年もEC業界は多くの新しい技術とサービスが市場を賑わせた。しかしその一方で、業界の荒波に揉まれてひっそりと終了していったサービスも少なくはない。その中で今回は2018年に終了したサービス、及び終了が予告されたサービスを10個ピックアップして紹介していく。

 

<参考>

2017年にサービス終了・終了予告されたEC関連10サービスまとめ - うねり続けるEC業界の光と陰

2016年にサービス終了・終了予告されたEC関連10サービスまとめ - うねり続けるEC業界の光と陰

2015年にサービス終了・終了予告されたEC関連10サービスまとめ - うねり続けるEC業界の光と陰

 

 

フリル(ラクマ) 2018/2/26終了

 

楽天は「フリル」と「ラクマ」の2つのフリマアプリを運営していたが、2018年2月26日にラクマとフリルを統合させて「新ラクマ」を誕生させた。名称だけはラクマを残し、サービス自体(機能・会員・ドメインなど)はフリルを残した形だ。

フリルはもともと株式会社Fablicが運営していたが、2016年9月に楽天が買収。1年半にわたり同社は2つのフリマアプリを運営していたが、フリマアプリ業界No.1を目指すべく1つに統合させた。そもそも2つのアプリは特性が異なっており、フリルは以前女性専用アプリだったこともあって女性ユーザーが多く、出品される商品も女性向けファッションアイテムが大半を占めていた。それに対して旧ラクマは家電やエンタメ系商品が多く、男性ユーザーが目立った。この2つを統合させることによって、全カテゴリを満遍なく網羅することになり、メルカリと肩を並べることも不可能ではないと判断。メルカリとの最大の違いであった販売手数料無料は2018年6月に廃止され、現在は3.5%が徴収されるが、メルカリの10%と比べると若干のお得感は残る。

 

<参考>

楽天、ラクマとフリルを統合。ユーザーとデータの集約による成長加速を狙う

激動するフリマアプリ市場のこれまでとこれから - メルカリは世界を獲れるのか

レッドオーシャンと化したフリマアプリ市場へ参入してきた「ラクマ」は生き残ることができるのか

 

 

メルカリアッテ 2018/5/31終了

 

メルカリのグループ会社であるソウゾウが2016年3月にスタートしたメルカリの姉妹アプリ「メルカリアッテ」は、2018年5月31日にサービスを終了した。

メルカリアッテは無料の地域コミュニティアプリとして、対面での商品売買だけでなく、仲間募集やイベント告知、求人、習い事案内といった人と人との繋がりを目的とした投稿も多かった。中には話し相手募集といったものまであり、地域のコミュニティを通じてできることをすべて盛り込んだ画期的なサービスではあったが、同時に女性ユーザーにとっては対面取引が危険という声も度々聞かれ、安全面を問題視されていた。そしてサービス開始から2年が経った時点で「メルカリグループ全体で経営資源を集中させていく」という理由で終了。メルカリ利用者の中にはキャンペーンでもらえるポイント目当てでアッテに登録するユーザーも多く、実際に頻繁に取引が行われていたかは定かではない。いわゆるクラシファイドサービスというジャンルへの進出として注目されたものの、それほど大きなポテンシャルはメルカリにとっては感じなかったということかもしれない。

 

 

楽天のフィーチャーフォンサービス 2018/6/28終了

 

楽天は、2018年6月28日よりフィーチャーフォン(ガラケー)からの楽天会員ログインサービスを終了した

楽天グループでは、世界的なセキュリティ対策強化の流れを受け、ユーザーの通信の安全性を確保する対策の一環として終了したとのこと。グループ内の楽天モバイルではシャープ製のSIMフリーガラケー(ガラホ)「AQUOSケータイ SH-N01」を販売しているが、こちらの機種ではログイン可能となっている。最新のフィーチャーフォンの利用率(MMD研究所調査)は18%となっており、依然として思ったよりも高い値となっているが、頻繁にモバイル端末を使ったオンライン利用を行う数はそこまで多くないことが推測され、利用に一応の目途がついたことも影響しているのではないだろうか。

 

 

メルカリNOW/teacha/メルカリ メゾンズ 2018/8/20~31終了

 

ソウゾウは、2018年5月のメルカリアッテ終了に続き、8月下旬には3つのサービスを終了させた。対象となったのは、2017年11月リリースの即時買取サービス「メルカリNOW」、2018年4月リリースのスキルシェアサービス「teacha」、2017年8月リリースのブランド品特化型フリマ「メルカリ メゾンズ」の3つだ。

 

<参考>

メルカリNOWなど、3サービスが8月中で提供終了へ

 

メルカリNOW 2018/8/20終了

メルカリNOWは、売りたい商品のブランドと状態を選択し、スマホのカメラで撮影するだけですぐに査定金額が提示される即時買取サービス。買い取り対象は限られたブランドと服飾品のみだったが、ノールック買い取りアプリで先行していた「CASH」と並んで注目を集めた。開始直後は、1日1,000万円の買取上限金額に対して初日は3時間48分、2日目は11分、3日目は10分で達するなどユーザーが殺到。しかし次第にCASHとの買取金額の差が目立つようになり、勢いを失いつつあった。

 

<参考>

メルカリNOW・CASHを始めとする即時買取サービスの認知度は6割超え

メルカリ、「メルカリNOW」で即時買取市場に参入 - 話題性で先行するCASHとの一騎打ちの様相に

 

teacha 2018/8/21終了

teachaは語学学習や習い事などのスキル、個人が持っている知識のマッチングに特化したCtoCサービスで、学研プラスやユーキャンといったパートナー企業のほか、地方自治体まで巻き込んでサービスを展開していた。しかし、ローンチからわずか4カ月という短期間で終了。最低金額500円で1回30分、1対1からレッスンを受けられるなど、気軽に利用できるシステムだったが、ストアカやスクルーといった先駆者たちに追いつくことはできないと早々に判断を下したようだ。

 

<参考>

学びを対象としたCtoCサービス「teacha」の提供開始

 

メルカリメゾンズ 2018/8/31終了

ブランド品に特化したメルカリ メゾンズは、査定付きでブランド物も安心して売買できると好評だったが、こちらもわずか1年で終了。サービス自体はなくなったが、メルカリ メゾンズの機能は今後メルカリに追加していくことも検討しているとのこと。

 

<参考>

ブランド自動査定が可能なフリマアプリ「メルカリメゾンズ」サービス開始

 

3サービスの終了について、メルカリ事務局は「一部の機能をメルカリに追加していくなど、経営資源の再配置を行い、メルカリをはじめとする運営サービスのさらなる品質向上を目指す」としている。新規事業をグループ会社であるソウゾウで柔軟な発想で立て続けにリリースを行い、早めに見切るこのスキームはなかなか他社では真似の出来ないところともいえる。

 

 

ショッピングモール「カラメル」 2018/9/27終了

 

オンラインショップ作成サービス「カラーミーショップ」やハンドメイドマーケット「minne」を運営するGMOペポパは、オンラインショッピングモール「カラメル」を2018年9月27日に終了した。

カラメルはGMOグループのショッピングカートサービスを利用しているショップの集客アップを支援するショッピングモールで、カラーミー利用者は無料で出店可能で、minneに掲載された商品も自動的にカラメルに掲載される仕組みになっていた。Yahoo!ショッピングなど他社のショッピングサイトにも掲載できたり、カラメルのGMOポイントを他店舗と共有することで販売促進に繋げていた。当初は初期の集客が難しい独自ドメインで開店したネットショップのための集客エンジンとして期待されたが、認知も広がらず思ったような成果が上がらなかったようだ。また、ポイント制度も仕組みを複雑化しており、GMOポイントを使って商品が購入された場合、ショップ側は3000ポイント溜まるまで換金できなかったり、販売手数料の負担が多いなど問題も表面化してきた。その結果、ここ数年は出店数が伸び悩み、集客効果もそれほど高くなくサービス終了となったようだ。

 

 

ヤマト運輸 超速宅急便 2018/10/31終了

 

2003年よりヤマト運輸が行っていた航空便「超速宅急便」は2018年10月31日をもってサービスを終了した

航空輸送に利用していたANAの深夜貨物便が2018年11月以降一部路線の運休を決めたことに伴い、サービスの安定的な提供が困難であると判断。今後は、夕方までに預かった荷物を翌日10時までに届ける「宅急便タイムサービス」で代替するようだ(ただしクール便の取り扱いはなし)。

 

 

SPIKE決済 2018/11/30終了

 

メタップスが2014年より提供していた無料決済プラットフォーム「SPIKE決済」及び関連サービスは、2018年11月30日に提供を終了した。

SPIKEは、業界最安値の決済手数料ですぐに利用可能なクレジットカード決済で、専門知識不要でリンクを設置するだけで利用可能な個人向けのフリープランと、法人向けのビジネスプレミアムの2つのプランを用意。数行のコードを実装するだけでクレジットカード決済が導入でき、中~大規模ECサイトにも対応できると注目を集めてきた。そもそも個人や中小企業がカード決済を導入するには、カード会社の厳しい審査を通過する必要があり、審査には数週間から数カ月かかってしまう。仮に審査が通っても、登録費用や月額費用がかかるため、個人や中小企業がクレジットカード決済を自社のサービスに導入するのは難しい。これをクリアにしたのがSPIKE決済だった。サービス開始当初は、フリープランは月間100万円までであれば決済手数料は無料で利用できたが、やがて3カ月間のみ月間10万円まで無料、以降は3.9%+30円の手数料がかかる仕組みに変更されてしまった。リリース当初は月間の決済上限額を引き上げていき、最終的に完全無料での提供を目指すとしていたが、難しかったようだ。

 

<参考>

新たな決済サービスLINE Pay・SPIKEと世界標準のPaypalは日本のEC決済の常識を覆すのか

決済手数料無料という革命はEC業界で成功するのか - 各社が思い描く未来予想図はEC事業者をどこまで虜に出来るのか

 

 

AnyPayのわりかんアプリ「paymo」 2019/5/30終了予定

 

割り勘アプリ「paymo」を運営するAnyPayは、2019年5月30日をもってサービスを終了すると発表した

paymoは「わりかんを思い出に」をコンセプトに、2017年1月にサービスを開始。個人間送金アプリの中でも割り勘に特化したアプリで、幹事以外もクレジットカード払いができ、請求金額は任意の額を入力可能と使い勝手は良かった。一方で、店名と日付が分かる1カ月以内のレシートが必要だったり、paymo内で受け取ったお金は1年以上利用しないと消滅し、出金手数料も200円かかるなど、デメリットも少なからずあった。paymo誕生以降、「LINE Pay」や「Kyash」など、いくつかの送金アプリが誕生したが、どれも少しずつ形態を変えて今に至る。今後は個人間の決済サービスであるpaymoは終了するが、法人向けの「paymo biz」は継続される。

 

 

その他の終了・終了予告されたEC業界関連サービス

 

最後に、その他のEC業界関連、及びEC業界とは直接関係がないものでも近しい業界で終了を発表した主なサービスも見ていく。

 

スマホ向けポータル構想「Syn.」 2018/7/9終了

2018年7月9日には、KDDIグループのSupershipが2014年秋より行っていたスマホ向けポータル構想「Syn.(シンドット)」の関連サービスが終了。Syn.構想とは、各社が個別に提供しているスマートフォン向けWebサービスやアプリを、「Syn.alliance(シンドットアライアンス)」という枠組みの中で繋げて相互送客するというもの。「Syn.menu」と呼ばれる共通のサイドメニューを設置することで、アプリやサービス間をシームレスに行き来することができた。今回「Syn.menu」や「Syn.ad」といったユーザー向け機能は終了したが、Syn.構想に参加しているサービス・企業の連合Syn.allianceは存続する。Syn.allianceには、nanapi、音楽ナタリー、ウェザーニューズ、NAVITIME、@cosme、はてなブックマークなどが参加している。

 

DMM Okan 2018/9/30終了

2016年12月からDMM.comが提供していた家事代行サービス「DMM Okan」も2018年9月末で終了した。1.5時間から依頼でき、料金も1時間半で3,600円とリーズナブルだったこともあり、サービスを使いたい利用者が増えすぎて供給が追いつかず、終了を決めた。

 

e+のフィーチャーフォンサービス 2019/1/1終了予定

チケット購入サイトe+は2019年1月1日21時をもってフィーチャーフォン(ガラケー)が使用できなくなる。チケットの申込みを含むフィーチャーフォンからのサービスを廃止し、今後はPC、スマートフォンサイトのみの利用となる。この流れは楽天と同じものだ。

 

はてなダイアリー 2019/2/28終了予定

株式会社はてなは、2003年より提供しているブログサービス「はてなダイアリー」を2019年春を目処に終了し、同社が運営するもう1つのブログサービス「はてなブログ」へ統合すると発表した。はてなダイアリーは、日記内の言葉をキーワード化し、該当するキーワードが登場するエントリーと相互につながるという画期的なサービスだったが、一方で社内に類似サービスがあることに対して疑問の声も挙がっていた。

 

Yahoo!ジオシティーズ 2019/3/31終了予定

インターネット初期から多くの人に活用されてきたホームページ作成サービス「Yahoo!ジオシティーズ」も、2019年3月末をもって終了する。ジオシティーズは1994年にアメリカで誕生し、1997年には日本法人ジオシティーズ株式会社が設立された。2000年からはYahoo!ジオシティーズとして運営を行ってきたが、採算面やシステム維持のためのテクノロジーにおける課題をクリアできず、継続を断念した。

 

Google+ 2019/4/30終了予定

Facebookに対抗すべく、Googleが2011年6月にサービスを開始したソーシャル・ネットワーキング・サービス「Google+」も、2019年4月に終了することが決まっている。Google+では、2015年〜2018年3月にかけて50万人分の個人情報が流出し、これを理由の1つとして個人向けサービスを終了すると発表。企業向けGoogle+は漏洩の影響を受けておらず、社内コミュニケーションツールとして活用されていることもあって提供を続ける。日本では、AKB48グループがGoogle+のプラットフォームを利用したファンとの交流サービス「AKB48 on Google+」を開始し、サービス普及の一翼を担った。FacebookやTwitterに比べて情報の共有範囲を柔軟に設定できる「サークル」など真新しい機能もあったが、利用率と定着率は伸びなかった。最近では、ユーザーの9割が1回5秒以下のアクセスしか行っていないというパフォーマンスの悪さも明らかにした。

 

ポケベル 2019/9/30終了予定

無線呼出しサービス「ポケットベル(ポケベル)」が2019年9月末に終了するというニュースを耳にして、まだあったのかと思った人も多いだろう。90年代に一世を風靡したポケベルは、1996年には契約者数120万人を突破。しかし携帯電話の普及とともに需要が激減し、ポケベル端末の製造は20年前に打ち切られた。現在の利用者数は1500人を切っている。

 

 

うねり続けるEC業界の光と陰

 

今年も数多くのサービスが終了となった。フィーチャーホンやポケベルなど一時代の終焉を感じさせるものや、これから新しいサービスを形作っていく可能性があると考えられていたものが終止符を続々と打っていった。また、今年はメルカリの関連サービスが多くサービスの終了を発表し、2016・2017年のLINEに見られた、新規事業を立ち上げては、素早く見切るという決断の早さを見せた。決済領域でも少しずつ淘汰が進み、期待のサービスが幕を閉じるなど、新しい事業を軌道に乗せるのが難しい事業領域であることが感じられる。

一方で、物流業界では昨年のクライシスの影響以降、それほど多くのサービスの撤退はなく、むしろその窮地を救うためのサービスの勃興が目立っている一年でもあった。このように、EC業界も徐々にブルーオーシャン領域が減ってきており、サービスの勃興・撤退の全体量が減ってきている印象もある。しかし、AIやAR/VRなど今後もEC業界を覆す可能性のある技術の拡大は続いており、今後も今まで考えてもみなかったテクノロジーの影響から新たなサービス領域が確立される可能性もあるのではないだろうか。今後もEC業界の栄枯盛衰から目が離せない。