2020年にサービス終了・終了予告されたEC関連10サービスまとめ - うねり続けるEC業界の光と陰

 

そろそろ今年も終わりの足音が聞こえてきたが、この2020年もEC業界は多くの新しい技術とサービスが市場を賑わせた。しかしその一方で、業界の荒波に揉まれてひっそりと終了していったサービスも少なくはない。その中で今回は2020年に終了したサービス、及び終了が予告されたサービスを10個ピックアップして紹介していく。

 

<参考>

2019年にサービス終了・終了予告されたEC関連10サービスまとめ - うねり続けるEC業界の光と陰

2018年にサービス終了・終了予告されたEC関連10サービスまとめ - うねり続けるEC業界の光と陰

2017年にサービス終了・終了予告されたEC関連10サービスまとめ - うねり続けるEC業界の光と陰

2016年にサービス終了・終了予告されたEC関連10サービスまとめ - うねり続けるEC業界の光と陰

2015年にサービス終了・終了予告されたEC関連10サービスまとめ - うねり続けるEC業界の光と陰

 

 

楽天越境EC「楽天グローバルマーケット」 2020/6/29終了

 

楽天は越境ECサービスの1つである「楽天グローバルマーケット」を終了した。

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楽天グローバルマーケットは、2008年から開始された楽天市場へ出店者が自社の商品を海外ユーザー向けの販売サイトに出店出来るサービス。越境ECが盛り上がったタイミングで、楽天が肝入りで提供していた、商品情報の翻訳や決済、物流までサポートする楽天の3つの越境ECサービスの1つであった。終了する理由はより成長性の高い事業に注力するため、としている。楽天は他の2つの越境EC系のサービス「楽天グローバルエクスプレス」と「海外パートナー旗艦店」は依然として展開している。「海外パートナー旗艦店」は、楽天が中国大手の京東と連携し、ブランドやメーカーから買い取った商品を楽天として海外モールで出店するサービスだ。越境ECは、やはり現地の集客力のあるモールと手を組み、展開することが一番収益性が高まるとの判断とも言える。

 

 

Origami Pay 2020/6/30終了

 

株式会社Origamiはキャッシュレス決済サービスOrigami Payを2020年6月30日に終了した。

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Origami Payはキャッシュレス決済サービスの先駆けとして2015年にサービスが開始された。コンビニや多くの飲食店、百貨店でも導入され、加盟店側もリーズナブルなコストで導入できることもメリットであった。しかし、2020年2月にメルカリ子会社のメルペイが全株式を取得し、メルカリの傘下に入ることとなった。それに伴ってスマホ決済サービスは「メルペイ」として統合され、Origamiは9月30日に他の全サービスも終了させた。近年のキャッシュレス決済サービスにIT大手の相次ぐ参入を受け、経営が苦しく実質の経営破綻と言える。

 

 

SHOPPING GO 2020/8/31終了

 

LINEは実店舗での買い物でポイントが貯められるサービス「SHOPPING GO」を2020年8月31日で終了した。

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SHOPPING GOは201812月より実店舗でのバーコード提示で「LINEポイント」がたまるサービスとして運営を開始。ビッグカメラコジマソフマップなど多くの家電量販店などで導入されており、サービス開始1ヶ月で会員登録数が100万人を突破し、一定額を購入したユーザー全員に1,000ポイントを支給したり、2021年中に導入店舗2万店舗を目指すことを発表するなど盛り上がりを見せていた中でのサービス終了となった。LINEは終了理由を「市場環境の変化による今後の成長性や、LINEグループ全体での選択と集中の観点などをふまえて検討した結果」としているが、コロナウイルス感染拡大で実店舗への来店促進サービスが困難な期間が続いていたことは大きいだろう。

 

 

NEVERまとめ 2020/9/30終了

 

LINE はキュレーションメディア「NEVERまとめ」を9月30日に終了した。

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C Channelアプリ 2020/9/30終了

 

C Channel株式会社は女性向け動画メディア「C CHANNEL」のアプリサービスを2020年9月30日に終了した。

「C CHANNEL」はヘアメイクやファッション、料理レシピなど幅広く発信する女性向け動画メディアサービス。2015年の創業当時は縦型動画を閲覧可能なSNSが存在していなかったため、アプリサービスをメインとして開発がされた。しかし、SNSでの動画閲覧が一般的となっており、自社アプリへの集客が伸びなくなったのだろう。そのため、インスタグラムやYoutubeなどのSNSアカウントからの情報配信に集中させるため、アプリサービスを終了させると発表している。今後はインフルエンサーの配信も強化していくなど、ユーザーの情報収集の方法がWEBメディアなどからSNSへと移り変わっていることを示していると言える。

 

 

Mobile Space 2020/9/30終了

 

株式会社AWALKERは運営する携帯電話専用のホームページ作成サイト「Mobile Space」を2020年9月30日に終了させた。

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「Mobile Space」は無料で携帯電話専用のホームページ作成を提供するサイトとして通称モバスペとして広く利用されていた。ガラケー向けに2003年に始まったサービスで「魔法のiらんど」とともに当時の若者たちに人気であった。終了の理由は「諸般の事情により」として明らかにしていないが、ケータイ小説サービス「モバスペブック」はサービスを継続する。さらにKADOKAWAが運営する「魔法のiらんど」も今年3月に終了している。スマホとガラケーの所有割合が8:2程度となっている中で、その存在意義が見出しにくくなってきたのだろう。

 

 

マイナビトラベル 2020/9/30終了

 

株式会社マイナビが運営する国内向け総合宿泊予約サイト「マイナビトラベル」が2020年9月30日にサービスを終了した。

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2016年からのサービス開始以来、登録宿泊施設は1万軒以上に上り、国内ダイナミックパッケージも取り扱っており、会費も無料で若年層を中心に1,000万人を超える会員数を誇っている大手サイトだ。しかし昨年5月には高速バスチケット予約サービスを終了していた。そして、今回のサービス終了はコロナウイルス感染拡大が観光事業に与えた影響といえるだろう。

 

 

Pixiv Pay 2020/12/1終了

 

ピクシブ株式会社はQRコード決済サービス「Pixiv PAY」のサービスを2020年12月1日で終了した。

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Pixiv PAYは2017年8月より、クリエイター向けQR決済サービスとして運営開始。サービス開始以来、イベントや販促会でレジ機能やQR決済サービスを提供していた。しかし、コロナウイルス感染拡大の影響でリアルイベントの開催や在り方が変化し、このままでのサービス継続が困難であると判断したと言う。コロナウイルスが実店舗営業やイベントに与えた影響は決済サービス業界にも影響している。

 

 

エイビーロード 2021/3/31終了予定

 

リクルートのグループ企業である株式会社リクルートライフスタイルは海外旅行の検索・比較サイト「エイビーロード」を2021年3月31日に終了すると発表した。

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「エイビーロード」は1984年に海外情報雑誌として創刊され、2006年10月以降はインターネットサービスに全面移行。1990年代にエイチ・アイ・エス(HIS)などの新興勢力が成長するきっかけを作るとともに、パッケージツアーや航空券の低価格化に大変な影響を及ぼした。利用者や商品数はピークであった2012年〜2014年以来減少傾向をたどっていたようだ。そして、コロナウイルス感染拡大で旅行者が減少したこともあるが、近年の旅行会社を介さず、ホテルや航空券を個人手配する時代の傾向も影響しているのだろう。今後は国内旅行予約のじゃらんネット上で海外旅行需要に対応し、エアプラスとの提携により、航空券とホテルのダイナミックパッケージを扱うことで需要を吸収していく意向とのこと。

 

 

サイタ 2021/6/30終了予定

 

株式会社クラウドワークスはスキルシェアサービス「サイタ」を2021年6月30日でサービスを終了予定であることを発表した。

「サイタ」は2018年1月より、自分の特技を活かしたいコーチを学びたい受講生をマッチングさせる「習い事」におけるサービスとして運営開始。300種類以上の個人レッスンを探すことが可能で語学学習から音楽まで様々なジャンルでの受講が可能なサービスである。サービス終了理由として、コロナウイルス感染拡大を受け、対面レッスンを前提としているため今までの形でサービスを続けることが困難になったとしている。しかし、2021年春にサービスをフルリニューアルしコーチと生徒をつなぐサービスを開始することを発表しており、新しい生活様式に合わせた利便性の向上が図られたと捉えることもできる。

 

 

うねり続けるEC業界の光と陰

 

今年も数多くのサービスが終了となった。この1年のトレンドはこれまでとは大きく異なる傾向があった。毎年トレンドシフトによるサービス価値の低下や、過当競争によるサービス終了が目立つが、今年はコロナウィルスによる影響が甚大だったと言える。デジタル業界は比較的安全とも言われているが、やはりリアルとの連携を重視しているデジタルサービスは軒並み苦境に立たされていることが分かる。

しかし一方で、非対面、非接触型サービスが進歩したり、リアルに依存しない形での新しいサービスがどんどん立ち上がってきた一年であるとも言えるだろう。

また、NEVERまとめや、C CHANNELのアプリサービス、Mobile Spaceなどの終了は、消費者のオンライン上での情報収集方法の変化がひと段落したとも言える。Webサイトで情報を入手するよりも、インスタグラムを代表とするSNSでの情報収集が主流となり、インフルエンサーを起用したライブコマースも非常に多く見られるようになった。

ニューノーマル時代に突入する来年2021年だが、コロナウィルスの終息や東京五輪の開催等も含めて、大きなトレンドが非常に読みにくい一年となるのは間違いないだろう。そのような社会の変化の過渡期とも言えるこのタイミングでどのような新しいサービスが生まれ、どのようなサービスが終了していくのだろうか。来年もEC業界の光と影から多くのトレンド変化を読み解くことが出来るだろう。