2022年にサービス終了・終了予告されたEC関連10サービスまとめ - うねり続けるEC業界の光と陰

 

そろそろ今年も終わりの足音が聞こえてきたが、2022年もEC業界は多くの新しい技術とサービスが市場を賑わせた。しかしその一方で、業界の荒波に揉まれ、ひっそりと終了していったサービスも少なくない。その中で、今回は2022年に終了したサービスおよび終了が予告されたサービスを10個ピックアップして紹介していく。また、追加で海外において終了したサービスも併せて2つ紹介していく。

 

<参考>

2021年にサービス終了・終了予告されたEC関連10サービスまとめ - うねり続けるEC業界の光と陰

2020年にサービス終了・終了予告されたEC関連10サービスまとめ - うねり続けるEC業界の光と陰

2019年にサービス終了・終了予告されたEC関連10サービスまとめ - うねり続けるEC業界の光と陰

2018年にサービス終了・終了予告されたEC関連10サービスまとめ - うねり続けるEC業界の光と陰

2017年にサービス終了・終了予告されたEC関連10サービスまとめ - うねり続けるEC業界の光と陰

2016年にサービス終了・終了予告されたEC関連10サービスまとめ - うねり続けるEC業界の光と陰

2015年にサービス終了・終了予告されたEC関連10サービスまとめ - うねり続けるEC業界の光と陰

 

 

ワイズカート 2022/1/31終了

 

ECサイト構築プラットフォームの老舗「ワイズカート」は、2022年1月31日にサービスを終了した。

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2003年に提供を開始した「futureshop」、2004年の「MakeShop」から遅れること数年、2007年にローンチされたワイズカートは、8,000社を超える導入実績があったが、15年の歴史に幕を閉じた。ワイズカートでは、通常の有料プランに加え、初期費用と月額料金が無料のプランも設けており、消費者向け、法人向け、社内販売向けのサイト構築に必要な機能を提供していた。また、フリーページが無制限で作成できる点も特徴の1つだった。

 

 

ストライプデパートメント 2022/2/28終了

 

株式会社ストライプデパートメントは、ECサイト「STRIPE DEPARTMENT」を2022年2月28日に終了した

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株式会社ストライプデパートメントは、株式会社ストライプインターナショナルソフトバンクが2017年に設立した合弁会社で、翌2018年2月に同名ECサイトの運営を開始したが、サイトの終了をもって同社も解散する運びとなった。STRIPE DEPARTMENTは、「大人のためのECデパートメント」をコンセプトに、開始当初から約600ブランド、6万アイテム超を展開。F2層(35〜49歳の女性)をターゲットに、パーソナルスタイリストによる商品提案サービス「Personal Styling」や一度に3着まで申込可能な試着サービスなども展開してきた。2019年9月には、百貨店ECサイトの運営を代行する「DaaS」を提供開始するも、創業3年で累計15億円以上の赤字に。閉鎖に至った理由は「当初の計画に対して大幅に業績拡大が遅れたため」(広報担当者)としており、累積赤字は40億円を超えていた。

 

 

三菱UFJニコスEC決済ソリューション 2022/3/31終了

 

三菱UFJニコス株式会社は、クレジットカード決済やコンビニ決済に対応した総合オンライン決済「EC決済ソリューション」を2022年3月末に終了した。

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EC決済ソリューションは、通信販売用の決済サービスとして、クレジットカード・コンビニ決済・ペイジー・バーチャル口座決済・口座振替などの決済方法を提供してきた。大手ならではのセキュリティの高さが評価されていたが、2022年3月をもって同社と株式会社NTTデータの合弁会社・株式会社ペイジェントの新サービス「ペイジェント」への統合を発表。現在は、PayPayや楽天ペイ、スマートフォンキャリア決済、Apple Pay、Google Pay、Paidyなど、豊富な決済手段が選べるより使い勝手の良い決済サービスとなっている。

 

 

ZOZOSUIT 2022/6/23終了

 

株式会社ZOZOは、身体計測の「ZOZOSUIT」を2022年6月23日に終了した

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ZOZOSUITは、専用のボディスーツを着用し、スマホのカメラで撮影するだけで詳細な身体データを採寸できる画期的なサービスとして、2017年の発表時から注目を集めてきた。スーツ全体にセンサーを張り巡らせた高機能の初代ZOZOSUITには、100万件を超える予約が殺到。その結果、コストや生産スケジュールの関係でマーカーを使ったタイプに仕様変更せざるを得なくなり、無料配布された1,000万着の改良タイプは評判が振るわなかった。そのことも影響し、ZOZOがその先に見据えていた「オーダーメイドのPB商品展開」は大幅な事業縮小となってしまった。ただし法人向けに展開している2020年10月発表の後継モデル「ZOZOSUIT 2」は好評で、今後もサービスを継続する。また、足のサイズを計測する「ZOZOMAT」と肌色を計測して似合うコスメを提案する「ZOZOGLASS」も引き続き利用可能だ。

 

 

cakes 2022/8/31終了

 

note株式会社(旧株式会社ピースオブケイク)は、有料コンテンツ配信サイト「cakes」を2022年8月31日に終了し、サイト閉鎖に伴いすべての記事が閲覧不可となった。

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2012年9月にサービスを開始したcakesは、「クリエイターと読者をつなぐサイト」をコンセプトに、出版社やクリエイターと提携して漫画やコラムなどを3万本以上配信してきた。ヒット作が生まれることも多く、2017年には漫画『左ききのエレン』のリメイク版が「少年ジャンプ+」で連載され、のちにテレビドラマ化もされた。その一方で、近年はコンテンツの取り扱い方や編集部の体制を巡って炎上することもあり、終了理由については「noteの事業に集中するため」としている。

 

 

PayPayモール 2022/10/12終了

 

ヤフー株式会社は、ECモール「PayPayモール」を2022年10月12日に終了し、「Yahoo!ショッピング」へ統合・リニューアルした

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2019年10月にスタートしたPayPayモールは、Yahoo!ショッピングのワンランク上のモールとして、厳しい出店条件をクリアした選ばれしストアのみが出店できるようになっていた。約1,700店舗のPayPayモールに対し、Yahoo!ショッピングは117万もの店舗が乱立しており、クオリティの面では差別化が図れていたが、キャンペーン内容やポイント付与率においても異なるケースがあり、複雑で分かりにくいという声が寄せられていた。そのため、PayPayモールとYahoo!ショッピングを統合・リニューアルし、よりシンプルで分かりやすい内容に変更。PayPayとPayPayカード(旧ヤフーカード含む)の支払いはこれまで日曜日の購入がお得で、ソフトバンクユーザーに有利なポイント還元率も導入されていたが、統合後は誰でも毎日最大5%のPayPayポイントが貯まるようになった。今後は注文の当日から翌々日までに商品を配送する「優良配送」も強化される予定だ。

 

 

3Dセキュア1.0 2022/10終了

 

クレジットカード各社が導入している本人認証システム「3Dセキュア1.0」が2022年10月に終了し、3Dセキュア2.0に全面移行となった。

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画像出典:Veritrans社サイト

3Dセキュアは、オンラインでクレジットカード決済をする際に、カード情報とパスワードを入力することで、第三者の不正利用を防止する仕組み。VISA、Mastercard、JCB、AMEXが推奨する本人認証サービスとして世界中で利用されてきたが、従来の3Dセキュア1.0は認証フローが複雑で、カゴ落ちのリスクが高いというデメリットがあった。それに対して、2016年にリリースされた3Dセキュア2.0は、不正利用のリスクが高いと判定された場合にのみ、IDやパスワードを入力する「リスクベース認証」が行われている。AMEXは10月13日、VISAは10月14日、MastercardとJCBは10月17日に3Dセキュア1.0を廃止したが、同時に3Dセキュア1.0におけるカードの不正利用発生時の売上損失補償も終了となった。これにより、加盟店が3Dセキュア1.0に対応していても、3Dセキュア1.0に対応していないカード会社のカードで不正利用が行われた場合、実質加盟店のリスク負担となる。

 

 

オムニ7 2023/1/31終了予定

 

セブン&アイ・ホールディングスは、グループ横断のECサイト「オムニ7」を2023年1月31日に終了する。

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オムニ7は、そごうや西武イトーヨーカドーアカチャンホンポロフトなど、グループ内の商品を1つのECサイトで購入できる統合型通販サイトとして、2015年11月に肝入りで始まった。ローンチ直後の2015年度の売上高は、EC経由での購入とネット検索後の店舗購入を合わせると1,418億円。当初はこの売上を2018年度に1兆円にし、3年間で取扱商品数を2倍の600万アイテムに増やす計画だったが、経営陣の刷新と業績の低迷によって叶うことはなかった。2021年度の売上高は、前年度比0.3%増の1,044億円。オムニ7の閉鎖に先立ち、グループ各社はそれぞれの通販サイトを立ち上げ、2022年6月30日以降はオムニ7のトップページからの商品検索もできなくなっている。なお、オムニ7時代に実施していたセブン-イレブン店舗での商品受け取りは、イトーヨーカドーとアカチャンホンポ以外の各社は引き続き行う。

 

 

Internet Explorer11 2023/2/13終了予定

 

Microsoft社は、Webブラウザー「Internet Explorer11(IE11)」を2023年2月13日をもって完全無効化する。

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Internet Explorer11(IE11)のデスクトップアプリのサポートは2022年6月15日をもってすでに終了しているが、2023年2月のパッチで完全無効化される形だ。これを受け、ECサイト構築システムの「futureshop」では、2023年2月でfutureshopシリーズのユーザー画面(ECサイト)におけるIE11のサポートを終了すると発表。IE11経由でECサイトを利用していたユーザーは、パソコンの場合はChrome、Firefox、Edgeに切り替え、スマホはSafariもしくはChromeに切り替える必要がある。インターネットが普及した2000年代初頭は、9割以上のユーザーが利用していたInternet Explorer。近年は国内で5%以下のシェア、世界では1%を切っているとも言われていたが、少々癖のあるIE11がなくなったことで、ECサイトの開発が少しだけ楽になったかもしれない。

 

 

アトディーネ 2023/9/30終了予定

 

ジャックス・ペイメント・ソリューションズ株式会社は、後払い決済サービス「アトディーネ」を2023年9月30日に終了する。

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アトディーネは、信販会社初となる後払い決済サービスとして、2014年4月に提供を開始。業界最安水準の手数料や金融事業での信頼と認知度、業界トップレベルの審査スピードが特徴で、これまで16,000以上の通販・EC事業者が導入してきた。しかしさまざまな要因が重なって事業環境が大きく変化することとなったため、事業の継続は困難だと判断。事業の終了を決めたという。2023年6月30日には新規取引登録と新規出荷報告登録を停止し、2023年9月30日に全機能を止める。今後はジャックスグループとして、BNPL市場への参入に向けた新たなサービスを検討していく予定だ。

 

 

2022年にサービス終了した海外のサービス

 

今回からは、国内の状況に加え、海外で終了したEC関連サービスもいくつかピックアップして紹介する。

 

Zircle 2022/11/16終了

ドイツ・ベルリンに本社を置くZalando SEは、古着専門のフリマアプリ「Zalando Zircle」を2022年11月16日に終了した。

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Zalando Zircle(リリース当初の名称はZalando Wardrobe)は、大手ファッションECサイト「ZALANDO(ザランド)」のリセールプラットフォームとして、2018年7月にサービスを開始。4年の間にスペイン、ベルギー、フランス、オランダ、ポーランド、スウェーデン、デンマークにマーケットを広げ、事業を展開してきた。ザランドはドイツ国内10都市でアウトレットストアも運営しており、今後はザランドのWebサイトおよびアプリでリセールアイテムの販売に注力するという。

 

百度糯米 2022/12/31終了

中国のIT大手、百度(バイドゥ)傘下の共同購入サイト「百度糯米」は、2022年12月31日にサービスを終了する。

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百度糯米の前身である「糯米網」は、「人人(レンレン)」が2010年6月に開始したサービスで、三大共同購入サイトの1つとして人気を博した。2014年1月にはバイドゥに買収され、サイト名が百度糯米に変更。2015年には、バイドゥが百度糯米に200億元(約4,000億円)を投じると宣言したが、事業の拡大は見られなかった。同社はサービス終了の理由を、バイドゥの事業再編としている。

 

 

うねり続けるEC業界の光と陰

 

今年も数多くのサービスが終了したが、コロナ禍の影響も残りつつも、それほど関係のないものも増えてきている。その中でも、PayPayモール、オムニ7と言った、大手の肝入りサービスが撤退したのが印象的だ。これらのサービスは開始時には各社のデジタル施策の命運を握るような位置付けで開始されたものだが、共にユーザーにしっかりと位置付けや魅力が認知されないまま撤退に至ったようだ。

アパレル業界のデジタル施策のトレンドを一時期賑わせた、ZOZOSUITとストライプデパートメントも今年で終了となっている。ZOZOSUITは期待度が高すぎたことで失望も多く招き、初期のその躓きを取り返せないままに終了となった。しかし、ZOZOSUIT2や、ZOZOMATなど、この流れを汲んだサービスは順調に提供を続けているため、ZOZOのやりたいことのコンセプトを世の中に広めたという意味では十分にその役割を果たせたのではないだろうか。
ストライプデパートメントは、ZOZO越えを目指し、衰退する百貨店の後釜を狙ったものの、思ったようにユーザーにその狙いが浸透しなかったようだ。

乱立している決済サービスにも淘汰の波がやってきた年でもあった。元来、差別化の難しい業界の中で過当競争気味な状態になっていたが、そこにID決済やQR決済などの新たな決済サービスが一気にここ数年で存在感を増してきた。そのような中でデジタル以外の領域を本業とするサービスである三菱UFJニコスEC決済ソリューション、アトディーネはその荒波に飲まれていったと見ることが出来るだろう。

eコマース業界は、コロナ禍を経て、基本的には右肩上がりな業界ではあるが、それでもこれだけの関連サービスが終わりを迎えることになった。今後も変化の早いテクノロジーやトレンドの流れをしっかりと把握した上で、eコマース業界の荒波を乗り越えていく必要がありそうだ。来るべき2023年にはどのような新しいサービスが生まれ、どのようなサービスが終了していくのだろうか。来年も引き続き注目をしていきたい。