アイルランド発ファッション小売PrimarkのCEOのPaul Marchant氏は、COVID-19の影響で買い物客が恒久的にオンラインショッピングに移行したという主張に対し、否定的な見方をしている。同氏は、eコマースへのシフトが必然的かつ恒久的であると主張する人々を「その考えは間違っているし、単純だ」としている。

 

PrimarkのCEOは、イギリスの新聞The Timesに掲載された記事の中で次のように述べている。「対面でのショッピングは終わりを迎え、時代遅れだ、という考え方は単純だ」。彼はさらに「我々がロックダウン期間にオンラインショッピングが増加したことについて確実に言えることは、店舗が軒並み閉店していた、ということだけである」と説明している。

 

「確実に言えることは、店舗が閉店していたということだけ」

 

驚きの調査結果

Marchant氏は、ロックダウン中に小売業界で何が起きていたのか、自社で独自調査を依頼したことについても言及している。「我々にでさえも、その調査結果は驚くべきものだった。人々がある場所についてどのような印象を持つかという点において、実店舗がいかに中心的な存在であるかいうことに気が付いていなかったのだ」。

 

「実店舗は、ある場所についての人々の印象に大きな影響を与える」

 

Primark社の調査では、買い物客は市民としての誇りを持ち、自分達が住む街を非常に気に掛けているということが明らかとなった。「人々のアイデンティティーは何に由来しているのかと尋ねると、村、街または都市といった回答が最も多かった。街の状況は、そこにいる人々が自分自身をどのように感じるのかについて、影響を与えているのだ」。

 

Marchant氏は、衰退しつつある街が、市民の誇りや、さらには自尊心にどのような影響を与えるのかについて話を続けた。「彼らはどのように衰退の度合いを測るのだろうか?それは、看板を掲げ営業している店舗の数で判断しているのだ。多くの人々の生活の中で、店舗は重要な役割を担っている。買い物は社会的イベントであり、身体的な体験といえる」。

 

実店舗存続に向けた戦いを支援

同氏は、実店舗への支援は、レベルアップ施策の最優先課題であるべきだと考えている。「政府が街中心部の活性化を望むのであれば、店舗が閉店するたびにWhitehall(ロンドンの官庁街)に警鐘を鳴らすべきなのだ。実店舗を救済するための同氏の提案の1つは、ワクチン導入後に、「付加価値税ゼロ」の期間を設け、ハイストリートの活性化を図ることだという。

 

今年10月、英国では第三四半期の小売売上が記録的な伸びを示した。9月の売上高は1.5%増となり、COVID-19発生前の前年同期よりも4.7%増加した。英国の小売売上高は、エコノミストのロイター世論調査においても予測を上回るものとなった。

 

英国人のオンラインショッピング好きは変わらず

とはいえ、英国国家統計局のデータでは、引き続き英国人がオンラインショッピングを多用していることが明確に示されている。今年1月と2月のeコマース売上は、小売売上高全体の20%、3月には32.8%に増加した。そして10月においても、依然として28.1%を占めているのだ。

 

※当記事は英国メディア「Ecommerce News europe」の12/11公開の記事を翻訳・補足したものです。