多くの買い物客、地元の実店舗で商品を返品することができればeコマースで購入する可能性増

 

今年のホリデーシーズンに問題になるのは、人々が実店舗に戻るのか、それとも、実質的にすべての購入をオンラインで行うのかという点であろう。米国のベンチャーキャピタリストであるMary Meeker氏は、こう述べる。小売支出のうち、何%がオンラインに移行するだろうか?しかし、『従来型実店舗 VS eコマース』という二元論は、大雑把なものであり、オンライン販売を促進する上で店舗が果たす役割を正しく評価していない。

 

実際のところ、より興味深い点は、従来型小売業者がAmazonやその他のeコマース専門業者との戦いにおいて、実店舗をどこまで活用し、競争上の優位性を確保できるのかということである。これまで実店舗とeコマースの両方で販売を行う小売業者は、それらを全く別のチャネルとして扱い、個別の損益計算書を作成し、別々の運営チームを持っていた。大手小売業者が実店舗と eコマースの相互作用を認識し、双方の取り組みを統合し始めたのは、ごく最近のことである。(たとえば、ネット注文した商品を車から降りずに受け取るカーブスサイドピックアップの提供や、実店舗の既存配送センターとしての利用である)。

 

ホリデーショッピングのほとんどすべてがオンラインで行われ、店舗が果たす役割は、限定的、あるいは、二次的なものになるというのが、主要な仮説である。これは、過去数年と比較して、売上高における通説をひっくり返すことになるだろう。しかし、購入の大部分をオンラインが占めたとしても、地元店舗の存在は、消費者の意思決定に大きく影響すると思われる。

 

サイバーウィークはプライムデーによる打撃を受けるか?

今年のホリデーシーズンにおいて、買い物客は昨年よりも、より予算を意識し、より選り好みし、衝動的な購入をしない可能性が高い。特に、買い物のほとんどがオンラインで行われる場合、通常は、ブラウジング中の自発的購入の可能性は低くなる。

 

Numerator(マーケティングリサーチ会社)が2,000人の成人を対象としレイバー・デー(9月の第1月曜日)における買い物の意図に関して行った調査結果からは、これから迎えるホリデーシーズンの買い物行動を予測できるかもしれない。この調査では、49%の消費者が「昨年よりも支出を減らす」と回答しており、支出を増やす予定の人は6%にとどまっている。

 

この結果から推定するには、劇的に経済が改善しない限り、今年のホリデーシーズンにおいて買い物客は、昨年と比較してより選択に厳しくなり、価格に対する意識が高くなるだろう。その結果、買い物客の購買意欲をそそるために、送料無料を伴う割引が浸透するだろう。しかし、小売業者はこの数ヶ月の間、オンライン販売を伸ばすために割引を行ってきたため、消費者は、さらなるインセンティブを必要とするかもしれない。

 

オンライン広告分野では、購買ファネルの最上部と最下部の両方でビジビリティをめぐる小売マーケッター間の激しい競争が生じるだろう。そして、小売業者は、競合他社のノイズから抜き出るべくあらゆる優位性を追求するため、今年の競争は、より早期に始まるとみられる。9月初めに発表されたIABのデータが示唆するように、GoogleとFacebookが、デジタル広告費増加の直接的な恩恵を受ける可能性が高い。

 

購入量は、今年のブラックフライデー(11月の第4木曜日の翌日にあたる11月27日)、サイバーマンデー(感謝祭の次の月曜日にあたる11月30日)、および、関連するショッピングホリデーに、例年ほど集中しないとみられる。Amazonプライムデーは10月に開催されると報道されており、競合他社も、それと同時期に早期プロモーションを実施するだろう。10月のプライムデー開催によって、人々が早期にお金を使い切り、従来のサイバーウィークのセールの勢いを止める可能性があるのだ。

 

通常の買い物を求めつつ、恐怖心も感じる買い物客

ブラックフライデーのインストア体験は、もしそれが実現したとしても、過去数年と比較して、無言に近いものとなるだろう。インストアマーケティングソリューション会社であるMood Mediaが複数国において実施した最新の消費者調査によると、消費者の約半数が、店舗にいる間にCOVIDに感染することを恐れていると回答している。

 

ほとんどの人は、まだモールには行かないと回答

出典:Morning Consult 消費者調査(2020年8月実施、2,200人の消費者を対象)

 

米国では、消費者の正常時の小売形態への切迫した需要と恐怖が共存している。パンデミックが沈静化した国では、消費者は店舗に戻ってきている。Mood Mediaの調査によると、全世界の回答者の71%が、現在では、店舗に戻っても安心だと感じていると回答。この点は、ある程度、小売店の安全対策に依存している。

 

また、今回のMood Mediaの調査では、世界中の買い物客の67%が、非必需品を販売する小売店に戻っていることがわかった(米国では、60%である)。これは、広範にわたる懸念を示している他の調査データと矛盾しているように思われる。パンデミック収束後も、昔の習慣(おそらく従来と同じ小売店での買い物)に「絶対に戻らない」と答えたのは、わずか10%となっている。

 

このように、アメリカの消費者の大部分は、以前として小売店を訪れることに対する不安を表している。8月下旬に行われたデータインテリジェンス企業であるMorning Consultの調査では、今後2~3ヶ月間にショッピングモールに行く意思があると答えた消費者は、36%にとどまっている。そして、消費者が、これらの考えと一致した行動をとれば、実店舗の来店者数は、昨年よりもかなり減少するだろう。

 

ディスカウントストアの店頭ショッピングが回復

出典:Gravy Analytics 来店者数データ

 

「タッチアンドフィール」のための来店

しかし、Gravy Analyticsの来店者データによると、ディスカウントストアやアウトレットモールは、百貨店や従来型のモールよりも順調に回復しており、価格重視の消費者がこれらの店舗に大幅に戻ってきていることがわかる。上のグラフが示すように、この2つのカテゴリーの来店者数は、ロックダウン前の2月上旬の水準、もしくは、それを上回っている。一方、百貨店の来店者数は15%減、従来型モールは12%減となっている。

 

過去の調査から、(1995~2009年生まれのZ世代を含む)多くの消費者が実店舗での買い物を好む理由が明らかになっている。Mood Mediaの調査によると、その理由について、消費者は次のように評価している:

 

  • 商品に触れ、感じ、試すことができること – 47%
  • 購入品をすぐに家に持ち帰れる利便性 - 47%
  • 新しい商品を見て回り、発見できること – 36%

 

別の調査によると、62%の買い物客は、地元の実店舗で返品が可能な場合、eコマースで購入する可能性が高くなると答えている。(そして、一度購入した店舗から、追加購入をする傾向がある)。

これは重要なポイントであり、オンライン販売を行っている従来型小売業者にとっての優位性の要因となる。例えば、大型ディスカウントストアのTarget BestBuy は、第 2 四半期に、デジタル eコマースが 3 倍の成長を遂げたと発表。しかし、店舗の存在が、この成長を大きく加速させた。

 

予測が難しい「ROBO-BOPIS」買い物客

多くの買い物客は、直接的なeコマースだけでなく、地元で販売している商品を見つけし、店舗での滞在時間を最小限に抑えるためのツールとしてインターネットを利用していると考えられる。BOPIS(Buy Online Pick-up In Store/ネット注文した商品を実店舗で受け取る)とカーブサイドピックアップは、オンラインショッピングの利便性と効率性に加えて、店舗でのショッピングの即時性(または、即時性に近い)に対する満足感を提供している。買い物客は、自分で通路を歩いたり、棚にある商品を探したりすることなく、今日中に地元で商品を手に入れることができる。(そして、希望する場合はその次の日に返品することができるのだ)。

 

レビューマーケティングソリューションを提供するBazaarvoiceが発表したレポートでは、オンラインかオフラインかにかかわらず、今日の消費者が地元の店舗(SMBと記述)での買い物を重視する傾向を示す発表。オフラインでの買い物においてもまた、インターネットがこれまで以上に大きな役割を果たしていることも示唆している。インターネットが普及した初期段階から、地元で購入する前のオンラインリサーチは行われてきたが、現在では、大多数の消費者が、オンラインでリサーチを行い、オフラインで購入する(research online, buy offline /ROBO)ようになった。

 

店へのアクセスや営業時間、商品やサービスについてのレビューを探すだけでなく、商品の在庫チェックにおいても、このオンラインからオフラインへとつながるアクティビティが行われている。2019年、Googleがスポンサーとなった調査によると、買い物客の46%が店舗を訪れる前にオンラインで在庫を確認している。Googleによると、ロックダウン中である4月には、「在庫あり」というフレーズを使った検索が70%以上増加したという。この検索にはオンライン小売店も含まれているが、特に地元の店舗を探すものである。

 

この不安な環境で、消費者は時間を無駄にしたくないし、探しているものが見つかるかもしれないという可能性に期待して店を訪れたいとも思わない。だからこそ在庫データは、Googleのローカル在庫広告(LIA)や、需要の高い商品のための商品別ランディングページなどの形式にかかわらず、差別化を生み出す存在となる。

 

ローカル広告と「ショールーミング」

LIA に加えて、ロケーションベースのモバイルディスプレイ広告は、店舗への訪問、そしてeコマースの売上を結果的に生み出す。Numeratorと、ロケーションテクノロジー企業であるGroundTruthによる2019年の調査では、ロケーションベースのディスプレイ広告キャンペーンに接触した人の66%が、最終的に、店舗またはオンラインで購入したと報告されている。同グループの約28%は、オンラインまたは店舗で競合他社から購入していた。一方で、驚くべことに、店舗に入店した人のうち94%が購入に至っていた。このキャンペーンは、美容、ホームセンター、量販店の3つの業種の大手小売店を対象に実施された。

 

おそらく最も興味深い点は、キャンペーン広告を表示されたモバイルユーザーは、「広告を表示していない小売店と比較して、キャンペーン広告を表示した小売業者からオンラインで購入する可能性が25%以上増加した」ことである。言い換えれば、地元小売店オファーのプロモーション広告が、オンライン販売を生み出したということである。

 

これは、実店舗とeコマースの相互依存性と共生関係を示している。消費者が、オンラインで購入するか地元店舗で購入するかについては、ますます予測が難しくなっている。しかしこの問題に関して、店舗が重要であることは間違いない。

 

見慣れたブランドと実店舗の存在は、人々にオンライン購入に対しての安心感を与える。それは、オンラインで購入したものを、必要に応じて地元店舗で返品することができるからである。COVID後の小売業界では、実店舗は主に、「ショールーム」や「フルフィルメントセンター」とみなされるかもしれない。ここで消費者は、商品に触れ、感じることができる。さらに、オンラインで購入した商品を最終的に受け取ることもできるのだ。

 

※当記事は米国メディア「Marketing Land」の9/4公開の記事を翻訳・補足したものです。