世界中の小売業者は、COVID-19のためのソーシャルディスタンスの確保を満たすために、ビジネスモデルを変化しつつある。2件の消費者レポートは、パンデミック時におけるショッピングパターンの変化に関して、次の2つの主要な調査結果を示している。

a) 小売業者は、新規の長期顧客とつながる方法を構築することが重要である。

b) オンライン購入では、消費者は商品の在庫不足という問題を完全に解決することはできていない。

 

4月上旬に発表されたITソリューション企業CGS購買動向に関するレポートによると、全世界の消費者は、3月も引き続き衣料品などの非必需品を購入しているという。

 

同調査結果によると、消費者は増加する配送遅延に対して、企業が、生じている混乱についてコミュニケーションを取り、顧客のロイヤルティに対し適切に対応する限り、提供されるサービスに対する期待値を下げることを厭わない。

 

「小売・卸売業界の多くが混乱に陥っている中、消費者は、引き続き、日常生活に必要な衣料品を購入している」と、CGSのビジネスアプリケーション・テクノロジーアウトソーシング部門を統括するPaul Magel氏は言及。「今回の調査によると、在宅勤務への急激な移行や、ソーシャルディスタンスの確保が求められていることから、これまでとは異なる衣類タイプへの需要が高まっているようだ。そして、高級品やアクセサリーへの支出は減少している」。

 

デジタルマーケティング会社、Bazaarvoiceが毎週更新している調査レポートによると、3月には、米国の消費者は長期的に家に篭るための準備をしていた。3月のページビューは25%、注文数は21%増加したという。

 

月ベースの消費者行動レポートからは、ソーシャルディスタンシングや屋内退避勧告が広く発表された際には、買い物が大幅に増加したことがわかる。また、Bazaarvoiceのネットワーク上で、今年最も注文が多かった上位10日は、3月中である。

 

注文数が急増し始めたのは3月11日。世界保健機関(WHO)が、COVID-19による世界的パンデミックを宣言し、米欧間の渡航禁止令が発表された日である。

 

Bazaarvoice のマーケティング部門シニアプレジデントである Suzin Wold 氏によると、同社のレビューサイト、Influenster コミュニティの会員の3,000 人以上を対象とした Bazaarvoice の調査では、回答者の 41% が、通常は、店舗で購入するはずの商品をオンラインで購入していると答えている。

 

「この傾向は、特に食料品などの分野で顕著である。6,200以上のブランドや小売業者のウェブサイトを持つ当社ネットワークでは、3月のオンライン注文が、対前年比85%増加を記録した」。

 

カジュアル・エブリデイ

世界の大部分が、在宅勤務環境に移行していることから、今回の調査が示す消費者需要傾向は、パンデミック収束後も新常態となる可能性が高いと、CGSのMagel氏は指摘する。

 

「外出禁止命令やソーシャルディスタンス 規制の影響による(消費者需要の)急増は、横ばいになるだろう。しかし、企業と従業員の双方が、現在のテクノロジーを活用すれば、企業の標準業務手順のより広範な部分が、在宅勤務によって実行可能であるという認識を持つようになり、よりカジュアルなビジネスウェア(服装)に対する全体的な需要は増加し続けるだろうと考えている」と同氏は語った。

 

たとえ、従業員がオフィス勤務に戻ったとしても、よりカジュアルでリラックスした服装で仕事をするようになるだろうと予測する同氏。アメリカ人は、愛する人の健康と安全を非常に重視しているが、CGSの調査結果は、彼らが依然として自分自身や他の人への接し方を模索していることを示している。クローゼットの衣類を新しくすることもその一例である。

 

調査対象の消費者のほぼ半数(49%)が、普段着を購入。この数字は、フルタイム雇用の回答者の約60%に達している。

 

パターンの永続性

COVID-19の影響によって、初めてオンラインで買い物をするようになったという消費者の数は、これまでにないほど増加している。BazaarvoiceのWold氏は、シームレスで便利なオンラインショッピングを経験した消費者の多くは、パンデミック後もこの新しいオンラインショッピング習慣を維持することになるだろうと示唆している。

 

「買い物客のオンラインショッピングへの急激なシフトは、様々な業界のeコマース・イノベーションを加速させるだろう。そして、これらの必然的な進歩は、将来的にブランドとその買い物客に利益をもたらす」と同氏は予測。

 

一方で、調査回答者の中には、実店舗での買い物が可能となれば、以前よりも店頭体験の価値を認識するだろうと回答した人もいた。ある回答者は、お気に入りの店舗やレストラン、その他のビジネスを再度利用できるようになり、人と人とのつながり、経験を共有できることを楽しみにしていると述べている。

 

回答者の43%が、今回の危機が収束すれば、以前と同じ方法で買い物をすると答えた一方で、41%は、現時点ではまだわからないと回答したとWold氏は語る。

 

救いとなるオンラインショッピング

CGSが調査した1,000人の消費者のうち、46%がフルタイムで雇用であり、17%は退職している。同調査分析によると、安定した収入があるかどうかという点が購買習慣に影響を与えていると考えられるが、年齢も大きな要因となっている。

 

ミレニアル世代(25~34歳)の64%は普段着を購入した一方で、年配の消費者は、ファッション商品を購入する傾向が非常に低い。つまり、小売業者は若年層の購入者をターゲットとした施策に注力すべきであることが示されている。

 

消費者は、実店舗では入手することが困難なアイテムを購入するため、そして、利便性と安全性の両方の理由から実店舗への来店を避けるために、オンラインで買い物をしていると、Magel氏は指摘する。

 

「一方で、必需品以外のオンライン購入の増加の大部分は、オンラインが唯一の購入可能なチャネルであることに起因している」と同氏。「これには、新しい洋服の購入も含まれる。私は、eコマースの急増は、単なる一時的なものだと考えている」。

 

しかし、すべての商品カテゴリーにおいて、eコマースの成長が加速することが予測されるとMagel氏は付け加えている。食料雑貨品のショッピングは、人々のオンライン/配送モデルに対する満足度が上がるにつれ、大きな恩恵を受け成長を遂げるだろう。

 

Bazaarvoiceの調査は、消費者は利便性と必要性の両方を理由にオンラインショッピングをしているというCGSの調査結果と一致する。Bazaarvoice調査の回答者のほぼ3分の1(31%)が、政府が外出禁止に関する厳しいガイドラインを設けたことで、買い物行動が変化したと回答している。

 

2019年を上回るオンラインショッピング

ソーシャルマーケティングソリューションであるBazaarvoice Networkは、全世界のショッピングと販売のパターンを、週ベースでトラッキングしている。継続的に更新されている同社レポートでは、パンデミックが、どのように消費者に影響を与え、ショッピング行動を変化させているかを明らかにしており、新トレンドによるパターンを特定している。

 

2020年3月のパンデミックによる世界的なシャットダウンに関する主要ポイントは以下の通り:

  • 2019年3月から2020年3月までの注文数が、前年比21%増加。
  • 世界保健機関(WHO)がCOVID-19を世界的なパンデミックと宣言した同日の3月11日に注文数が急増。
  • 食料雑貨類をオンラインで購入する消費者の増加により、食品、飲料、タバコ製品の注文数が85%増加。同カテゴリーのページビューは66%、レビュー投稿が87%増加。
  • スポーツ用品は、注文数が86%増、ページビューが47%増。
  • おもちゃ・ゲームカテゴリーは、ページビューが90%、注文数が60%増加。
  • アパレル・アクセサリーは、ページビューが4%増加、注文数は4%減少。

 

消費者サポートの強化

CGSは、オンライン市場調査会社であるDynataに依頼して、全米の消費者1,000人を対象に、非必需品への現在の支出についての調査を実施した。同調査では、非必需品とは、食品、医薬品、衛生用品以外の購入品を指す。

 

注目すべき調査結果

  • 消費者は、サービスの混乱には動揺していない。しかし、透明性は不可欠である。
  • ロイヤリティプログラムは、小売業者にとって必須である。
  • 消費者は、必需品以外の衣類を購入し続けている。

 

生産の遅れとスタッフ減少によって、多くの企業が、今年初めに提供していたサービスレベルを維持すること不可能となった。

しかし、ほとんどの消費者は、これらの事業者の業務上のしわ寄せを受けていないと回答。回答者の半数以上(53%)が、サービスの混乱を経験していないと答えている。これらの調査結果は、サービス障害に関して事業者が積極的なコミュニケーションを行なったことが、大きく影響していると思われる。

回答した消費者の3分の1以上は、配送の遅延を経験したが、加盟店から適切な通知を受け取ったと回答。また、28%の消費者は、遅延がなかったと答えている。

 

今回のレポートによると、企業が遅延の是正に積極的に取り組み、顧客に期限の遅延を知らせることで、消費者が重大なサービスの混乱を感じる可能性は低くなることがわかる。

 

小売業が必須で提供すべきロイヤリティプログラム

多くの企業は、継続的な成功を遂げながら顧客基盤を維持するために、リワードやロイヤルティ特典を活用している。

 

CGSによると、消費者の90%以上が、送料無料や商品の割引・キャンペーンが提供するサービスを利用すると回答。小規模小売業者や地元の小売業者にとっては、店頭での顧客基盤を維持するために、さらに不可欠なサービスとなっている。

 

消費者の69%が、Amazonやその他のマーケットプレイスのウェブサイトを利用して、必需品以外の買い物をしている。さらに、13%の消費者は、百貨店のウェブサイトで買い物をしており、ブランドのウェブサイトや地元の店舗に直接アクセスしたのは10%未満であった。

 

プロモーション、会員特典、個人特典などを通じた顧客へのリワード提供は、今のような困難な時代とその将来を乗り越えるビジネスを維持するため1つの方法であると、CGSは指摘している。

 

適応するサプライチェーンと消費者

CGSの調査によると、消費者のオンライン購入向け在庫が、消費者の需要に少しずつ追いつき始めていることが示唆されている。商品が入手できないことを理由に小売店に失望したという消費者は31%となった。

Bazaarvoiceの調査回答者の58%が、実店舗での商品不足を経験したと回答。44%の消費者は、必需品と非必需品の両方を購入できたが、入手するのは困難だったと感じているという。Wold氏によると、必要なものはすべて簡単に手に入れることができたと答えたのは24%に過ぎない。

商品不足の原因は主に、中国の製造拠点で始まったサプライチェーン危機にあるとMagel氏は指摘。もう一つの要因は、eコマースプラットフォームが、パンデミック時の需要拡大に対応するために、より多くの倉庫スペースを必需品に割り当てるようになったことである。

 

「小売業者が、現在閉店している実店舗で販売できない在庫を、eコマースのフルフィルメントの供給源として利用しているのを目にするようになってきた」と同氏。

 

現在の危機的状況が、いつ、あるいは、どのように収束するのかは分からない。確実なのは、危機以前と同じ常識には戻らないということだと、Magel氏は語る。すべての商品カテゴリーとすべての消費者層において、eコマースを受け入れる「新しい常識」が生まれることだろう。

 

「これまでeコマースチャネルを、重要な収益源として導入していなかった小売業者が、現在では、それを将来モデルと見なしている」とMagel氏は加えた。

 

意外な結果が明らかに

最新調査で最も驚いたのは、決して3月のオンライン注文が21%増加したということではない。Wold氏が言うに、Bazaarvoiceネットワークにおいて、ほぼすべてのカテゴリーで注文が増加したことである。

 

多くの人が、突如として在宅勤務となったり、ホームオフィスを開設したりするようになった。その結果、オフィス用品の売上は45%増、ハードウェアの購入は65%増、ソフトウェアの売上は61%増となった。3月の注文数では、すべてのカテゴリーにおいて、大きな伸びが見られた。

 

大人と子どもが共に在宅生活を送るため、スポーツ用品の注文は86%増、おもちゃやゲームは60%増となっている。

 

消費者は、ますます食料雑貨品のオンラインショッピングを利用するようになり、そのうちの多くは、初めてオンラインで食料雑貨品を購入しているという。Bazaarvoiceの調査によると、食品、飲料、タバコの注文は85%増加した。

 

注文が減少した唯一の業種は、消費者の大半が自宅で過ごすようになったという理由から、アパレルやアクセサリー(4%減)、また、世界的に大規模な集会がキャンセルされているため、宗教や儀式関連用品(32%減)、航空旅行がほとんどできなくなったことによる旅行用カバンやバッグ類(39%減)である。

 

COVID-19の影響で、消費者の購買における優先度が変化している。パンデミック前には、消費者が購入する際の主な優先順位は、品質(48%)、価格(47%)、ブランド(24%)であった。Bazaarvoiceの調査によると、現在では、入手可能性(49%)、価格(36%)、品質(34%)が重要視されているとのこと。

 

パンデミックショッピングによる影響

Bazaarvoice の調査結果は、現在の傾向が続いた場合の、いくつかの重要な、あるいは問題となりうる点を明らかにしている。Wold氏は、同社のデータから得られた最も重要な調査結果は、食料雑貨品業界における増加であると考えている。

 

3月のBazaarvoice Networkでは、食品、飲料、タバコの注文が85%増。また、調査対象者が「現時点で購入が増えている」と答えたカテゴリーの第1位は食料雑貨品で、回答者の76%を占めた。

 

Wold氏は、「食料雑貨品業界は、パンデミックが前は、eコマースの導入が遅れていたが、今では最前線でのビジネスを強いられている」と指摘する。

どのブランドが成功するのか、また、どのブランドが、迅速にイノベーションを生み出せなかったのか、そしてパンデミック収束後の時代に消費者の行動がどのように変化するのか(あるいは、変化しないのか)を見るのは、興味深いことだろう」と、同氏は語る。

 

※当記事は米国メディア「E-commerce Times」の4/14公開の記事を翻訳・補足したものです。