2023年にサービス終了・終了予告されたEC関連10サービスまとめ - うねり続けるEC業界の光と陰
そろそろ今年も終わりの足音が聞こえてきたが、2023年もEC業界は多くの新しい技術とサービスが市場を賑わせた。しかしその一方で、業界の荒波に揉まれ、ひっそりと終了していったサービスも少なくない。その中で、今回は2023年に終了したサービスおよび終了が予告されたサービスを10個ピックアップして紹介していく。
<参考>
2022年にサービス終了・終了予告されたEC関連10サービスまとめ - うねり続けるEC業界の光と陰
2021年にサービス終了・終了予告されたEC関連10サービスまとめ - うねり続けるEC業界の光と陰
2020年にサービス終了・終了予告されたEC関連10サービスまとめ - うねり続けるEC業界の光と陰
2019年にサービス終了・終了予告されたEC関連10サービスまとめ - うねり続けるEC業界の光と陰
2018年にサービス終了・終了予告されたEC関連10サービスまとめ - うねり続けるEC業界の光と陰
2017年にサービス終了・終了予告されたEC関連10サービスまとめ - うねり続けるEC業界の光と陰
2016年にサービス終了・終了予告されたEC関連10サービスまとめ - うねり続けるEC業界の光と陰
2015年にサービス終了・終了予告されたEC関連10サービスまとめ - うねり続けるEC業界の光と陰
オムニ7 2023/1/31終了
セブン&アイ・ホールディングスは、グループ横断のECサイト「オムニ7」を2023年1月31日に終了した。
オムニ7は、そごうや西武、イトーヨーカドー、アカチャンホンポ、ロフトなど、グループ内の商品を1つのECサイトで購入できる統合型通販サイトとして、2015年11月に当時、最高情報責任者(CIO)だった鈴木康弘氏の肝入りで始まった。ローンチ直後の2015年度の売上高は、EC経由での購入とネット検索後の店舗購入を合わせると1,418億円。当初はこの売上を2018年度に1兆円にし、3年間で取扱商品数を2倍の600万アイテムに増やす計画だったが、経営陣の刷新と業績の低迷によって叶うことはなかった。2021年度の売上高は、前年度比0.3%増の1,044億円。オムニ7の閉鎖に先立ち、グループ各社はそれぞれの通販サイトを立ち上げ、2022年6月30日以降はオムニ7のトップページからの商品検索もできなくなっている。なお、オムニ7時代に実施していたセブン-イレブン店舗での商品受け取りは、イトーヨーカドーとアカチャンホンポ以外の各社は引き続き行っている。
まるっとサポート!ネットショップ byGMO 2023/3/31終了
GMOコマース株式会社は、ECサイト「まるっとサポート!ネットショップ byGMO」を2023年3月31日に終了した。
GMOインターネットグループのGMOコマース株式会社が提供していた「まるっとサポート!ネットショップ byGMO」は、個人から法人まで幅広く利用可能なネットショップ作成サービスだ。このサービスは初期費用や月額利用料が無料で、機能制限のないフリープランからスタートし、事業規模やニーズに合わせて選択が可能である。また、担当のECアドバイザーが高度なサポートを提供するプレミアムプランも用意されている。閉鎖に至った理由は公式な発表はないが、「市場環境の変化や競合他社との差別化が図れない状況」や「利用者数の減少」などが考えられるのではないだろうか。
食べログモール 2023/3/31終了
株式会社カカクコムは、グルメ特化のECモールである「食べログモール」を2023年3月末に終了した。
食べログモールは、2020年6月からサービスを開始したグルメ特化型のECモールだ。新型コロナウイルスの拡大により、外食から内食へのシフトが進み、これに対応する形でカカクコムがECモールの運営に進出した。サービスは約300店舗で1,700商品以上を販売するなど、一定の規模まで拡大したが、出店する飲食店の中には、自社のブランドや商品を強化するためにECモールから離れる動きが見られたり、急速に変化する社会情勢による売り上げの伸び悩みなどが影響し、閉鎖される運びとなったのだろう。
GYAO! 2023/3/31終了
株式会社GYAOは、動画視聴サービスの「GYAO!」を2022年3月31日に終了した。
GYAO!は、USENが運営するGYAOとYahoo! JAPANが運営するYahoo!動画が2009年9月7日に統合されて誕生した、無料で映画やドラマ、アニメなどの動画を視聴することができるサービスだった。運営はYahoo!により行われ、専用アプリをダウンロードすることで、いつでもどこでも手軽にスマートフォンから動画を楽しむことができる。しかし競合するサービス「Tver」や「YouTube」との類似性、将来性の不透明感、経営資源の集中などが理由となり、2023年3月31日をもって「GYAO!」のサービスが終了することが発表された。今後は、2021年10月から提供が始まったLINE内のショート動画配信プラットフォーム「LINE VOOM」に注力していく方針とのこと。
atome 2023/4/1終了
Atome Japan株式会社は、後払い決済サービス「Atome」を2023年4月1日に終了した。
2022年7月6日に日本でサービスをスタートさせたAtomeは、シンガポールに本社を構える後払い販売プラットフォーム(BNPL)だ。このサービスでは、多岐にわたる加盟店の実店舗やオンラインストアで、即座に購入しても後で支払うことが可能であった。手数料は発生せず、分割払いも最大3回まで設定でき、アジア圏を中心に、日本を含む十ヵ国以上で3,000万人以上に利用されていた。しかし2023年4月1日に日本でのサービス提供を終了することが発表された。公式な発表はないが、「競合他社との差別化が難しい状況だったこと」や「日本でのクロスボーダー決済の需要が少なかったこと」が、撤退の理由として考えられるだろう。
shopleap 2023/9/27終了
B-Spaceは、自社ECサイトを開設できるサービスである「shopleap」を2023年9月27日に終了した。
2020年3月26日にデビューした「shopleap」は、Yahoo!ショッピングの店舗データを駆使して、独自のECサイトをオープンできるサービスだった。商品データや在庫情報は、Yahoo!ショッピングのデータを有効活用することができるため、Yahoo!ショッピングと同時に運営することも可能である。公式の発表には撤退理由に関する情報は含まれていなかったが、「独自ドメイン」を持つ自社サイトの需要が限られており、サービス提供の価値よりも維持コストの方が大きかったことが原因のひとつだろう。
アトディーネ 2023/9/30終了
ジャックス・ペイメント・ソリューションズ株式会社は後払い決済サービスである「アトディーネ」を2023年9月30日に終了した。
アトディーネは、2014年4月から提供されており、1万6,000以上の通販・EC事業者が活用しているサービスだった。このサービスでは、身近な場所のコンビニエンスストアや銀行などで、都合の良いタイミングで支払いが可能である。また、商品をネットショッピングで購入する際に後払いを選択すると、請求書が郵送され、14日以内に支払うことができる。撤退の理由について、「さまざまな要因が重なることにより当該事業の環境は大きく変化することとなった」とコメントしている。
シェアモル(旧ショッピン) 2023/10/31終了予定
シェアモル株式会社は、ソーシャルコマースサービス「シェアモル」を2023年10月31日に終了した。
「シェアモル」は、複数人でグループを組み、同じ商品を購入することでお得に商品を手に入れることができる日本初のシェア買いサービスであり、2019年9月にスタートした。取り扱い商品はマスクやスマホ用品、コスメなどの雑貨から、食材やグルメなどの日用品まで幅広くある。シェアモルの特徴は、アプリ内に備わったチャット機能で、他のユーザーと情報交換や共有ができる点だ。また、「シェアモルM&A」というAIを活用した売り手ファーストのM&A・事業承継の仲介サービスも提供されていた。サービス終了の理由は公式に言及されていないが、前日までに購入された商品は2023年11月1日から配送されている。
EPARKテイクアウト 2023/11/30終了予定
株式会社EPARKテイクアウトは、飲食のテイクアウトを行うことができるWebサイト「EPARKテイクアウト」を2023年11月30日に終了した。
「EPARKテイクアウト」は、お持ち帰り専用の検索・予約サイトで、2016年7月22日にサービスを開始した。このサイトでは、エリアや駅名、予算などを指定して、簡単にお気に入りのお店を見つけ、ネット予約ができるのが特長だ。さらに、2021年4月1日からは「betrendモバイルオーダー」と協力し、エリア内の駐車場を備えた344店舗で、スタッフが車まで商品を届けるサービスも提供していた。2022年2月7日からは、NTTドコモのスマホ決済サービス「d払い」アプリとも連携がスタートした。しかし、コロナの収束や競合他社の台頭が原因でサービス終了となった。
2023年にサービス終了したカスタマイズECサービス
カスタマイズECサービスも今年複数サービスが終了していたので紹介していく。
Canvath 2023/11/30終了
GMOペパボ株式会社は、オリジナルグッズ作成サービス「Canvath」を2023年11月30日に終了した。
Canvathは、2016年10月6日にスマホケースを販売する企業として、株式会社ベーシックとGrow株式会社が共同で運営を開始した。その後、2018年4月1日に事業がGMOぺパポ株式会社に譲渡され、2019年8月26日にはALSTYLE(アルスタイル)半袖Tシャツの販売も行っていた。2022年4月1日には、Shopifyアプリとの提携を終了する旨が発表された。このアプリは、ECサイト上でCanvathのオリジナルグッズを簡単に販売できる機能を提供していたが、一部の環境で不具合が生じ、そのため提携が終了となった。さらに2022年8月22日からは、原材料や物流費用の高騰に伴うコスト増に対応するため、一部商品の値上げを発表した。これらの事態を受け、事業の継続が難しいとの判断から、Canvathは撤退を決意したと考えられる。
フォトビー 2023/12/5終了
サッポロビール株式会社は、公式ネットショップである「フォトビー」を2023年12月5日に終了した。これもビールのラベルをカスタマイズできるカスタマイズECサービスだった。
フォトビーの前身として、オリジナルラベルビールをオーダーできる「わくわくブルワリー」というサービスが存在していた。しかし、2016年11月1日を境に、より時代にマッチした「手作りラベルビールを通して大切な思い出を共有し、人と人とのつながりを深めるサービス」という新しいコンセプトを掲げ、「フォトビー~Photo‚ Beer & Smiles~」としてリニューアルした。嬉しい体験が連鎖してリアルで広がっていくことを目指して、サービスを提供していた。わくわくブルワリーでは写真を使用してラベルビールを作ることが特徴だったが、フォトビーでは写真だけでなくデザインも楽しめるようになっていた。
うねり続けるEC業界の光と陰
今年も数多くのサービスが終了したが、コロナ禍の影響がまだ残っているものもあった。その中でも、EPARKテイクアウトや食べログモールと言った、食品サービスが撤退したのが印象的だ。これらのサービスは、新型コロナウイルスによる消費者が外食から内食へ変化したことを受け、順調に伸ばしていったが、コロナ禍が明けたことによる需要の減少や、ウーバーイーツや出前館などのライバル企業の台頭によりユーザーに魅力が認知されないまま撤退に至ったようだ。
動画配信サービスであるGYAOも今年で終了となっている。こちらも、コロナ禍でAmazonプライムビデオやYoutube、Tverなどの動画配信サービスが急激に伸びたことにより、サービスの認知を広げられることができなかったことが原因ではないだろうか。
乱立している後払い決済サービスにも淘汰の波がやってきた年でもあった。元来、後払い決済サービスは差別化が難しい業界の中で、過当競争気味な状態になっていたが、そこにPayPay後払いやメルペイスマート払いなど、元々のプラットフォームを活かした後払いサービスがここ数年で存在感を増してきた。そのような中で、Atomeやアトディーネはその荒波に飲まれていったと見ることができるだろう。
また、カスタマイズECサービスのような双方向性のあるサービスを通して、顧客はECサービスに「便利」だけでなく、「体験」も求めてきているフェーズに変化してきていた。しかし、その中でも環境の変化にうまく対応することができなかったCanvathやフォトビーはサービスを撤退することとなった。
コロナ禍を経て、右肩上がりに伸び続けてきたeコマース業界であるが、それだけ日々新しいサービスが誕生しており、時代に取り残されたサービスは終わりを迎えることになった。今後は、コロナ禍で需要の生まれたサービスをどのように他社と差別化を図り、認知を広げていくかが各サービスの課題となっていくだろう。今後もどのようなサービスが生まれ、終了していくのか引き続き注目していきたい。