【2017年まとめ】今年EC業界でチェックしておくべきトレンド5選と2018年のEC業界展望

 

2017年もあと僅か。今回はeコマースコンバージョンラボ恒例となった1年の振り返り記事となる。ここ2年くらい盛り上がってきた越境ECのトレンドも一段落し、今年は新しいトレンドや技術が比較的多く市場を賑わせた1年だった。EC業界を単独で捉えるのではなく、実店舗やビジネス全体と連携させて考えていき、そこに新しい技術を適用して成果を上げていく、という流れが着々と進んできたのではないだろうか。そのような環境の中でeコマースコンバージョンラボも多種多様な記事を今年もお送りしてきた。ニュース記事を除くと、今年52本目のこの記事では、2017年のEC業界のトレンドや出来事を振り返り、来る2018年の展望を考えていく。

 

 

2017年EC業界でチェックしておくべきトレンド5選

 

改めて今年の出来事を色々振り返ってみた。その中から、今年の1年のEC業界の5つのトレンドをまとめてみた。

2017年EC業界でチェックしておくべきトレンド5選

 

宅配クライシス

今年の3月7日の日経の報道に端を発した「宅配クライシス」。Amazonの宅配を一手に担っていたヤマト運輸の値上げ要望は、その後数カ月にわたって多くのEC事業者が大混乱に陥った“ショック”となった。政府関係者までもが閣議で言及するなど、EC業界の外にも大きく影響が波及。働き方改革がトレンドワードの上位に顔を出す一因を担ったと言っても過言ではないだろう。宅配便のサービス時間は見直され、Amazonは当日配達から撤退し、ヤマト運輸の配送料金はこの10月から正式に値上げされた。この問題はECの爆発的普及にラストワンマイルを受け持つ宅配サービスが追い付かず、宅配現場が疲弊していたことが大きな原因として挙げられている。配送料の値上げによって、宅配現場の労働環境の改善がされ、また次世代技術によって宅配の効率化が行われる日がのぞまれている。

 

<参考>

疲弊した世界に誇る繊細かつ高度な物流・宅配システムを救え - 今、EC業界としてやるべきこと

「運転手が足りない」が約6割! 宅配便値上げの背景に深刻な人手不足と高齢化

ネット通販の利用者は「配送サービスにはコストがかかるという意識を」、国交相が言及

日銀総裁がヤマト運輸の料金見直しに言及。コストに見合った対価を消費者は受け入れる?

ヤマト運輸のサービス見直しに石原経済再生相が言及「荷主に優越的地位がある印象」

政府はヤマト運輸の配送問題をどう考えているか。国交省大臣の見解は?

ヤマト運輸、宅急便の運賃値上げ・大口顧客の荷物引き受け量の抑制を正式発表

ヤマト運輸が宅急便サービスの内容を変更。時間帯指定「12時から14時」は廃止、「19時から21時」を新設

ヤマト運輸の運賃値上げは10/1実施、1個50円値引きのデジタル割など割引制度も用意

 

 

AI技術の浸透

EC業界に限らず今年は多くの業種でAIが実用化、サービス化された1年となった。今まではAIといっても若干アカデミックで、どのような効果がビジネスにもたらされるのか少しはっきりせず、サービスを導入しようにも非常に高額になるケースも多かった。しかしチャットボットによる会話型AIロボットを実装するサービスが増え、レコメンドエンジンなどにも実装され成果を創出。費用も廉価なものも登場し、EC業界ではAIが実装されているサービスも比較的増えてきた印象だ。しかし一方でAIの定義の曖昧さから、AIというには微妙なモノまでもAIを大々的に謳うケースも散見されるなど問題もあった。とはいえこの1年でAIは十分に市民権を得ることに成功したので、来年以降はAIが当たり前でそれを活用してどのように効果を上げていくか、というポイントに論点はシフトしていくのではないだろうか。

 

<参考>

チャットボットはECの未来にどのように影響を及ぼしていくのか - AIの進化と人間の暖かみの狭間で

AI活用調査、80%が実装済みだが、42%は更なる改善の余地有りと回答

【米国】AIがセールスとマーケティングにもたらす変革とは

チャットボットの普及で「会話型EC」が当たり前になる日は近い?

大日本印刷のECプラットフォーム、AIで商品レコメンドとキャンペーンオファーを実施

購買支援システム「ec コンシェル」に、人工知能を活用したバナー広告作成機能を追加

【欧州】KLM、メッセンジャーチャットボットでのチケット予約開始

ユニクロ、AIチャットボットが商品案内するコンシェルジュサービス「UNIQLO IQ」開始

【米国】Google社、音声アシスタントでのショッピングを可能にするGoogle Home発表

 

 

ライブ・動画コマース

中国では2年ほど前から熱狂的な人気を博している生放送動画コマース、いわゆるライブコマース。なかなか日本のカルチャーは中国と異なるので浸透は難しいのではないかという意見もあったが、今年に入り日本でも複数のサービスが開始され、爆発的流行前夜という雰囲気が漂ってきている。ただ、アーカイブ動画やライブの違いや、動画からどのように購買に紐付けるかなど、各社各様の取り組みを行っておりなかなか正攻法が見つからない状況だ。また、インフルエンサーへの興味・関心も日本は中国などの海外と比べると高くはない。ライブコマースが普及するかどうかは演者であるインフルエンサーがどのように日本で受け入れられていくのかとも関係がありそうだ。YouTubeやInstagramなどの大手SNSサービスはライブコマースに進出してきておらずそれら大手の動向次第では一気に普及が進む可能性もありそうだ。

 

<参考>

日本にも本格的に上陸してきたライブコマース(生放送動画コマース)の魅力と可能性

「動画」はECのマーケティングをどのように変えていくのか - 分散型動画 vs 生放送動画

メルカリ、アプリ内にライブ配信サービス「メルカリチャンネル」を開始

SHOPLIST、ライブ配信時にそのまま商品購入可能なSHOPLIST Liveを開始

【中国】Taobao生放送経由でのサイトアクセス率は50%超

最も購買行動に影響を与えた動画プラットフォームはYouTube

 

 

大規模物流センター

昨年後半から今年にかけて大規模な物流センター構築の動きが目立った。外部業者に頼るのではなく、自社の大規模物流センターを構築・拡大する動きは、Amazon、アスクル、ZOZO、SHOPLISTなど大手EC事業者を中心に行われた。背景にはECサイトのサービスレベルの向上がある。外部倉庫を利用するのではなく、自社物流センターを構築することで、配達スピードだけでなく、仕分け・梱包作業の効率化などEC物流にマッチしたニーズを自社で効率的に行う必要性が高まってきているのだ。また、梱包機などのテクノロジーの導入も進み、今後のEC業界を支えるインフラがしっかり育った1年だったと言えるのではないだろうか。

 

<参考>

Amazonが大阪に新しい物流拠点を展開

Amazon、藤井寺に続き八王子にも新しい物流拠点を展開

アスクル最大の物流拠点が関西に完成、2018年2月に稼働予定

ZOZOBASEを拡張し、2018年秋までに合計約250,000平方メートルに

CROOZがSHOPLIST専用の物流施設を新設

ヤマトグループが新梱包機を導入、生産性が約10倍に

 

 

ノールック買取

今年の6月28日にサービスを開始したものの、わずか16時間で想定を上回る査定が集中したため、査定を一時中止にしたCASH。BANK社が提供するこのノールック買取サービスは、貸金業や質屋の業法に則るのかあくまで古物商で突き進むのか、写真だけの与信でビジネスモデルは成り立つのか、など多くの議論がなされた。しかし、CASHはサービスの一部を見直し8月24日にサービスを再開。この一件で一気にノールック買取サービスは認知度を高め、11月27日にはメルカリもサービスを開始するなど、まさに旋風のごとくEC業界に現れた新業態となった。話題性もあるため、依然として連日サービスは賑わっている状態が続いているが、今後どのように市場に受け入れられて定着していくのか非常に興味深い。

 

<参考>

メルカリ、「メルカリNOW」で即時買取市場に参入 - 話題性で先行するCASHとの一騎打ちの様相に

メルカリNOW・CASHを始めとする即時買取サービスの認知度は6割超え

 

 

2018年のEC業界展望

 

2017年のニュースとトレンドを振り返ってきたが、来年はどんな年になるのだろうか。今年は多くの新しいキーワードが台頭した1年となったが、そんな流れの中で来年の動きを予想してみよう。

 

大手の異業種への進出

国内のEC関連のビッグプレイヤーでもトレンドの変化に対応することに四苦八苦しているのではないだろうか。自社が強みとしてきた事業領域は、全く異なる他の新規事業などで簡単に足元をすくわれかねない市場環境となってきているからだ。楽天も楽天市場以外にも主軸を見つけるべき動きを活発化し、メルカリも他事業への進出を虎視眈々と狙っている。LINEもここ数年その動きを繰り返している。拡大を狙う領域としては、上記に挙げたトレンドだけでなく、仮想通貨、音声・画像認識、ビッグデータ、物流、実店舗など多くの事業領域が考えられる。来年は大手の他事業への進出が多くなるのではないだろうか。

 

モール3つ巴時代に

長年国内の総合型ECモールは楽天市場の独壇場だった。楽天が市場だけの流通総額を公表しないため明確には分からないが、ここ2年程度はAmazonと同程度となっているか、後塵を拝している可能性もあるデータが公開された。更に今年に入り急激に勢いを増したYahoo!ショッピングの存在も侮れない。このような流れから国内の総合ECモールはこの3社の3つ巴の様相を呈すのではないだろうか。ZOZOなどの特化型モールは除き、その他の総合モールは淘汰が進む可能性もありそうだ。

 

アパレルEC領域の革新

EC業界の殻を破る大きな革新の多くはアパレルECから生まれてきている。その背景には、それほどオンラインで消費者がアパレルを選択するというハードルは高く、逆に事業者からすると乗り越えた先の見返りが大きいということを意味している。かつては返品自由などの制度改革から、最近では色・サイズを含めた店頭在庫との連動在庫管理など、その革新の領域は幅広い。11月22日に配布がスタートしたZOZOSUITや、再び盛り上がりの兆候を見せるファッションレンタルサービスなどに代表されるような、消費者が欲しいタイミングで、手の出しやすい価格で、自分のフィットするサイズ・コーディネートを手に入れることが出来る革新が進むのではないだろうか。

 

 

改めまして今年も1年間「eコマースコンバージョンラボ」にお付き合いいただき、誠にありがとうございました。皆様の多くの支えがあったことで、この1年も続けることが出来ました。心から御礼申し上げます。

来年もEC業界の動向やトレンドについての情報を発信し、業界の進むべき方向性や未来を考えていきたいと思いますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。

それでは良いお年をお迎えください!