ECサイトに必要な基礎知識、これからのニューノーマル時代をどう乗り越えていくべきか

 

ECサイトでの買い物が生活に浸透し、不況下にありながら成長を続けるEC業界は、コロナ禍による対面接客の抑制という背景もあり、企業と消費者の両方から再び注目を集めている。これまでは販売経路のひとつ程度に捉えられることも多かったECだが、需要と供給が高まり競争が激化する中、従来の認識のままでは生き残ることも難しいだろう。

これからECサイトを始めるにはどのような考え方をもって取り組むべきか、ニューノーマルを踏まえた視点を交えて、ECサイトの基礎から解説していく。

 

 

EC(eコマース)とは

 

EC(eコマース)とは「Electronic Commerce」の略で、日本語では電子商取引という。一言で表すなら「インターネット上で行われる売買」である。ECサイト、ネットショップ、オンラインストアなど様々な類語があるが、それらが意味するものの根本は概ね同じであり、用途や相手によって異なる表現が用いられている。

「eコマース」とは、インターネットなどのネットワークを介して契約や決済などを行う取引形態のことで、インターネットでものを売買することの総称である。

ECやeコマースは主に企業が、ネットショップやオンラインストアは主に一般の消費者が用いるといった区分はあるが、インターネット上の売買を総称する用語として広義に解釈しておくと理解しやすいだろう。

 

EC(eコマース)の詳しい解説はこちら

【2022年最新】「eコマース(EC)」とは? 今さら聞けないコマース基本用語
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ECサイトとは

 

ECサイトとは、インターネット上で売買ができるWebサイトのことだ。一般の消費者が、ネットショップやオンラインストアなどと呼ぶものである。ECサイトを略してECと呼ぶケースも稀にあるが、ECサイトと呼称する場合はWebサイトに限定していると考えるべきだろう。

さらにECサイトには、BtoBやBtoC、CtoCなどの分類がある。BtoB(Business to Business)は企業間取引、BtoC(Business to Customer)は企業が一般の消費者と取引するもの、CtoC(Customer to Customer)であればフリマアプリのような消費者同士の取引を指す。第三者の仲介を通さない直販を表すDtoC(Direct to Consumer)などの例外もあるが、原則として「誰と誰が取引するかを表したもの」と覚えておこう。

 

 

ECの市場規模

 

ここ20年ほどで急速に発展し、右肩上がりの成長を続けているEC市場。経済産業省の通商白書2020では、次のように書かれている。

新型コロナウイルスの感染拡大後にはECやオンラインでの映像提供サービスなどの対面の活動を必ずしも必要としないサービスは需要の拡大が見られている。

コロナショックで世界経済が落ち込む中、対面の必要がほぼなくインターネット上で売買できるECは、ニューノーマルにも対応できることから手堅い成長を続けているのだ。

また、2019年5月時点での国内のECサイトの総稼動店舗数は、270万9,043店舗にものぼる。スマートフォンやPCなどのインターネット端末が日常生活になくてはならないものとして浸透し、モノを買う手段や経路をユーザーが自由に選択できるようになっている今、EC事業が持つ将来性には改めて注目すべきといえるだろう。

 

国内ECサイトの総稼働店舗数と内訳はこちら

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ECサイトと実店舗の違い

 

ECと実店舗は、メリット・デメリットをお互いに補完しあうような関係にある。

まずECの基本的なメリットとして、「立地に左右されない」「いつでも注文を受けられる」「初期費用が抑えられる」などが挙げられる。原則としてECサイト運営のほとんどをインターネット上で行えるので、従業員の感染リスクを減らせる点も大きい。また、配送サービスに対応した実店舗もあるためECサイト限定とは言い切れないが、かさばる商品を持ち帰る必要がないのもECが持つ利点のひとつだ。

デメリットとしては、「商品を手に取って確認することができない」「店員の接客による商品説明がない」といったものがある。後者はWeb接客ツールである程度の改善が見込めるが、前者についてはECの永遠のテーマであるため、ECサイトにおいては商品写真や商品説明に特に注力する必要があるだろう。

 

 

企業視点・消費者視点で見るECのメリット

 

ECと実店舗の違いに続いて、企業と消費者それぞれの視点からもメリットを見ていく。

企業サイドのメリットは先の項目でも挙げた「初期費用が抑えられる」のほか、「国内・世界に向けて販売できる」「顧客データを最大限に活用できる」などが代表的である。また、DX(デジタルトランスフォーメーション)に対応しやすく、将来性が見込める点も評価できるだろう。

一方消費者サイドから見たメリットは、「時間・場所を問わず買い物ができる」「商品を持ち帰る必要がない」「商品や価格を手軽に吟味できる」などが挙げられる。外出や対面の必要がほぼなく商品が自宅まで配送される点は、消費者の利便性と新型コロナウイルス対策を兼ねた大きな利点といえるだろう。

 

 

ECサイトの形態

 

ECサイトには、大きく分けて「ショッピングモール型」と「自社サイト型」の2種類がある。

ショッピングモール型はその名の通り、インターネット上の商店街の一角を借りて出店する形態を指す。既存のモールに出店するため自社サイト型と比べ初期費用が安く済み、中小企業でも気軽に出店できるが、その分競合も多い。ただ出店しただけでは埋もれてしまいやすいため、モールであっても集客に力を入れる必要がある点は踏まえておこう。

一方自社サイト型はモールに属さず、インターネット上に独立した店舗を開店する形態を指す。コストがかかるため一定以上の規模を持つ企業に限られるものの、デザインや設計などの自由度が高く、メーカーやブランドの独自性をアピールできるのが特徴だ。

これらは消費者視点ではあまり意識されることはないが、企業視点においてはこの選択が非常に重要なものとなるため、覚えておきたい。

 

ECサイトの2大形態について詳しくはこちら

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ECサイトの構築方法

 

ECサイトの構築は、主に自社サイト型のときに意識する要素である。

自社サイト型を構築する際に使用するプラットフォームには、0からシステムを構築する「フルスクラッチ」、価格と自由度のバランスに優れた「オープンソース」、ECサイト構築に必要な機能がセットになった「CMSパッケージ」、普及率が高く使い勝手のいい「ショッピングカートASP」、手軽さに特化した無料の「インスタントEC」の5種類がある。

一方ショッピングモール型のプラットフォームには、Amazonや楽天をはじめとする「モール」、メルカリやヤフオクなど消費者間取引に特化した「CtoCモール」があり、あらかじめ用意されたシステムとデザインの範囲内でECサイトを作っていくことになる。ショッピングモール型については、構築するというよりも「出店する」という表現の方が適切だろう。

これら7種類のプラットフォームは以下の記事で詳しく解説しているので、必要に応じて参考にしてほしい。

 

ECサイトのプラットフォームについて詳しくはこちら

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ECサイトに必要な機能

 

ECサイトで売買を行うためには、商品を受注するための「ショッピングカート(買い物かご)」、金銭的な処理を行う「決済機能」、顧客の個人情報を守る「セキュリティ」、人為的なミスを減らし業務を効率化する「受注システム」などの機能が必要になる。しかし、これらの機能はEC構築サービスであれば最低限揃っているため、フルスクラッチで自社構築するのでない限り、あまり意識することはないと思われる。

気軽に参入できる反面競合も多いECサイトでは、商品情報を適切にPRすることはもちろん、顧客の利便性向上のための機能を充実させたい。具体的には、注文状況を確認できる「マイページ機能」、メルマガやセール・キャンペーンを知らせる「メール配信機能」、おすすめ商品を表示する「レコメンド機能」、顧客の疑問を解決するための「FAQページ」などが挙げられる。ショッピングモール型ではこれらの機能をほぼデフォルトで使用できるので、商品やターゲットの特性に合わせて活用したい。

 

ECサイト構築サービスの一覧はこちら

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ECサイト運営の2大業務

 

ECサイトの運営は、「フロントエンド業務」と「バックエンド業務」に大別される。これらはもともとWebシステム開発の仕事内容を示す用語であったが、eコマースにおいても似た意味合いで使用されている。

フロントエンド業務には、主に広告施策や集客を行う「マーケティング(プロモーション)」と、商品の仕入れや在庫を管理する「マーチャンダイジング」があり、ECサイトのデザインやコンセプトの設定、商品開発などもここに含まれる。

一方バックエンド業務には、ECサイトに商品の詳細情報を登録する「商品登録業務」、注文から発送の流れを担う「受注管理」、売上などの数値管理から顧客のアフターフォローまで広く行う「総合管理」などがあり、専門性や正確性が要求されるのが特徴だ。

このように非常に多くの業務がつきまとうため、必要に応じてバックエンド業務をアウトソースし、業務効率化を図る企業は多い。ECにおいては売上を伸ばすためのマーケティングが特に重視される傾向にあるので、自社で行うべき業務とそうでない業務を取捨選択することは、激化した競争を生き抜くためにも有効であるといえよう。

 

ECサイトの運営業務について詳しくはこちら

ECサイト運営業務を5つに大別して整理してみた - 事業者が注力すべき業務と、効率化・アウトソースすべき業務
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ECサイトの集客方法

 

フロントエンド業務のひとつであるECサイトの集客は、Web広告やSEO対策、SNS自社メディアなどを用いて行われる。中でも、主力となるのはWeb広告である。一言でWeb広告と言っても様々な種類があり、Googleなどの検索結果に表示されるリスティング広告、Webサイトやアプリで表示されるディスプレイ広告(バナー広告)、FacebookやTwitterなどで表示されるSNS広告、閲覧・訪問履歴のあるユーザーに再度アプローチできるリマーケティング広告などが代表的だ。

また、上記のようなPUSH型ではなく、PULL型の手法であるコンテンツマーケティングが活用されることも多い。

コンテンツマーケティングとは良質で顧客のニーズを満たし悩みを解決するコンテンツをサイト内で展開することで、検索エンジン経由での集客効果を高めるマーケティング手法である。

コンテンツマーケティングについては以下の記事で詳しく解説しているので、併せて参照してほしい。

 

コンテンツマーケティングの基礎と事例はこちら

ECサイトでのコンテンツマーケティング成功事例厳選4選から学べること
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ECサイトを成功させるためのポイントと事例

 

これからのECサイトでは、これまで以上に業務の効率化と顧客満足度を追求する必要がある。

ルーティンワークがネックとなるECで業務効率化を図るには、バックエンド業務をアウトソースするほか、マーケティングオートメーションツールを導入するのも有効だろう。

マーケティングオートメーション(以下MA)とは、企業のマーケティング活動においてこれまで人の手によって繰り返し行っていた定型的な業務や、人手では膨大なコストと時間がかかってしまう複雑な処理、大量の作業を自動化し、効率を高める仕組みのことを言う。

施策の自動化とマーケティング業務の最適化を同時に行える点がメリットだが、使いこなすにはいくつかの要点を押さえる必要がある。詳しくは以下の記事で解説しているので、参考にしてほしい。

 

ECサイトでMAツールを活用するための基礎はこちら

マーケティングオートメーションをECサイト運用で活用するために何を注意するべきか
マーケティングオートメーションというキーワードが脚光を浴びるようになってから4年以上が経っている。当初はその概念の斬新さが注目されたが、今では多くの企業が導入し、その活用を日常的に行い、成果の出し方に頭を悩ませているフェーズに来ている。そこで今回は...

 

インターネット上で売買が完結するECサイトでは、顧客満足度向上のためにWeb接客ツールを活用するケースも多い。AIを搭載したWeb接客ツールであれば施策の最適化も同時に行えるため、PDCAサイクルを効率よく回すことができる。

 

Web接客ツールの成功事例はこちら

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TV通販で革新的な健康グッズを次々と世の中に送り出しているショップジャパン。そのショップジャパンに今年の1月にWeb接客ツール「ecコンシェル」が導入された。今回は導入に至った背景から、ECサイトへのWeb接客ツール導入の成果の出し方を見ていく。

 

ECサイトを成功に導くには、消費者がストレスを感じるポイントも押さえておく必要がある。逆説的だが、各社が商品PRに力を入れるあまり情報過多になり、その煩雑さから買い物欲が削がれてしまうことも珍しくない。リアルな顧客が求める利便性とは何なのか、今一度確認しておくとよいだろう。

 

消費者が不便さを感じるポイントについて詳しくはこちら

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ECの未来はテクノロジーが鍵を握る

 

新型コロナウイルス感染症がビジネスや生活様式に変化をもたらし、ECサイトの持つ可能性が再評価されるようになった。しかし、いくらニューノーマルに対応できるとはいえ、eコマースの市場は非常に大きい。そんな中で売上を上げるためには、基礎を踏まえたうえで先見の明をもって取り組む、柔軟な姿勢が重要になってくるのだ。

度合いに差はあるものの、昨今のECにおいて、業務効率化や施策の最適化は行われて当然のものとなっている。ニューノーマルの到来が追い風となり、さらに革命的なイノベーションがいつか市場を席捲するであろうことも想像に難くない。常にアンテナを張り巡らせ、新たな機能を検討しいち早く導入するのは、現実的かつ有効な一歩となりうるだろう。

この記事が、これからECサイトを始める方の参考になれば幸いである。

 

ECの未来とイノベーションについてはこちら

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