TV通販で革新的な健康グッズを次々と世の中に送り出しているショップジャパン。
ショップジャパンでは、以前よりWeb接客ツールが利用されていたが、今年の1月からWeb接客ツール「ecコンシェル」が導入された。今回は導入に至った背景から、
※今回のインタビューはショップジャパンのECサイトへWeb接客ツール「ecコンシェル」を導入したNTTドコモ社の協力で実施した。ecコンシェルは2016年6月にサービスを開始し、2017年6月現在で、業界最多の2,500社以上が導入している。人工知能を活用し、CVR改善の精度とスピードに特化したWeb接客機能で、一気に市場を席巻したWeb接客ツールだ。
ショップジャパンのサイト運用経緯
ショップジャパンはオークローンマーケティングが20年以上にわたって運営しているテレビ通販。そのECサイトの歴史も非常に古く、こちらも20年以上に渡って運営を続けている。現在では、自社サイトだけではなく、楽天、Yahooショッピング、dショッピング、Amazonの4モールにも店舗展開を行っている。
▲株式会社オークローンマーケティングEコマース本部 マネージャー 前田 智美氏
ショップジャパンといえば「ビリーズブートキャンプ」や「ワンダーコア」等、大ヒットしたフィットネス系商品を想起する人も多いだろう。同社はフィットネス系商品の他に、キッチン用品・寝具・掃除機・DIY用品などの日用品も幅広く取り扱っている。また、購入し商品到着後39日以内であれば商品使用後であっても返品可能な「つかって納得保証」に加え、24時間365日対応している電話サポートなどユーザー目線のサービスに強みを持っている。
サイトに訪問するユーザーの特徴は、テレビ番組で興味を持ち、「この商品を買いたい」という、明確な目的を持ちECサイトにアクセスする人が多いそうだ。そのため、最近では、長年テレビショッピングを続けてきたノウハウを活用し、ECサイトでも積極的に動画を用いている。テレビで公開しなかった情報や付属品の使い方のレクチャーなどを動画にすることで、Web上でユーザーに対してより深い情報提供を行っている。
今までのWeb接客の課題と、運用改善に向けたトライアル
ショップジャパンはecコンシェル導入前も約1年間にわたり他のWeb接客ツールを利用していた。しかしそのツールを十分に使いこなせていなかったため、サイトに訪れたユーザー全員に同じクーポン出す、という程度の使い方だった。
ecコンシェルを導入するにあたってはまずは1ヶ月間トライアルを実施。旧ツールと同時並行で利用しながら、十分に使いこなせるかどうか、ecコンシェルの施策が売上アップに直接影響するかどうかについて検証期間を設けた。
トライアルの内容は、キャンペーンページを対象にecコンシェルを導入したパターンと、していないパターンでのABテスト。クーポンによる割引施策は行わずに、ユーザーの動きを分析しサイト訪問から購買に至るまでのシナリオを作成、それに沿ってユーザーを誘導する、といった接客シナリオを実施した。
▲トライアル実施時の施策事例
シナリオ作成についてはecコンシェル担当者による支援もあり、比較的簡単に作成することができた。そして施策後、商品によってはCVR(コンバージョン率)が2倍となり、
また、同社は「ユーザー1アクセスに対する売上」という指標をKPIの1つとしており、この指標が200%程度上昇するなどの効果が出たため、正式にecコンシェルの導入を決定した。
ecコンシェル導入の成果
ecコンシェル導入の成果は大きく分けて2点に集約されるという。1つ目は管理画面の使いやすさ。マニュアルを見なくても直感的に誰でも操作ができる画面構成となっているため、施策を実行するための担当者の時間を圧倒的に削減できることは大きな成果だ。そして、その時間を短縮できたことで、PDCAサイクルを簡単に回すことができるようになり、数多くの施策をどんどん実行することができるようになったという。
2つ目は、ある程度施策を放置していても効果が下がらずにアップしていく点だ。同時に幾つもの施策を走らせることができるだけではなく、ecコンシェルはABテストを行い効果の高かった施策だけを残し、悪かった施策は徐々に実行されなくなる「AI」を搭載している。AIが複数の接客シナリオを自動でテストし、検証、改善するため、使い込むほど効率がアップしていくのだ。それらシナリオの成果も管理画面で分かりやすく表現されており使
▲ecコンシェル管理画面(イメージ)
また、現在ではecコンシェル活用のためのコンサルティングを受けており、担当者と対面だけでなく、メールや電話などで細かくフォローしてくれるという。例えばユーザーの購買までのシナリオをecコンシェル担当者に相談すると、ターゲット毎に20パターンほどのシナリオを提案してくれたとのこと。アクセスデータをもとにショップジャパンにFITする最適なシナリオの検討も行ってもらえるようだ。
そのような取り組みの中で、想定外のクリエイティブの反応が良くなるケースがあったという。例えば、特価セール等の「価格に関わるクリエイティブ」が良いと考えていたところ、実は「サポートや返品保証のクリエイティブ」が効くということがあった。このように、複数のクリエイティブでPDCAを回すことで、売上をさらに伸ばす切り口を発見できることもあるという。
ショップジャパンが考える今後
今後注力する施策はOne to Oneマーケティングだ。今回のecコンシェル導入もその一部で、今後は検索キーワードや、閲覧・訪問履歴などより詳細なセグメントを対象に接客を行い、顧客のニーズに寄り添ったコミュニケーションを行っていきたいそうだ。その結果、ユーザーにより快適に利用できるようなECサイトを目指していく。
▲ecコンシェルを導入・コンサルティングを担当しているNTTドコモ社とオークローンマーケティング前田氏
ショップジャパンの事例から分かる、失敗するWeb接客と成功するWeb接客の違いは?
今や市場に30近い種類のサービスが溢れるWeb接客ツール。導入している店舗数もうなぎのぼりだ。しかし多くの店舗において施策をほとんど試しておらず従来のショップジャパンのように、導入したが利用はほとんどしていない、というケースも多いだろう。また、その施策も時間経過と共に効果が下がってくるのが一般的だ。しかしショップジャパンはAIを活用し運用を効率化したことで、多くの施策を短時間で実施することに成功した。つまり、PDCAサイクルの “数”が違うのだ。
また、ecコンシェルは直感的な操作で簡単にPDCAを回すことができるツールであるが、その効果を最大化させるためには、ショップ自身が課題感をしっかり把握している必要がある。仮説をより多く出せるかどうかが重要となるだろう。AIが搭載されていてもシナリオ設計や課題についての検討を行うのはどうしてもEC事業者側のタスクとなってしまう。そこが今回のケースでは非常にスムーズに出てきたために、大きな成果に繋がったといえよう。
Web接客ツールがEC市場に登場して約2年半。様々なECサイトに導入されており、Web接客ツールを導入することは当たり前になってきている。一方で導入したのみで使いこなせていない企業が多いことも事実である。ツールの性能は勿論、どれだけうまく活用してユーザーに快適に買い物をしてもらえるかを考え、実行することがさらに重要になっていくのではないだろうか。
<参考>
勝ち組が明確になってきたWeb接客ツール - レッドオーシャンを勝ち抜くサービスとその強み