コラムニストJames Green氏が実店舗やブランドの生き残りをかけた戦略に与える影響について語る。
かつて、実店舗は人々の生活の中心だった。家族で映画館へ行き、若者は友達同氏で連れ合い、そこには食料品から衣服までのあらゆるものを購入する場所がたくさんあった。米国のSears、Macy’sやBest Buyのような百貨店や量販店が、物を集めるアグリゲーターとしてブランド品を扱っていた。
しかし小売業者にとって現在の事態は大きく異なる。現在の実店舗ブランドは、三方面からの大規模な攻撃を受けている。
エンターテインメントを家で楽しむ
映画館の観客が減少している。2016年9月、米国のビジネス、技術ニュースの専門ウェブサイトBusiness Insider社は、売上高は前年度と同率であるが映画館へ行く観客は3.5%低下したと指摘。人々がエンターテインメントを観ないという訳ではなく、自宅で多く楽しんでいるのだ。そのため、映画館をモールの中心テナントにするのは難しい。小売店への影響としてはモールを訪れる人が少なくなることが挙げられる。
自社ブランドが大好き
ブランドはますます消費者へ直接販売している。これは数年前、AppleとDisney Storeがこの傾向を開拓したのが始まりだ。今日ではより多くのブランドが独自のショップを持つため、量販店を通じて販売しなくなった。ファッション小売業の成功はスペインのZARAや日本のユニクロでありMacy’sやNordstromではない。もし店舗を持つには小さすぎるファッション小売店の場合は、オンラインで直接販売する。アパレルのAmerican Giantは典型的な例である。
直販のチャネルを開設したブランドは、販売およびブランドロイヤルティのメリットを享受している。米国のスポーツ関連用品企業Nikeやスイスの食品・飲料会社Nestleのような多様な企業は投資家の声をもとにこれらの戦略を始めた。Nestleの最高財務責任者Francois-Xavier Roger氏はEC売上高を2012年の2.9%から2017年の5%に引き上げたことで直販の成功を示した。
量販店での販売では低利益率が問題であった。しかし、ブランド自らが製品を所有し販売すればマージンは高い。この業界の画期的な変化は、ブランドの店舗数と、ブランドと消費者の関係性の双方を劇的に変えた。ここでの小売業者への影響は、モールを訪れる人が少なくなる。また、量販店とは対照的に、店舗は小規模化しブランド中心になるということである。
利便性は常に勝る
誰しも利便性を求めるものだ。米大手ECサイトAmazonはAmazon Primeで無料配送を実施。さらに商品が届くまでの時間に無料の映画を観ることができるとなると、果たしてモールへ行く意味はあるだろうか。
現在米国の全家庭の40%以上がAmazon Primeに加入しており、会員は高所得世帯に集中。彼らはモールを生かし続けている人たちである。小売業者への影響は、実店舗で購入する人が少なくなることである。
<参考>
【米国】Amazon、Walmartに続き生活保護受給者に対しAmazon Prime会員料を値下げ
実店舗からECへの移行
これらのもたらす結末は何か。2017年、3,000以上の店舗が閉鎖を予定している。ECに精通していないと思われる多くのブランドが危機に瀕しており、Sears、Macy’s、家電量販店Radio Shackのような大規模小売店も含まれる。これらの閉鎖は実店舗で買ったり消費したりしていた商品の売り上げに直接関係している。
<参考>
最新の政府統計によると、オンライン販売は総売り上げの約10%に過ぎないが、この割合は本来の数字を過小評価されている。たとえば、これらの数字にはガソリン販売(オンラインで販売されたことのない製品)が含まれる。ガソリンを含めることは、エンターテインメントや衣料品の様なオンライン販売の主要カテゴリーを歪ませる。
現在、Amazonが小売業界をリードしていることは確かだ。しかし、オンライン販売の働きについてのインスピレーションのために、食品配送サービスGrubhubや旅行業界全体に目を向けてほしい。
量販店になることは可能だが、それらのうち1つか2つのブランドしかサポートしない傾向にある。Amazonに小売店を持っていれば、旅行業者のOrbitz、Expedia、Priceline、Kayak、食品配送のGrubhubなど複数のブランドを集めた場合、そのカテゴリーで真の勝者になれるだろうか。
自社ブランドを持っている場合、自分のブランドに重点を置き、他のブランドを不安にさせるのは簡単だ。次の企業リストの共通点はお分かりだろうか。Amazon、Apple、Walmart、Staples、Home Depot、Netflix。ECおよびコンテンツ管理システム会社Trellisによると、これらは最も成功したEC企業のトップ10に入る企業で、二桁のEC成長率を示している。
新しい世界で生き残るためには、オンライン販売の成長を確実にする計画が必要である。
小売業界でのビジネスに困惑するのは、顧客を取り巻く標準的な商習慣と販売方法が崩壊しつつあるからだ。25年前の店舗モデルは、小売店で確認した商品をオンラインショップで安く購入する現在の「ショールーミング」には機能しない。
実店舗からECへ移行する方法を理解することは重要だ。一旦変えてしまえば、全く新しい世界で自分のブランドを売り上げる戦略と技術を持てるのである。
※当記事は米国メディア「Marketing Land」の6/12公開の記事を翻訳・補足したものです。