米国のベンチャーキャピタルKleiner Perkins社のベンチャーキャピタリストMary Meeker氏は2017年5月31日(水)、年次のInternet Trends Reportを発表した。

このレポートは全部で355ものPPTスライドから成り、メディアやヘルスケアから中国やインドまでオンラインの傾向を幅広くカバーしている。ここでは小売やECの主な動向を見ていくことにする。

 

AmazonなどのECの成長につれて実店舗は衰退

小売実店舗チェーンに深刻なダメージを与えているAmazonの強力な影響力を提示。2017年の世界有数のプライベートバンクCredit Suisseによると「店舗の閉鎖はここ20年の記録を破る可能性がある」(スライド72)。この報告書によれば2017年には8,600以上の店舗が閉鎖される見込みだ。「2017年の第1四半期だけで、年初来の店舗閉鎖はすでに2008年を上回っている」とのこと。Credit Suisseによると、米国の百貨店、Macy’sJ.C.Penney、アパレルのBebe、カナダの事務用品サプライチェーンStaplesなど約10社が店舗閉鎖を発表しているという。

一方オンライン販売は2016年に再び増加し、前年比で15%増加した(スライド76)。米国における宅配数は過去6年間で着実に増加しており、2016年には前年比で9%増加している(スライド65)。

 

オンライン市場に追いつくため注力するWalmart

過去の投資にもかかわらず、オンライン市場で精彩を欠いていた世界最大のスーパーマーケットチェーンWalmartは、この1年でECの取り組みを急速に加速した。2016年8月にJet.com(米国)を、今年に入ってShoebuy(米国)、JD.com(中国)、Moosejaw(米国)、Modcloth.com(米国)など次々にECサイトの買収や投資を行っている。WalmartのEC収入は前四半期比で63%増加した(スライド74)。

 

モバイル情報に基づく新しい小売店

小売店はまだ死んではいない。進化しているのだ。Meeker氏は米国のアイウェア販売会社Warby Parkerをポイントに挙げている(スライド73)。また住宅リフォームと生活家電チェーンLowe’s社とGoogleのAR(拡張現実)実験では、消費者が店内で商品を探す助けとなっており(スライド70)、Amazonはモバイル対応の消費者のニーズと期待に答えるため、小売が進化する例としてセルフレジの小売店舗をオープンした(スライド72)。

 

小売業者はオンライン/オフライン双方のフィードバックループを利用

オンライン、オフライン双方の商業体験の他の例としては、米国のアパレルMM.LaFleurが挙げられる。MM.LaFleurは、オンラインおよび店頭で個人的な買い物アドバイスを提供し(スライド63)、その情報をEC業務にフィードバックする。また米国のシャツ販売企業UNTUCKitは、ブランド経験にオンラインとオフラインのフィードバックを取り入れている(スライド60)。

 

ますます注目される位置情報に基づく広告

米国のSNSサービスFoursquare(スライド28)が提供するGoogle(スライド25)、NextdoorxAd(スライド29)、自動車配車サイトUberのアプリ内広告は、広告配信の成果を追跡し、いかにしてオンライン/オフラインコマース間のダイナミズムを変化させることができたかのを示している。Googleは世界中で50億以上の店舗訪問を追跡し、つい先週には、広告クリックを物理的な取引に結び付ける店舗購入追跡ソリューションを紹介したばかりだ。

詳しくはレポートへ。デジタル広告についての記述はスライド10から。

 

※当記事は米国メディア「Marketing Land」の6/1公開の記事を翻訳・補足したものです。