消費者は自身のニーズに合わせて購買戦術を変えている。価格の比較を徹底し、衝動買いに走らないよう慎重に取り組んだり、購入を意図的に延期したりするなど、手頃な価格であることを優先し、必需品をよりお得に手に入れようと戦っているのだ。

 

今年も景気の先行きが不透明ななか、ブランドは単に割引を提供するだけでなく、消費者とのつながりを築く必要がある。Salsify(プロダクトエクスペリエンス管理プラットフォームを提供する米国企業)が最近発表した2024 Consumer Researchによると、ブランドはまた、優れた商品体験を提供して買い物客を真正面から魅了し、環境に配慮した取り組みを行う必要があるという。

 

2023年の堅調な支出にもかかわらず、ブランドメーカーや流通業者、小売業者が今年のデジタルシェルフ(消費者が商品の検索や購入の際に接する、小売業とのデジタルなタッチポイント)で勝利するために直面する、困難な戦いがこのレポートで明らかになった。

 

SalsifyのリサーチディレクターDom Scarlett氏によると、消費者の信条はマインドフルなショッピングを中心としており、あらゆるブランドとのインタラクションが魅力的で、常に優れたものであることの重要性を強調しているという。

 

「買い物客の購買に影響を与えるには本物であることが重要な焦点となっている。高品質な商品画像やコンテンツと並んで、関連性のあるつながりが価格設定や値引きと同じくらい重要であることを認識している」と、同氏は語る。

 

Salsifyのレポートにおける重要な発見

Salsifyが「2024 Consumer Research」レポートで報告したように、買い物客の39%は予算に見合った選択肢を優先し、35%は必需品に重点を置き、31%は価格比較を強化し、26%は衝動買いに慎重に取り組み、22%は意図的に購入を延期している。これらの新しい購買傾向は、消費者のこれまでの買い物習慣とは大きく異なっている。

 

「買い物客は引き続き、利便性と家計の責任感に駆り立てられている。そのため、商品の発見から検討、意思決定に至るまで、eコマースは購買ジャーニーにとってより本質的なものとなる」と、Scarlett氏は述べる。「回答者の65%は、利便性と価格の両方の理由から、店舗での購入よりもオンラインでの購入を好んでいる」。

 

ブランドにとってのスイートスポットは「ゴルディロックスゾーン(最適な中間地点)」であり、半数近く(49%)の買い物客が、オンラインと店舗での買い物を完璧に組み合わせたいというゴルディロックスの願い(イギリスの童話『3匹のくま(the Three Bears)』に登場する女の子ゴルディロックスが、適温のスープなど、ちょうどよい状態のものを求めたことに由来)を共有している。消費者は今、オムニチャネルショッピングを取り入れることで、相反するものの中間点をナビゲートしている。かなりの割合の消費者が、店頭でのリサーチにスマートフォンを利用しており、4分の1近くが実店舗の通路にいる間にオンライン購入を完了している。

 

研究者によると、このゴルディロックスゾーンは、オンラインの利便性と店舗内での没入感を融合させたものであり、ブランドは、買い物客がどこに行こうとも、購買意欲がある消費者を獲得できるシームレスな体験を提供する必要性があることを強調しているという。49%の買い物客がこのバランスを好む一方で、29%はオンラインショッピングに傾倒しており、実店舗を好むとした22%を上回っている。

 

買い物客は動的な商品ページを切望している

もうひとつの重要な購買の変化は、商品の詳細に対して買い物客が抱く期待感である。米国と英国の2,700人のオンライン買物客を対象とした調査では、回答者の78%が、画像や説明文のあるアクション満載の商品ページを求めていると回答した。

 

調査によると、買い物客は購入に先立ち、商品の全体像を把握することを求め、高品質なビジュアル、動画による商品デモ、360度ビューなど、「買うか、やめるか」を決める要素を重視しているという。

 

これらをすべて組み合わせると、いつでもどこでも買い物ができる利便性とともに、商品を手に取るのとほぼ同等の体験が得られる。このようなコンテンツに対する期待が満たされなかった場合、買い物客の45%は詳細が不正確だったとの理由で商品を返品している。

 

「57%もの買い物客が、実店舗で新しい商品を発見することを楽しんでいることから、買い物客が外出して買い物をしたとしても、54%は実店舗でスマートフォンを使って詳細情報を検索したことがある。さらに、買い物客の48%は、オンラインでの購入前に実店舗に行って商品をチェックする『ショールーミング』に罪悪感を抱いている」と、Scarlett氏は述べる。

 

買い物客は実店舗で商品をチェックできるとは限らない。しかし、消費者はデジタルな販売棚にある商品を「実際に」見るのが好きなのだ、と同氏は付け加える。

 

同レポートによると、消費者は、商品詳細ページ(PDP)に価格と割引(79%)、商品画像(78%)、商品説明(78%)、顧客の評価とレビュー(72%)が明確に表示されることを「非常に重要」または「非常に重要」であると考えているという。

 

環境保護への取り組みが定着

買い物客は 、「グリーンイノベーション」を強く求めるようになっている。研究者が回答者に、どのようなブランドの倫理感や持続可能性に関する取り組みが心に響くかを尋ねたところ、最も多かった回答は「環境に配慮したパッケージング(34%)」、次いで「公正な労働慣行(27%)」、「エシカルソーシング(相手企業や国の環境に過大な負荷をかけない倫理的な調達、23%)」だった。

 

「これらの回答を踏まえると、グリーンイノベーションに対する買い物客の関心のほとんどは、商品がすでに消費者の手元に届いた段階で生じていることになる。おそらく、環境に配慮したパッケージングによってブランドと消費者の間の共同責任が強調されるため、買い物客はそれに対して肯定的な感情を抱くのだろう」と、Scarlett氏は示唆する。

 

同氏は、消費者が 「もちろん、あなたの商品を買うが、私が廃棄するものによって生じる影響をいかに減らすことができるのか」と言っているようなものだと、この新しい態度を例えている。

 

商品の仕入れ先や所有権も、買い物客の主たる関心事である。Scarlett氏によると、彼らは商品がどのように、誰によって、どのような材料で生産されたかに注意を払っており、潜在的にデリケートな生態系の保護はもちろんのこと、複雑な人間関係や人間と地球との関係を強調しているという。

 

「商品を手に入れることは、もはや買い物客の唯一の関心事ではなくなった。『どんな代償を払うことになるのか』という、より大きな問いかけがあるのだ」と、同氏は付け加える。

 

ここで小売企業にとって重要なのは、グリーンイノベーションへの懸念に対応するために、マーケティングをどのように調整するかということである。また、どのようなブランドの倫理観や持続可能性の取り組みが心に響くかという質問に対して、28%が「該当なし」と答えていることも注目に値する。

 

Scarlett氏は、このような考え方は、ブランドにはより多くの消費者の注目を集め、もちろん地球にも良い影響を与えるような形で、自身の取り組みを多様化する責任があることを浮き彫りにする可能性があると注意を促した。

 

新たなAIショッピングの嗜好

より多くのeコマースツールがAI技術を導入し始めるにつれ、買い物客は将来、それらの機能を受け入れるようになる可能性がある。今年、買い物客の間で最も関心を集めたAIを活用したショッピング機能のトップ5は以下の通りである。

 

・バーチャルショッピングアシスタント(24%)

・パーソナライズされたブランドや商品のレコメンデーション(23%)

・ファッション商品におけるスマートなサイズのレコメンデーション(23%)

・バーチャル試着ツール(21%)

・バーチャルショールームツアー(20%)

 

eコマースにおけるAIへの熱意は年齢層によって大きく異なるが、高年齢層ほど懐疑的である。特にベビーブーム世代の抵抗感は顕著で、60%がAIショッピング機能には興味がないと回答している。この感情は、デジタルシェルフにおけるAIテクノロジーの採用に対するより広範なためらいを浮き彫りにしている。

 

対照的に、Z世代やミレニアル世代などの若年層は、買い物のニーズにAIを活用することへの関心が高まっている。彼らは、バーチャルショッピングアシスタント、パーソナライズされた商品レコメンデーション、スマートサイジングツールなどの高度な機能の探求に特に熱心である。この違いは、ショッピング体験を向上させるAIの役割に対する考え方における世代間の明確なギャップを浮き彫りにしている。

 

「反対や導入の遅れは、おそらくAIの能力や限界に対する誤解、そしてバーチャル試着のようにAIがオンラインと店舗でのショッピングのギャップを埋めるのに役立つという誤解に関連していると思われる」と、同氏は述べた。

 

マーケティング手法は成熟が必要

マーケターや小売業者は、買い物客が商品を販売するために雇われたAIにはあまり関心を示さないことに気づいている。しかし、研究者によると、より環境に優しく、倫理的に健全な方法でブランドを変革することは、不確実な経済における戦略的な動き以上のものであり、買い物客を惹きつけるものになるという。

 

買い物客の間で真に共感を呼ぶのは、環境に配慮したパッケージングであり、公正な労働慣行やエシカルソーシングがそれに続く。買い物客はこれまで重要視していたものからシフトしており、88%は現在、社会的・政治的大義や社会的責任プログラムに関する公的立場を拒否している。

 

買い物客が利便性、価格、持続可能性、AIに対して強い嗜好を持つのと同じように、ブランドにとっては、責任はあるものの、買い物客が必要なものや欲しいものを見つけられるよう手助けする大きなチャンスがまだ存在していると、Scarlett氏は勧める。

 

「ソーシャルコマースの取り組みを拡大し、新しいロイヤリティプログラムやリサイクルの取り組みを展開したり、新しいAIショッピング機能を提供したりすることで、まったく新しい市場の注目を集めるだけでなく、あらゆるトレンドへの流れをさらに変えることができる」と、同氏は締めくくった。

 

小売企業のための新しい戦略

Scarlett氏によると、eコマースの継続的な成長により買い物客はより一層しっかりと主導権を握ることができるようになり、彼らはそれを好ましいと思っているとのこと。しかし、ブランドは完全に無力というわけではないのだ。

 

商品紹介コンテンツの品質や最適化、そして新規や既存のチャネルでの思慮深い実験にコミットすることで、ブランドは既存顧客によりよくリーチし、オーディエンスを拡大することができる。

 

「ブランドは、ソーシャルメディアのプラットフォームや実店舗、あるいはその間のいかなる場所であろうと、発見されるだけでなく、質の高い体験を提供する必要がある」と同氏は語る。

 

※当記事は米国メディア「E-commerce Times」の2/7公開の記事を翻訳・補足したものです。