最近の調査結果によると、B2C企業のマーケターは、パーソナライゼーションがビジネスの鍵であることを認識していながら、この戦略の実行に苦戦しているという。

 

4月に、マーケティング会社のAdweek IntelligenceIBM Watson Advertising共同で実施したオンライン調査の対象となったB2Cマーケター202人のうち、33%は、パーソナライゼーションは、「極めて(extremely)重要だ」と答え、さらに、33%が「非常に(very)重要だ」と回答した。

 

調査の結果、以下のことが明らかとなった:

 

  • 回答者の39%が、パーソナライゼーションとは、異なるペルソナに異なるメッセージを送るセグメント化されたマーケティングであると回答。
  • 回答者のその他25%が、パーソナライゼーションとは、コンテキストや以前に確認した行動に基づいて消費者に合わせたマーケティング・メッセージングであると回答。
  • 回答者のその他20%が、リアルタイムデータを使用して、消費者が購買ジャーニーのどこにいるのかを認識し、よりコンテクスチュアルなコミュニケーションを提供することをパーソナライゼーションであると定義している。
  • 上記以外の回答者は、アウトバウンドメッセージングをカスタマイズするために、名前や性別などの、個別化したCRM(顧客関係管理)要素を使用し、アウトバウンドメッセージングをカスタマイズすることをパーソナライゼーションと定義している。

 

「一般的に、デジタルチャネルにおけるパーソナライゼーションの目標は、我々人間が対面でビジネスを行ってきたときに構築していたものと同レベルの、顧客との親和性とエンゲージメントを、より直感的に構築することにあるはずだ」と、リサーチ会社であるConstellation ResearchのプリンシパルアナリストであるNicole France氏は述べた。

France氏によると、パーソナライゼーションとは、各個人に対応すること(可能であれば、名前を用いて)、個人について知っている事項や他の顧客の行動から知った情報に基づいてニーズを推測し、予測すること、それらのニーズから理解したことをテストすること、そして、組織全体がその知識にアクセスできるようにし、学んだことを記憶することから成り立っているという。

「コンテクスチュアルに関連性が高い顧客とのインタラクションを提供することで、顧客にとってのインタラクションの価値を直接的に高め、間接的には、顧客が自社にとって価値のある重要な存在であることを示すことが可能である」と同氏は語る。

 

顧客のレンズを通して

今回の調査回答者の28%が、パーソナライゼーションの目標は、コンバージョン率向上であると回答。さらに、22%がマーケティングROI(投資利益率)の向上、14%が顧客体験の向上、12%がブランドとの親和性の向上、11%が顧客ロイヤルティの向上を目指している。

しかし、「マーケターが依然として抱えている問題は、自分達が、何を達成できるかという視点からパーソナライゼーションを定義してしまうことである」と、テクノロジーリサーチ会社であるConstellation Researchのプリンシパルアナリストである Liz Miller氏は語る。

「パーソナライゼーションの定義は、顧客という唯一の視点から、スタート、ストップし、継続的に改良されなければならない」

 

ニーズのシグナル主導型戦略

今回の調査回答者であるB2Cマーケターにとって、データは重要なツールである。

 

  • 59%が、パーソナライゼーション施策の一環として、データ管理プラットフォームを使用。さらに、27%が24ヶ月以内にデータ管理プラットフォームを使用する予定。
  • 56%が、パーソナライゼーションのために、顧客データプラットフォームを使用。さらに、28%が24ヶ月以内に使用する予定。
  • 56%が、デジタルアセット管理を利用。さらに、29%が24ヶ月以内に使用する予定。
  • 21%が、AIや機械学習ベースのアナリティクスを使用。さらに、28%が24ヶ月以内に使用する予定。

 

回答者の35%は、パーソナライズされた体験を提供する上での主な障害は、組織全体でデータが断片化されていることにあると回答している。

さらに、28%は、データの所有部門が明確でないことを指摘している。

データ分析が鍵であると、Miller 氏。「実際のところ、収集されるすべてのデータは、バイナリ(2進法)によって顧客を現している。パーソナライゼーションを実行すべき瞬間を探すのではなく、パーソナライゼーション戦略の原動力となるニーズのシグナルを聞き取ることが重要である」。

パーソナライゼーションは、「全体的な関係性とエクスペリエンスに与えるインパクトによって、測定されなければならない」と、同氏は述べている。

 

適切な技術の選択

Miller氏は、「作成中のプロセスやワークフローを見て、この厳しい質問をするべきである」と語る。「パーソナライズされた関係を構築しているのか、それとも、ただそれが可能だという理由だけで、テクノロジーを用いてパーソナライズ戦術を導入しているだけなのか」。

次に、目標としているパーソナライズされた関係を実現するために、どのようなタイプのデータが必要なのかを企業は確認すべきである。

France氏は、「多くのケースでは、かなり単純な機能でも、非常に優れたパーソナライゼーションを実現できる」と述べている。「たくさんの追加機能を持つよりも、クリティカルシンキング(批判的思考)と顧客に対する理解が重要である」。

France氏は、企業が顧客についてすでに知っている情報を活用するための技術が基礎となるべきだと述べている。例えば、顧客プロファイル、購入履歴、または、企業との双方向のインタラクションなどの全てが有効である。

同氏はまた、異なる顧客セグメントを定義する行動パターンや特徴を特定するためのツールや、人工知能や機械学習ツールが重要であると指摘する。

情報の利用方法は、要件によって異なる。例えば、アウトバウンドマーケティングキャンペーンやカスタマーサービスからの問い合わせなどがあるが、「テクノロジーによって、これらの異なるインタラクションのすべてに情報を提供するテクノロジーが必要である」と、France氏は推奨した。

Miller氏によると、テクノロジーは、完全に整合性が取れていなければならないという。「サイロ化された状況では、エンゲージメントをパーソナライズするチャンスを見出すことはできない。データと我々のニーズは、システムを横断してつながっているべきであり、テクノロジーも同様である」。

 

利益を生むパーソナライゼーション

パーソナライズされたデジタルマーケティング技術を提供するJivoxによると、eコマース、自動車、通信など7つの業界でビジネスを行う24社以上のグローバルブランドが、同社の技術を利用して、2019年中に6億4,000万ドル以上のコスト削減と、10億ドル以上のROIを実現したという。

このコスト削減は、1つのマスタークリエイティブデザインから、数千~数百万のパーソナライズされたコンテンツバリエーションを自動的に生成するJivoxのDynamic Canvasテクノロジーと、ブランドが様々なクリエイティブやコンテンツフォーマット用に手動で編集することなく既存の画像やフィードを再利用できるようにするDynamic Image Resizingテクノロジーを導入することにより実現したと、同社は報告している。

 

 

Jivox によるROI分析の対象となったブランドキャンペーンでは、ディスプレイ、ビデオ、モバイル、ソーシャル、eメールの各フォーマットで500万以上のクリエイティブバリエーションが提供された。アセットバリエーション(個々の製品画像のローテーション表示)を含めると、調査対象ブランドは、パーソナライズされたメッセージのバリエーション1億4,800万以上のバリエーションのパーソナライズされたメッセージを全世界の20億人以上の消費者に配信したことになる。

 

※当記事は米国メディア「E-commerce Times」の6/29公開の記事を翻訳・補足したものです。