今やショッピングの形式は、昔と全く変わっている。ショッピングモールまで長時間ドライブし、何時間もウィンドウショッピングする、という必要はなくなった。顧客は自宅でくつろぎながら、ログインし、指先の操作だけで全てのショッピングを完了することができるのだ。
eコマースの著しい普及によって、消費者の行動、期待、購買方法は、前例のないほど変化している。そしてその変化は、数字によって裏付けられている。最も人気のあるオンラインアクティビティは「インターネットショッピング」であり、その売上高は過去5年間で倍増。総売上高は、2014年の13億3600万ドルから、今年は28億4200万ドルまで増加すると予測されている。
一方で、伝統的な小売店舗は、毎年顧客を失い続けている。去年のホリデーシーズンには、現代のオンラインショッピングの真のパワーを見せつけられた。米国では、インターネットでホリデーギフトを購入したいという消費者数が、実店舗での購入を予定する消費者数を上回ったのだ。
急速に進化する消費者行動と、前例がないほど高まる需要に対応するため、オンライン小売業者にはこれまで以上の効率性と高い信頼性が要求されている。こうした要求に応える最善の方法の1つは、テクノロジーベースの分析と人工知能を導入することであろう。
人工知能は、単なるバズワードやSFの世界のものではなく、すでに、様々な方法でサイト閲覧者に購入させる目的のために活用されている。eコマース事業者は、ユーザー毎のパーソナライゼーション、ショッピング習慣に関する情報の収集、広告のカスタマイズ、顧客エンゲージメントの向上などにより、ユーザーが購入する可能性を引き上げることが可能だ。そして、これらの手法は多くの方法の一つに過ぎない。
サイト閲覧者から購入者へ
認識すべきは、「顧客」の重要性である。顧客は、サイト閲覧者を購入者へ変えるという課題における人的要素だ。彼らは「自分の購入意思決定が正しいことを確信させて欲しい」と考えている。テクノロジーベースの分析を活用すれば、顧客に販売事業者に利益となる(購入という)決断の可能性を高めることができるだろう。
まず、人工知能を採用した分析ツールは、各顧客のユーザープロファイルを作成する上で非常に性能が高い。こうした分析ツールにより、年齢から性別、ショップサイト上での実際の行動に至るまで、あらゆる訪問者の価値ある情報を明らかにすることができるのだ。
取得した顧客情報は、eコマース事業者のオンラインストアの設計や、オファー(特典)の提供などの他の要素に有効に利用することができる。顧客はサイトのリピート訪問者か?顧客は特定のカテゴリを検索しているか?また、顧客の平均購入額はいくらか?こうした様々なインサイトを活用し、購入者のセグメント化に役立たせることで、各購入者に向けたより効果的な訴求を行うことができるのだ。
リアルで非バーチャルな“伝統的小売店舗業界”の話に戻すが、店舗でも今まで以上に注意深く顧客を観察している。人が買い物をする際の表情や感情反応を、人工知能ソリューションによって監視しているのだ。
まるで“ディストピア”の監視計画のように聞こえるかもしれないが、人工知能を用いたモニター技術は、主に万引き対策を目的としているものだ。しかし同時に、店舗内のどのエリアが最も客足を呼び込んでいるか、また顧客が最も反応した商品はどれかといった、店舗にとって利用価値のあるデータも収集しているのである。
結局のところ、人工知能を採用した分析ツールを活用することで、企業はこれまで以上に顧客について知ることができるようになった。本質的に顧客を知ることは、より良いカスタマー・リレーションシップ・マネジメントにつながる。一般的な消費者を購入者へと変えるといったプロセス全体を合理化するアプリケーションは、必要なマンパワーを減らし、より高い効果を得ることを可能にするのだ。
実現可能な最高のストア
分析と人工知能の可能性が顕著に現れるのは、eコマースストアの領域である。企業はスマートシステムによって、かつてないほど迅速に在庫を管理し、インデックスを自動化し、即座にカテゴリ分類し、低品質の画像を検出し、好ましくないコンテンツにフラグを立てることが可能となった。
もはや、人間が全ての投稿とページを手動で調べる必要はない。その代わりに分析ツールを使用することにより、オンライン顧客体験を可能な限りスムーズにし、効果を最大化することが可能になったのだ。
プロセスを自動化することは、eコマースとオンラインブラウジングにおいて最も重要な「ウェブサイトの最適化」に役立つ。実際に、目が見ているかのように人工知能が動作するソフトウェアもある。高度な画像、及び動画認識を用いて、人間と同じように世界を見ることができるのだ。
そして機械学習が、スマートシステムが大量のデータを分類し、各買い物客ごとにWebページをカスタマイズすることを可能にしている。購入者を惹きつけるために重要なのは、このようなパーソナライゼーションである。
ウェブサイトが個々のニーズにアピールすることができれば、サイト閲覧者が購入者に変わる可能性は高くなるのだ。
シンプルなウェブサイトでの挨拶でも、チャットボットのようなより精巧なものでも、どのような形でもよいが、2017年に行った調査結果によると調査対象者の半数近くが、事業者とのコンタクト手段としてライブチャットが好ましいと回答しているという。そして、およそ同数の買い物客が、チャットボットから商品を購入している。
このように、ハイテクソリューションと比較的直接的な顧客とのコネクションは、オンライン環境において共存できることは明らかなのだ。
個々にカスタマイズしたマーケティング
売上を上げること。これは、eコマースプラットホームのただ1つの明快な目的だ。どんなに世界やテクノロジーが変化したとしても、最重要な目的は常に、顧客に商品やサービスを販売することである。よって、最後に議論すべき、しかし、おそらく最も重要な要素は、前述のテクノロジーが広告と顧客体験にどのような影響を与えるかという点である。
最新テクノロジーによって、「消費者それぞれに向けたマーケティングをカスタマイズする」というムーブメントが到来している。包括的な訴求を目的とした過去の広告とは異なり、現在は、高度なマーケティングソリューションを活用することで個別の顧客の要望を特定し、個々のユーザーに適した商品を最前面に表示することが可能なのだ。
この手法は非常に効果的である。適切な場所に適切な広告を表示することで、eコマースストアは顧客が買い物に出かける前に、サイトでの購入につなげることができるのだ。買い物客の約80%が、実店舗で商品を購入するつもりだとしても、事前にオンラインでリサーチを行っているという。したがって、eコマース小売業者が意図が明確なマーケティングを行うことにより、顧客の要望を把握しやすくなり、顧客を惹きつけることができるのだ。
分析ツールは、収集した全てのメトリクスによって、非常に高い精度で見込客をリターゲティングすることができる。例えばこれらのシステムが、ある顧客が特定の製品を長時間閲覧したことを認識してから、次に同サイトを再訪する瞬間まで、その情報を記憶しておくことができる。そして過去のユーザーの行動情報に基づいて、特別なオファーやプロモーションを提供することができるのだ。
またテクノロジーベースのシステムは、販売機会の損失を効果的に防ぐことができる。実際のところ、人工知能を活用したマーケティングの機会は無限である。カスタマーベースのスマートシステムを実装することによって、カートの放棄率、カタログのナビゲートの容易性、顧客エンゲージメントといった全てを改善することができるだろう。
人工知能システムの活用は始まったばかり
eコマース部門は、人工知能システムとのコラボレーションの時代を迎えている。人工知能システムにより、顧客サービスを向上させ、マーケティングを特定し、効果のないオンラインストアを見直すことかできるのだ。しかし、これはほんの始まりに過ぎない。スマートシステムによって、マーケティングとセールスの多くの要素を著しく改善することができ、導入は引き続き拡大することが期待される。
IT分野アドバイザリ企業であるGartner は、クライアントと企業のリレーションシップの85%が、2020年までに「人的インタラクションを必要とせず管理される」と予測。これが意味するところは明らかである。この変革に参加するか、または道を譲るかのどちらかだ。
歴史的な需要を生み出しているeコマース。サイト閲覧者を購入者へ変えるためのスマートソリューションを統合できなければ、最終的に企業に損害をもたらすことになるかもしれない。
※当記事は米国メディア「E-Commerce Times」の8/24公開の記事を翻訳・補足したものです。