行動をベースとしたトリガーメールの活用先といえば、eコマースを連想するかもしれない。しかし今回はマーケティング会社MERKLE社副社長Jose Cebrian氏が金融サービスやBtoB、健康管理、旅行、エンターテインメントなどへの応用法について説明していく。

 

マーケティングの世界では、主に3つのタイプのキャンペーンがある。

最も一般的なのは計画的なマーケティングキャンペーンである。企業が、市場に送り出したいメッセージとオファーを決定する。非常に簡単だ。

2つ目はライフサイクルキャンペーン。個人の行動にかかわらず、消費者が購買サイクルのどの段階にいるかに応じて、既定のメッセージを送る。自動化が理想だが、必ずしも必要ではない。簡単な例としては、出版社が、定期購読を申し込んだ人に購読お礼のメールを送り、購読期間の終了が近づくと更新を促すためのマーケティングを強化する手法だ。この2つのキャンペーンの共通点は企業主導のメッセージを配信していることである。

3つ目のキャンペーンのタイプは、行動をベースとする”トリガー”がきっかけとされるものだ。マーケティングメッセージが「消費者の行動情報に直接反応する」、もしくは「その情報を利用している」という点で、他の2つのキャンペーンとは異なる。例えば、ウェブサイトでの、関心を持っていることを示す消費者のアクションなどが“トリガー”となる。

 

eコマースを超えて

行動ベースのトリガーを利用するキャンペーンのROI(投資利益率)は、非常に高い。この手法がeコマースの領域であると考えられがちなのは、消費者行動をトリガーとしたEメール送信による「オンラインショッピングカートの放置防止キャンペーン」が大成功を収めたためだろう。こうした行動ベースのトリガーを活用したマーケティングを行うeコマースサイトは、全体の20%ほどを占めると見ている。B2Bマーケティングでは、さらなるメッセージングを促進するため、製品ページの訪問やコンテンツのダウンロードなどのサイトでのアクションを長年にわたってトリガーとして利用している。

行動ベースのトリガーを利用する長所(また、ROIを向上させる鍵)は、かなりシンプルだ。検索と同様に、消費者が企業サイト内で取るであろう行動が推測できるからだ。サイトでの行動は、検索キーワードと同じように“意図”を示しているのだ。検索との違いは、消費者のアクションが自社サイト上で行われている、ということ。つまり検索よりも、コンバージョンにより近いのである。

ビジネス形態や業界によっては、コンバージョンの定義は異なるだろう。オンラインでの直接販売や、潜在顧客をセールスファネルの次の段階に進めるイベントサインアップ、アプリのダウンロード、さらにEメールやSMS、プッシュ通知、アプリ内で企業とコンタクトするためのサインアップなどもコンバージョンである。ポイントは、見込み客や顧客自身の行動に応じてメッセージングを行っていることだ。

カート放置は典型的な例だ。オンラインカートに商品を入れたままそのサイトを離れてしまう買い物客がいる。企業は、ディスプレイリターゲティング広告を表示し、カートを放棄している人に購入を促すメールを送信することができる。しかし、全ての企業が従来型のカートを設置するeコマースサイトを運営しているわけではない。しかし、金融、保険、医薬品、メディア、旅行などの業界についても同じ原則が応用可能だ。そのトリックは、消費者の重要な行動や訪問したページを特定し、その意図を推測し、企業が望む行動を促す適切なトリガーメッセージを送信することだ。

以下はいくつかの例えである。

 

 

消費者の一連の行動の中で、どの行動、もしくは、どの行動の組み合わせが最も重要かを判断し、その行動に応じたトリガーメッセージを送る必要がある。しかし、重要と判断したアクション毎に、単一のメッセージを送信する必要はない。別のコミュニケーションにおいて、そのアクションについて言及することもできる。そして、一定期間アクションベースのデータを収集し、特定個人の行動をより詳細にモデル化し、さらに広いセグメンテーションで使用することも可能だ。

 

単一のプラットフォームを使うようにする

サイトでのアクションにつなげるため、トリガーは通常、Eメールによって実行される。それは素晴らしいことであり、現に成功している。しかし、トリガーメール機能やユースケースを主に提供する企業があまりにも増えていることは問題である。多数の企業が提供することで、簡単に利用でき、費用が抑えられることは、明らかに望ましいことである。しかし、問題は、これらのトリガーメールに関するサービスを提供する企業のいずれかを利用している場合、本質的には、他のEメールの送信と異なるマーケティングクラウドやESP(Extensible Service Proxy )を使っていることを意味する。

もし、自社のマーケティングクラウドやESPでトリガーメール機能を持っていないなら、(特に、トリガーメールが重要な機能の1つである場合は)それは問題だろう。Eメール送信に二つの異なるプラットフォームを使うことで引き起こされる問題は、二つある。第一は、二重に費用がかかる、ということだ。これは非常に無駄なことである。第二は、二つのプラットフォームでデータを保存し、オプトアウト(個人データの第三者への提供を、本人の求めに応じて停止すること)の処理をしなければならないことだ。トリガーメール配信のプラットフォームから、主要EメールプラットフォームへのAPIコール(クライアントアプリケーションがタスク実行のために実行時に起動できる特定の操作)を行うことが、状況を改善する妥協点だろう。二つのプラットフォームでレポートを見る必要が生じるので、トラッキングも困難になるのである。

 

結論

要するに、行動をベースとするトリガーを活用することは、eコマースに限らずどのマーケティングプログラムでも重要なのである。潜在顧客と既存顧客は、オンラインでもオフランでも常に企業に向けて何らかのシグナルを送っているのだ。企業は自社にとって最も重要なアクションを特定し、彼らにいつメッセージを送るか、そしてどのようなメッセージを送るかを決める必要があるだろう。しかし、すぐにメッセージを送信したり、専用のメッセージを用意したりする必要はない。消費者から送られるシグナルを一定期間蓄積し、より正確に潜在/既存顧客像を作り上げ、それらの情報を活用することで、コミュニケーションをよりパーソナライズすることができるのだ。

 

※当記事は米国メディア「Marketing Land」の4/12公開の記事を翻訳・補足したものです。