データベースに存在するだけで何もアクションを起こさないメール購読者が企業に与える悪影響は、マーケターの想像以上である。これは、ソリューションプロバイダ企業Yes Lifecycle MarketingのクライアントサービスディレクターKyle Hendrick氏による、リアクションがないメール購読者のエンゲージメントを再び上昇させる戦略に関する提案である。

 

Yes Lifecycle Marketingの直近の調査では、およそ半数にあたる45%のマーケティング担当者が、2018年の最優先課題として「Eメール」を挙げているという。

Eメールが重要であることはよくわかっている。次点のチャネルは「ウェブサイト」だが、これを最優先課題に挙げたマーケティング担当者は24%にとどまり、「Eメール」との差は大きい。

それは、実際のところ何を意味するのか?

まず、Eメールマーケティングの安定したROI(投資利益率)と確立したチャネルとしての評価は、引き続き支持されているということだ。そして、受信トレイにおけるエンゲージメント獲得競争はますます激化していくだろう。

 

課題の原因となっているファクター

過去2年間、Eメール送信数は前年比(YOY)で12%増加し、第4四半期ではさらに増加して15%増となった。購読者の受信トレイは、メールで溢れかえっているにも関わらず、Eメールは2018年の最優先課題とされている現状では、マーケティング担当者が購読者の注意を引き続けることは今まで以上に困難である。

今や、ユーザーは、Eメール配信停止手続きを行うか、Eメールサービスプロバイダー(ESP)による「SPAM(迷惑メール)フィルター」を適用することによって、能動的に自分のメールアドレスをメーリングリストからオプトアウトすることができる。通常、登録解除リンクはEメールの一番下に置かれているが、2014年にGoogleのフリーメールサービスGmailが「メーリングリスト登録解除」ボタンを受信メールのトップに導入し、大きな話題となった。Appleは2016年のiOS10から、メーリングリスト登録解除機能を導入している。

これらの改善は、マーケティング担当者たちの激しい怒りを買った。しかし、登録解除が簡単になったからといって、企業メールに対する大量な登録解除があっただろうか。答えは自信をもって「いいえ」と言える。代わりにマーケティング担当者は、トップにある登録解除ボタンによって企業のEメールデータベース内に残り続けるエンゲージしない購読者や非購入者の除外に役立つことを実際に発見した。その結果、配信効率が向上したのだ。

しかし、能動的オプトアウト(登録解除や「SPAM」フィルターを適用した購読者)の良い面は、「受動的オプトアウト」にならないことだ。「受動的オプトアウト」とは、「もうブランドとエンゲージしていないがブランドが送り続ける限りEメールを受信する」という購読者の行動を意味する。

受動的オプトアウト状態でデータベースに残っている未退会の購読者は、Gmailなどのインターネットサービスプロバイダ(ISP)のEメール配信効率を下げることが立証されている。さらに、これまでのように、配信停止件数を測定することも難しくなっている。したがって、自社の「受動的オプトアウト」状態のオーディエンスがブランドに与える影響を監視し、戦略を磨き、彼らが歯垢のように溜まっていくのを避けることが重要なのである。2018年も受動的オプトアウト率は引き続き増加し、Eメールマーケティング担当者たちの大きな課題となると予測される。

 

具体策

受動的購読者を再びエンゲージさせ、潜在的購買者の流出を防止するために、マーケティング担当者はEメールのライフサイクルに応じたメッセージングと顧客ロイヤリティへのアプローチを積極的に取り入れる必要がある。そして、購読者が興味を失い、受動的オプトアウトをしないように、より有益で面白く魅力的なコンテンツを提供しなければならない。

気を付けたいのは、利益を圧迫するほどの高価値な割引情報を頻繁に送信しなければならない、という意味ではないことだ。Eメールに精通しているマーケティング担当者は、戦略的にEメール送信のタイミングを計り、価値主導の本文コンテンツ(スティッキーコンテンツ)を取り入れ、鍵となる購読者の反応がないライフサイクルの時期を見計らって再登録を促すEメールを送信し、トリガーメール(顧客がウェブ上で起こした行動に合わせ、自動的に送信する特定のメール)システムに投資している。

エンゲージメント強化のために前述の戦術を取り入れようとするなら、購読者やメーリングリストのすべてが同じように行動するわけではないことを覚えておいてほしい。購読者に積極的なアクションを促進し続けるために、鍵となる反応の浮き沈みを理解するための購読者分析の実施を薦める。Eメールマーケティング担当者は、限られた期間内でエンゲージメント強化をはかるためにこれらの戦略を組み合わせ、テストするべきだ。

 

  • メッセージ送信のタイミングの調節

購読者は、受信回数が多すぎたり間違ったタイミングに受信したりすると広告メールを無視し始める。購読者がEメール内容を確認しなくなる前に、彼らが受信頻度やコンテンツの種類を選べるよう、メール受信設定を活用するのが良いだろう。決して送信回数が減ることを恐れてはいけない。購読者自身にEメールの配信のタイミングと配信内容関連性をコントロールさせることで、購読者は本当に必要な情報を得ることができるのだ。

さらに、最もエンゲージメントが得られるのは何曜日かということを知ることだ。2016年からのデータでは、金曜日が最もエンゲージメントが高く、土曜日はコンバージョン率が最も高いと言われている。木曜日と土曜日は、購読者のエンゲージさせるチャンスを高めるため、定期的に「楽しい」と思えるメールの送信を試みるべきだろう。

 

  • 定期的に独自コンテンツの送信を試みる

1か月間メールに無関心な購読者を失わないためには、28日目に特別なメールの送信を試してみるのもいい。反応しない購読者に、いつもよりお得な情報を提供することで、定期的に送信するメールの開封やメール内リンクのクリックを促すことになるかもしれない。

それと同時に、送信するEメールがパーソナライズされているか確認する努力をもう少し行ってほしい。宛名に購読者の名前を表示することだけでなく、マーケティング担当者はメール配信の意図を正直に伝えるべきである。最も重要なことは、楽しむことだ。購読者も結局は、同じ人間である。つまり、購読者からの反応がしばらくないことを残念に思っていることを伝え、過去に購入したり、閲覧したりしたことがあるものに似たアイテムを提案するべきである。

 

  • トリガーメールへの投資と革新

特定の消費者の行動やデータに基づいて送信されるトリガーメールは、通常のメールコンテンツに比べて常により大きなエンゲージメントをもたらす。未購入のまま放置されたカートや商品購入、ユーザーの近隣で行われるイベントなど、考慮すべきトリガーは多くある。例えば米国の食品デリバリー企業Grubhubは、位置情報に基づいた雪や雨のような天候をトリガーとして、位置情報ベースのEメールを送信する。一方、米国のドーナツ店 Dunkin Donutsスポーツチームのパフォーマンスに応じてEメールを送信している。

 

  • 独自の価値のあるコンテンツ内容を提供する

購読者側からの受動的オプトアウトが容易になったため、マーケティング担当者は、Eメールの開封を促しクリックスルー(リンクをクリックしてウェブサイトを訪れること)を高めるための強い動機を提供しなければならなくなった。つまり個々の購読者やオーディエンスセグメントの理解を深め、それぞれのニューズを満たし、関連性が高く、タイムリーなコンテンツを提供することが重要であり、それは積極的に製品を売り込むこととは別である。

これらのEメールは、通常のビジネスメールと異なったものである必要がある。例えば、昨今オンラインで購読者にスロークッカー(調理器具)を販売したブランドや小売業者は、スロークッカーを使用した季節ごとのレシピや、スロークッカーファンがアイデアをシェアできるソーシャルフォーラム、食品に関係しないスロークッカーの使用方法のひらめきなどをEメールで送信し、フォローアップを成功させた。

 

受動的オプトアウトが引き続き重要な課題となり、競争が激化し続ける中、賢く新しいエンゲージメント強化戦略を試みなければならない必要性に迫られているEメールマーケティング担当者。その潜在力を最大限に引き出すためには、2018年のデータベースを健全な状態に保ち、新しいライフサイクルメッセージのテストを行い、関連するコンテンツの質を向上させるための投資を行うべきなのである。

 

※当記事は米国メディア「Marketing Land」の3/30公開の記事を翻訳・補足したものです。